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相続登記

実家の相続が発生したときの選択肢は5つ!登記手続きや相続税について解説

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実家の相続が発生したときの選択肢は、以下の5つです。

  1. 自分や親族が住む

  2. 賃貸物件にする

  3. 売却する

  4. 土地活用する

  5. 相続放棄する

1〜4の場合、相続税、登録免許税、譲渡所得税や印紙税(3の場合)などがかかります。

一方、5の相続放棄を選択する場合、こうした税金の支払いや登記手続きは不要ですが、他の財産も相続できなくなります。

実家に誰かが住むのであれば1、誰も住まないが資産価値がある場合は2〜4、誰も住まず、資産価値もないようであれば5を検討するといいでしょう。

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実家の相続が発生したときの選択肢5つ

実家の相続が発生したときの選択肢は次の5つです。

  • 自分や親族が住む
  • 賃貸物件にする
  • 売却する
  • 土地活用する
  • 相続放棄する

この5つから、家の状態、親族の事情、経済状態によって選ぶといいでしょう。

選択肢、家などの状況、必要な手続きについて、一覧にまとめました。

選択肢 親族・家などの状況 必要な手続き
自分や親族が住む ・実家に住んでいる、住む予定の親族がいる 相続登記
(限定承認*)
賃貸物件にする ・実家に住んでいる、住む予定の親族がいない
・家はそのまま住める状態(大規模修繕が必要ない)
・初期投資が可能
売却する ・実家に住んでいる、住む予定の親族がいない
・家・土地に資産価値がある
・まとまった現金が欲しい
土地活用する ・実家に住んでいる、住む予定の親族がいない
・実家の立地条件が活用に適している
・初期投資が可能
相続放棄する ・実家に住んでいる、住む予定の親族がいない
・家・土地に資産価値がない
・他に被相続人の資産がない、もしくは負債がある
相続放棄

*限定承認は、被相続人の家や資産を相続したいが、相続したくない負債もある場合などに選択肢となります(詳しくは後述

次に、それぞれの選択肢について詳しく解説します。

相続については、以下の記事で詳しく解説しています。

自分や親族が住む

適したケースの例

  • 実家に住んでいる相続人がいる
  • 実家に移り住みたい相続人がいる
  • 相続人が複数いるが、家以外の相続財産もある
  • 相続人どうしの仲が良好で、話し合いやすい状態にある

被相続人名義の家に自分が住んでいる場合、そのまま住み続けるのが第一の選択肢です。

また、たとえば
子どもが生まれたから広い家に引っ越したい
という親族がいる場合なども、実家を利用するのは有効な手だといえるでしょう。

誰かが住み続ければ、住宅用地の特例措置の適用も継続されるため、固定資産税も軽減されます(軽減制度については後述)。

ただし、相続人が複数いる場合は注意が必要です。

1人の相続人が家に住む場合、そのきょうだいなど、他の相続人が相続の分割内容に不公平感を抱き、トラブルになる可能性があるからです。

こうした場合、現物分割代償分割といった方法を検討しましょう。

現物分割・代償分割とは

現物分割
特定の遺産を特定の相続人が相続する方法。
たとえば、家は配偶者、預貯金は長男、車は次男というように相続します。

代償分割
特定の相続人が家などの財産を取得し、それ以外の相続人に、相続分に見合う代償金を支払う分割方法。
たとえば、長男が5,000万円の家を相続し、次男に相続される遺産がない場合、法定相続分は均等配分で1人2,500万円となります。
よって、代償金として、長男が次男に2,500万円を払います。

賃貸物件にする

適したケースの例

  • 相続人が近くに住んでいる
  • 相続人に多少の金銭的・時間的な余裕があり、税務処理などに抵抗がない

実家に居住中の親族、あるいはこれから住む予定の親族がいない場合で、大規模修繕をしなくても住める状態なら、賃貸物件にするのも選択肢となります。

家賃収入を得られるメリットがあり、空き家になって家が急に劣化する心配もありません。

注意したいのは、そもそも家が賃貸に適しているかどうか見極める必要があること。

  • 築年数
  • 立地条件、賃貸の需要
  • 最低限の修繕費用

といった点から、賃貸物件にするのが最良の選択肢かを判断しましょう。

また、賃貸物件にするためには、大規模な修繕は不要でも、最低限のリフォームのための費用は必要です。

借り手が決まるまで時間がかかる可能性があるほか、貸主としての家の管理や家賃収入の税務処理の手間もかかるため、ある程度の時間をかけられない場合は難しいかもしれません。

