遺言書とは?有効な書き方を司法書士が解説!作成を考えたときの相談先とは
遺言書とは、自分が亡くなったあとに財産をどう分けてほしいか、希望をまとめた書面です。
遺言書には、以下の3つの種類があります。
- 自筆証書遺言:自分で作成する遺言書
- 公正証書遺言:公証人が作成に関与する遺言書
- 秘密証書遺言:自分で作成し、遺言の存在を公証人に証明してもらう遺言書
ただし、効力をきちんと発揮し、相続人に円満な相続をしてもらえる遺言書をつくるには、内容と書き方のポイントを押さえておかなくてはいけません。
この記事では、書き方について詳しく解説していきます。
不安があれば司法書士や行政書士、弁護士といった専門家に相談・依頼するのも、一つの選択肢となるでしょう。
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遺言書とは?どんな効力がある?
遺言書は、いわば、自分が亡くなったあとの自らの財産の行き先に関して、最後の意思として遺す書面です。
一定の形式にすることで法的効力を持ち、遺言書に記された遺産の分け方は、民法で定められた遺産の分け方よりも優先して適用されます。
亡くなった人名義の財産については、本人の意思を最優先に尊重するということです。
遺言書がない場合、遺産の分け方を遺族で話し合って決めなくてはいけません。
しかし、この話し合いが紛糾し、裁判所で調停になる例は増加傾向にあります(参考:家庭裁判所における 家事事件及び人事訴訟事件の 概況及び実情等 )。
遺言書を書いておくことは、遺す家族の間でのもめごとを防ぐためにも有効なのです。
有効な遺言書は、遺族が行う以下のような手続きで、遺産分割の根拠として利用できます。
- 相続した銀行口座の名義変更や解約
- 相続した自動車の名義変更
- 相続登記(相続した不動産の名義変更)
なお、相続分や遺産分割、遺贈の指定以外も、非嫡出子の認知、未成年後見人の指定、生命保険金の受取人の変更なども、遺言書で指定が可能です。
遺言・エンディングノートとの違い
通常「遺言」という言葉は「被相続人(亡くなった人)の生前の意思表示」というより広い定義で使われます。
したがって、口頭で意思を伝えても遺言となりますが、通常、口頭の遺言は法的効力を持ちません(※)。
遺言の内容を、民法で定められた方式の書面に残した遺言書を作成することで、はじめて効力を発揮することになります。
また、エンディングノートも遺言を書面にしたものと考えることはできます。
しかし、書式や内容を自由に書くことができる一方、相続に関して法的な効力は望めません。
※ 病気・遭難で死期が近い緊急時には、一定の条件を満たすことで、口頭の遺言を証人に代筆してもらうことなどによって法的効力を持たせることが可能です(特別方式遺言)
また、遺言書の種類としては「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」が一般に広く使われるものとなります。
遺言書の効力と、遺言書の種類について、下で詳しく解説します。
相続させる人、引き継ぐ物を指定する効力がある
遺言書には、相続させる人、引き継ぐ物やその割合を指定する効力があります。
相続とは、亡くなった人の財産を家族などに引き継ぐ制度です。詳しくは以下の記事で詳しく解説しています。
逆に、遺言書の法的効力が及ばない事項もあります。
遺言書の効力が及ばない項目の例
養子縁組・離婚・結婚に関すること
葬儀やお墓に関しての指定
遺言者が営んでいた事業の承継方法などの希望
臓器提供など遺体の処理方法に関する希望
1は、子の身分について、遺言書において指定できるのは非嫡出子の認知だけのため、法的効力はありません。
2〜4は、あくまで遺言者の希望であって、同様に法的効力はありません。
遺言書が効力を持つ項目について、下の項目で詳しく解説しています。
相続させる割合(相続分)の指定
遺言書では、相続分を自由に決めることができます(民法902条1項)。
ただし、法定相続人には遺留分(詳しくは後述)があり、遺言書であっても、遺留分を侵害することはできません。
- 法定相続人とは
- 民法で定められた、相続権を有する人。
- 常に相続人になる:妻、夫(配偶者)
- 第一順位:子ども、孫
- 第二順位:親、祖父母
- 第三順位:兄弟姉妹、甥姪
上記の第一順位がいなければ第二順位が、第二順位がいなければ第三順位が法定相続人になります。
