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『 弁護士法人・響 Presents
島田秀平と古藤由佳のこんな法律知っ手相

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2021.11.18放送

第146回

侮辱罪の厳罰化を検討。名誉毀損罪との違いは?

侮辱罪を表現する島田秀平さんと古藤由佳弁護士

今回も、弁護士法人・響の弁護士、古藤 由佳(ことう ゆか)先生にお越しいただきました!放送日の11月18日はミッキーマウスとミニーマウスの誕生日でした。有名人だと、岡田准一さんや東尾理子さん、城みちるさん、森進一さんなども同じ誕生日だそうですよ。誕生日って、有名人だと誰と一緒なのかな?とついつい調べてしまいますよね。ラジオをお聴きの皆さんと同じ誕生日の有名人はどなたでしょうか?

ネットの誹謗中傷で刑法改正?侮辱罪厳罰化か

さて、有名人と言えばなにかとネットで書き込まれることも多いですよね。今年9月16日、上川陽子法務大臣(当時)が、社会問題となっているネット上での誹謗中傷対策として、侮辱罪に懲役刑を導入する刑法改正を法制審議会に諮問しました。

古藤先生によると、現在の侮辱罪の法定刑は、「拘留(1日以上30日未満)または科料(1000円以上1万円未満)」で、刑法では最も軽い罰則になっているそうです。今回の諮問は、現行法に「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」を追加する内容で、厳罰化によってネット上の誹謗中傷を減らす狙いがあるとみられています。
ネット上では賛成の声が多数ある一方、「批判と中傷の線引きが曖昧で、言論が委縮してしまわないか」「権力者が批判を封じ込めるために使えそう」など懸念する声もあるようです。
第146回の放送では、「侮辱罪の厳罰化を検討。名誉毀損との違いは?」というテーマで、古藤先生に詳しく解説して頂きました。

侮辱罪とは?侮辱罪の成立条件と現行の罰則

まず「侮辱罪」とは、刑法231条で定められている犯罪で、「公然と人を侮辱した場合」に成立する罪だそうです。
刑法上の「公然性」とは、「不特定又は多数人(二人以上の大勢の人)が知りうる状態」と定義されています。例えば、「周囲に大勢の社員がいる状況で部下を罵倒する」「多数の人が行き交う街頭で個人を名指しして罵る」などといった状況では、”公然性”と”侮辱行為”の両方の要件を満たすため、侮辱罪が成立する可能性が高いとのことです。

インターネットは不特定・多数の利用者が自由に閲覧でき、情報が広がりやすいという特徴があるため、インターネット上での誹謗中傷は侮辱罪が成立する可能性が高いそうです。古藤先生は、SNSや掲示板のように拡散性の高いところで個人を侮辱すると、罪が成立するものと考えておくべきだとおっしゃっていました。

SNSでの誹謗中傷というと、昨年起きた木村花さんの痛ましい出来事が思い出されます。侮辱罪で起訴された人物への罰則が9000円のみだったということも、大きな議論になりました。また最近では、東京2020オリンピックの選手や、コロナ禍における医療従事者に対する誹謗中傷もニュースになっており、社会的にインターネット上の誹謗中傷が問題視されていますね。

一方で、「一対一の状況で罵倒して、相手が深く傷ついた」場合や、「個人宛のメールや個人間のみでやり取りをしているチャットなどで侮辱行為があった」場合には、「公然性」が認められないため、侮辱罪は成立しないと考えられるそうです。

また現状、侮辱罪の刑事罰は1万円以下の「科料」等とされていますが、それとは別に慰謝料を請求することはできるそうです。ただ、慰謝料の相場は10万円程度と言われており、高額請求が認められる可能性はあまり高くないとのことでした。

侮辱罪と名誉毀損罪の違いは?

「侮辱罪」と似たようなものに、「名誉毀損罪」がありますが、この二つの違いは、「事実を摘示しているか否か」という点にあるそうです。
侮辱罪(刑法231条)は「事実を摘示しないで」「公然と」「人を侮辱した」場合に成立します。例えば「バカ」「役立たず」などという場合です。
これに対して、名誉毀損罪(刑法230条)は、「事実の摘示によって」「公然と」「人の社会的評価を低下させるおそれのある行為をした」ことによって成立するそうです。例えば、「○○さんはテストで0点を取っているからバカ」などという場合ですね。ただしこの時、「摘示する事実」が、真実か嘘かは問われないそうです。
尚、侮辱罪よりも名誉毀損罪の方が重く、名誉毀損罪の法定刑は、「3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金」が科されます。また慰謝料を請求する場合、慰謝料の相場も高くなる傾向があるそうです。

誰でも発信できるSNSはルールとマナーを守って

今回の侮辱罪の厳罰化について、古藤先生は「表現の自由などへの配慮は本当に大切です。ただ、SNSの発達で誰でも意見を発信することができるようになり、『言いっぱなし』『言われっぱなし』でたくさんの人が傷つく悪いイメージが広がり始めていたと思います。しっかりルールを決めて線引きすることが、自由な意見交換を促進するはずなので、私はよかったと思います。」とおっしゃっていました。

「罰則があるから他人を侮辱する書き込みはやめる」のではなく、「罰則がなくても他人を侮辱する書き込みをしない」社会になるといいですね!


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