売却する

適したケースの例

  • 相続人が実家から遠いところに住んでいる
  • 相続人に金銭的余裕があまりない
  • 遺産は実家しかないが、相続人が多く、分け方でもめそう

実家に居住中の親族、あるいはこれから住む予定の親族がおらず、このまま実家を手放してもいいなら、売却という選択肢があります。

売却には、まとまった現金が得られるというメリットがあります。

現金化できれば相続人どうしで分割しやすいため、もめる可能性も低いでしょう。

注意点は、家や土地に資産価値がないと、売却できない可能性があること。

また、実家売却時の価格が相続税や譲渡税、印紙税の合計より安くなるような場合、経済的な負担が出てしまいます(税金額については後述)。

家・土地に資産価値が見込めないうえ、ほかに相続できるものがない場合、相続放棄を検討してもいいでしょう(相続放棄については後述)。

すでに相続した土地がどうしても売れない場合、国が土地を引き取る「相続土地国庫帰属制度」もあります。

しかし、この制度には

  • 建物がある状態では引き取ってもらえない
  • 負担金として、10年分の土地管理費用相当額を納付する

などの要件が設定されています。

現実的には、利用するハードルは高いかもしれません。

参考:法務省:相続土地国庫帰属制度の概要

土地活用する

​​適したケースの例

  • 相続人が実家の近くに住んでいる
  • 相続人に金銭的・時間的な余裕があり、税務処理などに抵抗がない

実家に居住中、あるいはこれから住む予定の親族がいない場合、実家を取り壊し、土地を活用するという選択肢があります。

土地活用の例は、以下のとおりです。

  • 駐車場を運営する
  • アパートやマンションを建設して貸し出す
  • 資材置き場として貸し出す
  • トランクルームを建設して貸し出す

注意点として、以下の点をしっかりと見極めないと、赤字になってしまう可能性がある点があげられます。

  • 立地条件が各活用法に適しているか
  • 初期費用を支出できるか、その後回収できるか

また、土地活用をする場合、活用後の施設や収入などの管理をする必要があるため、知見がゼロの状態で、遠方に住んでいると管理に不安があるかもしれません。

相続した本人がある程度時間を使って知識をつけ、近隣で管理ができる状態が望ましいといえます。

また、一度更地にしてしまうと、固定資産税・都市計画税の納税額が増える点にも注意しましょう(詳しくは後述)。

相続放棄する

適したケースの例

  • 相続人が被相続人と疎遠で、家も不要
  • 家や土地に資産価値がほとんどなく、被相続人の財産もない
  • 被相続人が多額の借金を遺して亡くなった

次のような条件がそろっている場合は、相続放棄も選択肢になります。

  • 実家に居住中、あるいはこれから住む予定の親族がいない
  • 家や土地に資産価値がない
  • 他に被相続人の資産がない、もしくは負債がある

相続放棄とは、家や土地、預金などのプラスの財産と、借金などマイナスの財産のすべてを放棄する手続きです。

家を引き継ぐことも、親の借金を返済する義務もなくなります

注意点は、相続放棄をする場合、相続を知って3ヶ月以内に申立てをしなくてはいけないということです(詳しくは後述)。

また、財産に手をつけてしまうと相続放棄の手続きができない可能性もあります。

なお、相続発生時に実家に住んでいた場合、相続放棄後も家の管理義務が発生する可能性があるので注意しましょう(民法940条)。

相続放棄については、以下の記事で詳しく解説しています。

実家の相続が発生したときの手続きの流れと期限

実家の相続が発生した場合、さまざまな手続きが発生し、それぞれに期限があります。

スムーズに進むよう、手続きの流れを把握しておきましょう。

実家の相続手続きの流れと期限

実家の相続手続きについて、ステップごとに解説します。

【1ヶ月以内】遺言書の有無を確認

実家を相続することになったら、まずは遺言書の有無を確認します。

1ヶ月以内を目安に、できるだけ早めに探すといいでしょう。

理由は、遺言書があった場合、それに基づいて遺産を分割するためです。