遺産分割方法の指定・遺産分割の禁止
遺言者は「誰に」「何を」「どのくらい」「どのようにして」遺産分割するかを具体的に指定できます(民法908条)。
ただし、相続人全員が同意すれば、遺言書と異なる分割方法を決めることも可能です。
また、遺言書では、遺産分割そのものを相続開始から最長5年間、禁止することもできます。
たとえば、相続人に未成年がおり、遺産分割の話し合いをするともめることが想定される場合などに禁止することがあります。
遺贈
遺贈とは法定相続人ではない人に財産を引き継がせることです(民法964条、986〜1003条)。
通常の個人だけでなく、会社や組織などに遺贈することもできます。
非嫡出子の認知
非嫡出子とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子のこと。
遺言書にて非嫡出子を認知することで、その子は相続人として他の子と同じ権利を持ちます(民法781条2項)。
未成年後見人の指定
未成年後見人とは、親権者を持たない未成年の財産管理、監護養育などを行う人のことです。
遺言者に未成年の子がいる場合に、遺言書で後見人を指定できます(民法839条1項)。
相続人の廃除
相続人に法律上の廃除事由が認められる場合、法定相続人であっても、遺言書によって相続権を剥奪できます(民法893条)。
廃除事由とは、遺言者に対する虐待や重大な侮辱など、相続をさせたくないと思わざるをえない事情のことです。
生命保険金の受取人変更
遺言内容を事前に保険会社に通知したうえで、遺言書による保険金の受取人の変更が可能です(保険法44条)。
ただし、平成22年4月以前の保険契約については、保険会社へ変更が可能かどうかの確認が必要です。
遺言執行者の指定
遺産相続において必要な手続きを行う遺言執行者を指定、または第三者に指定を委任することができます(民法1006条)。
具体的な手続きとしては、預貯金の解約、不動産名義の変更などがあります。
遺言書には3種類ある
一般的な遺言書としては、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つがあります。これらを「普通方式遺言」といいます。
そのうち、実際に遺言書として利用されるのは、自筆証書遺言か公正証書遺言がほとんどです。
以下、各遺言書の特徴とその選び方を解説します。
自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の違いとは
自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の違いをまとめました。
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
---|---|---|---|
書く人 | 本人 | 公証人 | 本人(代筆可) |
費用 | 不要(※1) | 財産の価額に応じた手数料 | 一律11,000円 |
保管場所 | 本人(※1) | 公証役場 | 本人 |
証人 | 不要 | 2人以上 | 2人以上 |
秘密保持 | 存在・内容を 秘密にできる |
公証人・証人以外には秘密にできる(※2) | 内容だけ 秘密にできる |
偽造の危険性 | あり | なし | きわめて低い |
検認手続き | 必要(※1) | 不要 | 必要 |
※1 法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用する場合、3,900円の費用がかかり、保管場所は法務局となる。代わりに検認手続きは不要になる(制度については後述)
※2 公証人は法務大臣から任命された実質的な公務員であり、法律上の守秘義務が課されています
- 検認手続きとは
- 遺言書の発見者または保管者が家庭裁判所に遺言書を提出して、相続人立ち会いのもと開封し、内容を確認する手続きのことです。
検認が必要な遺言書は、
法務局での保管制度を利用していない自筆証書遺言
秘密証書遺言
となります。
検認が終わり、検認済証明書の付いた遺言書を受け取ることで、預貯金や不動産などの相続手続きが進められます。
遺言書の種類の選び方
確実に法的効力を持つ遺言書を作成したい場合、公正証書遺言が第一の選択肢となります。
