弁護士コラム

結婚の自由をすべてのひとに

福岡オフィス所長の弁護士 徳原です。

私は、結婚の自由をすべての人に訴訟、九州弁護団の一員として活動をしております。わかりやすく言えば、同性婚を認めるよう国に求めている裁判です。

この裁判の目的、それはとてもシンプルです。
法律上の同性カップルにも婚姻を認めよう、ただそれだけです。

国は、憲法24条1項にある「両性」という文言に着目し、その文言上、男女を表すことが明らかなので、憲法は、当事者双方の性別が同一である場合での婚姻を想定していないと主張しています。

はたしてそうでしょうか。

この条文は、戦前の家制度のもと、戸主の了承なくては婚姻が許されなかった状況から脱却するために設けられました。誰と婚姻するかは本来自由であり、誰の了承も必要なものではない、ということを表しています。すなわち、当事者双方の「合意」さえあれば婚姻できるのであって、そのことは、法律上の性別によって左右されるものでありません。ひとりひとりに、婚姻の自由が認められているのです。

この人と人生を一緒に過ごしたい、そのように思える人生のパートナーに出会えること自体、とても素晴らしいことです。このことを否定するひとはいないでしょう。そのパートナーが法律上の同性であったとしても、その素晴らしさに何も変わりはありません。

婚姻するということは、自分の人生でのパートナーを決め、一緒に過ごしていくことです。
人生のパートナーとどのような家族を築いていくのか、どのような人生を歩んでいくのか、このことは、そのひとの生き方に関わる、個人の尊厳に関わることです。そのような生き方を選択する場面において、何ら支障があってはいけないと思います。そして、その支障を作り出している・生み出しているのが国であればなおさらです。

現在、約7割のひとが同性婚を法律で認めるべきと回答しています。直近の調査ではもっと多い割合も出ていますし、世代によっては8割9割の方が同性婚を認めてよいと回答しています。すなわち、世論をみればもはや同性婚を認めることは多数意見になっているのです。このように多数意見となりつつある現状においても、国は、法律上の同性カップルに婚姻を認めてはいません。法律上の同性カップルが国の制度から排除されているのです。国が、このように法律上の同性カップルを排除していることは、同性カップルはそのような扱いを受けてもいい存在なんだ、というような差別的メッセージとなることにつながります。国は、いつまでこのようなメッセージを発信し続けるのでしょうか。

同性婚を認めることで、国に一体どんな不都合が生じるのでしょう。私たちに何か影響があるのでしょうか。ニュージーランドにて、同性婚を認めるか否かの議論が議会でなされている際、ある議員は言いました。

「今、私たちがやろうとしていることは愛し合う二人に結婚を認めようとしているだけです。たったそれだけです。…世界は何ごともなかったかのように回り続けます。」

まさにそのとおりだと思います。

同性婚を想定していない、は、同性婚を想定できない、とイコールではありません。国際的には同性婚を認める国が増えつつあり、日本国内では、パートナーシップ制度をつくる地方自治体が増えつつあります。同性婚は十分に想定できる状況なのです。
むしろ、国や私たちに生じうる不都合や影響が想定できません。

裁判では、原告の方々から、自らの経験を踏まえ、訴訟にかける思いや期待を述べていただきました。述べられた経験談には、性的マイノリティであることを隠しながら、悩みながら生きる原告の姿があり、聞いている側が息苦しくなるような内容もありました。

それでも、裁判にまで至ったのは、性的マイノリティである自分も社会の一員であると認めてほしい、自分が決めた人生のパートナーとの今後に不安をなくしたい、性的マイノリティに悩む子どもたちに明るい未来をみせたい、いずれも純粋な願いをお持ちだったからです。

原告の方々に共通して言えるのは、何も裁判を望んでしているわけではないということです。同様に、何が何でも慰謝料が欲しいというわけでもありません。国が法律上の同性カップルに婚姻を認めず、また、認めようとする動きも全くないことから、やむを得ず裁判に踏み切ったのです。
今回のような憲法がかかわる裁判においては、国の裁量(立法裁量)をどうみるかが重要となります。

この議論ももちろん大切ですが、原告の方々の後ろには、それぞれの事情から裁判に立つことができないけれども、同性婚を望む多数のひとたちがいます。

全国での地裁判決は出そろい、違憲ないし違憲状態と判断する地裁が5か所中4か所でした。過去の憲法がかかわる裁判をみても、これは極めて珍しいことです。それでも国は重い腰を上げることはありません。

私としては、裁判もとても大切な手段ですが、それ以上に、同性婚を求める声をあらゆるひとに届けることも重要だと考えています。
少しでもそのような方々の声を届けられるよう、活動をしていきたいと考えています。

最後に、アメリカにて、同性婚実現に向けて尽力された弁護士エヴァン・ウォルフソン氏の言葉を引用します。

「家族や愛、また差別がもたらす害悪について、ストーリーを語る人が増えれば増えるほど、多くの人々の心が動かされ、状況を変えられる。」

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