遺言書があれば、そのとおりに遺産分割すればよいので、基本的に遺産分割協議書の作成は不要になります。

遺産分割協議書とは

被相続人の財産をどう分けるか、相続人どうしが話し合った(遺産分割協議)結果をまとめた書類。

遺言書の探し方には、3通りあります。

  • 自宅の遺品の中から探す
  • 法務局で遺言書情報証明書の交付請求をする
  • 公証役場で遺言検索システムを利用する

なお、遺言書が自宅の遺品などから見つかった場合、家庭裁判所で相続人の立ち会いのもと開封を行います。これを検認といいます。

検認前に遺言書の封を開けると法律違反となり、5万円以下の過料(罰金)が科される場合があります。

【2ヶ月以内】相続人の確定

遺言書がなかった場合、財産を相続するのは、基本的に民法で定められた法定相続人です。

そこで、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得して、被相続人の家族関係を読み取り、法定相続人を確定させます。

法定相続人の範囲と順位は、次の図のとおりです。

法定相続人の範囲と順位

相続発生を知った日から2ヶ月以内を目安に、早めに確認を済ませましょう。

戸籍謄本の取り方

2024年(令和6年)3月1日から、本人および、配偶者・両親・祖父母・子・孫の戸籍謄本であれば最寄りの市区町村の役所の窓口で、まとめて取得できるようになりました。

これが「戸籍謄本等の広域交付制度」で、窓口で本人が請求する場合のみ利用できます。

請求の際には、最寄りの役所に次のものを持参します(郵送不可)。

  • 顔写真付きの本人確認書類(免許証・マイナンバーカードなど)
  • 印鑑(認め印可)
  • 手数料 1通450円(除籍謄本、改製原戸籍謄本は1通750円)

【2ヶ月以内】相続財産の調査

次に、被相続人の財産(相続財産)を調査します。

相続人の確定と同様、2ヶ月を目安に終わらせましょう。

相続財産には、

  • プラスの価値があるもの(預貯金、不動産など)
  • マイナスの価値があるもの(借金など)

の両方があります。

多額の借金がある場合は、財産を引き継がないという選択肢もあります。

財産の調査方法は次のとおりです。

  • 遺言書を確認する
    財産目録がついていれば参考にできます(遺言書の探し方は前述)。ただし、すべての財産が記載されているとは限らないため、他の調査もあわせて行いましょう
  • 残高証明書や取引明細を確認する
    銀行窓口に、法定相続人であることを証明できる戸籍謄本などを持参し、預貯金の総額や引き落とし履歴などを確認します
  • 信用情報機関に情報開示請求を行う
    信用情報機関は、クレジットやローンなどの利用状況を記録・管理している機関。相続人は、信用情報機関に対して信用情報開示請求を行い、被相続人に借金があったかどうかを調べることができます

【3ヶ月以内】相続放棄や限定承認の選択

遺産調査を行った結果、相続財産に借金などの負債があることが判明した場合、

  • 相続放棄
  • 限定承認

が選択肢になります。

  • 相続放棄とは
    相続が発生した場合に、被相続人の財産や負債などの承継を拒否することです。
    借金などマイナスの遺産を含め、何一つ受け継ぐ必要はありません。
  • 限定承認とは
    プラスの財産を限度に、マイナスの財産を引き継ぐことです。
    たとえば、遺産に「評価額300万円の家(プラスの財産)」と、「借金1,000万円(マイナスの財産)」がある場合、家を手元に残し、プラスの財産の300万円分を限度に借金を返済するのが限定承認です。
    借金残額700万円は、相続されません。

相続放棄や限定承認は、相続を知ってから3ヶ月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で申述を行います。

期間内に手続きを行わないと、単純承認(財産のすべてを引き継ぐこと)したと見なされるので注意が必要です。

調査などに時間がかかり、3ヶ月で終わらせることができない場合、期間伸長の申立をしましょう。3〜6ヶ月間程度、延長可能になります。

相続放棄の期限

相続人一人で手続きできる?

