2021.10.22 2021.11.9

交通事故の過失割合で慰謝料は変わる?納得できないときの対処法

交通事故に遭ったら、受けた損害について相手に補償を求めることができますが、どのような基準で決められるのか把握することは重要です。

交通事故が発生した原因に対して、当事者双方の責任割合を示したものを「過失割合」といいます。

過失割合は慰謝料額にも影響するため、基本的な考え方を理解しておきましょう。

また過失割合に納得できないときは変更できる可能性もあるので、その方法を理解しておくことも大切です。

この記事では、過失割合や慰謝料に納得できないときの対処法を紹介します。

①  交通事故の過失割合とは事故の責任の割合

「過失割合」とは
事故が起こった原因に対する責任の度合いを示すものです。

当事者どうし(双方の保険会社)の話し合いによって決められるものであり、警察が決めるものではありません

事故の被害に遭うと自分では被害者だと思ってしまいがちですが、一般的な交通事故は当事者双方に責任がある場合が多いといえます。

過失割合は事故状況に応じてある程度の目安が決まっており、車どうしのおもな例を取り上げると以下のようになります。

過失割合(自分:相手) 事故の例
0:10 ・追突事故(もらい事故)
1:9 ・優先道路で起きた事故
・駐車場などの敷地に右折で進入しようとしたときの事故
2:8 ・直進車と右折車の事故
・一方に一時停止規制がある交差点内での事故
・赤信号で進入してきた緊急車両との事故
・Uターン時の事故
3:7 ・同じ方向に走行する車の事故(進路変更での事故・高速道路の合流地点での事故)
4:6 ・道幅が同じ交差点内での事故
・高速道路での追突事故
5:5 ・駐車場内の交差点での出合い頭の事故

※ここで示す過失割合はあくまで例ですので、実際とは異なる場合もあります。

過失割合の例

上記のように、交通事故が起こった状況によって過失割合は違ってきます。

過去に起こった交通事故の事例をもとに、自分がどのケースに当てはまるのかを把握しておくことが重要です。

①  修正要素によって過失割合は変わる場合もある

過失割合を考えるうえでは「修正要素」についても理解しておく必要があります。

過失割合の「修正要素」とは
個別の事故状況を考慮して過失割合を修正するものであり、加算要素・減算要素の2種類に分けられます。

車どうしの事故の場合、下記のような修正要素に当てはまるときには5%~20%程度、過失割合が加算・減算されるケースがあります

修正要素
著しい過失 ・脇見運転など前方不注視が著しい場合
・酒気帯び運転
・時速15キロ以上30キロ未満のスピード超過違反
・著しいハンドルまたはブレーキの操作ミス など
上記のケースに当てはまる場合は、過失があった側の加算要素となります
重過失 ・居眠り運転
・無免許運転
・酒酔い運転
・時速30キロ以上のスピード超過違反
・嫌がらせ運転 など
上記のケースに当てはまる場合は、過失があった側の加算要素となります
大型車 大型車は運転手の注意義務が重くなるため、大型車側の加算要素となります。
直近右折 直進車の至近距離で右折するケースです。交差点で直進車が停止線を越えた後の右折などが挙げられ、右折車の過失割合の加算要素となります。
早回り右折 交差点の中心の内側を進行する右折の方法ではない右折のことを指します。右折車の行動によって事故の可能性が増すため、右折車側の加算要素となります。
大回り右折 中央に寄らないで行う右折を指します。右折車側の加算要素となります。
既右折 右折しようとする対向車が直進車線に入っているときに、直進車が注意すれば事故が避けられた場合のケースです。右折車に有利な事情として、減算要素となります。
道路交通法第50条違反の直進 交差点などへの進入が禁止される状況で交差点へ進行した場合を指します。交差点に進入した側の加算要素となります。

