弁護士コラム

著作権入門~身近に潜む著作権侵害~

大阪オフィス 藤田 圭介

著作権とは

「著作権」とは、「著作物」を創作した者(「著作者」)に与えられる、自分が創作した著作物を無断でコピーされたり、インターネットで利用されない権利のことです。「著作物」とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいいます(著作権法2条1号)。思想又は感情を表現したものですので、「富士山の高さが3776メートル」「真珠湾攻撃が1941年12月8日に行われた」といった事実それ自体は対象にはなりません。
著作権を侵害した場合には、著作物の利用の停止などの差止請求、損害賠償請求などの民事上の請求とともに、刑事罰に処せられる恐れもあります。著作権は、著作者が著作物を創作したときに自動的に発生するので、権利を得るために特別な手続きは必要ありません。
そして、著作権としては以下の権利が挙げられます。

複製権(21条)コピーする権利
上演権・演奏権(22条)公衆に直接見せ又は聞かせる目的で上演・演奏する権利
上映権(22条の2)公に映写する権利
公衆送信権(23条)公衆が受信することを目的に無線通信・有線電気通信の送信を行う権利
口述権(24条)言語の著作物を公に口述する権利
展示権(25条)美術又は未発行の写真の著作物を原作品により公に展示する権利
頒布権(26条)映画の著作物をその複製物により公衆に譲渡等する権利
譲渡権(26条の2)著作物を譲渡により公衆に提供する権利
貸与権(26条の3)著作物を貸与により公衆に提供する権利
翻訳・翻案権(27条)著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利

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著作権の制限規定

著作物を利用するには、その都度著作権者から許諾を得ることが原則です。
他方で、著作権法は、「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」と規定しており(1条)、上記の原則をいかなる場合にも当てはめることは、著作物の公正で円滑な利用を妨げることとなり、ひいては文化の発展に寄与するという目的に反することになってしまいます。
そこで、著作権法では、下記に挙げる規定において一定の条件を満たせば、著作権者の許諾なく、著作物を利用できるというルールを定めています。
詳細につきましては、各条文をご参照ください。

私的使用、付随的利用
(30条~30条の4)
個人的使用や写り込んでしまった場合は複製可能(例外あり)
教育関係
(33条~36条)
一定の条件のもと教育目的等の場合は複製可能
図書館関係
(31条、33条の2、42条の4)
一定の条件のもと図書館での複製が可能
福祉関係(37条、37条の2)点字化のため等の複製が可能
報道関係
(40条~42条の3)
報道の目的上正当な範囲内等での利用は可能
立法、司法、行政関係
(42条)
一定の条件のもと裁判手続き、立法又は行政の目的のための複製は可能
非営利・無料の演奏等関係
(38条)
一定の条件のもと営利を目的としない上演等は可能
引用・転載関係
(32条、39条、40条)
一定の条件のもと著作物を引用等して利用が可能
美術品・写真・建築関係
(45条~47条の2)
一定の条件のもと美術・建築の著作物を利用が可能
コンピュータネットワーク関係
(47条の3~47条の10)
一定の条件のもとプログラムの著作物の複製物の所有者による複製等が可能

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著作者人格権について

著作物は、著作者の思想、感情の表現物であり、勝手に著作物を公表されたり、内容を変えて利用されたりした場合には、著作者の人格的利益が損なわれるおそれがあり、それを法律上保護するために著作権とは別に、著作者人格権という権利が存在します。
著作者人格権には以下の3つがあります。

公表権(18条)著作物を公衆に提供・提示する権利
氏名表示権(19条)著作者名を表示するか否か、表示方法と決める権利
同一性保持権(20条)著作物の改変に反対できる権利

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この権利は、著作権とは異なり、他者へ譲渡することができない権利であるとともに、先ほど挙げた著作権の制限規定の影響は受けません。

身近に潜む著作権侵害の紹介

1 テレビ番組の録画や好きな漫画のコピーをする行為

→個人や家族で楽しむ場合はOK
それを超えて友人などの他者に配ったりする場合はNG

テレビ番組も漫画も基本的には著作物に該当するため、それを録画・コピーする行為は複製に該当します。
他方で、私的使用の範囲内と認められる場合は、録画・コピー等の利用が可能になります。個人的又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするときは、一定の例外を除いて複製することができます。そのため、個人や家族で楽しむ分には許可なく複製することができますが、友人などそれを超える範囲で利用する場合には許可なく複製することはできません。なお、私的使用目的でも複製が認められない場合としては、レンタルCD店に設置されたレコーダなどを利用してコピーする場合、DVDなどの設置されたコピーガードを外して複製する行為、違法配信ファイルをダウンロードする行為が挙げられます。