相続放棄は相続人一人の判断で行えます。

なお、遺言書に「〇〇(特定の人)に遺産を承継させる」と書かれていた場合でも、本人の判断で相続放棄が可能です。

これに対して、限定承認は相続人全員の同意を得る必要があります

同意を得られないと、手続きそのものができません。

相続放棄手続きの期間(期限)については、以下の記事で詳しく解説しています。

【4ヶ月以内】準確定申告

準確定申告とは、被相続人に所得があった場合に行う確定申告です。

以下のような場合、相続開始を知ってから4ヶ月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署に申告しなくてはいけません。

準確定申告が必要な場合の例

  • 被相続人に事業所得、不動産所得があった
  • 被相続人に2,000万円を超える給与所得があった
  • 被相続人が2ヶ所以上から給与所得を得ていた
  • 被相続人の年金受給額が400万円を超えていた
  • 被相続人の副収入が20万円を超えていた
  • 被相続人が土地や建物を売却していた

申告義務があるにもかかわらず、申告期限が過ぎても放置したままにしておくと、無申告加算税、延滞税が発生します。

被相続人が亡くなったら、準確定申告が必要かどうかも、早めに確認しましょう。

なお、準確定申告が不要でも、次のような場合は、申告することで還付を受けられます。

  • 医療費控除、配偶者控除、生命保険控除などを受ける場合
  • 年末調整が行われていない場合

参考:国税庁:納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)

【10ヶ月以内】遺産分割協議書の作成

以下のような場合、相続税の申告期限である10ヶ月以内に、遺産分割協議書を作成しなくてはいけません。

  • 有効な遺言書がない
  • 相続人が複数いる

こうした場合に、相続人全員で遺産の分割方法や割合を話し合うのが遺産分割協議で、遺産分割協議で合意した内容を記したものが遺産分割協議書です。

遺産分割協議書は相続人全員の合意を証明するもので、相続税の申告や相続登記などの手続きの際に使用します。

そのため、相続税の申告・納付期限である10ヶ月以内に用意します(用意が難しい場合の対処は後述)。

遺産分割協議書に記載する内容

  • 被相続人の氏名、最後の住所、本籍地
  • 遺産分割の経緯、概要
  • 不動産などの分割内容(※)
  • 他の遺産が後から見つかった場合のための補足事項
  • 遺産分割協議が成立した旨
  • 全相続人の署名、実印での押印

※相続登記だけに使う遺産分割協議書なら、不動産のみの記載で問題ありません。

特に決まった書式はなく、上記の内容が書かれていれば問題ありません。

遺産分割協議書

相続財産に不動産がある場合の遺産分割協議書については、以下の記事で詳しく解説しています。

【10ヶ月以内】相続税申告と納付

相続が発生した場合、相続開始を知った日から10ヶ月以内に、相続税申告と納付を行わなければいけません。

申告先は、被相続人の住所地を所轄する税務署です。

期限を過ぎると、延滞税、無申告加算税が発生します。

相続税の計算方法は後述します

期限内に遺産分割協議が終わらなかった場合

いったん法定相続分にのっとって遺産分割し、財産を得たものとして、相続税の申告、納税を行います。

後に遺産分割協議を行い、

  • 協議で決まった割合に基づいて計算した税額
  • 当初申告した税額

これらが異なる場合は、実際に分割した財産の額に基づいて修正申告(税金を少なく申告していた場合)、または更正申告(税金が過大な場合)を行います。

【3年以内】相続登記(名義変更)

