2021.12.3 2021.12.3

慰謝料の時効はいつ?交通事故における損害賠償請求のポイント

交通事故の相手方との示談交渉が長引いていたり、話し合いそのものをまだ始められていなかったりすると焦りを感じてしまうこともあるでしょう。

特に「慰謝料をいつまでに請求できるのか」といった部分が気になって、不安な気持ちになりがちです。

いわゆる時効(消滅時効)は民法によって定められたルールであり、事故の状況によって時効の取り扱われ方は違ってきます

納得できる形で慰謝料の支払いを相手方に求めるときは、時効に関するルールを正しく理解しておく必要があります。

この記事では、時効の数え方や延長方法、問題解決のためのポイントなどを紹介します。

この記事の監修者
西川 研一
弁護士
西川 研一Kenichi Nishikawa
所属団体
第二東京弁護士会所属 第36318号
役職
弁護士法人・響 代表弁護士/西新宿オフィス所長

交通事故の損害賠償請求の時効は3年または5年

交通事故の被害に遭って相手方に慰謝料などを請求する際は、民法で定められたルールに従って手続を行う必要があります。

慰謝料などの損害賠償請求はいつまでも行えるものではなく、「時効」(消滅時効)によって請求期限が決められています。

現在の民法では、時効は3年または5年となっており、事故状況によって取り扱われ方が違ってくるので注意が必要です(損害や加害者が不明のときは20年)

そもそも時効という仕組みがある理由は、いつまでも法的に不安定な状態が続いてしまえば、当事者にとって不利益があると考えられているからです。

時間がたつほど証拠集めが困難になるので、損害賠償を請求する権利があるにもかかわらず、いつまでも行使しないのは法律的には認められないという背景があります。

時効のルールについて、さらに詳しく見ていきましょう。

一定の期間を経過すると損害賠償請求権が消滅する

時効(消滅時効)は、債権者(慰謝料を請求できる人)と債務者(慰謝料を支払う人)が関係しています。

民法で定められた一定の期間を経過したときに、債務者が時効を援用することで債権者の損害賠償請求権を消滅させることができるため、消滅時効と呼ばれています

交通事故の場合、現行法では状況に応じて3年または5年と時効までの期間が決められています。

時効が成立する期間が経過した後、債務者が消滅時効を援用することで、それ以降は損害賠償請求の請求をしても認められないことになります。

そのため、時効が成立する前に債権者は損害賠償請求について、何らかの行動を起こす必要があるのです

時効の期限は事故の種類によって異なる

時効が成立するまでの期限は、交通事故の状況によって異なります

物損事故や人身事故など、事故の種類によって時効までの期間についてまとめると以下のとおりです。

事故の種類 時効までの期間
物損事故 3年
人身事故 5年
損害や加害者不明 20年

上記の時効期間は民法改正後のものですが、2020年4月1日時点で時効が成立していなければ、改正後の民法における時効のルールが適用されます

時効期間は損害賠償がいつまで請求できるのか、という部分に直接影響するので早めの対応が必要です。

ひき逃げなどの加害者不明の場合でも補償する制度がある

加害者不明とは、「ひき逃げ」や「当て逃げ」といったケースが当てはまります

交通事故を起こした相手方がどこにいるのかわからないため、慰謝料の請求を行いようがありません。

「令和2年版 犯罪白書」によれば、2005年頃からひき逃げ事件は減少する傾向が見られており、2019年では全国で7,491件となっています。

被害者が死亡するなど、事故の結果が重大であるほど検挙率が高いのが特徴です。

加害者が誰かわからなければ、損害賠償請求は行えませんが、自分が加入する任意保険は利用できるケースがあります

人身傷害保険や無保険車傷害保険、車両保険などではひき逃げや当て逃げによる損害の補償を設けている場合があるのです。

また、加害者不明の場合は自賠責保険による補償を受けることができませんが、「政府保障事業」という国の制度によって補償を受けられます。

被害者の救済を目的としている制度なので活用してみましょう。

弁護士の〈ここがポイント〉
民法には消滅時効というルールがあり、交通事故の状況によって時効期間に違いはありますが、一定期間がたつと損害賠償請求が行えなくなります。時効についてどのように対応すればいいかお悩みの方は、専門的な知識を持った弁護士に相談してみましょう。

起算日とは?時効はいつから数える?