一定の費用と手間がかかりますが、無効になりづらく、原則、発見されないというリスクもありません。
公証人が作成に関与することで、相続人によるトラブルにもなりにくい点も大きなメリットです。
対して、手軽さを重視するのであれば、自筆証書遺言が適しているでしょう。
手間も費用もかけず作成することができるためです。
遺言書として要件を満たした書き方ができれば、公正証書遺言と法的効力に差はありません。
また、遺言書保管制度を利用することで、見つかりにくい、隠匿や破棄のリスクは解決されます。
しかし、相続内容のチェックまでは行われないため、相続人によるトラブルが発生する可能性はあります。
一方、秘密証書遺言が選択されるケースは、ほとんどないといっていいでしょう。
遺言者が亡くなるまで、内容を誰にも知られないというメリットはありますが、公正証書遺言でも、公証人と証人以外、内容を知ることは一般にはありません。
よって、以降、この記事においても、自筆証書遺言と公正証書遺言の作成方法や書き方を解説します。
各遺言書のメリットとデメリットを改めてまとめると、以下のとおりです。
公正証書遺言のメリット・デメリット
メリット
- 公証人が作成に関与するため、要件に不備がなく、無効になりにくい
- 公証役場に原本が保管されるため、紛失や偽造、変造、隠匿のおそれがない
- 相続トラブルになりにくい
- 家庭裁判所での検認が不要
デメリット
- 財産の価額に応じて、手数料が発生する(財産が高額になるほど手数料も高くなる)
- 作成にあたって証人2人の立ち会いが必要
自筆証書遺言のメリット・デメリット
メリット
- 手軽に作成でき、書き直しもしやすい
- 費用がかからない
- 「自筆証書遺言書保管制度」を利用すれば法務局で預かってくれる
デメリット
- 基本的には自分で保管する必要があるため、紛失や発見されないおそれがある
- 隠匿や破棄、変造されるリスクがある
- 要件(法的効力が生じるための条件)に不備があり、無効になる可能性がある
- 家庭裁判所での検認が必要
- 「自筆証書遺言書保管制度」を利用すれば、紛失や隠匿などのリスクはなくなり、検認も不要となるが、費用が発生する
秘密証書遺言のメリット・デメリット
メリット
- 遺言書であることが証明され、その内容を誰にも知られずに済む
- パソコンでの作成も可能
- 公証人に支払う手数料が安い
デメリット
- 発見されないリスクがある
- 内容が確認されないため、要件の不備により無効となるリスクがある
- 手続きにあたって証人2人の立ち会いが必要
- 家庭裁判所での検認が必要
【注意】認知症になってからの遺言書は効力がなくなることも
もし認知症になってしまうと、遺言書をつくっても有効にならないケースがあります。
遺言書が有効になるためには、作成時点で遺言者に判断能力(遺言能力)がないといけません。
遺言書を作成した時点の遺言能力が疑わしい場合、裁判所が医療記録や遺言書の内容などを照らし合わせ、その有効性を判断します。
つまり、認知症を発症してから、もしくは発症直前に遺言書を作成すると
「家族の混乱や争いを避けたくて遺言書を書いたのに、その遺言書をめぐって裁判沙汰になってしまった…」
という事態に陥る可能性もあるということです。
遺言書をつくる意思がある場合、早めにとりかかることをおすすめします。
遺言書(自筆証書遺言)の書き方とは?例文を交えて注意点を解説
自筆証書遺言は遺言者自身が作成する遺言書です。
作成するうえで大事なポイントは、民法に定められている要件を満たした内容であること。
それによって、自筆証書遺言は法的効力を発揮します。
書き方としては、民法968条1項にある「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」が重要となります。
また、相続人の遺留分を侵害する内容になっていたり、誰が手続きを行うかが不明瞭だったりすると、相続でトラブルが発生する可能性もあります。
対策として、
- 遺言書で遺留分を侵害しない
- 遺言執行者を指定する
といった方法がとれるでしょう。
下から、書き方のポイントを、例文も交えて詳しく解説します。
(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
パソコンや代筆ではなく自筆で書く
自筆証書遺言は、基本的に全文を遺言者が自分で書く必要があります。
