「自己破産をしたら、その後の生活はどうなるんだろう」
自己破産を検討する際に手続の後の生活への影響を考えると、心配なこともあるでしょう。
自己破産の正確な情報が集まらないと、その結果誤解も生じがちです。
そこでこの記事では、自己破産後の生活にはどんな影響が生じるのかや、自己破産後の注意点などについて、詳しくご説明します。
自己破産でよくある誤解も含めて正しく理解して、手続き後の不安を少しでも軽できますと幸いです。
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自己破産後の生活への6つの影響と変化
自己破産後の生活への影響でよく心配されていることを中心に、具体的に解説していきます。
1.生活に必要な現金や道具は手元に残せる
自己破産をしても、生活費や生活に必要最低限のものは手元に残すことができます。
収入の見込みがまったくないなどの事情で借金の返済が明らかにできない場合に、裁判所は破産手続きの開始を決定し、お金に換えられる財産はお金に変えて債権者(お金を貸した人)に分配するために、債務者(借金をした人)の財産を処分します。
ただし、手元に財産を残さないと債務者も生活していくことはできませんので、最低限の生活を維持するために、99万円までの現金と、生活に必要不可欠な身の回りの電化製品・道具・家具などは手元に残せます。
なお、家や車も生活に必要な財産ではありますが、高額のお金に換えて債権者に分配できる可能性が高いので、処分されるのが原則です。
ただし、お金に換えても価値が低い財産は処分されません。
処分の対象になるかどうかは裁判所によって判断されますが、東京地方裁判所の基準では、お金に換えても20万円以下の価値しかないものは手元に残せます。
2.ローン契約やカードの利用ができなくなる
自己破産すると、信用情報機関には事故情報として記録が残ります(ブラックリスト入り)。
ブラックリスト入りすると、どの金融機関・カード会社等でも新規の貸し出しやクレジットカードの取引ができなくなります。
自己破産をすると最長で10間年は事故情報が残ってしまうので、その間はローン契約による買い物や、クレジットカードの作成・利用は難しいと考えたほうがいいでしょう。
3.債務がある銀行の口座は凍結される
借金をした銀行の口座は自己破産をすると凍結されて、引き出しや自動引き落としなどができなくなってしまいます。
給与振り込み口座が凍結される可能性がある場合は、破産の申立てをする前に給与振り込み口座を変えておく必要があります。
給与振り込み口座の設定には時間がかかる場合があるので、早めに済ませておきましょう。
4.携帯やスマホは契約解除になる可能性がある
携帯電話やスマホは、機器本体の分割払いの残りがある場合は契約を解除されてしまう可能性があります。
携帯やスマホは生活必需品なので、処分されると困ってしまいます。
その場合は、自己破産の申立てをした裁判所に申し出て、家族に買い取ってもらうなどの方法を検討しましょう。
くれぐれも、自己判断で一括払いはしないように気を付けてください。
他の債権者には返済していないのに、携帯電話会社にだけ返済したとなれば、特定の債権者だけに返済する偏頗弁済とみなされて免責の許可がおりなくなる恐れがあります。
5.保険は解約の必要が生じることもある
保険を解約すると「解約返戻金(へんれいきん)」と言って、一時払いでお金をもらえることがありますが、解約返戻金は、破産手続きの中で債権者に配分される財産として扱われます。
そのため破産を申し立てた人が、保険を解約をして裁判所に申し出るか、管財人が解約して返戻金を受け取るかのいずれかをしなければなりません。
なお、東京地裁の場合は返戻金が20万円以下であれば処分を免れます。
6.一部の職業や業務が制限される
自己破産をすると、一定期間は就けなくなってしまう職業や役職があります。
サラリーマンが職業の制限を受けることはほぼありません。
また制限を受ける期間は申し立てから免責許可が決定するまでの期間で、通常は4~6ヵ月で今まで通りに仕事をできるようになります。
自己破産後の生活についてよくある7つの誤解
自己破産の情報が漠然としていると誤解も生じがちになってしまいます。
次のような情報がありますが、これらはすべて誤解です。
どのような勘違いがあるか確認しておきましょう。
1.周囲に簡単にバレやすい
自己破産したという情報が周囲にバレやすいということはありません。
同居している家族には、申立ての準備や財産調査でバレることもあるかもしれません。
しかし、同居していない家族、職場であれば、家族や職場から借金をしていたり給料が差し押さえられたりすることがない限り、裁判所から債権者宛ての通知が送られることもないので、バレる機会は少ないです。
自己破産をすると官報に載るというこをと心配する方もいるかもしれませんが、官報を日常的に読む人は一部の公務員や金融業の人など非常に限られています。
自己破産について掲載されている分量もとても多く、熟読しないと誰が自己破産したかなどまで判別しにくいので、簡単に世間に知られるものでもないのです。