消滅時効が成立してしまうと、相手方に対して慰謝料などを請求できなくなります。

そのため、「いつから時効をカウントするのか」がとても重要です。

時効についての数え方は、民法でルールが決められています。

■民法第724条

    不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

  1. 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
  2. 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

条文にある「損害及び加害者を知った時」というのが、いわゆる「起算点」と呼ばれるものです。

起算点から、時効期間がカウントされていきます

事故の内容や経過によって起算点は異なるので、さらに詳しく解説します。

事故によって起算点は異なる

時効の成立に大きな影響を及ぼす起算点ですが、いつから数え始めるかは交通事故の種類によって異なります。

事故の種類別に起算点をまとめると、次のとおりです。

事故の種類 起算日
物損事故 事故に遭った日の翌日
人身事故 事故に遭った日の翌日
損害や加害者不明 事故に遭った日の翌日

人身事故に関し、後遺障害に関する損害賠償請求権については症状固定時が起算点とされています。

たとえ怪我の治療を受けている期間中であっても、相手方が治療費等の支払について何ら対応していない(拒否している)状況であれば、時効期間が進行している可能性があるので注意が必要です。

また、後遺障害がある場合は等級認定手続を行いますが、認定結果がわかるまでには時間がかかるので気をつけましょう。

慰謝料などの損害賠償請求は、すべての損害額が確定してから行うのが一般的です。

そのため、ケガの治療や後遺障害の等級認定に時間がかかれば、その分だけ時効までの期限が短くなってしまいます

起算点を踏まえたうえで、時効期間を意識しておきましょう。

時効期間が経過したら即時効が成立するわけではない

時効期限がきたとしても、すぐに時効が成立するわけではないので、落ち着いて行動することが大切です。

時効が成立するためには、事故の相手が「時効の援用」を行う必要があることが民法で定められています

■民法第145条

時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

時効の援用とは、時効が成立することで利益を受ける人が、時効が完成していることを主張する行為を指します。

意思表示の手段としては口頭でも認められていますが、一般的には証拠を残すために、内容証明郵便などを利用します。

一方、相手方から自らの債務を承認するような行為(医療機関への治療費の支払等)がなされていれば、時効は更新*(中断)となります

*民法改正により名称が変更されています。

この場合には、更新がなされた時点から新たに時効期間のカウントが開始されることになります。

時効の成立を妨げる事由

先に説明したように、消滅時効として一定の期間が定められていますが、民法には時効の成立を妨げる事由として時効の「更新」、「完成猶予」という規定が設けられています。

時効の更新とは、更新事由が認められた時点でそれまでの時効期間のカウントはストップし、更新事由が認められた時点からまたゼロから改めて時効期間のカウントがスタートするというものです。

時効の完成猶予とは、完成猶予事由が認められた時点で一旦時効の進行はストップし、所定の期間、時効の完成が先延ばしにされるというものです。

この二つの制度は、時効の更新の場合には、またゼロから改めて時効期間のカウントがスタートするという点で異なります。

それぞれについて、いくつか具体的な事由を見ていきましょう。

1 裁判上の請求

事故の相手方が賠償金の支払いに応じず、消滅時効の成立が迫っているときは、裁判上の請求、つまり訴訟提起することも選択肢の一つです

裁判上の請求を行うことで、その訴訟手続が終了するまでの間は時効の完成が猶予されることになります。

■民法147条1項1号

次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによっ て権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては 、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。

1.裁判上の請求

時効期間の経過について間違えやすいポイントとして、事故相手に損害賠償金の支払いを求めているから時効期間が更新されていると思ってしまう点があげられます

口頭や書面で損害賠償金の支払いを請求しても、それだけで時効が更新されることはありません。

それらは、催告(民法150条1項)にあたるため、6ヶ月の間時効の完成が猶予されるに過ぎません。また、確かに催告したことを証明するために内容証明郵便等の方法で行うことが通常です。催告は、繰り返しが認められない点にも注意が必要です(同条2項)。

2 債務の承認

「承認」とは、債務者、つまり事故の相手方が自らに債務が存在するこを承認することであり、時効の更新事由として定められています

■民法第152条1項

時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。

具体的には、事故相手から治療費や休業損害が支払われていたり、具体的な損害賠償額の提案がなされていること等が挙げられます。

ただし、事故の相手方とコミュニケーションが取れている場合に認められる事由が多いことに注意が必要です。

相手方との交渉が難しく悩んでしまう場合は、交通事故案件に詳しい弁護士に相談をしてみましょう。

<弁護士のここがポイント>
時効の成立時期が近くなっているときは、債務承認・訴訟提起などの方法で時効の成立を妨げることができます。しかし、一般の方が手続を行うとなると、どのように進めればいいのかわからない部分も多いといえます。スムーズに手続を行うには、経験が豊富な弁護士に相談をしてみましょう。