2 ブログで他人が創作した漫画や小説を紹介する

→引用の要件に該当する場合はOK

他人が創作した漫画や小説を自身のブログで紹介することも複製権侵害にあたります。
他方で、引用の要件に該当する場合には、著作権者の許可なく、著作物を利用することができます。引用の要件は以下の通りです。
①公表された著作物であること②引用であること③公正な慣行に合致すること④報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内であること
②については、紹介文と著作物が明確に区別され、両者の主従関係がはっきりしている場合(紹介文が主)のこといいます。
③については、著作物の使用目的および性格、著作物の性質、著作物全体の関係での使用された部分の量や重要性、著作物の潜在的市場や価値に対する使用の及ぼす影響を考慮して、引用による著作権者の経済的打撃がどの程度かによって判断します。
④については、引用される側の著作物において必要最小限度の引用か否かで判断します。
そのまま掲載するだけ、もしくは、アレンジして掲載した場合は複製権・翻案権侵害、同一性保持権侵害になります。

3 キャラクターの画像を自分のアイコンに利用する行為

→原則NG

キャラクターの画像も著作物であるため、著作権者の許可なく使うことは著作権侵害にあたります。そのため、ネットでキャラクター画像を拾ってきて他者に公開されたサイトなどのプロフィールのアイコンに使った場合、公衆送信権侵害にあたります。
もっとも、私的な利用の範囲内にとどまる場合には許容されるので、自分の携帯の待ち受けにするなどの利用は許可なくできます。

4 キャラ弁(キャラクター弁当)を作成する行為

→原則OKな場合が多い

キャラクターも著作物に当たることは前述のとおりです。明らかにキャラクターを分かってしまうようなお弁当を作った場合、キャラクターを複製したことになります。もっとも、キャラ弁については、作った本人や家族が食べて楽しむことがほとんどであるため、その場合は私的使用の範囲内ということで問題はありません。
他方で、作ったキャラ弁の完成品の写真をネットでアップすると、キャラ弁の販売目的がなくても、公衆送信権侵害となります。もっとも、既にネットでは数多くのキャラ弁がアップされているため、キャラクターの著作者により黙認されているケースが多いと思われます。

5 X(旧ツイッター)で他人の創作した著作物をツイートする行為

→ツイートする行為はNG

他人の画像が著作物に当たる場合、それをツイートすることは、複製権・公衆送信権侵害となります。
他方で、リツイートした場合、元のツイートへのリンクをコピーしただけであり、リンク自体には著作物性がなく、画像そのものをコピーしたわけではないため、著作権侵害に該当しないとした裁判例が存在します(東京地判平成28年9月15日)。もっとも、元の画像に著作権者の氏名が表示されている場合、リツイート時にその氏名を表示していない場合は、氏名表示権侵害になるとした最高裁判例が存在するので注意が必要です(最高裁判所令和2年7月21日)。

6 海賊版サイトの利用を利用して漫画や動画をダウンロードする行為

→アップロードだけでなく、違法にアップロードされたものと知りながらダウンロードする行為もNG

動画投稿共有サイトやインターネット上のいわゆる「海賊版サイト」から、音楽や映像、漫画をはじめとした文書や書籍をアップロードするだけではなくて、私的使用目的であったとしても、違法にアップロードされたものと知りながらダウンロードする行為も違法であり、刑事罰の対象にもなります。
もっとも、①軽微なもの(漫画の一コマ~数コマだけ等)や、②二次創作・パロディ等の二次的著作物(ただし、翻訳は除く)、③著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合のダウンロードは規制対象外とされていますが、「海賊版サイト」は違法なものなので注意しましょう。

~最後に~

インターネットの発達より、容易に漫画や画像・動画などのコンテンツにアクセスできる機会が増えている昨今、著作権侵害の危険性は非常に身近なものになっています。皆様も著作権についての知識を身に付けて、侵害に触れないように過ごしていくことが必要です。悩んだ際は専門家への相談を心がけるようにしましょう。

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