弁護士コラム

離婚後の「共同親権」が始まります。

こんにちは。弁護士の有岡佳次朗です。

今回は離婚後の共同親権についてお話ししたいと思います。

ニュースなどでご存知かと思いますが、令和6年5月17日に、民法等の一部を改正する法律案が国会で可決され、離婚後の共同親権が導入されました。
これにより、2年以内に共同親権制度が施行されることとなりました。

古くは、明治民法では「子ハ其家ニ在ル父ノ親権ニ服ス」として、父のみに親権が認められていました。
その後民法が改正され、婚姻中は父母の共同で親権を行使し、離婚した場合は父または母の一方のみが子どもの親権を持つ、離婚後単独親権制度がとられていました。
この離婚後の単独親権制度が77年ぶりに改正されました。

単独親権が共同親権となることで何が変わったのでしょうか。
まずは、改正された民法の条文を見てみましょう。

民法819条
1項 父母が協議上の離婚をするときは、その協議でその双方又は一方を親権者と定める。
2項 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定める。

このように、共同親権とするか、単独親権とするかを選択できる(裁判上の離婚の場合には裁判所が共同親権か単独親権かを決定する)ことになっており、一律に共同親権となるわけではありません。
また、いったん協議で定めたとしても、裁判所に申し立てて変更することができるとされています。

親権とは、子どもの利益のために、監護・教育を行ったり、子の財産を管理したりする権限であり義務であるといわれています。具体的には、子どもの監護・教育をする権利・義務(民法820条)、住む場所を決める権利(同822条)、職業を営むかどうかを決める権利(同823条)、財産を管理する権利(同824条)などがあります。身上監護権と財産管理権に分けられると言われることもあります。

共同親権としたことで、離婚した後もこれらの権利を父と母が共同で行使できることになります。

そもそも、なぜ77年の時を経て単独親権から共同親権に変えようとしたのでしょうか。その理由の一つに、離婚後に親権者でなくなった父又は母(多くの場合が父です。)が子どもに会えないという背景があったと言われています。
また、国際結婚をして海外で居住していた日本人が、子どもを連れて日本に帰国し、子どもを返さないということが国際的に非難を浴びました。
国際結婚が破綻した夫婦の一方が、子どもを国外に連れ去った場合、元の居住国にいったん戻すことを原則としたハーグ条約を日本も批准していますが、それを守っていないと言われました。

諸外国では、共同親権が一般的で、法務省の調査では、G20を含む25か国のうち、単独親権のみであるのは日本、インド、トルコの3か国だけです。

子どもの養育に両親が責任をもって関わることが子どもにとっても有益だとして共同親権を導入することになりました。

他方で、共同親権をとった場合の問題もあります。DVなどで決死の思いで子どもを連れて逃げてきたにもかかわらず、離婚が認められた際には共同親権になる可能性があるということです。

今回の改正では、DVを受けていることが親権者を定める際の考慮事項とされたことから、この点はカバーされることになりました。

また、共同親権となったとしても、子どもの利益のために急迫の事情があるときや、監護及び教育に関する日常の行為については単独で親権を行使できることになりました。
法律では明確ではありませんが、法務省が挙げた具体例として、

「急迫の事情」とは、①期限の迫った入学手続き、②緊急の手術、③虐待からの避難など
「日常の行為」とは、①子どもの食事、②習い事の選択、③ワクチン接種など

があります。
その他に何が該当するかについては、ガイドラインが制定されることになりました。

共同親権となることで、子どもをめぐり長期間にわたって夫婦が争うことを防ぐことになりますが、関係が悪化し裁判などで争った夫婦が離婚後に適切に話し合いを行えるのかという問題があります。

また、養育費については、支払いが滞った場合に優先して差押えができることや、養育費を決めなかった場合には一定の金額を請求できる法定養育費制度も創設されることになりました。

今回の改正は、家族法制の大転換であり、多くの方にとって身近な問題となるかと思います。
弁護士法人・響では、離婚問題について多くのご相談をいただき、様々なアドバイスを行っておりますので、お悩みであればぜひお気軽にご相談ください。

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