交通事故の慰謝料は打撲でも請求可能?適正な金額をもらうために
「交通事故で打撲と診断されたけど、慰謝料は請求できる?」
「打撲での慰謝料の金額はどれくらい?」
交通事故の慰謝料のうち傷害慰謝料(入通院慰謝料)は、事故によって発生したケガの精神的苦痛に対する補償です。
たとえば打撲などの軽症と見られがちな症状でも、痛みがあったり通院をしているなら慰謝料の請求は可能です。
むしろ気をつけるべきは、ケガを負った本人が「打撲程度では慰謝料は請求できないのでは」と遠慮してしまうことです。
本来請求できるはずの慰謝料を、事故後の対応をおろそかにしたせいで受け取れなくなる可能性があります。

- 慰謝料を増額できる可能性がある
- 保険会社との交渉を徹底サポート
- 24時間365日全国どこでも相談受付中
目次
交通事故で打撲と診断されたときの慰謝料の目安
- 「打撲」とは
- 交通事故などで衝突や転倒などの強い衝撃を受け、筋繊維や血管が損傷することです。
衝撃の程度や受けた部位、治癒力などによって治療期間が変わります。
治療のための入院・通院にかかった期間、つまり交通事故発生日から完治までの期間や通院日数に応じて、慰謝料が算出されます。
また完治せず後遺症が残ってしまう場合では、治療を続けてもそれ以上はよくならないという「症状固定」までの期間が治療期間とされます。
この後、打撲の場合の慰謝料の目安について解説していきます。
慰謝料は算出基準で大きく異なる
交通事故の慰謝料については、2つの基準があることを知っておきましょう。
算出する基準によって慰謝料の金額が変わってきます。
- 自賠責保険基準
自動車損害賠償保障法をもとに補償額を算定する。法令で決められた最低限の補償で最も金額が低い。 - 弁護士基準(裁判基準)
過去の裁判例をもとに設定されている基準。
最も金額が高くなる可能性が高い。
次に、それぞれの基準で慰謝料の金額がどのように算定されるかをくわしく解説していきます。
自賠責保険基準の入通院慰謝料は対象となる日数×4,300円
自賠責保険基準による慰謝料の計算方法は以下のとおりです。
慰謝料の対象となる日数✕4,300円
治療の対象となる日数とは、「治療期間」もしくは「実通院日数×2」の少ない方です。
入院した日数は、すべて実通院日数として計算します。
以下に計算例を6パターン示してありますので、参考にしてください。
■治療期間が2週間(14日)、通院日数が5日・8日の場合の慰謝料額
治療期間 | 実通院(入院)日数 | 慰謝料額 |
---|---|---|
2週間(14日) | 5日 | 4,300円×5日×2=43,000円 |
2週間(14日) | 8日 | 4,300円×14日=60,200円 |
通院・入院日数が8日のケースでは「通院日数×2=16日」>「通院期間14日」となり、短い方の14日で算定されます。
■治療期間が1ヶ月(30日)、通院日数が10日・20日の場合の慰謝料額
治療期間 | 通院・入院日数 | 慰謝料額 |
---|---|---|
1ヶ月(30日) | 10日 | 4,300円×10日×2=86,000円 |
1ヶ月(30日) | 20日 | 4,300円×30日=129,000円 |
通院・入院日数が20日のケースでは「通院日数×2=40日」>「通院期間30日」となり、短い方の1ヶ月(30日)で算定されます。
■治療期間が3ヶ月(90日)、通院日数が20日・50日の場合の慰謝料額
治療期間 | 通院・入院日数 | 慰謝料額 |
---|---|---|
3ヶ月(90日) | 20日 | 4,300円×20日×2=172,000円 |
3ヶ月(90日) | 50日 | 4,300円×90日=387,000円 |
通院・入院日数が50日のケースでは「通院日数×2=100日」>「通院期間90日」となり、短い方の3ヶ月(90日)で算定されます。
弁護士基準は通院期間1ヶ月で19万円が目安
弁護士基準(裁判基準)に基づく計算方法は、日本弁護士連合会(日弁連)が発行している「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)に掲載されています。
入院と通院で慰謝料額は異なります。
また、赤い本における傷害慰謝料の算定方法には、別表Ⅰによる場合と別表Ⅱによる場合があります。原則として別表Ⅰが使用されますが、むちうち症で他覚所見がない場合等は別表Ⅱが使用されます。今回の例である打撲のケースでは、別表Ⅱが使用されることになります。
参考として、「赤い本」別表Ⅱに基づく入院・通院の慰謝料額を示します。
入院の場合 | 通院の場合 | |
---|---|---|
1ヶ月 | 35万円 | 19万円 |
2ヶ月 | 66万円 | 36万円 |
3ヶ月 | 92万円 | 53万円 |
