家族が交通事故に遭ったら慰謝料を請求できる?請求のしかたと注意点

交通事故によってつらい思いをするのは、被害者本人だけではありません。
被害者本人が死亡したり、重度の後遺障害と認定された場合には、その家族も大きな精神的苦痛を負います。
このような場合は、被害者の家族も慰謝料を請求できます。
納得できる慰謝料を請求するためにも、死亡慰謝料や後遺障害慰謝料の仕組みについて、正しく理解しておきましょう。
この記事では、交通事故の被害者家族が慰謝料を請求するときのポイントと、気をつけるべき点について解説しています。
※この記事では「加害者=過失の割合が大きいほうの交通事故の当事者」「被害者=過失の割合が小さいほうの交通事故の当事者」としています。

- 慰謝料を増額できる可能性がある
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目次
被害者家族が慰謝料を請求できる3つのケース
交通事故の被害に遭った場合、慰謝料を請求できるのは事故に遭った本人だけではありません。
事故によって重度の精神的な苦痛を受けたときには、被害者の家族も相手側に慰謝料の請求ができます。
家族が慰謝料を請求できるのは、
- 被害者本人が死亡した場合
- 被害者本人が重度の後遺障害等級認定を受けた場合
- 同乗していてケガを負った場合
の3つです。
3つのケースについてまとめると、以下のようになります。
ケース | ポイント |
---|---|
被害者本人が死亡した場合 |
|
被害者本人が重度の後遺障害等級認定を受けた場合 |
|
同乗していてケガを負った場合 |
|
慰謝料を請求できないケース
事故に遭った本人が死亡したり、重傷を負ったケースであれば、その家族も慰謝料請求は可能です。
これは、重篤なケース以外では、家族への慰謝料は発生しないともいえます。
交通事故に遭った本人のケガが軽傷で後遺症が残っていない場合などは、家族が慰謝料を請求することはできません。
請求できるケース1 被害者本人が死亡したとき
事故に遭った本人が死亡した場合、残された家族は相手に対して死亡慰謝料(近親者慰謝料)を請求できます。 ちなみに死亡慰謝料は原則として相続税の対象とはなりません。
では、死亡慰謝料はどれぐらいの金額が請求できるのでしょうか。
ここでは、家族に支払われる死亡慰謝料の仕組みと金額について紹介します。
死亡慰謝料は2種類
交通事故によって被害者が死亡した場合、請求できる慰謝料は2種類あり、その合計が遺族に支払われます。
本人分の慰謝料
被害者が死亡した場合は、被害者本人分の慰謝料を請求できます。
この場合は死亡した本人は請求できませんので、相続人である遺族が請求します。
遺族への慰謝料
死亡事故の場合は事故に遭った被害者本人だけでなく、残された家族も大きな精神的苦痛を負うため、本人への慰謝料とは別に遺族にも慰謝料請求権が認められています。
遺族への慰謝料が請求できるのは、
- 本人の父母(養父母含む)
- 配偶者
- 子ども
ですが、内縁関係の妻(夫)や胎児にも慰謝料請求権が認められています。
死亡慰謝料の計算方法
死亡事故を含む慰謝料の算定基準には
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準(裁判基準)
の3つがあり、それぞれ計算方法が異なります。
自賠責保険基準での死亡慰謝料
交通事故の被害者に対して最低限の補償を目的としており、もっとも低い基準額になります。
自賠責保険基準での慰謝料は、以下のように規定されています。(2020年4月1日以降発生の事故の場合)
本人への慰謝料 |
---|
400万円 |
遺族への慰謝料 | |
---|---|
遺族が1人の場合 | 550万円 |
遺族が2人の場合 | 650万円 |
遺族が3人以上の場合 | 750万円 |
※さらに被扶養者がいる(死亡した本人の収入で生計を立てている)場合は、上記の金額に200万円が追加されます。
たとえば、父親・母親・子どもの3人家族(生計を父親の収入で立てている)で、父親が交通事故によって死亡した場合、残された母親と子どもが受け取れる死亡慰謝料は以下のようになります。
400万円+650万円+200万円=1,250万円
任意保険基準での死亡慰謝料
保険会社が独自に設定している基準で、金額は会社によって異なります。
基本的に、弁護士基準(裁判基準)よりも低い金額が設定されています。
弁護士基準(裁判基準)での死亡慰謝料
過去の裁判例をもとに設定されている基準で、弁護士に依頼したときにはこの基準が適用されることになります。
3つの基準の中では最も高額になる可能性があります。
属性 | 慰謝料額の相場 |
---|---|
一家の支柱(家庭の生計を支えている) | 2,800万円程度 |
配偶者・専業主婦(主夫) | 2,500万円程度 |
子ども・高齢者・その他 | 2,000〜2,500万円程度 |
弁護士基準について詳しくはこちらの記事をご参照ください。
【関連記事はこちら】
『交通事故の弁護士基準(裁判基準)とは?慰謝料で後悔しないために』
