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交通事故の相手が不起訴になる理由は?不起訴だと慰謝料に影響する?

交通事故で大きな損害を負った方としては、事故の相手には刑事事件で起訴されて有罪判決、あるいは厳罰を望むこともあるのではないでしょうか。

しかし事故の相手に強い憤りを覚えていても、ご自身の希望に反して相手が不起訴になってしまうケースは珍しくありません。

そもそも交通事故を起こした人が必ずしも起訴されるわけではなく、起訴されたとしても請求できる慰謝料が高くなるわけではないのです。

この記事では、交通事故を起こした相手が不起訴になる理由と、事故の相手が不起訴になったときの対処の仕方などについて解説します。

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この記事の監修者
西川 研一
弁護士
西川 研一Kenichi Nishikawa
所属団体
第二東京弁護士会所属 第36318号
役職
弁護士法人・響 代表弁護士/西新宿オフィス所長

目次

交通事故の起訴・不起訴とは?

 

「起訴」とは、加害者の処罰を求めて検察官が刑事訴訟を提起することです。

逆に検察官が起訴しないと決めることを「不起訴」といいます

ご自身が重大な交通事故に遭ってしまった場合、相手にはしっかりと責任を負ってほしいものです。

しかし、起訴されるか不起訴となるかの判断は検察官が行い、交通事故で被害を受けた人の意思で変えられるものではありません。

まずは交通事故で生じる責任の種類と、起訴・不起訴の決まり方について見てみましょう。

交通事故で生じる3つの責任

交通事故の相手にどれほど厳しい処罰を望んでも、軽微な交通事故の場合は、起訴される可能背は低いでしょう。

交通事故を起こした人が負う責任には、「刑事責任」「民事責任」「行政責任」の3種類があります。

  • 刑事責任

    法律に違反したことによって刑事裁判を経て科されることになる罰金刑や禁固・懲役刑などです。
    検察を通さなければ起訴されて刑事罰が科されることはなく、被害者や第三者の意向で刑事責任を問うことはできません。

  • 民事責任

    交通事故の当事者が負うことになる損害賠償金などの支払義務のことです
    裁判所などの公的機関を介入させず、当事者どうしの話し合い(示談交渉)だけで解決することもできます。

  • 行政責任

    交通事故で負う行政責任とは、運転免許の減点・免許取り消し・免許停止などのことです。

検察から起訴されて刑事責任を問われることと、損害賠償金を請求して民事責任を問うことは制度が異なるものなので、それぞれ直接影響し合うことはありません。

起訴・不起訴を決めるのは検察官

交通事故が発生すると、警察は一定の捜査を行ったうえで作成した捜査資料一式を検察庁に送付します(送致)

検察官は必要な場合には自ら補充捜査を行い、捜査資料を踏まえて、交通事故を起こした被疑者を刑事責任に問うべきと判断した場合には起訴することになります。

証拠が不十分だったり、軽微な犯罪だったりすると、検察官は不起訴とすることもあります。

重要なのは、起訴・不起訴は法律上検察官だけに与えられた権限だということです。
起訴や不起訴は、交通事故に遭った当事者または警察の考え方や感情で決められるものではありません。