上記のケースに当てはまる場合、過失割合が変更となる可能性があります

事故状況をしっかりと確認したうえで、疑問に感じる部分は専門家である弁護士に相談してみましょう。

②  過失割合によって慰謝料はどう変わる?過失相殺とは

「過失相殺」(かしつそうさい)とは
過失割合に応じて示談金から相手に与えた損害額を差し引くものであり、民法第722条2項に定められています。

【民法第722条2項】

被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

過失相殺

例えば、過失割合が3:7で車の修理代として30万円の損害額が発生している場合、実際に受け取れる金額は次のとおりです。

30万円(車の修理代)×70%(100%-被害者の過失割合)=21万円(受け取れる金額)

※過失割合が少ないほうを被害者としています。

過失相殺は慰謝料だけでなく、治療費や修理代といった示談金すべてに適用される点に注意が必要です。

示談金が100万円だった場合、実際に受け取れる慰謝料は以下のようになります。

過失割合(自分:相手) 受け取れる示談金
0:10 100万円
1:9 90万円
2:8 80万円
3:7 70万円
6:4 60万円

事故の相手に損害を与えている場合には、相手が被った損害を負担しなければならないケースもあります。

相手 自分
過失割合 80% 20%
損害額(物損) 40万円 100万円
請求額 8万円
(40万円×0.2)
80万円
(100万円×0.8)
受け取れる金額 0円 72万円
(80万円-8万円)

※弁護士法人・響では、物損のみの場合はご相談をお引き受けできません。

過失割合が少し異なるだけでも、最終的に受け取れる金額に違いがあるので、相手方との話し合いを慎重に進めていくことが大切です。

<弁護士のここがポイント>
もらい事故などを除き、交通事故においては当事者の双方に何らかの責任が生じることが多いです。ご自身が受けた損害だけでなく、相手に与えた損害によって最終的に受け取れる示談金に違いがあることを押さえておきましょう。

入通院慰謝料と過失割合の関係を事例で紹介

過失割合の違いによって、事故状況やケガの程度が同じでも受け取れる入通院慰謝料が異なります。

以下のケースでは過失割合の違いによって、どれくらい金額が異なるのかを見ていきましょう。

・信号機のない交差点で右折車(相手)と直進車(自分)が衝突事故を起こした。
・骨折によって、入院1ヶ月・通院5ヶ月と診断された。
・過失割合は8(相手):2(自分)と言われた。
・入通院慰謝料の金額は105万円だが、過失割合によって84万円と提示された。

過失割合 慰謝料額 差額
2:8 84万円 21万円
1:9 94万5,000円 10万5,000円
0:10 105万円

※実際は相手方との話し合いによって決められるため、金額が異なる場合があります。

上記のように、ご自身の過失割合が少なくなるほど、受け取れる入通院慰謝料は多くなる点を押さえておきましょう。

入通院慰謝料について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。

自賠責保険は過失割合で減額されない場合もある

交通事故において、自賠責保険から補償が行われるケースがあります。

例えば、家族が運転する車に同乗していた人に対する補償などです。

自賠責保険から慰謝料が支払われる場合には、被害者の過失が70%未満であれば、過失割合による減額は行われないことになっています。

これは、自賠責保険の目的が被害者を保護するためであり、重大な過失がある場合を除いては以下のように減額されないのです。

減額適用上の被害者の過失割合 減額割合
後遺障害または死亡 傷害
70%未満 減額なし 減額なし
70%~80%未満 20%減額 20%減額
80%~90%未満 30%減額
90%~100%未満 50%減額

