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相続放棄

相続放棄のメリット・デメリットは?資産がある場合は限定承認という選択肢も

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相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)の財産をすべて放棄することです。

財産には、借金や買掛金といった負債も含まれます。

相続放棄をすれば負債や、不要な家、土地を手放すことができ、相続トラブルに巻き込まれることもありません。これは大きなメリットといえるでしょう。

ただしデメリットとして、以下のような点が挙げられます。

相続放棄のデメリット

  • 預貯金など、プラスの財産も手放さなくてはいけない
  • 申述後は撤回できないため、後から財産が見つかっても引き継げない
  • 死亡保険金や死亡退職金は受け取れるが、非課税枠が使えない
  • 財産を一部でも処分すると手続きができない

亡くなった方に負債と資産の両方があった場合、限定承認という方法も選択肢になるかもしれません。

これは、負債を上限付きで引き継ぎ、プラスの財産も相続できるというものです。

しかし限定承認には、手続きの煩雑さや税金面でのデメリットが想定されます。

相続の方法や進め方に迷われたら、相続問題の解決実績豊富な司法書士や弁護士への相談が有効かもしれません。

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相続放棄のメリット

相続放棄とは、被相続人の遺産相続を放棄することです。

相続人となった人は、そのことを知ってから3ヶ月の間に相続放棄するかを決め、家庭裁判所に申し立てなくてはいけません。

相続放棄をすると、以下のようなメリットがあります。

相続放棄のメリット

相続の方法とその決定

相続人となった人は、「熟慮期間」の間に以下のどの相続の方法をとるかを判断し、必要な手続きを行います。

  • 相続放棄:すべての相続財産を引き継がない。後からプラスの財産が見つかると損をする場合がある
  • 単純承認:すべての相続財産を引き継ぐ。プラスの財産だけでなく負債の返済義務まで限度なく負う
  • 限定承認:相続したプラスの財産を限度に、マイナスの財産を相続する。負債の返済義務に限度が設けられる

熟慮期間は、相続人になったことを知ってから3ヶ月と決められています。

相続放棄や限定承認を行う場合、必要書類を集め、家庭裁判所に申述するまでを上記期間中に済ませなくてはいけません。

メリットについてそれぞれ見ていきましょう。

相続放棄については、以下の記事で詳しく解説します。

負債を相続せずに済む

相続放棄の最も大きなメリットは、負債を相続せずに済むという点です。

負債とは、借金など、価値がマイナスの財産のこと。

相続放棄をすれば、以下のようなものの支払い・返済義務を引き継ぐ必要がなくなります。

負債の例

  • ローン
  • 借入金
  • 遅延損害金(※1)・延滞金
  • 連帯保証債務・保証債務(※2)
  • 損害賠償債務(※3)
  • 滞納している税金、各種保険料、水道光熱費、家賃、携帯料金など