起訴されても損害賠償金が増えるわけではない

交通事故の相手への怒りの感情が抑えられず「高額の慰謝料を払ってもらいたい。そのためには起訴されたほうがいいだろう」と考える人がいるかもしれません。

交通事故の責任を負うという意味ではどちらも同じかもしれませんが、民事責任と刑事責任はまったくの別物です。

起訴されたとしても、損害賠償金が増えるわけではありません

刑事責任が損害賠償額の大きさに直接は影響しない

事故の相手が起訴されて刑事責任を負うことになっても、慰謝料などの損害賠償額が起訴を理由に多くなることは原則としてありません。

逆に不起訴になった場合でも、不起訴を理由に損害賠償額が少なくなることもありません。

というのも刑事責任と民事責任は、その目的も手続きもまったく別だからです。

刑事責任は、法律を犯した人に対して、警察や検察などの公的な機関の捜査、起訴によって国が罰を与えることをいいます。

それに対して民事責任は、個人が個人に対して負う責任であり、交通事故のような不法行為を理由とする場合には、原則として金銭的な賠償によって解決されるものです。

たとえば、昨今厳罰化が進んでいる飲酒運転やあおり運転などは、一般市民の命が脅かされる危ない行為なので法律で禁止されており、違反すれば警察に捕まって処罰されます。

もし飲酒運転やあおり運転によって自分が被害を受けた場合、治療費や自動車修理費などを相手に請求することはできますが、一個人である被害者が相手を法的に処罰することはできません。

交通事故を起こした相手が起訴されたからといって損害賠償の金額に影響することはないと考えておきましょう。

交通事故が関係する刑事責任の一例

交通事故で問われる刑事責任の種類としては次のようなものがあります。

罪名・刑事責任の種類 根拠法令 罰則
自動車運転過失致死傷罪 自動車運転死傷処罰法第5条 7年以下の懲役もしくは禁錮又は100万円以下の罰金
危険運転致死傷罪 自動車運転処罰法第2条 人を負傷させた場合は15年以下の懲役。人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役
過失建造物損壊 道路交通法第116条 6ヶ月以下の禁錮又は10万円以下の罰金
酒酔い運転・酒気帯び運転 道路交通法第65条 (酒酔い運転)5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
(酒気帯び運転)3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
危険防止等措置義務違反
(軽車両の場合、物損事故の場合)
道路交通法第117条の5第1号 1年以下の懲役又は10万円以下の罰金
危険防止等措置義務違反
(軽車両除く運転者による人身事故の場合)
道路交通法第117条1項 5年以下の懲役又は50万円以下の罰金
負傷者の救護と危険防止の措置違反 道路交通法第72条 5年以下の懲役又は50万円以下の罰金
事故報告の義務違反 道路交通法第72条 3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金
無免許運転 道路交通法第117条の2の2第1号 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金

民事責任が果たされれば刑事責任が軽くなることはある

示談交渉が成立し、示談金の支払いによって交通事故被害者への民事責任が果たされると、刑事責任が軽くなる場合があります

刑事事件においては、起訴・不起訴を判断する検察官や、刑罰の重さを決定する裁判官が、交通事故の状況や事故相手の反省態度などを考慮(情状酌量)するからです。

交通事故において示談が成立しているということは、話し合いによって両者が納得していることになります。

被害者側が納得しているなら、量刑が軽くなったり、不起訴となったりする可能性もあるのです。

不起訴になる3つのケース

交通事故で起訴されるか、不起訴になるかは、刑事責任の種類によって異なります

起訴されると99%以上が有罪となるといわれていますが、そもそも不起訴となるケースも珍しくありません。

交通事故を起こした人が不起訴になる理由としては、次の3つのケースが考えられます。

  • 嫌疑なし

    交通事故を起こした本人が有罪ではない、または有罪を立証するための証拠がないことが明白である場合。

  • 嫌疑不十分

    交通事故を起こした本人が有罪である可能性はあるものの、それを証明するための証拠が十分ではない場合。

  • 起訴猶予

    起訴すれば有罪となる可能性は高いが、本人が反省している、被害が軽微、示談成立によって被害者が許しているなどさまざまな情状を考慮して、検察官があえて不起訴とすること。

起訴猶予は有罪になることがほぼ確実で、そのための証拠もありながら、検察官の判断で不起訴にすることです。

検察審査会に対する申立てによって再度審査してもらうことは可能ですが、一度不起訴とされた事件を覆すことは容易ではありません。

起訴にこだわるよりも、別の手続きで納得できる道を検討するほうが得策な場合もあります。

不起訴になっても損害賠償金は請求できる

 