家や土地などの不動産の所有者が亡くなった場合、3年以内に相続登記が必要です。

相続登記は、被相続人が所有していた不動産の名義を、新しい所有者(相続人)の名義に変える法的手続きです。

2024年4月の法改正で義務化され、3年以内に行わないと、10万円以内の過料(罰金)が科される可能性があります。

相続登記は不動産を管轄する法務局(登記所)が申告先で、以下の3つの方法で申請可能です。

  • 窓口に必要書類を提出する
  • 郵送で必要書類を提出する
  • 法務局の「登記・供託オンライン申請システム」でオンライン申請をする

なお、相続登記のためには、登録免許税の計算など複雑な過程が発生します(計算方法は後述)。

自分で相続手続きを行うと想像以上に手間がかかり、手続きが長引くことも多いようです。

司法書士など、相続の専門家に依頼するのも一つの方法です。

相続登記については以下の記事で詳しく解説しています。

実家の相続時にかかる税金はいくら?計算方法を紹介

実家を相続した際にかかる税金は、相続税と登録免許税の2つです。

また、売却時には、譲渡所得税と印紙税もかかります。

ここでは、基本的な計算方法や金額などを紹介します。

相続税

相続が発生した際にかかるのが相続税です。

相続税は、実家を含む遺産の総額を求めたうえで、基礎控除額を差し引いて算出します。

遺産総額は実家、土地などの不動産のほか、現金、預貯金、有価証券、貴金属、車、死亡保険金、借金、未払い金など、プラスとマイナスの財産を合算した額です。

なお、遺産の総額を求める際、土地や家については、売値ではなく相続税評価額で計算します。

それぞれの評価額の決め方と、相続税の計算例を解説します。

実家の土地の評価額

実家がある土地の評価額の算出方法には、路線価方式と、倍率方式の2つがあります。

路線価が決まっている土地には路線価が使われ、路線価のない場所では、倍率方式を使用します。

具体的な評価額は、国税庁のホームページから確認できます。

参考:財産評価基準書

路線価方式

路線価とは、公道につけられた値段。

路線価方式は「対象の土地が接している道路の路線価」に奥行価格補正率(※)と面積を乗じて、土地の相続税評価額を算出する方式です。

国税庁が出している路線価図には、1㎡あたりの価額が千円単位で、借地権割合がA〜Gで表示されています(下図参照)。

たとえば「630C」と書かれている場合、1㎡あたりの路線価が63万円、借地権は70%であることがわかります。

※ 宅地の奥行きに応じて定められた率。奥行が極端に短い場合・長い場合は、利用しにくく用途も限られるため「奥行価格補正率」は大きくなります

参考:奥行価格補正率表(昭45直資3-13・平3課評2-4外・平18課評2-27外改正) |国税庁

路線価図

出典:令和5年分 財産評価基準書 57046 - 路線価図

倍率方式

固定資産評価証明書に記載されている固定資産税評価額の金額に、国税庁で定められている「倍率」を乗じて、土地の相続税評価額を算出する方式です。

国税庁の出している評価倍率表には、固定資産税評価額に乗じる倍率などが書かれています。

この倍率と、固定資産税評価額から算出します。

倍率表

出典:令和5年分 財産評価基準書 立川市 - 評価倍率表

実家の建物の評価額

家屋の相続税評価額は、固定資産評価証明書に記載されている固定資産税評価額です。

不動産のある市町村役場の窓口で取得できる「固定資産評価証明書」や、毎年4〜6月に市役所などから所有者に送付される「固定資産税納税通知書」でも調べることができます。

固定資産評価証明書

相続税の計算例

以下の場合の相続税の計算例を見てみましょう。

相続財産

  • 実家(家屋、土地をあわせた評価額):5,000万円
  • 預貯金:2,000万円
  • 借金:500万円

法定相続人

  • 配偶者
  • 子ども2人

相続財産の分け方

  • 法定相続(配偶者2分の1、子ども4分の1ずつ)

計算例
相続税は、相続財産の総額を求めたうえで基礎控除額を差し引き、相続人一人分ごとに税率をかけて算出します。

  • 相続財産の総額
    5,000万円+2,000万円-500万円=6,500万円
  • 相続税の基礎控除額:3,000万円+(法定相続人の数×600万円)
    3,000万円+(3人×600万円)=4,800万円
  • 課税財産総額:遺産総額−基礎控除額
    6,500万円-4,800万円=1,700万円

なお、遺産総額が4,800万円以下なら、相続税は課税されません。また相続税を申告する必要はありません。

  • 一人ずつの相続財産額
    配偶者:1,700万円×1/2=850万円
    子ども1:1,700万円×1/4=425万円
    子ども2:1,700万円×1/4=425万円
  • 一人ずつの税率と控除額を出す(相続税の速算表より)
    全員取得金額1,000万円以下:税率10%、控除額なし
  • 一人ずつの相続税を算出する
    配偶者の相続税:850万円×10%=85万円
    子ども1の相続税:425万円×10%=42.5万円
    子ども2の相続税:425万円×10%=42.5万円