※1 借金などの返済を滞納した際に発生する損害賠償金の一種
※2 連帯保証人・保証人として負った支払い義務
※3 慰謝料など損害賠償金の支払い義務

手続き後、上記の支払い先(債権者)からの請求も基本的に止めることが可能です。

なお、相続放棄をしても、受取人に指定されている死亡保険金(生命保険金)や死亡退職金などを受け取ることはできます。

不動産の管理や登記の義務がなくなる

相続財産に家や土地などの不動産が含まれている場合、相続放棄すると、原則管理義務がなくなります(例外は後述)。

単純承認すると、被相続人名義の不動産の管理義務も引き継ぐことになります。

管理責任があるにもかかわらず、家屋や土地を放置してしまうと、

  • 老朽化した家、土地、荒廃した山などでトラブルが発生し、損害賠償を請求される
  • 自然災害が発生した際に管理責任が問われる

といった可能性があります。

相続放棄をすることで、これらのリスクが避けられます。

また、相続放棄をすれば、不動産の相続登記の義務もなくなるのもメリットといえます。

不動産や土地を相続した場合、相続登記(相続人名義への変更)をしなくてはいけません。

相続登記は2024年4月から義務化され、被相続人の名義のまま放置すると最大10万円の過料(罰金)の対象になります。

相続放棄によって、登記の手間や費用がかからず、過料の対象にもならずに済むのです。

相続登記とは
相続登記とは、亡くなった人(被相続人)が所有していた不動産の名義を、新しい所有者(相続人)の名義に変えるための手続きです。

遺言書の確認、不動産の調査や戸籍謄本などの必要書類集め、登記申請書の作成・提出など、手続きは煩雑です。

相続登記には、およそ1〜2ヶ月程度の期間と、以下のような費用がかかります。

・自分で行う場合:5,000円~5万円程度+登録免許料
・司法書士に依頼する場合:6万5,000円~18万円程度*+登録免許料
*実費により前後します

相続登記については、以下の記事で詳しく解説しています。

相続トラブルに巻き込まれずに済む

相続に関するもめ事、トラブルに巻き込まれずに済むのも、相続放棄のメリットです。

相続放棄をすれば、最初から相続人ではなかったと見なされるためです。

ただし、相続放棄をした事実は、申し立てた本人(申述人)以外には通知されません。

手続きをした際は、ほかの相続人に一報入れておくと距離を置きやすくなるでしょう。

相続放棄のデメリット

相続放棄は借金などの負債を避けるために有効な方法ですが、以下のようなデメリットもあります。

相続放棄のデメリット

手続きするか状況に合わせて適切に判断しないと、相続放棄をすることで経済的損失を被ったりトラブルにつながったりするケースもあります。

また、どのような状態でも家庭裁判所に受理されるわけでもありません。

デメリットの各項目について解説します。

被相続人のすべての財産が相続できなくなる

相続放棄は、被相続人のすべての財産が相続できなくなります。

借金を受け継がずに済みますが、預貯金や有価証券といったプラスの財産も放棄することになります。

プラスの財産が多い場合、経済的損失を被る可能性もあります。

手続きを始める前に、相続財産の調査をしっかり行いましょう。

全員が手続きすると先祖からの資産を手放すことになる

すべての相続人が相続放棄の手続きをすると、被相続人名義の財産はその一家のものではなくなります。

先祖代々の土地や家といった資産も手放すことになります。

相続人がいなくなった場合の相続財産は、最終的に国庫に帰属(※)します(民法第959条)。

この過程で、家屋がある土地は、更地になることが多いでしょう。

思い入れのある家が取り壊されてしまうなど、心理的に抵抗があるかもしれません。

※ 国の財産になること

相続放棄をしても手放さずに済む財産

お墓や仏壇は相続財産に当たらない「祭祀財産」です。

親のお墓がある場合、相続放棄をしてもお墓は引き継がなければいけません。

お墓や仏壇の管理が難しい場合は、

  • お墓の場合:墓じまいを行い、新しい納骨先に納骨する
  • 仏壇の場合:お寺や仏具店に引き取ってもらうか、適切な業者などに処分を依頼する

といった解決方法があります。

不動産などの管理義務が残ることがある

相続放棄をしても、土地や家などの管理義務が残る可能性があります。

2023(令和5)年4月1日に施行された民法改正で、「財産を現に占有している」場合、相続放棄をしても保存義務が戻ってくることになりました。

民法第940条
相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

出典:民法 _ e-Gov法令検索

たとえば、親が亡くなって相続人全員が相続放棄し、親名義の実家が空き家になった場合、実家を占有していた相続放棄者が管理義務を負うことになります。

「占有」が何を示すかは明確に定められていないのが現状ですが、以下のような場合は注意が必要です。

  • 相続発生時点で、被相続人名義の実家に住んでいた
  • 相続発生時点で、被相続人と不動産を共有していた

参考:財産管理制度の見直し(相続の放棄をした者の義務)