交通事故の相手が不起訴になっても、損害賠償金を請求することはできます

刑事責任と民事責任は影響しないため、不起訴になったからといって損害賠償請求ができなくなるわけではありません。

示談交渉で解決できなければ、民事責任を問うために裁判所に訴えることも可能です。

ただし民事訴訟はある程度の知識や経験を必要とするため、納得できる金額を裁判で認めてもらうことは容易ではありません。

交通事故の損害賠償請求は、交通事故の解決実績が豊富な弁護士に相談することも検討してください。

起訴・不起訴が決まるまでの流れ

交通事故が発生してから起訴・不起訴が決まるまでの一般的な流れを整理しておきましょう。

【起訴・不起訴までの一般的な流れ】

交通事故の発生

警察による捜査

検察庁への送致

検察官による捜査

起訴・不起訴
  

交通事故の場合、被疑者(加害者)は逮捕されるとは限りません

警察によって逮捕・勾留されるのは、事故の加害者が逃げたり、証拠を隠滅したりする恐れがある場合です。

勾留とは一定期間、身柄を拘束されて自由な行動を制限される処分のことです。

逮捕後の身体拘束期間は48時間以内で、それまでに検察に送致されないと釈放となります。交通事故の場合には、被疑者は逮捕されないまま、日常生活を送る中で在宅起訴されることが多いでしょう。

警察による捜査が終わると、事件は検察庁へと送られます(送致)。
必要であれば検察官が補充捜査を行って起訴・不起訴を決めることになります。

【略式起訴の進め方】

軽微な事件の場合は、簡易的な手続き(略式起訴)で処分が決定されることもあります。

通公判請求というかたちで起訴されると裁判が始まりますが、裁判所による判決が出るまでには数ヶ月~年単位の期間が必要になることもあります。

そのため関係者の負担軽減、裁判所という司法資源の有効活用のため、略式起訴という簡易的な手続きが設けられています。

交通事故においては、死亡または重篤な傷害を負わせた事故や、重大な違反行為などでなければ、多くのケースで略式起訴となっています。

略式起訴となるのは、次のような条件を満たしている場合です。

略式起訴となる条件
  • 100万円以下の罰金または科料に相当する事件であること
  • 被疑者(事故当事者)が略式手続きに同意していること
  • 簡易裁判所の管轄に属する事件であること

加害者の起訴・不起訴を確認する方法

加害者の起訴・不起訴については、「被害者等通知制度」という制度を利用することによって知ることが可能です。

通知を受けられる内容は次のとおりです。

通知を受けられる内容
  • 事件の処分結果
  • 裁判結果
  • 加害者が刑務所に入ったときは刑務所出所時期など

処分内容は、交通事故を起こして処分を受ける側が確認することも可能です。

検察官は、被疑者(事故を起こした本人)を不起訴処分にした場合、被疑者本人から請求があれば不起訴処分にした旨を速やかに告げなければなりません。

告知は「不起訴処分告知書」という書面で届くのが一般的です。

交通事故の相手の不起訴に納得がいかないとき

交通事故に遭った人にしてみれば、交通事故の相手が不起訴になって納得がいかないこともあるでしょう。

そうした場合に、被害者側として何ができるのかを次に解説します。

検察審査会に審査を申し立てる

相手の不起訴処分に納得できない場合、まずは検察審査会に審査の申立ができます。

「検察審査会」とは
検察審査会とは、検察官の判断に民意を反映させることを目的に設置された、一般国民の中からくじで選ばれた11人で構成される組織です。
検察官が不起訴処分としたときに、納得がいかなければ検察審査会に審査申立書を提出して、検察官の判断が妥当だったかどうかを審査してもらいます。
審査の申立に費用はかかりません。