参照元:国土交通省「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」

ただし、自賠責保険では慰謝料や治療費などを含め、上限120万円までしか補償されない点に注意しておきましょう。

自賠責保険が適用された場合に、どの程度の金額が支払われるのかを前述のケースと同様に見ていきましょう。

・信号機のない交差点で右折車(相手)と直進車(ご自身)が衝突事故を起こした。
・骨折によって、入院1ヶ月・通院5ヶ月と診断された。

過失割合 慰謝料額 減額幅
2:8 77万4,000円 減額なし
1:9 77万4,000円 減額なし
7:3 61万9,200円 20%減額

※自賠責保険の入通院慰謝料は、1日あたり4,300円(2020年4月1日以降に発生した交通事故)。4,300円×入通院日数で計算。

損害額が120万円未満の場合、事故状況によっては自賠責保険から補償を受けるほうがよい場合もあります

過失割合は交渉によって決まるが注意点もある

過失割合は「赤い本」などの過去の判例をもとに、相手方との話し合いによって決められます。

「交通事故証明書」は警察への届け出を行うことで発行されますが、あくまで事故が起こった事実を示す証明書であり、過失割合が記載されているわけではありません。

これは「民事不介入の原則」から、警察は過失割合について関与しないことになっているからです。

しかし、一般の方が保険会社と示談交渉を進めるときには注意が必要です。

保険会社から提示された過失割合をそのまま受け入れてしまうと、「納得できない」と感じてしまうこともあるでしょう

ここでは、自転車対自動車の追突事故の事例を1つ紹介します。

【事故の事例】 女性・76歳
自転車で停車中に、後ろから来た軽自動車に追突され、入院1ヶ月+通院10ヶ月のケガを負いました。

本来であれば被害者の過失割合はゼロとなる可能性が高い事例ですが、自転車にまたがっていたという理由で過失割合15:85とされました

そのため、示談金のすべての項目から15%が引かれてしまったのです。

相手側の対応は良心的であり、被害者自身も特に疑問を感じていなかったので、弁護士への依頼は行いませんでした。

弁護士特約の利用についてよくわからなかった部分があり、依頼することで慰謝料の増額が目指せるなら依頼を検討していたかもしれないと振り返っています。

追突事故の被害に遭って、いきなり過失割合と言われても、一般の方にはどのラインが適正な水準なのか判断しづらいものです。

過失割合の判断に自信がないときは、専門家である弁護士に相談をすることでより望ましい成果を得られやすくなります。

<弁護士のここがポイント>
交通事故の過失割合は当事者間の話し合いによって決まりますが、交渉を進めるうえでは注意も必要です。過失割合は事故状況に応じて異なってくるため、まずは適正な水準を把握しておくことが大切です。しかし、一般の方には判断がつきづらい部分もあるので、迷ったときは交通事故案件に詳しい弁護士に相談をしてみましょう。