申述後は原則として撤回できない

相続放棄申述書を家庭裁判所に提出した後は、原則として手続きは撤回できません。

新たに財産が見つかったので相続したい
という場合も、相続放棄を撤回することはできません。

例外として、錯誤(勘違い)、詐欺、脅迫によって相続放棄をした場合のみ、相続放棄の申述を取り消すことができます(民法第95条、96条)。

ただし、取り消しは2022年(令和4)度でたった130件(※)と、ほとんど行われていません。

手続き前は、慎重な検討が必要です。

※ 相続の限定承認又は放棄の取消しの手続きの新受件数(参考:司法統計 結果一覧 _ 裁判所 - Courts in Japan

死亡保険金(生命保険金)や死亡退職金の非課税枠が使えない

相続放棄をした人が死亡保険金や死亡退職金を受け取った場合、非課税枠が使えないため、相続税が課税される可能性があります。

そもそも、相続放棄をしていても、死亡保険金や死亡退職金の受取人として指定されていれば、受け取ること自体は可能です。

相続放棄後も保険金を受け取れる例

夫が死亡保険の契約者・被保険者で、受取人が妻の場合

妻が相続放棄をしても、妻が受取人として指定されているかぎり、夫の死亡保険金を受け取れます。

死亡保険金は、受取人である妻の固有の財産となるためです。

ここで注意したいのが相続税です。

死亡保険金(被相続人が被保険者と契約者の場合)や死亡退職金は「みなし相続財産」とされ、以下の非課税枠が設けられています。

500万円×法定相続人の数

この超過分が課税対象です。

しかし、相続放棄をすると非課税枠を使えなくなるため、相続放棄をした人が死亡保険金を受け取った場合は相続税の支払いが増えるかもしれません(※)。

みなし相続財産とは
相続や遺贈で受け取る民法上の相続財産ではなく、死亡保険金や死亡退職金のように、被相続人の死亡により受け取ることになった相続税法上の財産。

※ ただし相続税には法定相続人の数に応じた基礎控除があり、これは相続放棄をした場合でも適用されます。相続税の非課税制度が利用できなくても、生命保険などの金額が一定以下であれば、相続税の支払いは発生しません。

参考:No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金|国税庁

他の相続人に迷惑がかかることもある

自分が相続放棄すると、他の相続人の負債の負担が増える、親族が知らないうちに負債を相続してしまうなど、迷惑がかかってしまうケースがあります。

相続放棄した人の相続権は、同順位の他の相続人や、次順位の相続人に移るためです。

以下の図のように、相続財産に借金がある場合に相続人のうち一人だけ相続放棄をすると、他の相続人の借金の負担額が増えます。

相続財産に借金が600万ある例

また、同順位の相続人が全員相続放棄をすると、以下の図で示した次の順位の法定相続人に相続権が移っていきます。

法定相続人の範囲と順位

被相続人と面識のない甥や姪が知らないうちに相続人になっており、債権者からある日突然督促を受ける、というケースもあるということです。

相続放棄は相続人一人で手続き可能ですが、可能なかぎり他の相続人に連絡をしておかないと、思わぬトラブルにつながってしまうかもしれないのです。

相続財産を一部でも処分すると手続きできないことも

相続放棄には、手続きができない(受理されない)ケースもあります。

その一つが、相続財産を一部でも処分してしまった場合です。

以下のような行為が「処分(処分行為)」に当たり、これらを行うと単純承認をしたと見なされます

処分行為の例

  • 遺産を使い込んだ
  • 被相続人の借金・税金を払った
  • 被相続人の預金や賃貸などを解約した
  • 被相続人の土地・家・車・株式などの名義を変更した
  • 被相続人の家のリフォームをした
  • 遺産分割協議を行った

相続放棄を考えている人は、安易にさまざまな手続きをしてこの条件に当てはまらないよう、慎重に行動する必要があるでしょう。

相続放棄ができないケースについては、以下の記事で詳しく解説しています。

相続放棄を選んだ方がいい5つのケース

相続放棄のメリット、デメリットを踏まえたうえで、相続放棄を選んだ方がいい5つのケースを挙げます。

相続放棄を選んだ方がいい5つのケース

  • プラスの財産をマイナスの財産が大きく上回る
  • 一人の相続人に事業や家を引き継がせたい
  • 相続争いに巻き込まれたくない
  • 相続財産に不要な不動産や土地がある
  • 被相続人が死亡時に被告になっていた