全文とは、本文だけでなく、「遺言書」というタイトルや日付、名前も含みます。
筆記具はボールペンや万年筆など、書いた文字が長期保存されるものを使用します。
書き換えられないよう、鉛筆や消えるインクの使用は避けてください。
ただし、財産目録(詳しくは後述)の部分に関しては、パソコンで作成をしたり、預金通帳のコピーを添付するだけでもかまいません。
しかし、その場合でも書面に遺言者の署名・押印が必要となります。
自筆証書遺言書保管制度を利用する場合、用紙や記載内容などにもルールがありますので注意しましょう(詳しくは後述)。
作成年月日を記載する
遺言書の作成日は必ず正確に書き入れましょう。
「○月末日」「○月吉日」といった表記は避けてください。
遺言書が複数見つかった場合、原則として日付の最も新しい遺言書が優先され、効力を持ちます。
また、遺言者が亡くなった時点で認知症を発症していた場合、遺言書がその発症の前につくられたか、後につくられたか、という点が論点になることもあります。
こうした意味でも、正確な日付表記は重要です。
署名・押印をする
自筆による遺言者の署名と押印が必要です。
表記する氏名は、戸籍にある本名を書きましょう。
通称やペンネームでも遺言者と同一人物であることが明らかなら、有効と判断される場合もありますが、無効となるリスクを負わないために避けるのが無難です。
押印は、一部が消えていたり、不明瞭な部分がないように、しっかりと押します。
使用する印鑑は、信頼性が高い実印を押すことをおすすめします。
認印でもよいとされていますが、他人が押すこともできるため、遺言の効力が失われる要因にもなりかねません。
【例文あり】誰に何を相続させるかはっきり書く
遺言書は、誰にどの財産をどのくらい相続させるのか、わかりやすく、かつ明確に表記します。
内容があいまいになると、相続トラブルの要因になりかねません。
たとえば
「長男と長女に金融資産を半分ずつ、妻には土地と建物、その他の財産を相続させる」
と表記したとします。
この場合の「金融資産を半分ずつ」が、どの金融資産をどちらにどう分けるかが指定されていないため、具体的に相続が進まない事態に陥る可能性があります。
上で示したように「長男〇〇」へ「〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号1234567」といった風に、誰にどの財産をどのくらい相続させるのかを明確にすることが重要となります。
相続人指定の例文
遺言書に記載する相続財産は、預貯金は通帳どおりに、不動産は登記事項証明書のとおりに記載します。
不動産がある場合の例文
第1条 遺言者は次の財産を妻三葉洋子(昭和○年○月○日生) に相続させる。
(1)土地
所在 東京都○○区○○町○丁目
地目 宅地 地番 ○番○ 地積 ○○㎡
(2)建物
所在 東京都○○区○○町○丁目○番地○ 家屋番号 ○番○
種類 居宅 構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階○○㎡ 2階○○㎡
預貯金がある場合の例文
第2条 遺言者は次の財産を長男三葉一郎(昭和○年○月○日生) に相続させる。
(1)○○銀行○○支店 普通預金 口座番号1234567
(2)○○信用金庫○○支店 定期預金 口座番号2345678
【注意】遺留分を侵害すると争いになることも
遺言書の内容が遺留分を侵害した場合、相続人どうしでもめごとに発展し、「遺留分侵害額請求」が行われる可能性があります。
- 遺留分とは
- 遺留分とは、相続人が相続できる財産について、最低限保障された一定の割合の取り分のことです。
兄弟姉妹以外の相続人に認められており、法定相続分の2分の1、または3分の1です。
遺留分が侵害されると、遺留分権利者は、遺産を多く取得した人に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます(民法1046条1項)。
この請求を「遺留分侵害額請求」といい、請求できる権利を「遺留分侵害額請求権」と呼びます。
たとえば、法定相続人として配偶者と子が2人(長男と次男)おり、遺言書が
「長男にすべての財産を相続する」
といった内容の場合、配偶者と次男は、ともに遺留分を侵害されたことになります。
この場合、遺言書どおりに遺産分割が行われたあと、遺留分権利者(配偶者と次男)は、遺留分侵害額請求権を取得します。