ただし配偶者は、相続税の配偶者控除があり、相続財産の金額が1億6,000万円までなら相続税が課されません。

つまり、納付額は、配偶者が0円、子ども2人がそれぞれ42.5万円ずつとなります。

相続税の速算表

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超から3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超から5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超から1億円以下 30% 700万円
1億円超から2億円以下 40% 1,700万円
2億円超から3億円以下 45% 2,700万円
3億円超から6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

出典:No.4155 相続税の税率|国税庁

上の例は法定相続分どおりの相続での算出でしたが、相続遺産分割協議を行った場合は、協議で決定した割合に従って算出します。

登録免許税

実家の名義を被相続人から相続人に変更する際にかかるのが、登録免許税です。相続登記時に納付します。

計算式と計算手順は以下のとおりです。

登録免許税の計算方法

計算手順

  1. 固定資産税などの「課税証明書」か、「固定資産評価証明書」の価額の部分を確認する

  2. 1で確認した固定資産税評価額に共有持分をかける

  3. 2の額から1,000円未満を切り捨て、課税標準額を計算する

  4. 課税価格に税率(法定相続人の相続の場合は0.4%)をかけ、100円未満を切り捨てる

土地の共有持分の数値が細かいマンションや、固定資産税評価額がない私道は、計算が複雑になります。

司法書士などの専門家に、登記手続きごと依頼するのも一つの方法です。

登録免許税については、以下の記事で詳しく解説しています。

参考:登録免許税|前橋地方法務局

譲渡所得税

譲渡所得税とは、相続した実家を売却する際の利益に対してかかる所得税と住民税です。

所得税は売却をした翌年の2月16日~3月15日に確定申告をして納付します。

住民税は売却をした翌年度の6月以降に支払います。

譲渡所得税は、下記の計算式で算出した課税譲渡所得金額に、決まった税率をかけて計算します。

課税譲渡所得金額

収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額(最大3,000万円)

取得費と譲渡費用とは
  • 取得費:土地、建物の購入代金、仲介手数料、登録免許税、登記費用など
  • 譲渡費用:仲介手数料、登記費用、建物の取り壊し費用など

税率は所有期間によって変わります。

所有期間 税率
短期譲渡所得(譲渡した年の1月1日時点で5年以下) 39.63%
(所得税30.63%+住民税9%)
長期譲渡所得(譲渡した年の1月1日時点で5年を超える) 20.315%
(所得税15.315%+住民税5%)

所有期間は、被相続人が家や土地を取得した日から引き続き所有していた期間です。

なお、課税譲渡所得金額を算出する際、相続税額の一定の金額を取得費に加算できる特例があり、譲渡所得にかかる税金が軽減できます(詳しくは後述)。

印紙税

印紙税は、相続した不動産の売買契約時に支払う税金です。

税額は次のように決まっています。

契約金額 軽減税額
(令和6年3月31日まで)
本則税額
(令和6年4月1日以降)
1万円未満 0円(非課税) 0円(非課税)
10万円以下 200円 200円
10万円を超え50万円以下 200円 400円
50万円を超え100万円以下 500円 1,000円
100万円を超え500万円以下 1,000円 2,000円
500万円を超え1,000万円以下 5,000円 1万円
1,000万円を超え5,000万円以下 1万円 2万円
5,000万円を超え1億円以下 3万円 6万円
1億円を超え5億円以下 6万円 10万円
5億円を超え10億円以下 16万円 20万円

出典:「不動産譲渡契約書」及び「建設工事請負契約書」の 印紙税の軽減措置の延長につい手|国税庁

実家の相続時に知っておきたい税金軽減制度

実家の相続には相続税と登録免許税が、また売却時には譲渡所得税と印紙税が発生します。

納税の負担を軽減する制度として、相続税の配偶者控除や、相続税の負担を軽減できる小規模宅地等の特例、また売却時には相続空き家の3,000万円特別控除などがあります。