これらに当てはまる場合、相続放棄を検討しましょう。

プラスの財産をマイナスの財産が大きく上回る

単純承認を選ぶと、被相続人の負債の返済義務まで引き継ぐことになります。

借金などマイナスの遺産が、預貯金や有価証券といったプラスの遺産を大きく上回る場合は、相続放棄をした方がいいでしょう。

また、被相続人がまとまった額の借金の連帯保証人になっていた場合も、相続放棄をすれば借金を負わなくて済みます。

まずは遺産調査を行い、被相続人の

  • 遺言書
  • 預貯金
  • 借金
  • 有価証券
  • 不動産

などを確認しましょう。

過払い金に注意

司法書士として相続放棄のために遺産を整理していると、被相続人名義の借金に「過払い金」が発生しているケースがあります。

被相続人が、以下のような借り入れをしていた場合です。

  • 2010年6月以前に借り入れている
  • クレジットカード会社や消費者金融から借り入れている

過払い金とは、簡単にいうと「払いすぎていた利息」です。

払い戻してもらうよう求めること(返還請求)ができ、もともとの借入金以上の金額が戻ってくるケースもあります。

相続放棄をすると過払い金を請求する権利も失ってしまうため、手続きの前に一度過払い金の有無や金額を確認するとよいでしょう。

被相続人の過払い金が発生している可能性がある場合、一度司法書士や弁護士など、法律の専門家に相談してみると確実かもしれません。

一人の相続人に事業や家を引き継がせたい

誰か一人に相続を集中させるため、他の相続人が相続放棄するケースがあります。

次のようなケースでは、相続放棄が有効です。

  • 事業を営んでいて、相続人の一人が引き継ぐ
  • 被相続人名義の家を、相続人の一人が引き継ぐ

特に、事業のためなどの負債がある場合、丸ごと相続人に集中させることができるため、事業を引き継がない人も安心できるでしょう。

相続放棄以外の方法も

相続人の一人に遺産を集中させるなら、相続放棄するのではなく、遺産分割協議で合意するという方法もあります。

相続人どうしで話し合い、相続人の一人がすべての遺産を相続することを合意するものです。

しかし、この方法をとる場合、被相続人に借金がある場合は注意が必要です。

家庭裁判所に申し立てて相続放棄手続きをしないかぎり、事業や家を引き継がない他の相続人も、法定相続分の割合に従って、借金の返済義務が生じてしまいます

遺産分割協議での合意はあくまでも相続人どうしでのもの。債権者からは請求を受けてしまうのです。

相続争いに巻き込まれたくない

相続放棄すると、初めから相続人でなかったことになります。

親族と関わりを持ちたくなく、遺産もいらない場合は、相続放棄が有効です。

相続放棄の申述書には、相続放棄の理由を記入する欄がありますが、「この理由では受理されない」というものはありません。

「相続人と不仲」「相続争いに巻き込まれたくない」という理由でも、相続放棄の手続きは可能です。

相続財産に不要な不動産がある

相続財産に不要な家や土地があり、ほかにめぼしいプラスの財産がない場合は、相続放棄が有効です。

家や土地の管理や登記手続きといった手間を省くことができます。

ただし前述のとおり、管理義務が戻ってくるケースもあるため、被相続人名義の家に住んでいたり、不動産を共有していたりといった場合は注意が必要です。

戻ってきた管理義務は、相続財産清算人が選任され、引き継がれるまで継続します。

相続財産清算人とは

相続人がいない財産を管理・清算する役割を担う人。

債権者や相続人から申し立てた家庭裁判所が、司法書士や弁護士を選任します。

選任された相続財産清算人は、以下のような業務を行います。

  • 特別縁故人がいた場合は財産分与をする
  • プラスの財産がある場合は売却してマイナスの財産の返済に充て、プラスの財産が残った場合は国庫に帰属させる

参考:相続財産清算人の選任 _ 裁判所

被相続人が死亡時に被告になっていた

被相続人が死亡時に訴訟の被告だった(訴えられていた)場合、相続放棄した方がいいかもしれません。

訴えられている人が亡くなった場合、その相続人は、被告という被相続人の立場もそのまま引き継ぎます

しかし身に覚えのない事件で訴えられ、裁判を続けるのは現実的ではありません。

相続放棄をすれば、被相続人の立場も放棄できます。

また、相続人全員が相続放棄をすると訴える相手がいなくなるため、訴訟が終了することが多いです。

こうしたケースでの相続放棄は、訴訟対応も必要になることがあるので、弁護士に相談するといいでしょう。

必要な財産がある場合は限定承認という選択肢も

借金額は大きいけれど、実家は相続したい
先祖代々受け継がれている財産は相続したい。でも借金がいくらあるかわからない

こうした場合の相続方法に、限定承認があります。

限定承認とは、3つの相続方法のうちの一つです。

  • 相続放棄:すべての相続財産を引き継がない
  • 単純承認:すべての相続財産を引き継ぐ
  • 限定承認:相続したプラスの財産を限度に、マイナスの財産を相続する