配偶者と次男が遺留分侵害額請求を行うと、最初は当事者どうしで協議をし、まとまらなければ家庭裁判所の調停委員が間に入って和解を目指すことになるでしょう。
それでも解決しなければ、遺留分侵害額請求訴訟を提起し、判決による強制的な解決となります。
このように、遺留分の侵害はトラブルに発展し、解決まで長い時間を要する可能性もあります。
回避するには、事前に遺留分対策を行うことが重要。具体的な対策としては、以下のものがあります。
●遺留分を確保した内容にする
遺留分を侵害しない範囲で、遺言書に相続分を指定します。
最も一般的で無理のない方法だといえます。
●「相続人廃除」を検討する
相続人廃除とは、法定相続人が以下のような行為を行った場合に、相続から外すことができる制度です。
- 遺言者(被相続人)に対して生前、虐待や重大な侮辱を与えた
- 遺言者(被相続人)の財産を不当に処分した
- ギャンブルなどでつくった多額の借金を遺言者(被相続人)に生前、支払わせた
- 重大な犯罪を犯し、有罪判決を受けている など
これらケースが該当する場合、相続人廃除を家庭裁判所に申し立てるか、遺言書に相続人廃除の旨を記載する(遺言者が死後、遺言執行者が家庭裁判所に申し立てる)ことで、裁判所が受理すれば、相続権を取り上げることになります。
●相続人の遺留分の放棄をしてもらう
遺留分の放棄とは、家庭裁判所の許可を得て、あらかじめ(被相続人が亡くなる前に)相続人が遺留分を放棄することです。
相続人が遺留分の放棄を家庭裁判所に申し立て、その後、被相続人が遺言書に相続人には相続させない旨を記載します。
生前の遺留分対策については、以下の記事で詳しく解説しています。
【例文あり】遺言執行者を指定するとスムーズ
遺言執行者とは、遺言内容を執行する人のことで、遺言書で指定ができます。
以下は、遺言書に記載する、遺言執行者指定の例文です。
配偶者を指定した場合の例文
第○条 遺言者はこの遺言の遺言執行者として、妻三葉洋子を指定する。
司法書士を指定した場合の例文
第○条 遺言者はこの遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。
住所 東京都○○区○○ ○丁目○番○
氏名 響一郎
職業 司法書士
生年月日 昭和○年○月○日生
遺言執行者は必ず指定しなくても構いませんが、指定しておくと、迅速、的確な遺言の執行が期待できます。
未成年または破産者でなければ、誰でもなることができるため、相続人や受遺者(遺言により財産を受け取った人)がなることも少なくありません。
ただし
- 遺留分などの法的な問題が懸念される場合
- 名義変更すべき財産が多い、相続人が多数いるなどの理由で手続きが多い場合
などは、司法書士や弁護士といった法律の専門家に依頼する方がスムーズ、かつ的確に相続が進むでしょう。
ちなみに、司法書士に遺言執行者を依頼する場合、目安となる費用は財産総額の1〜2%程度です。
財産目録を添付する(パソコン利用可能)
財産目録は、預貯金や不動産など、遺言者が所有する財産を一覧にしたものです。
とくに決まった形式はありませんが、一般的には、資産内容と負債内容、それぞれの合計額が一覧で表記される形となります。
自筆でなく、パソコンでも作成可能です。
ただし、自書ではない場合、各ページに(裏面に記載がある場合は裏面にも)署名と押印が必要となります。
財産目録がないからといって、遺言書が無効になることはありません。
しかし、財産の詳しい情報は、遺産分割協議や相続税申告の際もスムーズに進めるための資料として役立つはずです。
遺言書とあわせて作成しておくといいでしょう。
修正時は訂正印を押しその旨を追記する
遺言書の内容を訂正したり、書き足したいときは「加除修正」を行うことができます。
加除訂正には法律で定められたルールがあり、修正テープを使ったり、黒く塗りつぶしたりしてはいけません。
ルールは以下のとおりです。
間違った部分に二重線を引き、正しい文言を「吹き出し」等を使って書き入れ、そばに押印をします(署名・押印に使ったものと同一のものを使う)
最後に余白に「○行目、○字削除、○字加入」と書きます
作成後は自筆証書遺言書保管制度の利用がおすすめ
遺言書を作成した際は、自筆証書遺言書保管制度を利用して法務局で保管してもらうことをおすすめします。
自宅での保管は、紛失や改ざん、破棄といったリスクも生じるためです。