2.賃貸住宅の契約を解除される
自己破産をすると、賃貸住宅に住んでいる方は大家さんから追い出されてしまう、という心配をしている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、今住んでいる賃貸住宅は出ていく必要がありません。
自己破産のみを理由として立ち退き・明渡しをして良いという法律はありませんので、家賃を払い続けている限りはそのまま住むことができます。
3.住民票や戸籍に自己破産が記録される
住民票や戸籍に自己破産は記載されることがありません。
各自治体では、職業につくための証明書などに利用される目的で、破産していないことなどの証明(身分証明書)を出すことがあります。
自己破産をすると身分証明書にはその事実がわかる記録がされることがありますが、身分証明書と戸籍はまったく別のものなので、戸籍に自己破産の事実が書かれてしまうというのは誤解です。
4.解雇や減給の理由になってしまう
自己破産をしたことを理由に、解雇や減給をされることはありません。
通常、自己破産は個人の財産に関する手続きであって、仕事には関係のないことです。
仕事に関係のないことで懲戒処分を受けるいわれはありません。
破産手続きのときに、手続きのために一時的に給与振込口座が凍結されることがありますが、そこから誤解が生じているようです。
5.子供の就学・就職・結婚を妨げる
自分が自己破産をすると子供の就学・就職、結婚を妨げてしまう、と考えている方もいるようですが、これも誤解です。
自己破産をした本人は子供の奨学金の保証人にはなれませんが、自己破産をしていない方の親が保証人になることは可能です。
また、奨学金には、保証人がいなくても奨学金を利用できる機関保証制度を設けているところもあります。
親の自己破産はあくまで個人の問題なので、たとえ親子関係であっても子供の仕事や結婚に影響をすることはないどころか、自己破産をした本人に関しても、婚姻生活や結婚を妨げる法的根拠もなければ、手続きが終われば職業の制限を受けることもありません。
6.海外に渡航できなくなる
海外に渡航する自由は憲法でも保障されていて、自己破産した場合も、裁判所の許可を取って海外渡航をすることができます。
許可が必要な期間は破産管財手続き中で、6ヵ月~1年程度が目安です。
自己破産の中でも「同時廃止」といって破産手続き開始とともに手続きが終わる場合は、海外渡航の許可を取る必要もありません。
7.年金や生活保護が受給できない
公的年金や生活保護は、自己破産をしても受け取ることができるので、これも誤解です。
最低限の生活をするための受給権ですので、差押さえも禁止されています。
ただし、年金や生活保護費は、銀行口座に振り込まれた後は預金とみなされるので、債権者に配られてしまう可能性があります。
そうならないようにするため、郵便局で現金受け取りをするという対策もできます。
自己破産後の生活でトラブルを避けるための注意点
自己破産の後の生活にまでトラブルを持ち込まないために、次のような留意点があります。
保証人への影響は把握しておく
保証人への影響は、自己破産をした場合は避けることができません。
借金の請求は保証人に対して行われ、保証人は返済を免れることができないのが原則です。
保証人も債務整理を検討した方がいい場合も少なくありません。
手続きや生活上の不便を避ける準備には時間がかかるので、保証人には早めに自己破産をする予定であることを伝えた方が賢明です。
自己破産の相談をしている専門家がいれば、保証人問題についても一緒に相談をしておくとよいでしょう。
7年以内の自己破産はできないと心得ておく
前回自己破産をしてから7年以内の自己破産は、免責不許可事由になるのでできない可能性が高いです。
借金の免責は生活再建の見込みがある人のための制度ですが、7年経たない間に2度も免責申立てをする人が生活を立て直す姿勢が本当にあるとは言いにくい、と考えられるためです。
お金に困ってもヤミ金は利用しない
ブラックリスト入りしている期間中でも、甘い言葉でお金を貸してくれる業者が現れたら気をつけてください。
本来ならばどの金融機関とも取引できないはずなのに簡単に貸してくれる場合は、違法なヤミ金である可能性が疑われます。
高金利な上に取り立て方法も不適切で、問題がさらに複雑化してしまうので、関わらないようにしましょう。
お金に困ったときは各自治体に窓口がある、社会福祉協議会で行っている緊急小口貸付制度の利用も検討してみましょう。
審査や入金までに時間がかかるといった注意点はありますが、利用できればこれも生活再建の助けになるでしょう。
まとめ
自己破産をすると、
・財産を処分される
・ローンやクレジットカードの利用ができなくなる
・一部の職業が制限される
といった影響があります。
漠然とした情報で誤解を抱いてしまい、手続きを前に進められない方もいるかもしれません。
この記事で正しい情報を知って、自己破産後の生活もイメージしながら手続きを検討してみてください。
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