限定承認は、時間がたってから新たな負債が判明するかもしれない場合にも、負担を軽くできる方法だといえます。

ただし限定承認の手続きは煩雑で、時間もかかるというデメリットがあります。

限定承認の具体例や注意点を見てみましょう。

参考:相続の限定承認の申述 _ 裁判所

限定承認の例

限定承認は、相続財産のうち、プラスの価値がある財産の分を限度に、借金などマイナスの遺産も相続することです(民法第922条)。

単純承認の場合と比較してみましょう。

遺産に「評価額300万円の家(プラスの財産)」と、「借金1,000万円(マイナスの財産)」がある場合、以下のようになります。

限定承認した場合

  • 家を手元に残せる
  • 借金300万円の返済義務を負う

(借金1,000万円のうち300万円を返済。残る700万円分の借金は相続しなくてよい)

単純承認した場合

  • 家を手元に残せる
  • 借金1,000万円の返済義務を負う

限定承認の注意点

限定承認には、負債の返済を行ったうえで、プラスの財産を相続できるというメリットがありますが、以下のような注意点があります。

限定承認の注意点

相続人全員の同意が必要

単純承認や相続放棄が、相続人一人で行えるのに対して、限定承認をするには相続人全員の同意が必要です。

相続人全員の同意が必要なのは、プラスの財産とマイナスの財産の全体で相続財産を計算するためです。

相続人の中で誰か一人でも反対している場合、限定承認はできません。

また、相続人の誰かが被相続人の預金を解約したり、不動産の名義変更などを行ったりしてしまうと、単純承認したと見なされ、限定承認ができなくなります。

相続人の居場所がわからないなど、すべての相続人と連絡がとれない場合も、同意を得られないため限定承認はできません。

相続放棄と同じく3ヶ月以内の手続きが必要

限定承認の手続きは、相続放棄と同様、熟慮期間の3ヶ月以内に行わなくてはいけません。

しかし現実的には、相続人全員と連絡を取り、限定承認に賛成してもらったうえで戸籍などの必要書類をそろえるだけでも時間がかかります(手続きについては後述)。

期間の伸長の申立をすることを前提にしたほうがいいでしょう。

また、家庭裁判所に申立を行い申述が受理された後は、債務の清算手続きも行わなければいけません。

こうした手続きの煩雑さは、限定承認のデメリットといえます。

手続きやその後の処理が複雑

限定承認は手続きが複雑で、時間と手間がかかります

そのため、2022(令和4)年度の限定承認の新受件数は696件と、あまり選ばれていないのが実情です(相続放棄は26万497件)。

限定承認の流れをまとめてみます。

  1. 相続人全員で、家庭裁判所に申述を行う
  2. 相続人が複数の場合、家庭裁判所が相続財産清算人を選任
  3. 債権者に請求申出の公告・催告を行う(「債権者がいる場合、名乗り出てください」と告知する)
  4. 財産管理口座を開設
  5. 金融資産や不動産を現金化
  6. 借金など債務の返済
  7. 余った財産を受け取る

家庭裁判所に申述を行うのは相続放棄と同じですが、相続財産を現金化し、債務を返済するといった手続きもあり、とても複雑です。

また、相続財産にかかる相続税のほか、譲渡所得税がかかり、単純承認をした場合よりも経済的負担が増える可能性もあります。

譲渡所得税がかかる理由

限定承認では、被相続人から相続人に時価で財産が売却されたと見なされます。

これを「みなし譲渡」といいます。

たとえば、被相続人が3,000万円で取得していた土地が、相続時に4,000万円になっていた場合、差額の1,000万円がみなし譲渡所得となり、譲渡所得税がかかります。