自筆証書遺言書保管制度は、令和2年からスタートした、新しい制度です。メリットは以下のとおりです。
- 法務局が原本と画像データを保管するため、紛失、盗難、改ざんのリスクが解消される
- 民法が定める形式の遺言書かどうかの外形的チェックも受けられる
- 相続人に発見してもらいやすくなる
- 検認手続きが不要になる
参考:知っておきたい遺言書のこと 無効にならないための書き方、残し方 | 政府広報オンライン
ただし、利用する場合は、一定の様式や記載内容のルールに沿った遺言書でなくてはなりません。また、法務局まで出向いて申請をする必要があります。
自筆証書遺言書保管制度を利用しないケースでは、多くが自宅保管となっています。
自筆証書遺言書保管制度の利用のルール、自宅保管の際の注意点を紹介します。
自筆証書遺言書保管制度利用の際のルール
自筆証書遺言書保管制度では、利用できる遺言書の様式が以下のようにルールとして決まっています。
- 用紙はA4サイズ、裏面には何も記載しない
- 上側5mm、下側10mm、左側20mm、右側5mm以上の余白を確保する
- 遺言書本文、財産目録には、各ページに通し番号でページ番号を記載する
- 複数ページでも綴じ合わせない
また、有効な遺言書を作成するための注意事項として、以下の点も作成時に必ずチェックしましょう。
- 誰に、どの財産を残すか財産と人物を特定して記載する
- 財産目録を添付する場合は、別紙1、別紙2などとして財産を特定する
- 財産目録にコピーを添付する場合は、その内容が明確に読み取れるよう鮮明に写っていることが必要
- 法定相続人の場合は「相続させる」または「遺贈する」、法定相続人以外の者に対しては「遺贈する」と記載する
参考:自筆証書遺言書保管制度 03 遺言書の様式等についての注意事項
自筆証書遺言書保管制度の利用方法
作成した遺言書を法務局で保管するためには、遺言者本人が法務局に出向いて、保管の申請手続きをする必要があります。
手続き方法は以下のとおりです。
-
管轄の法務局を選ぶ
自筆証書遺言書保管制度が利用できる法務局は、全国に312ヵ所あります。その中から、次のいずれかを管轄する法務局で申請手続きをします。
・遺言者の住所地
・遺言者の本籍地
・遺言者が所有する不動産所在地 -
申請書に記入する
保管申請のための申請書に必要事項を記入し、管轄の法務局に提出します。
申請書は法務局のウェブサイトからダウンロードできるほか、最寄りの法務局の窓口でも入手できます。
また、遺言者が亡くなったときに、遺言者が事前に指定した人に対して、通知を希望する場合は、申請書内の「死亡時の通知の対象者欄」にチェックを入れ、必要事項を記入します。
参考:06 申請書/届出書/請求書等 | 自筆証書遺言書保管制度 -
事前予約をする
法務局での申請手続きは事前予約制です。
予約専用HP、電話または窓口であらかじめ予約する必要があります。 -
申請する
予約した日時に以下の必要書類を持って、法務局に行き、申請を行います。
必要書類に不足等がなければ、原本等を保管したことを証明する保管証が渡されます。
なお、保管証は再発行されません。
・HP
365日・24時間予約可能
【法務局手続案内予約サービス】ポータル
・電話または窓口予約
受付は平日9:00〜17:00(土日祝日、年末年始を除く)
参考:08 予約 〜予約をお取りください!〜 | 自筆証書遺言書保管制度
必要書類
- 作成済みの遺言書
- 申請書
- 本人確認書類(免許証、マイナンバーカードなどの顔写真付きの身分証明書)
- 本籍と戸籍の筆頭者の記載のある住民票の写し等
- 遺言書が外国語により記載さているときは日本語による翻訳文
- 3,900円分の収入印紙(遺言書保管手数料)
自宅保管の場合の注意点
自筆証書遺言書保管制度を利用せず、自宅で保管する場合、正しく作成していれば封筒に入れなくても、その効果は変わりません。
しかし、遺言書をそのまま保管している場合、誰かに見つけられ、書き換えや破棄されるリスクが生じます。
したがって、以下の点に注意しながら、封入し大切に保管することをおすすめします。
遺言書の自宅保管の際のポイント
- 封筒に入れ「遺言書」と書く
遺言書と書くことで、勝手に開封されることを防ぐことができます。「検認」を受けずに遺言書を開封すると、違法行為となるからです。 - 署名・押印する