上手に活用しましょう。

ここでは、税金のさまざまな軽減制度について解説します。

相続税の配偶者控除

被相続人の配偶者は、相続税の配偶者控除を受けられます。

相続財産の金額が1億6,000万円までなら、相続税は課税されないというものです。

また、1億6,000万円を超えても、法定相続分に相当する額であれば課税されません。

たとえば、配偶者と子ども1人が相続人で、相続財産の金額が10億円だった場合、配偶者の法定相続分は2分の1なので、5億円になります。

1億6,000万円は超えますが、法定相続分なので配偶者には相続税が課税されないということです。

ただし、課税されない場合でも、配偶者の確定申告は必要です。

参考:No.4158 配偶者の税額の軽減|国税庁

小規模宅地等の特例

相続した土地にかかる相続税の負担を軽減するために設けられた制度です。

要件を満たす場合、相続税を計算する際の土地の評価額を、最大で80%抑えることができます

特例が適用されるのは、次のような土地です。

  • 特定居住用宅地等:自宅として使っていた土地
  • 特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等:事業用に使っていた土地
  • 貸付事業用宅地等:貸していた土地

減額される割合は、自宅として使っていた土地の場合80%、また、特例が適用される限度面積は、自宅として使っていた土地の場合330㎡です(※)。

小規模宅地等の特例の対象になるための要件は複雑です。

手続きに迷ったら、税理士など専門家の力を借りるのもいいでしょう。

参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

※ 330㎡を超える土地については、330㎡までは特例を適用した評価額、330㎡を超える部分は、路線価方式や倍率方式での評価額の合計額で計算します。

相続空き家の3,000万円特別控除

空き家を相続して売却した場合は、譲渡所得の特別控除があります。

相続開始日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ2027(令和9)年12月31日までに売却し、以下のような要件に当てはまる場合、譲渡して得られた利益から最高3,000万円(※)が控除されます

※令和6年1月1日以降に行う譲渡で、被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は2,000万円までとなります。

相続した家屋のおもな要件

  • 被相続人が一人で暮らしていた
  • 昭和56年5月31日以前に建築されていた建物である
  • 相続から譲渡されるまでの間、引き続き空き家であった

譲渡する際のおもな要件

  • 譲渡対価の額の合計額が1億円以下であること
  • 相続人が家屋を譲渡時までに取り壊して売却するか、耐震リフォームをして耐震基準を満たした家屋であること

相続した家屋の要件も、譲渡の際の要件も細かく定められています。

相続した空き家が当てはまるかどうか判断に迷う場合は、司法書士や税理士など専門家の力を借りるのもいいでしょう。

参考:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁

取得費加算の特例

取得費加算の特例とは、相続した財産を売却した場合の譲渡所得にかかる税金が軽減できる制度です。

以下の式のとおり、譲渡所得を計算する際に、相続税額の一定の金額を取得費に加算できます。

課税譲渡所得金額=収入金額−(取得費+一定の相続税額+譲渡費用)−特別控除額

この特例は、相続税を納めている場合で、相続税の申告期限の翌日以後、3年を経過する日までに譲渡した場合に利用できます。

参考:No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁

実家の相続で注意すべきポイント

実家を相続する場合に避けておきたいポイントは3つあります。

  • 取り急ぎ名義変更してしまうこと
  • 他の相続人と共有名義にすること
  • 空き家のまま長く放置すること

これら3点を避けるべき理由について、解説します。

「取り急ぎ名義変更だけ」は避ける

実家の相続にあたってまず避けたいのは「名義変更だけでも先に」と慌てて進めてしまうこと。

以下のようなリスクが生じるためです。

  • 相続放棄手続きができなくなる
    被相続人名義の家を相続人の名義にした時点で、単純承認(すべての財産を引き継ぐ)したと見なされ、相続放棄の手続きができなくなります。
    後から被相続人の借金などの負債が見つかった場合、嫌でも相続しなくてはいけません
  • 税額が上がる
    名義変更したものの空き家のままで放置した場合、固定資産税の特例が適用されなくなります(詳しくは後述)。
  • その後の処分が面倒になる
    「とりあえず」で名義変更を先に行おうとすると、多くの場合、法定相続分で登記をすることになります。
    相続人が複数いる場合、家は複数人で共有している状態となり、売却の際などに思わぬトラブルが生じることも少なくありません(詳しくは後述)。

