弁護士コラム

身近な人が逮捕されてしまったら?

大阪オフィス所長 河野哲平

ある朝のこと、出勤前のAさんが忙しくしていると、突然、インターフォンが鳴りました。

「はい?」
「警察です。」
「Bさんに令状が出ていますので開けてください。」
「???」

ドアを開けると、警察官5~6名がいきなり家の中に入ってきて、Bさんの書斎の中を探されて、呆然とするAさんを傍目に、パートナーのBさんは警察に連れて行かれてしまいました。

「Bはどこへ連れていかれるのですか?」
「警察署です。」

と言われたっきりで、何が起こったかにわかに理解できないAさんにとって、その後に警察官からされた説明は覚えていません。
Aさんは、Bさんからリーダーとして大事な商談を控えていたということを聞かされていましたが、Aさんも自分の仕事があるので、日中は動けません。というより、Aさんは、Bさんの仕事関係の情報は、勤務先や親しい同僚の名前の他はほとんど何も知りません。

この例で、Bさんは、「逮捕」されたということになり、最大で3日間(72時間)は、連れていかれた警察署内の柵がはめ込まれている部屋に留め置かれることになります。この「逮捕」の期間内に釈放されなければ、次は、「勾留」といって、Bさんは、基本的に、最低でも10日間は警察署に留め置かれたままの状態になってしまうのです。そして、「勾留」はさらに最長で10日間伸びてしまうこともよくあります。

まず、「逮捕」の期間の最大3日間(72時間)は、パートナーという身近なAさんであっても、Bさんと面会をすることはできません
また、「勾留」に移行すると、平日に限り一般の面会は可能ですが、警察署での面会は、たとえば、受付時間が午前9時30分~午前11時00分、午後1時30分~午後3時30分と決まっていて、仕事をしているAさんにとっては、事実上、Bさんと面会することは難しいかもしれません。仮にAさんが何とか時間を作って面会ができたとしても、一般の面会の多くは15分~20分以内の時間制限がされていることに加え、慣れない環境もあって、B さんと十分にコミュニケーションをとるのは厳しいといえるでしょう。話をする時間が足りないということがあっても、一般の面会は1日1回限りです

このような状況が13日、ではなく23日も続いてしまうことがあるのです。
そして、23日後、「不起訴」となれば、Bさんは家に戻ることができますが、「起訴」となれば、保釈が許可されない限り、Bさんはそのまま警察署に留め置かれて、その後、拘置所と呼ばれる場所に移されて裁判を待つケースが多いです。

結局、Bさんは、「逮捕」、「勾留」されてしまうと、外部から隔絶された状況に置かれてしまうことになりかねないのです。せめて、この間に予定されていたBさんの大事な商談だけでも、何とか勤務先の関係者に状況を説明して引継ぎをしておく必要がありそうです。

このようなケースにおいて、弁護士を弁護人に選任して、Bさんのために動いてもらうことができます。

まず、パートナーのAさんであっても面会ができない「逮捕」の最大3日間(72時間)の間でも、弁護人による「接見」と呼ばれる面会が可能です。「勾留」に移行しても、弁護人の「接見」は、基本的に、365日・24時間行うことができ、約1時間の面会時間は確保することができます。弁護人の「接見」により、Bさんは、弁護人に事情を説明して、弁護人から勤務先に連絡をして、勤務先の担当者が警察署へ面会に行き、Bさんがリーダーを務める大事な商談は何とか事なきを得た、というようなことが実際にもありました。

また、Bさんを警察署から自宅に戻すという身体拘束からの解放という点でも、弁護人としてできることがあります。
まず、「逮捕」の後の「勾留」は検察官が裁判所に請求するものですが、「逮捕」の期間中に弁護人が検察官に働きかけることによって、「勾留」請求に至らずに釈放されるという件があります。また、「勾留」されてしまっても、弁護人が「準抗告」と言われる申立てをして、身体拘束が解かれるといったケースもあります。さらに、起訴されてしまった場合、弁護人を通して保釈請求を行い、認められれば自宅に戻ることもできます。保釈に際しては、通常は150万円以上の保釈保証金が必要ですが、自身で用意することが難しくても、第三者機関からの支援を受けることもできます。結局、Bさんは保釈が認められて、自宅に戻ることができました。

ここで強調しておきたいのは、「無罪推定の原則」です。刑事裁判で有罪が確定するまでは、Bさんを犯人扱いすることは許されません。
Bさんは、「逮捕」され「勾留」に移行して「起訴」されたとしても、有罪となったわけではないのです。
「逮捕」されただけで、犯人であるとされることはよくありますが、決してそうではありません。アリバイがある、故意がなかった、正当防衛であった等の理由により、無罪となることもあります。

弁護人の活動として、上に述べてきたこともありますが、一番大事なことは、Bさんが誤って有罪の判決が下されることがないように、徹底的に闘っていくことだと考えています。

万が一、このようなケースに巻き込まれてしまった際には、弁護士法人・響にご相談ください。

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