審査の申立を受けた検察審査会は、検察官の不起訴処分が妥当だったかどうかを審査します。

検察審査会が「不起訴は妥当ではない」とした場合(起訴相当か不起訴不当)、検察官は被疑者を起訴するか不起訴にするかを再度判断しなければなりません。

検察官の判断を覆すのはかなり難しいといえるでしょう。

弁護士に納得できる解決方法を相談する

交通事故相手の処分に納得がいかないときは、法律の専門家である弁護士に相談するのもいいでしょう。

刑事事件ではなく、民事事件として損害賠償請求を行う方法もあります。

損害賠償金の金額を決める示談交渉は、弁護士に依頼することで納得できる内容で解決できる可能性が高くなります

交通事故の民事責任を追及するには弁護士を頼ろう

交通事故の相手が不起訴になっても、損害賠償金で民事責任を問うことは可能です。

交通事故トラブルの解決実績が豊富な弁護士に依頼することで、適切に示談交渉を進められます。

損害賠償金の支払いが、交通事故の相手に対する厳罰と考えれば、被害を受けた側としても納得のいく解決方法となることもあります。

弁護士に依頼するメリットを、以下で紹介します。

不起訴でも慰謝料を増額できる可能性がある

交通事故の相手が不起訴となって刑事責任が問えなくなっても、精神的苦痛に対する補償である慰謝料を支払ってもらうことで解決が可能といえます。

弁護士に依頼することで「弁護士基準(裁判基準)」で慰謝料を請求することが可能になります

弁護士基準(弁護士基準)は過去の裁判例をもとに設定されている基準で、計算基準の中では最も高額になる可能性が高いです。

弁護士に示談交渉を依頼することで、納得できる損害賠償を請求することが可能になるでしょう。

過去の裁判例にしたがった過失割合をもとに損害賠償請求ができる

損害賠償金は、交通事故の当事者それぞれの過失割合によって金額が変わってきます

「過失割合」とは
過失割合とは、交通事故の責任がどちらにどの程度あるのかを示す割合で、事故の責任に応じて損害賠償金を支払います。

過失割合は、過去の似たような裁判例を目安に決められます。

知識がない一般の方には判断が難しいですし、裁判例とは異なる細かな部分を過失割合に反映させることも大変な作業となります。

最終的には交通事故の相手と示談交渉する必要があるため、適切な判断ができる弁護士のサポートがあると心強いでしょう。

弁護士に依頼すれば、過失割合は過去の裁判例を使って交渉できるので、妥当な金額で損害賠償金の請求が可能です

もめやすい示談交渉もお任せできる

公的な機関である検察が扱う刑事事件とは違い、個人どうしが行う示談交渉は、過失割合や慰謝料の金額などでもめることもあるでしょう。

交通事故の示談交渉の経験豊富な弁護士に依頼すれば、法律や過去の裁判例などの根拠を基に依頼者の弁護をしてくれます。

刑事事件においては、検察官や裁判官は法律に基づいて客観的な判断を下すため、被害者の個人的な感情が反映されるとは限りません。

民事においては個人間の交渉となるため、弁護士は被害者側の意思を尊重した示談交渉を行ってくれることが期待できます

示談交渉の場では、ご自身の代理人として一貫したサポートをしてくれる弁護士が、心強い味方となるでしょう。

示談交渉について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。

【まとめ】交通事故の相手が不起訴でも慰謝料額は左右されない|弁護士に依頼すれば納得のいく請求も期待できる

交通事故の相手が刑事事件で不起訴になっても、損害賠償請求で民事責任を問うことができます

刑事裁判として起訴・不起訴になったことは、慰謝料などの損害賠償金に直接影響するわけではありません。

そのため納得できる解決のために、十分な慰謝料を請求することを検討しましょう

慰謝料の増額を目指すためには、弁護士に依頼する必要があります。

弁護士法人・響の無料相談を利用して、事故の詳細をお聞かせください。

交通事故の解決経験豊富な弁護士が、納得できる解決方法をサポートします。

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