遺産の調査や、実家の活用方法の確認・検討を行い、誰が相続するかを決めたうえで、名義変更(相続登記)手続きを進めるといいでしょう。

共有名義はトラブルの原因に

不動産の共有名義はトラブルのもとになるため、基本的には避けた方が無難です。

共有名義の不動産は、売却時などに全員の同意が必要になるため、売買契約を結べそうになった矢先、相続人のうち一人の気分が変わって頓挫するようなケースも見受けられます。

また、共有している誰かが亡くなった場合、亡くなった人の持ち分は、その人の相続人が相続することになります。

不動産の相続権がある人(家系図)

共有名義のまま相続人が亡くなり、その子や孫に財産として引き継がれていくと、以下の図のように、不動産を共有する人が増えていきます。

将来的には顔を見たこともない相続人が増え、誰が相続人か把握できなくなる可能性もあります。

配偶者と未成年の子どもが相続人になるような場合を除き、不動産を共有名義にするのは避けましょう。

なお、遺産分割協議をせず、法定相続で相続すると共有名義になってしまいます。

法定相続は、相続の割合が公平に定められているので不満が生じにくい一方、共有名義になると上記のようなトラブルが考えられることを頭に入れておきましょう。

空き家のまま長期にわたって放置しない

相続した実家は、空き家のままで長期間放置しないようにしましょう。

その理由には、次の2点があります。

  • 犯罪や事故現場になるリスクがある
    空き家は、倒壊や放火される危険性、不審者が出入りするなどのリスクが考えられます。
    空き家で事故や事件が発生した場合、管理責任が問われて損害賠償請求を受ける可能性もあります。
  • 税金が上がる可能性がある
    住宅の敷地となっている土地(住宅用地)は、そもそも特例措置によって固定資産税・都市計画税が軽減されています。
    しかし、特定空家に指定されると、住宅用地の特例から除外されて、これらの税額が上がる可能性があります。
特定空家とは
全国で放置空き家が増加し、問題視される中で成立した法律「空家等対策特別措置法」により、
  • そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  • 周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
と認められる空き家のこと。

特定空家は、各市町村が行う空き家の実態調査により認定されます。

また、住宅用地の特例措置により、固定資産税・都市計画税は次のように軽減されています。

区分 固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地
(住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分)
価格×6分の1 価格×3分の1
一般住宅用地
(小規模住宅用地以外の住宅用地)
価格×3分の1 価格×3分の2

特定空家に認定されると、特例措置がなくなり、土地は「非住宅用地(商業地等)」として課税されます(※)。

また、行政から状態の改善を求める連絡を再三にわたって受けることになります。わずらわしさを感じることもあるでしょう。

最終的に「行政代執行」の対象となれば、特定空家は行政によって解体され、持ち主は解体費用の支払いを求められます

※ ただし、小規模住宅用地の固定資産税を例にした場合、税額が単純に6倍されるわけではありません。非住宅用地の標準課税額は、そもそも負担調整措置によって、固定資産税評価額の70%(東京23区などは65%)に軽減されています。この固定資産税評価額に税率1.4%をかけたものが、固定資産税となります。

参考:空家等対策の推進に関する特別措置法 | e-Gov法令検索固定資産税・都市計画税(土地・家屋) | 税金の種類 | 東京都主税局

解体する場合は活用方法を決めてから

空き家を放置するのも問題ですが、だからといって、無計画に解体して更地にすると、固定資産税・都市計画税が上がる可能性があります。

前述したとおり、住宅地には固定資産税・都市計画税の軽減措置があります。

しかし、建物がなくなり更地になると、軽減措置は適用されません。

家を取り壊すと、納税額が高くなってしまうのです。

経済的損失を抑えるためにも、解体は、土地に見合った活用方法を決めてからの方がいいでしょう(具体的な方法については前述)。

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この記事の監修者
宮城 誠
司法書士会所属
東京司法書士会 第8897号 、簡裁認定司法書士番号 第1229026号
経歴
2011年九州大学経済学部卒業。2012年司法書士試験合格。
大手司法書士事務所で約6年経験を積み、2018年みつ葉グループ入社。
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