請求できるケース2 被害者本人が後遺障害を負ったとき
ケガが完治せずに後遺症が残り、後遺障害等級の認定を受けた場合は、被害者本人は後遺障害慰謝料を請求できます。
死亡事故でなくても、重い後遺障害が残ったケースであれば、家族にも別途慰謝料が支払われる可能性があります。
重い後遺障害とは、 本人の意識が戻らない ・重度の高次脳機能障害 ・手足が動かせないほどの麻痺(まひ)状態 で、後遺障害等級でいえば、1〜2級の等級認定を受けたとき、本人とは別に家族にも慰謝料が発生するケースが多く見られます。
※3級以下でも家族への慰謝料が認められたケースもあります。
家族が受け取れる後遺障害慰謝料については、死亡慰謝料のような基準は設けられてはいません。
請求が認められた裁判例
【裁判例1】脳挫傷で後遺障害1級に認定された主婦のケース
寝たきりの状態になり家族による介護が必要とされたため
- 本人への慰謝料:2,800万円
- 家族への慰謝料:夫に300万円、長女とその夫に各200万円
合計3,500万円の後遺障害慰謝料が認められた。 (平成18年11月、長野地裁)
【裁判例2】高次脳機能障害、下肢短縮で後遺障害併合2級に認定された男性のケース
精神状況が大きく変化した夫を将来にわたって看護する必要性や、 子ども2人も強いショックを受けたと推認され
- 本人への慰謝料:2,370万円
- 家族への慰謝料:妻に200万円、子どもに各100万円
合計2,770万円の後遺障害慰謝料が認められた。 (平成20年1月、東京地裁)
【裁判例3】高次脳機能障害で併合4級に認定された男児のケース
長年にわたって後遺障害を抱えること、また両親は事故直後から本人の重篤な状態に悩まされてきたことなどから
- 本人への慰謝料:1,670万円
- 家族への慰謝料:両親に各50万円
合計1,770万円の後遺障害慰謝料が認められた。 (平成25年7月、さいたま地裁)
家族への慰謝料額は、後遺障害の等級や今後必要になる介護状況によって判断されます。
上記は裁判の判決によって家族への慰謝料が認められた例です。
介護が必要なのに相手方の保険会社から提示された慰謝料に家族への慰謝料が含まれていなければ、弁護士などに相談してみるとよいでしょう。
後遺障害の等級について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
【関連記事はこちら】
『後遺障害等級認定をわかりやすく解説!申請方法と補償制度について』
請求できるケース3 被害者家族が運転する車に同乗していたとき
家族が運転する車に乗って交通事故に遭ってしまったときには、法的には運転者と相手の両方に損害賠償請求ができます。
実際には交通事故の相手に賠償を求めることになります。
慰謝料の計算方法については、運転者が事故に遭った場合と同じ水準となる点も押さえておきましょう。
事故状況によっては、搭乗者傷害保険や人身傷害補償保険から保険金を受け取れることもあります。
任意保険に加入しているときには、事故後の早い段階で保険会社に連絡をして、どのような補償が受けられるのかを確認しておきましょう。
慰謝料の仕組みや金額の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
【関連記事はこちら】
『交通事故の慰謝料の相場は?計算機で通院期間別にシミュレーション』
慰謝料の請求で悩むときには弁護士に相談しよう
家族が交通事故によって死亡したり、重度の後遺障害を負った場合には、本人以外では立証が難しいケースもあります。
また後遺障害の認定を受けるには手続きも必要となりますので、家族の負担も大きくなります。
交通事故との因果関係を示すためには、専門的な知識の他にも事故状況の把握をすることが必要になりますが、家族では対応が難しい場合もあるのです。
慰謝料の請求で悩んでしまったときには、交通事故事案の解決実績が豊富な弁護士に相談することも検討してください。
- 相手との示談交渉や手続きなどを代理してくれる
- 納得のいく損害賠償額を請求できる
- 弁護士基準(裁判基準)で算出してくれるため、慰謝料が増額する可能性がある
弁護士法人・響は交通事故事案の解決実績が豊富な弁護士が多数在籍しています。
相談は無料ですので(弁護士費用特約がない場合)、お気軽にご相談ください。
まとめ
交通事故によって家族が死亡したり、重度の後遺障害と認定されたりした場合には、家族自身の慰謝料を請求できます。
慰謝料の算定基準や金額の目安を把握して、納得できる形で請求することが大切です。
ただ、本人でないケースでの慰謝料請求では、立証が難しい面もあります。
また、死亡事故や重度の障害が残るような事故では損害賠償金も大きくなるため、相手方の保険会社との交渉も難航してしまいがちです。
慰謝料の請求に困っているなら、交通事故事案の解決実績が豊富な弁護士に相談をしてみましょう。
※本メディアは弁護士法人・響が運営しています
※本記事の内容は2022年8月19日時点の情報です。

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