後遺障害14級、12級の逸失利益を計算。むち打ちで後遺症が残ったら

将来の仕事や収入への影響を補償する逸失利益。慰謝料に比べて金額の計算が複雑で、特にむち打ちの逸失利益は計算方法も他のケガとは異なります。正しく金額を計算できないと、示談交渉の際に逸失利益で損をしてしまうかもしれません。
ここでは、交通事故でむち打ちになった場合の後遺障害14級、12級の逸失利益を計算し、目安や増額のポイントを見ていきます。

  • 公開日:

むち打ちの逸失利益は低く計算される?

むち打ちで後遺障害14級、または12級が認定されると、逸失利益を請求することができます。

しかし、むち打ちの逸失利益は他のケガで後遺障害14級や12級が認定された場合に比べて低額になりやすいと言われています。

それは、むち打ちで残る後遺障害の症状が関係しています。

むち打ちの逸失利益を計算する上で重要な、低額になりやすい理由から見ていきましょう。

むち打ちの後遺症は将来治るかもしれない

「むち打ちの後遺症はずっと残り続けるわけでない」と聞いたことはありませんか?

たとえば、交通事故で腕の関節の動きが不自由になる後遺症が残った場合、可動域の制限が回復することはなかなかありません。

しかし、むち打ちの場合は、後遺障害等級の認定を受けたタイミングでは痛みやしびれがあっても、数年経つと症状が収まることがあります。

また、症状に慣れ、日常生活への影響が軽くなってくることもあります。

治ることはいいことです。

ただし、将来、後遺障害の影響がなくなるので、逸失利益の金額は少なくなってしまいます

そのため、他の後遺障害では、後遺障害が収入に影響する期間(労働能力喪失期間)を症状固定の年齢から67歳までとして逸失利益を計算するのに対して、むち打ちの場合、後遺障害14級は5年程度、12級は10年程度を目安に期間を制限して計算することが多くなっています。

むち打ちの場合の逸失利益が低額と言われるのは、このような事情があるためです。

14級と12級のむち打ちの逸失利益はいくら?

では、実際に逸失利益はいくらになるのか、後遺障害14級と12級それぞれ確認していきましょう。

逸失利益の計算は、必要な数値を下記の計算式に当てはめて算出します。

逸失利益=1年間の損害額(収入×減少する労働能力)×影響を受ける期間の係数(ライプニッツ係数)

計算に使用する数値を整理していきましょう。

収入は、ここでは年収500万円の人をモデルに計算していきます。

減少する労働能力(労働能力喪失率)は、原則として後遺障害14級は5/100、12級は14/100と決められています。

影響を受ける期間の係数は、後遺障害が収入に影響する期間(労働能力喪失期間)を、ライプニッツ係数という係数に当てはめます。

係数は計算の中でご説明します。

後遺障害14級が認定されたむち打ちの逸失利益

後遺障害14級が認定された場合から確認をしていきましょう。

14級の場合、労働能力喪失期間は5年程度になることが多いので、ここでは年数による金額差を比較するために3年と5年の2通りで計算します。

3年、5年それぞれの場合のライプニッツ係数と、年収、労働能力喪失率を用いて先ほどの計算式に当てはめていきましょう。

  • 収入:500万円
  • 減少する労働能力:5/100
  • ライプニッツ係数:3年の場合2.829、5年の場合4.580
  • 2020年3月31日以前の交通事故ではライプニッツ係数が異なります。

