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『 弁護士法人・響 Presents
島田秀平と古藤由佳のこんな法律知っ手相

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2021.7.29放送

第130回

ペットが交通事故に遭ってしまった!治療費や慰謝料は請求できる?

実家の愛犬、アイボのコタローを紹介する古藤由佳弁護士と笑顔の島田秀平さん

今回も、弁護士法人・響の弁護士、古藤 由佳(ことう ゆか)先生にお越しいただきました!
いつもスラっとしたスーツを着ている古藤先生。古藤先生の仕事のやる気スイッチは「ご依頼者様に自分の名前を名乗るとき」と「ヒールのパンプスを履いたとき」なんだそうです。

さて、今年5月に3.5mのアミメニシキヘビが飼い主の部屋から逃げたり、茨城県でミナミジサイチョウという巨大な鳥が逃げたりと、最近はペットに関するニュースが増えているように思います。「飼っているペットが人を怪我させてしまった!」というニュースもよく聞きますが、その逆ってぜんぜん聞かないですよね?ペットが怪我をさせられたり、散歩中に事故に遭ったりした場合、加害者に刑事罰や損害賠償を求めることはできるのでしょうか?
そこで第130回は「ペットが交通事故に遭ってしまった!治療費や慰謝料は請求できる?」をテーマに古藤先生に解説していただきました。

人身事故の場合は、自動車の運転者が加入している自動車保険から保険金が支払われます。しかし、ペットの場合は法律上「物」として扱われてしまうため、「物損」としての保険金が支払われるだけで、人が交通事故の被害者になった場合に比べるとはるかに低い金額になってしまいます。また、自動車の運転者が第三者のペットを過失で轢き殺してしまっても、危険運転致死傷罪や過失運転致死傷罪といった刑事事件としては扱われないとのことです。更に、過失による交通事故でペットが亡くなった場合、すべてに器物損壊罪が適用されるわけではありません。刑法は原則として故意によるものを処罰します。交通事故は故意ではなく過失に当たるため、器物損壊罪は成立しないということになります。

また、動物虐待に当たることもありません。
動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)で設けられている動物虐待の罪の構成要件が「愛護動物をみだりに殺し、または傷つけること」となっているので、過失による交通事故はこれに該当しません。ただ、過失ではなく自動車を使って故意に他人のペットを殺せば、器物損壊罪や動物虐待罪で罰せられる可能性はあります。

尚、交通事故でペットが怪我をした場合、治療費を加害者に請求できる可能性があります。
前述の通り、法律上ペットは「物」として扱われますが、言い換えれば飼い主の「財産」に当たります。ペットが怪我をした場合、法律的には飼い主の財産権が侵害されたと解釈されることになりますので、その場合、加害者は原状回復(事故前の状態に戻すこと)のための費用を負担することになります。この原状回復のための費用として、ペットの飼い主は治療費を請求することができるとのことです。しかし、完治するまでの治療費を払ってもらえるとは一概に言えないようです。例えば、車の修理代が時価額を上回る場合、同等の中古車に買い替えた方が安く済むということで、時価額の限度でしか損害賠償請求ができないということがあります。これと同じように、ペットの治療費も、本来はペットの時価額の限度でしか損害賠償請求することが出来ない可能性があります。
ただし、過去の裁判例では、ペットの時価額を考慮することなく治療費の賠償を認めているものもあり、その取扱いが確立しているわけではないようです。

ペットが怪我したり、亡くなってしまった時の精神的ダメージは大きいと思いますが、原状回復のための費用が支払われれば、損害は元通りに補填されたことになりますので、慰謝料の請求も原則として認められていません。ただ、これまでの裁判例の中には、飼い主の方が被った精神的苦痛に対する慰謝料の請求を認めたケースもあります。例えば、東京高等裁判所平成16年2月26日判決は、長年家族同然に飼ってきた愛犬が交通事故で亡くなった事案で、飼い主に慰謝料5万円を認めています。また、飼っていた2匹の愛犬が死傷した事案について、慰謝料10万円を認めた裁判例もあるとのことです。

最近では「アニマルライツ」などと言い、動物の権利も注目されてきていますが、現状はケースバイケースとなっているようです。ペットが交通事故にあった際など、加害者の対応にどうしても納得のいかない場合は、弁護士に相談してみてくださいね。