みなし譲渡所得がある場合、死亡日から4ヶ月以内に、相続人が被相続人の確定申告である準確定申告を行い、納税する必要があります。

限定承認を検討した場合は、詳しい知識を持つ司法書士や弁護士などに相談するといいでしょう。

参考:司法統計 結果一覧 _ 裁判所 - Courts in Japan

連帯保証人などの地位は引き継ぐことになる

相続放棄と異なり、限定承認では、連帯保証人や訴訟の被告といった被相続人の立場は、相続人が引き継ぎます。

被相続人が連帯保証人となっていた借金の債権者から請求があった場合、相続人に身に覚えがなくても、プラスの財産の範囲内で返済を行わなくてはいけません。

訴訟についても、対応を求められます。

相続放棄を考えたら司法書士法人みつ葉グループへ相談を

亡くなった方の残した財産に、受け継ぎたいものや資産がある場合、相続放棄手続きのデメリットは無視できません。

相続放棄の手続きをすべきか迷っている方は、一度司法書士や弁護士に相談してみましょう。

限定承認など、他の方法で解決する道が見えてくるかもしれません

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相続放棄の手続きを丸ごとご依頼いただいた場合、5万5,000円(税込)で以下の手続き代行・支援をいたします。

  • 戸籍謄本等の必要書類の収集
  • 相続放棄申述書の作成
  • 書類提出の代行
  • 回答書、照会書の記入の指示
  • 相続放棄申述受理証明書の取り寄せ
  • 債権者への通知(1社からの借金額140万円以下の場合)
  • 次の相続人の相続放棄の通知

相続放棄するか決まっていなくても相談可能

相続放棄すべきかどうか迷う
引き継ぎたい家があるが、借金もあるみたいで不安

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相続放棄の手続きを依頼していただいた後も、司法書士とのやりとり、手続きはオンラインと郵送で完結することが可能です。

相続放棄手続きの流れ

実際に相続放棄の手続きを行う場合、流れは次のとおりです。

  1. 財産調査をする
  2. 必要書類の収集・申述書の作成
  3. 管轄の家庭裁判所に必要書類を提出する
  4. 回答書・照会書への回答
  5. 相続放棄申述受理通知書の受け取り
  6. 相続放棄申述受理証明書の申請・債権者などへの連絡

各ステップのポイントを簡単に解説します。

財産調査をする

まずは相続財産を調査します。

おもに次のものを調査します。

財産調査で調べるもの

  • 遺言書
  • 預貯金
  • 借金
  • 有価証券
  • 不動産

調査のうえで、プラスとマイナスの遺産を確定させましょう。

ただし、
親族と関わりたくない
プラスの財産より、マイナスの財産が多いことが明らか
といった場合、調査は不要です。

必要書類の収集・相続放棄申述書の作成

相続放棄の申立に必要な書類は、すべてのケースで必ず用意しなければいけない書類と、被相続人との関係により必要となってくる書類があります。

必ず用意しなければいけない書類は以下の表のとおりです。

<すべてのケースに共通する必要書類>

書類名 取得場所
相続放棄申述書 ・各家庭裁判所の窓口
・家庭裁判所のWebサイトでダウンロード(成人用未成年用
相続放棄する相続人の戸籍謄本 ・本籍地のある市区町村の役所(郵送可)
・全国のコンビニ(※1)
被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本 被相続人の本籍地のある市区町村の役所(郵送可)
被相続人の住民票除票か戸籍附票のいずれか 住民票の除票:
被相続人の最後の住所を管轄する市区町村の役所(郵送可)
戸籍の附票:
本籍地のある市区町村の役所(郵送可)
収入印紙(800円分) 郵便局、法務局、コンビニなど
切手(※2) 郵便局、コンビニ、スーパーなど