遺言書と同じ日付を封筒に記入し、署名・押印をすると、大切に保管している信用度の高い遺言書というイメージを得られます。 - 封の上に押印する
封印をすることも、大切な書類としてイメージが良くなります。遺言書で使ったものと同じ印鑑を、綴じ目のところにまたがるように押します。 - 検認を促す内容を書く
法務局に預けられていない自筆証書遺言や秘密証書遺言を発見した人は、必ず開封前に家庭裁判所で「検認」を受けなければなりません。
それを発見者に伝え、促すために、封筒には「開封前に家庭裁判所で必ず検認を受けるように」と書いておくことが有効です。
公正証書遺言の作成方法
公正証書遺言は、公証役場の公証人に作成に関与してもらい、公正証書として原本が保管されます。
遺言書として確実に法的効果を持たせることができ、紛失や偽造、破棄の心配がない点で、大きなメリットがあります。
ただし、作成にあたっては、必要書類をそろえる、公証人と相談を重ねるなど、手間も費用もかかります。
作成の流れ、必要費用と必要書類について解説します。
公正証書遺言作成の流れ
公正証書遺言は公証人が作成に関与します。以下が作成手順となります。
公証人への遺言の相談や遺言書作成の依頼
遺言者やその親族が公証人と直接、遺言の相談をしながら作成していきます(金融機関や士業者を介しての相談も可能)。
ただし、「誰に相続させたらいいか」「相続税がかからないようにするには」といった遺言内容については、公証人と相談はできません。相談内容のメモや必要書類の提出
作成にあたって、相談内容のメモ(原案)を持参または郵送、メール等で公証人に提出。
あわせて、必要書類も提出します(書類については後述)。遺言公正証書(案)の作成と修正
提出されたメモと必要書類をもとに、公証人が遺言公正証書(案)を作成。
さらに遺言者とともに修正を行い、内容を確定します。遺言公正証書の作成日時の確定
公証人と遺言者とで、確定した遺言公正証書(案)を公正証書遺言とする日時を確定します。遺言の当日の手続き
遺言当日、遺言者は公証人と証人2名の前で、遺言の内容を改めて口頭で告げます。
その内容と、先に内容が確定した遺言公正証書(案)をもとに作成した原本を比較し、誤り、違いがないかなどを確認します。
修正等がなければ、原本に遺言者と公証人がそれぞれ署名・押印し、公正証書遺言が完成となります。
参考:Q4.公正証書遺言は、どのような手順で作成するのですか? | 日本公証人連合会
公正証書遺言作成のための費用
公正証書遺言の作成には、費用が発生します。
- 公証役場に払う手数料(公証人手数料):遺産額や内容によって異なる(下の表参照)
- 必要書類の取得手数料:1,000〜5,000円程度
- 証人への日当(公証役場で紹介を依頼した場合):1万円程度/1人
- 専門家への代行依頼料(専門家に依頼した場合):5〜20万円程度〜
目的(財産)の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 1万1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 1万7,000円 |
1,000万円を超え3,000万円以下 | 2万3,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 2万9,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 4万3,000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3,000円に1億円から超過額5,000万円ごとに1万3,000円を加算 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5,000円に3億円から超過額5,000万円ごとに1万1,000円を加算 |
10億円を超える場合 | 24万9,000円に10億円から超過額5,000万円ごとに8,000円を加算 |
※ 全体の財産が1億円以下のときは、上記表の手数料額に1万1,000円が加算されます(遺言加算)
※ 遺言公正証書のうち、遺言者に交付される正本と謄本は枚数1枚につき250円の手数料が加算されます
※ 遺言公正証書の作成において遺言者が公証役場に赴くことができず、公証人が遺言者宅や病院、施設を訪問した場合、その交通費と日当が手数料に加算されます