労働能力喪失期間が3年の場合

500万円×5/100×2.829=70万7250円

労働能力喪失期間が5年の場合

500万円×5/100×4.580=114万5000円

労働能力喪失期間が2年異なると約40万円の金額差があります。

後遺障害12級が認定されたむち打ちの逸失利益

次に、後遺障害12級が認定された場合の逸失利益の例です。

12級の労働能力喪失期間は10年程度ですが、労働能力喪失期間による金額の違いをわかりやすく確認するため、5年と10年で計算します。

14級の場合と同じように、収入、減少する労働能力、ライプニッツ係数を整理しましょう。

  • 収入:500万円
  • 減少する労働能力:14/100
  • ライプニッツ係数:5年の場合4.580、10年の場合8.530

労働能力喪失期間が5年の場合

500万円×14/100×4.580=320万6000円

労働能力喪失期間が10年の場合

500万円×14/100×8.530=597万1000円

後遺障害12級は14級に比べて金額が数百万円も高額になっており、労働能力喪失期間が5年と10年では250万円以上の違いがあります。

なお、ライプニッツ係数は交通事故の発生日が2020年4月1日以降と2020年3月31日までで異なります。

ここでご紹介しているライプニッツ係数は2020年4月1日以降の事故に適用されるものです。

ご自身の逸失利益の金額を正確に確認したい場合は、弁護士などの専門家に聞いてみましょう。

後遺障害が非該当だった場合のむち打ちの逸失利益

後遺障害等級が非該当の場合、原則として逸失利益と後遺障害慰謝料を受け取ることはできません

もし、自覚症状があるのに非該当になってしまった場合は、示談交渉の前に弁護士に相談して、後遺障害の異議申立てを行うか検討することをオススメします。

むち打ちの逸失利益、示談交渉のポイントと増額のコツ

逸失利益の金額をいくつかご紹介しました。

次に、適切な逸失利益を受け取るためのポイントをご説明していきます。

先ほどの逸失利益の計算式は、裁判基準で算出した場合の金額です。

示談交渉を行わない限り、保険会社が裁判基準の金額を掲示することはほとんどありません

自賠責保険や各保険会社が独自に定めている基準額を提示しているケースが多く見受けられます。

具体的には、後遺障害14級の場合、逸失利益が43万円で提示されていたら、きちんと計算されていない可能性が高いです。

この43万円という金額は、自賠責基準で認められる逸失利益の上限金額です。

自賠責保険では、後遺障害慰謝料と逸失利益の支払い上限が、14級の場合は合わせて75万円(うち後遺障害慰謝料が32万円)と決められています。

そのため、保険会社から後遺障害慰謝料32万円、逸失利益43万円で提示されたら、これは自賠責保険の金額が提示されていることになります。

しかし、自賠責保険の金額は最低限の補償でしかありません。

また、収入など、一人ひとりの事情を考慮して計算されておらず、事故被害者のことを考えた金額とは言えません。

示談交渉で、弁護士が裁判基準に基づいて反論し、適正な金額の支払いが認められれば、逸失利益は何倍にも増額される可能性があります

交渉のポイントは労働能力喪失期間

収入と労働能力喪失率は示談交渉で変えることは難しいです。

しかし、労働能力喪失期間は交渉で変更が認められることがあります

先ほどの計算例を思い出してみましょう。

後遺障害14級では労働能力喪失期間が3年と5年で約40万円、後遺障害12級の場合は5年と10年で約240万円

どちらもとても大きな金額差がありました。

つまり、労働能力喪失期間が何年かで逸失利益の金額が左右されるというわけです。

1年でも長いほうが良いですが、長くしてほしいと主張するだけでは認められません。

自覚症状や仕事への具体的な影響、過去の裁判例を用いて、何年が妥当だと的確に主張していく必要があります。

なお、後遺症の症状が重い場合や他の後遺障害も認められている場合などは、労働能力喪失期間が長く認められる可能性があります。

認定される後遺障害等級も逸失利益では大事

労働能力喪失期間が同じ5年でも約200万円の差。

後遺障害14級と12級では、逸失利益の金額に大きな違いがありました。

このように逸失利益の金額は、認定される後遺障害等級で大きく変わってきます

適切な逸失利益を受け取りたいなら、後遺障害の等級認定からしっかりと行うことが大事。

検査画像の有無や後遺障害診断書の内容で、後遺障害14級と12級のどちらが認定されるか変わってくるかもしれません。

逸失利益の疑問は弁護士に相談

今回ご紹介した逸失利益の金額はあくまで一例です。

ご自身の逸失利益のおおよその目安を知りたい人は、年収の部分を、ご自身の収入、主婦・主夫の方は賃金センサスに変更して計算してみてください。

ただし、実際には仕事の環境や自覚症状、過去の裁判例など、さまざまな要素から逸失利益の金額を判断しますので、弁護士に相談するのがオススメです。