時効になることを注意したほうがいいケース

時効のことが気になる原因は、おもに3つあげられます

  • 示談交渉が長引いている
  • ケガの治療に時間がかかっている
  • 後遺障害の等級認定手続に手間取っている

これらのケースでは、時効期間に注意が必要です。

それぞれのケースについて、気をつけるべきポイントを解説します。

保険会社との示談交渉が長引いている

ケガが完治もしくは症状固定となってから、相手方との示談交渉を始めるのが一般的です。

しかし、示談交渉が始まってから示談が成立するまで、2~3ヶ月程度の時間を必要とするので注意しておきましょう。

複雑な事故状況であったり、過失割合を巡って争っていたりすれば、さらに時間がかかってしまいます。

示談交渉を行っているときも、場合によっては相手方の債務の承認が認められず、時効が進行していることもあるので注意が必要です。

思うように話し合いが進まないときは、交通事故案件に詳しい弁護士に相談をしてみましょう。

示談交渉を任せられるので、負担の軽減につながるはずです。

治療に長い期間かかっている

人身事故で相手方が治療費の支払等の対応を行っていない場合、治療期間も時効が進行していることもあるので注意が必要です。

治療期間が長ければ長いほど、相手方との示談交渉の開始が先送りとなるため、時効期間に意識を向けておく必要があります。

ケガの治療が完了してから示談交渉は行うべきですが、弁護士への相談はケガの治療中であっても行えます

治療後にとるべき対応をきちんと決めておけば、落ち着いて示談交渉に臨めるでしょう。

治療が長引いてしまいそうなときは、早めに相談をすることが大切です。

後遺障害の等級認定手続に時間がかかっている

交通事故で負ったケガが完治せず、後遺症が残ったときは後遺障害の等級認定手続を行う必要があります

症状固定と医師から診断されて手続を始めるため、認定結果が出るまでには一般的に数ヶ月程度がかかります。

また、認定結果に納得できず、異議申立を行う場合はさらに時間を必要とします

後遺障害に関する手続を行っている間も、時効は進行しているので注意が必要です。

慰謝料の時効が気になる場合は弁護士に相談

慰謝料の受け取りに大きな影響を与える時効のルールですが、専門的な部分も多いのでどのように判断すべきか迷うこともあるでしょう。

交通事故案件に詳しい弁護士に相談をすれば、時効がいつ成立するかが明確になり、時効が成立してしまわないようにする方法についても具体的なアドバイスをもらえます

また、相手方との示談交渉をすべて任せられるので、負担の軽減にもつながるはずです。

直接やりとりを行わずに済むため、慰謝料を早期に支払うことを求めやすくなるでしょう

弁護士に依頼すれば、後遺障害の等級認定手続や異議申立なども相談できるので、多くのメリットがあります。

実績の豊富な弁護士に依頼をすれば、慰謝料の請求に関する悩みを解消できるので、落ち着いて対応できるようになります。

慰謝料の時効に関するQ&A

Q.時効期間が経過したら絶対に請求できないの?

A. 時効が完成していたとしても、相手方が時効の利益を放棄することで請求が可能になることもあります。また、時効の起算点をいつと捉えるか、時効の更新事由がないか等をチェックしてみると時効が完成していないことが判明する場合もあるので、自分だけで判断せず専門家に相談してみることが大切です。

Q.時効期間が経過すると必ず時効が成立してしまうの?

A. 時効期限が過ぎても、事故相手が時効の援用をしていなければ、時効は成立していません。そのため、慰謝料の支払いを求めることができます。

Q.自賠責保険でも時効はあるの?

A.自賠責保険に対する損害賠償額の支払請求(いわゆる被害者請求)について、消滅時効期間は「被害者等が損害及び保有者を知った時から」3年とされています。ただし、何らかの事情で請求が遅れてしまうときは、時効の更新に応じてもらえることがあるので保険会社に相談をしてみましょう。

【まとめ】交通事故の慰謝料の時効が心配なら弁護士に相談しよう

交通事故の慰謝料(損害賠償金)はいつまでも請求できるものではなく、一定の期間を経過すれば時効が成立して、請求できなくなる恐れがあります。

事故相手に対して早めに請求するのがよいですが、示談交渉が長引いていたり、ケガの治療に時間がかかって思うように進めることができなかったりするものです

また、時効がいつ成立するかの判断は専門的な知識が必要でもあるため、一般の方には難しい部分もあります。

慰謝料の請求について悩んだときには、交通事故案件に詳しい弁護士に相談をしてみましょう。

示談交渉を任せられますし、後遺障害の等級認定手続などものサポートを受けられるので、慰謝料の請求をスムーズに進められるはずです。

弁護士特約(弁護士費用特約)を利用すれば、弁護士費用の負担を気にせずに依頼が行えます

まずは、気軽に弁護士事務所に相談してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者
西川 研一
弁護士
西川 研一Kenichi Nishikawa
所属団体
第二東京弁護士会所属 第36318号
役職
弁護士法人・響 代表弁護士/西新宿オフィス所長

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