④  過失割合0:10の場合は自身の保険会社は交渉してくれない

ご本人の過失割合がゼロとなる場合(追突事故・もらい事故)、加入する任意保険会社は示談交渉に関与してくれません。

これは相手側に対して補償すべきものがないからであり、過失割合が10:0となるときは自ら示談交渉を進めていく必要があります。

しかし、一般の方が保険会社を相手に交渉を進めるのは大変です。

相手が提示してくる示談金に納得ができなくても、どのように対処すればいいか困ってしまう場面もあるでしょう。

示談交渉が面倒だからといって、安易に示談を成立させてしまえば、後から悔やむことにもつながりかねません。

相手の言い分をふまえたうえで、慎重に対応することが必要です。

過失割合が0対10の場合について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。

過失割合や慰謝料に納得できないときは弁護士に相談

相手側が提示してくる慰謝料や過失割合に納得できないときは、調停やADR(裁判外紛争解決手続)を利用して解決を図ることもできます。

第三者が中立的な立場で解決を図ってくれますが、必ずしも個別の事情が反映されるわけではなく、納得のいく結果を得られるとはかぎりません。

適正な補償を受けるためには、交通事故案件に詳しい弁護士へ直接依頼をすることも検討してみましょう。

弁護士に依頼をすれば、保険会社との交渉を任せたり、慰謝料の増額を期待することもできます

複雑な交渉を任せられることで、精神的な負担を軽減できるでしょう。

ここでは、交通事故案件を弁護士に依頼するメリットを紹介します。

弁護士のメリット1 適正な過失割合がわかる

過失割合は相手方との話し合いによって決まりますが、一般の方には適正な基準がわかりづらいものです。

相手の保険会社も過去の判例などをもとに過失割合を提示してきますが、必ずしも個別の事情をくみ取ってくれるわけではありません。

専門的な知識を備えた弁護士に依頼をすることで、妥当な過失割合の基準を知ることができます。

示談金が高額になるほど、過失割合がわずかに違うだけでも大きな影響が出てくるので注意が必要です。

弁護士に相談して、適正な過失割合の基準を把握してみましょう。

弁護士のメリット2 納得できる過失割合に変更できる可能性がある

過失割合について納得できないときは、弁護士に依頼をすることで変更できる可能性もあります。

過失割合の変更が可能

過去の判例と照らし合わせるだけでなく、最新の判例や個別の事情、修正要素などをふまえたうえで相手方に主張できるからです。

弁護士に依頼をしたからといって、必ずしも過失割合が変更できるわけではありませんが、交渉自体を行ってもらうのは大切です。

弁護士を通じて示談交渉を進めることで、相手の保険会社も適切な対応をとってくれる場合があります。

不利な過失割合を受け入れてしまうのではなく、粘り強く交渉を進めてみましょう。

弁護士のメリット3 受け取れる示談金が増える可能性がある

弁護士に依頼をすれば、慰謝料などの示談金を「弁護士基準(裁判基準)」で請求できます。

示談交渉を代行

弁護士基準は弁護士に依頼した場合や裁判を起こした場合に適用されるもので、計算基準のなかでは最も高額になることが特徴です。

示談金が高額になる場合や、請求する項目が複数あったりするほど、計算基準の違いによって受け取れる金額にも大きな違いが出てきます。

自分で請求する場合はそもそもどのような項目で請求できるのかわからない場合も多いですが、弁護士に依頼をすればもれなく請求が可能です。

納得できる示談金を受け取るためにも、弁護士に相談をしてみましょう。

弁護士のメリット4 交渉を任せて精神的な負担を減らせる

ケガの治療を続けながら、相手の保険会社とやりとりを行うのは、負担に感じてしまう部分も少なくありません。

やりとりが面倒だからといって、安易に妥協をしてしまうと後悔してしまう場合もあります。

交渉に長けた弁護士に依頼をすれば、保険会社とのやりとりや示談交渉をすべて任せられます。

相手方と直接やりとりをせずに済むため、時間的・精神的な負担を軽減できるでしょう。

交通事故においてはさまざまなことに対応しなければならないため、どのように負担を減らすかが重要です。

依頼者の立場に立って寄り添ってくれる弁護士を見つけて、少しでも負担を減らしてみましょう。

弁護士のメリット5 後遺障害の等級認定手続をサポートしてもらえる

ケガの治療を続けても完治せず後遺症が残ってしまった場合、「後遺障害の等級認定手続」を行うことが重要です。

後遺障害と認定されれば、等級に応じて後遺障害慰謝料や逸失利益の請求を行えます

弁護士は後遺障害等級認定を代行

しかし等級認定手続は専門的な知識が必要であり、申請のための書類を集めるのも大変な作業です。

どうにか自分で申請をしたとしても、実際の症状に見合った等級に認定されるとはかぎりません。

後遺障害の等級認定手続は、弁護士にサポートしてもらうことが可能であり、納得のいく結果を得られるといえるでしょう

申請にあたって大事なポイントや医師とのやりとりのアドバイスを受けられるので、スムーズに手続きを進めやすくなります。

交通事故被害を弁護士に依頼するメリットについては、以下の記事でも解説しています。

【まとめ】交通事故の過失割合は慰謝料に影響する!納得できない場合は弁護士へ相談を

交通事故の過失割合を巡っては、当事者の双方でもめやすいポイントです。

示談交渉がいつまでもまとまらなければ、必要な補償が受けられずに困ってしまう場合もあるでしょう。

過失割合は相手方との話し合いによって決められますが、一般の方が自分で交渉するのは難しい面があります。

交通事故案件に詳しい弁護士に依頼をすることで、納得できる形で交渉を進めることが可能になるといえます。

弁護士法人・響では、年間を通じて交通事故案件に関する多くのご相談を承っております。

初めての方でもご納得いただけるよう、ていねいな対応を心がけておりますので、どんなに小さなお悩みでもお気軽にお問い合わせください。

1日も早く問題を解決して、元の生活を取り戻せるようにお手伝いをさせていただきます。

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