今回も、弁護士法人・響の弁護士、澁谷 望(しぶたに のぞむ)先生にお越しいただきました!島田さんの「ホンジャマカ石塚さんのいとこでしたっけ?」というボケから始まりましたが、以前は秋元康さんに似ていると声をかけられたエピソードもありましたね!実際の澁谷先生がどんな人か気になる方は、ぜひ弁護士法人・響のホームページをご覧ください。弁護士の人って怖いのかな?というイメージも払拭されるかもしれません!
さて、第110回は、4月から施行される「種苗法(しゅびょうほう)」の改正について、澁谷先生に解説していただきました。そもそも種苗法とは、植物の新品種を開発した人が、それを利用する権利を独占できることを定めたもので、農業版の特許法のような存在です。
果物のブランドや品種(いちご…あまおう、ぶどう…シャインマスカットなど)が海外に無断で持ち出される事例が後を絶たない状況になっており、それを規制するべく制定されたのが、今回の改正種苗法です。
改正種苗法は、良い面もある一方で問題も出てきており、まだまだ改正の余地がある法律とも言われています。改正の内容や問題点について教えていただきました。
例えば、シャインマスカットは国の研究機関が33年の歳月をかけて開発した日本が誇る品種です。しかし現在、無断で栽培された中国産や韓国産のものがタイや香港に輸出され、日本のシャインマスカットの脅威となってしまっています。
今までの種苗法では、ホームセンターで購入するなどして正規のルートから手に入れた果物の苗木を国外に持ち出すことは規制されていませんでした。しかし、持ち出された種や苗を使って海外で産地ができてしまうと、日本から輸出した本物が売れなくなってしまい、それがさらに日本より安い価格で逆輸入されると、日本の農家さんにとっても大打撃になりかねないということで今回の改正に至りました。
今回の改正で変わった点は大きく2つ。
➀農作物の生産者が登録品種を自家増殖する際、発明者の許諾が必要に!
自家増殖とは「農家さんの種の権利」とも言われます。これまでも自家増殖によって増やした苗や種を販売することは禁じられていましたが、そこから収穫された果物や野菜・穀物などには発明者の権利が及びませんでした。別の契約に縛られない限り、他の農家が自由に増やして販売することは可能だったのが、改正後は、特許権や著作権と同じように発明者の許諾が必要になります。
②発売者が登録品種の栽培地域を制限できるように!
育成者が指定した地域外(国や県)から登録品種を持ち出す行為が育成者権の侵害に当たることになりました。違反した場合の罰則は、個人が不正に国外に持ち出した場合、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。さらに、指定地域外へ持ち出した場合は、生産や販売の差し止めを受けることになります。
農林水産省は改正による変化について、「許諾が必要になるのは、国に登録された新品種だけで、自家増殖が行われている多くの品種に影響はない」、また「国の研究機関や都道府県が開発した品種が多く、許諾料が高額になるとは考えにくい」などと説明していますが、それに対する批判も多く出ています。
具体的には、「許諾が必要なのは限定された一部の品種に過ぎない」といった説明について、例えばシャインマスカットを主に作っている農家さんからすると、自分で増やすことはできなくなってしまうので、特定の方にとっては大ダメージを受ける可能性が高いこと。許諾料についても、もし企業が発明者の場合、価格が釣り上げられてしまう可能性があります。また、儲けのいい品種ばかりが開発され、儲けの少ない品種は費用がかけられずに開発されにくくなることが考えられ、結果として多様性が失われることなども想定されます。
種苗法はあまりなじみのない法律ですが、今回の改正は、消費者である私たちにも大きく関わってくるかもしれません。今後も注目していきたいですね。