※1 本籍地または住所地が「コンビニ交付サービス」を提供する市区町村の場合
※2 必要な金額・枚数は裁判所ごとに異なるため、要確認

2024年3月1日からの変更点

2024年(令和6年)3月1日以降「戸籍謄本の広域交付制度」が始まり、以下の書類が最寄りの市区町村の役所の窓口で、まとめて取得可能になります。

  • 本人の戸籍謄本・除籍謄本
  • 配偶者・両親・祖父母・子・孫の戸籍謄本・除籍謄本

ただし、この制度を利用するためには顔写真付きの本人確認書類(免許証・マイナンバーカード)」を持って、役所の窓口に本人が直接出向く必要があります。

代理人による申請や、郵送の場合は利用不可能です。

また、兄弟姉妹・叔父・叔母、甥・姪の戸籍謄本は、最寄りの市区町村では請求できません。

従来どおり、本籍地のある(あった)各役所に問い合わせ、集めていく必要があります。

参考:https://www.moj.go.jp/content/001409033.pdf

相続放棄申述書とは、相続放棄の内容を記載し、家庭裁判所に申立をするための書類です。

指定の書式に、被相続人や相続放棄をする相続人の住所、名前、相続財産の内容や相続放棄の理由などを記載します。

記入後、用紙の1枚目に収入印紙800円分を貼りましょう。

申述の趣旨

相続放棄申述書については、以下の記事で詳しく解説しています。

管轄の家庭裁判所に必要書類を提出する

相続放棄の必要書類がそろったら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。

提出方法は、窓口に持参しても、郵送でも構いません。

提出窓口や宛先は家庭裁判所のWebページで確認できます。

参考:裁判所の管轄区域_裁判所

提出に際しては、次の4つのポイントを押さえておくといいでしょう。

  • 管轄の家庭裁判所のWebページで、切手の枚数、組み合わせなどをチェックする
  • 提出書類はすべてコピーを取る
  • 郵送時は、追跡が可能なレターパックか簡易書留で送る
  • 持参の場合、本人確認書類と印鑑を持っていく

相続放棄の必要書類の提出方法などについては、以下の記事で詳しく解説しています。

回答書・照会書への回答

書類に不備がなければ、提出後2週間〜1ヶ月程度で「照会書(相続放棄照会書)」や「回答書(相続放棄回答書)」が届きます。

照会書・回答書の内容は、相続放棄が申述人の意思かどうかを確認するものです。

「相続放棄申述の意思確認について(事務確認)」「照会」といった名前のこともあります。

相続放棄の意思に変わりがなければ、回答書に記入し返送します。

注意点

回答・返送に際し、次の2点に注意しましょう。

  • 相続放棄申述書の内容と矛盾が生じないように、事前に取ったコピーと照らし合わせながら記入する
  • 通常、10~14日の返送期限(必着)が定められているので、間に合うように返送する

相続放棄の回答書・照会書については、以下の記事で詳しく解説しています。

相続放棄申述受理通知書の受け取り

回答書を返送後、内容に問題がなければ、1~2週間程度で「相続放棄申述受理通知書」が家庭裁判所から届きます。

これで、相続放棄手続き自体は完了となります。

相続放棄申述受理通知書とは、裁判所において相続放棄が受理されたことを通知する書類で、第三者に相続放棄をしたことを証明する書類にもなります。

紛失しても再発行されませんので、厳重に保管しておきましょう。

相続放棄申述受理通知書

相続放棄申述受理証明書の申請・債権者などへの連絡

相続放棄申述受理通知書と同様に、相続放棄の証明となる書類に「相続放棄受理証明書」があります。

被相続人が借金をしていた銀行や消費者金融から支払いを請求された場合などに、相続放棄を示すために使えます。

必要があれば、相続放棄を申述した家庭裁判所で取得しましょう。

また、前述のとおり、相続放棄した人の相続権は、同順位や次順位の相続人に移ります。

トラブルを避けるため、連絡が取れる他の相続人には、早めに相続放棄したことを伝えるといいでしょう。

注意点

債権者が個人やヤミ金からお金を借りていた場合、「相続放棄申述受理通知書」「相続放棄申述受理証明書」を送付しても解決しない可能性があります。

相続放棄やそれに付随するやりとりを弁護士に依頼し、依頼者の代理人として債権者と交渉してもらうのもひとつの方法です。

相続放棄申述受理証明書については、以下の記事で詳しく解説しています。

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法改正について
この記事の監修者
宮城 誠
司法書士会所属
東京司法書士会 第8897号 、簡裁認定司法書士番号 第1229026号
経歴
2011年九州大学経済学部卒業。2012年司法書士試験合格。
大手司法書士事務所で約6年経験を積み、2018年みつ葉グループ入社。
コメント
「お客様のお悩みやご不安なことが一つでも多く解決できますよう、誠実かつ丁寧に対応させていただきます。お気軽にご相談ください!」

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