出典:Q7.公正証書遺言の作成手数料は、どれくらいですか? | 日本公証人連合会
公正証書遺言作成のための必要書類
公正証書遺言の作成には、以下のような書類が必要となります。
基本的に必要な書類
- 3ヶ月以内に発行された遺言者本人の印鑑登録証明書
- 代わりに運転免許証、マイナンバーカード、パスポート等の官公署発行の顔写真付き身分証明書を遺言者の本人確認資料とすることも可能
- 遺言者と推定相続人との続柄がわかる戸籍謄本や除籍謄本
- 不動産の相続の場合は、登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書または固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書
- 預貯金等の相続の場合は、預貯金通帳またはそのコピー
法定相続人以外に財産を渡す場合の書類
- その人の住民票や郵便物などの住所記載があるもの
- 法人の場合は登記事項証明書または代表者事項証明書(登記簿謄本)
遺言者が証人2名を用意する場合
- 証人予定者の氏名、住所、生年月日、職業を記したメモ
参考:Q3.公正証書遺言をするには、どのような資料を準備すればよいでしょうか? | 日本公証人連合会
遺言書をつくりたい!相談先を紹介
「遺す家族に相続でもめてほしくない」
「きちんと効力のある遺言書をつくりたい」
「土地や建物をいくつも所有していて、相続がスムーズにできるか不安」
ここまで、遺言書作りについて解説してきましたが、遺言書を自分だけで作ることは難しいものです。
どんな内容にすればいいか想像がつかない、という方もいるのではないでしょうか。
このようなことで悩んでいるなら、司法書士、弁護士、行政書士といった専門家に相談してみるのも手です。
それぞれの専門家の特徴と、選び方のポイントを紹介します。
司法書士
司法書士は、法律事務の専門家です。
こんな人は司法書士への相談が適しているといえます。
相談に適した人
- 土地や建物などを所有している人
- 遺言執行者を専門家に依頼したいと思っている人
- 相続についていろいろ悩んでいる人
司法書士は相続登記や各種相続手続きを代行でき、遺言書作成についてもサポートしてもらうことができます。
登記手続きは司法書士の専門業務なので、特に遺産に不動産が含まれている場合は、司法書士のアドバイスは効果的でしょう。
司法書士への相談を検討されたら、司法書士法人みつ葉グループへのご相談をご検討ください。
当グループは、相続に関する問い合わせ・相談実積5,000件以上の司法書士事務所です。
遺言書の作成コンサルティング(遺言書の作成支援、公証役場の手配、証人のお引き受け)をご依頼いただく場合の費用目安は22万円(税込)〜となっております。
24時間・365日受付中の無料相談で、お見積もりも可能です。
まずはお気軽にご相談ください。
一人ひとりに合わせた相続のお手伝いができます
相談するメリット
- 相談は何度でも無料
- 手続きまるっと依頼可能
- オンライン完結可能
- 相談・お問い合わせ実績5,000件以上
弁護士
弁護士は法律全般の専門家であり、相続に関しても幅広い知識で対応します。
こんな人が弁護士への相談に適しているでしょう。
相談に適した人
- 複雑な事情があり、遺言書の内容がまとまらない
- 相続人どうしのトラブルが予想される
- 遺言執行者を専門家に依頼したいと思っている
- 相続全般について相談したい
遺産分割協議で相続人どうしがもめないよう遺言書の作成をサポートしたり、遺言執行者としてスムーズに遺言内容を実現したりすることは、弁護士には適任の業務といえるでしょう。
ただし、遺言書作成の依頼費用が高くなる傾向はあります。
行政書士
行政書士は、書類作成の専門家です。
こんな人は行政書士への相談をおすすめします。
相談に適した人
- 相続人どうしのトラブルはなさそう
- 専門家に支払う費用を抑えたい
- 遺言執行者を専門家に依頼したいと思っている
遺言書の作成サポートや遺産分割協議書の作成は、行政書士の専門分野といえます。
また、他の専門家と比較すると、依頼費用が安い傾向にあります。
ただし、登記手続きや代理交渉は業務ではないため、不動産の分割が必要な場合や、相続トラブルが予想される場合の遺言書作成には対応しきれない可能性もあります。