4ヶ月 | 116万円 | 67万円 |
5ヶ月 | 135万円 | 79万円 |
6ヶ月 | 152万円 | 89万円 |
※参考:日弁連交通事故相談センター 東京支部「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」
たとえば、通院期間が45日間の場合は以下のように計算します。
1. 45日間を1ヶ月(30日)と15日に分ける
2. 15日分の慰謝料額を算出する。
(2ヶ月の通院慰謝料-1ヶ月分の慰謝料)÷30日×15日
(36万円-19万円)÷30日×15日=8.5万円
4. 1ヶ月分の慰謝料と15日分の慰謝料を足す
19万円+8.5万円=27.5万円
最も高額な慰謝料になる可能性が高い弁護士基準
2つの基準の中では、弁護士基準(裁判基準)に基づいて算定した慰謝料がもっとも高くなる可能性があります。
■通院期間1ヶ月(通院日数10日)の慰謝料比較
自賠責保険基準 | 弁護士基準(裁判基準) |
---|---|
8.6万円 | 19万円 |
ただし事故に遭ったご自身が弁護士基準(裁判基準)に基づく慰謝料を請求したとしても、保険会社がそれを聞き入れて慰謝料が支払われることは、ほとんどありません。
弁護士基準(裁判基準)に基づく慰謝料を請求するためには、原則として弁護士に示談交渉を依頼する必要があります。
交通事故で打撲の慰謝料を適切にするためのポイント4つ
これまで説明したように交通事故の傷害慰謝料は、通院の期間(日数)によって左右されます。
そのため整形外科医などの医師の診断を受けて症状が完治、または固定するまで通院を続ける必要があります。
ここからは、適切な慰謝料を受け取るためのポイントについて解説していきます。
慰謝料の相場や事例について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。【関連記事はこちら】
『交通事故の慰謝料相場はいくら?入通院日数ごとの相場や事例を紹介』
ポイント1.事故後すぐに医師の診断を受ける
打撲が交通事故によるものであることを証明するためには、医師の診断書が必要です。
打撲の場合は整形外科などの病院で診断を受けて、医師に診断書を書いてもらいます。
しかし、整骨院などで受診する際は注意が必要です。
整骨院の先生は医師ではなく「柔道整復師」の資格を有しているため、診断書の発行はできません。
そのため診断書を発行してもらうには、整形外科などの病院で受診します。
整骨院などでリハビリを受ける場合は、事前に医師や相手の保険会社に確認したうえで行うようにしましょう。
また、ケガをしてから時間が経ってしまうと、症状と事故との因果関係を証明しづらくなってしまうため、早めに受診しましょう。
そのうえで適切な頻度で通院を続けることが、慰謝料請求のうえでも重要です。
ポイント2.保険会社に治療費の打ち切りを打診されても完治するまで通院する
通院治療は、医師から完治または症状の固定を告げられるまで続ける必要があります。
自己判断で、途中で打ち切るのは賢明ではありません。
事故による打撲などで通院していると、相手側の保険会社が3ヶ月ほど経った頃に、一方的に治療の打ち切りを宣告してくる場合があります。
完治もしくは症状固定をしていないのに打ち切りに応じてしまうと、通院期間に影響される傷害慰謝料が少なくなってしまう可能性があります。
「治療代がかさむ」「仕事を休むと収入が減る」など、金銭的な理由で通院を早めに切り上げたい場合でも、治療費や休業損害分は慰謝料とは別に補償されるので、可能な限り必要な通院は継続することをおすすめします。
また、領収書も保管しておくことを忘れないようにしましょう。
ポイント3.後遺症が残ったら後遺障害の認定を受ける
打撲を受け、治療に努めても後遺症が残ってしまうこともあります。
交通事故によるケガの場合、医師によって症状固定が認定されると、その時点で残った支障(後遺障害)について「後遺障害等級認定」を受けられる可能性があります。
自賠責保険から後遺障害等級の認定を受けると、入通院による慰謝料とは別に、後遺障害慰謝料も請求できるようになります。
打撲による後遺障害では「局部に神経症状を残すもの」として認定される可能性があり、慰謝料は以下のとおりです。
後遺障害認定等級 | 内容 | 自賠責保険基準 | 弁護士基準(裁判基準) |
---|---|---|---|
14級(9号) | 局部に神経症状を残すもの | 32万円 | 110万円 |
12級(13号) | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 94万円 | 290万円 |
※出典:自賠責保険基準は「自動車損害賠償保障法施行令別表第2」、弁護士基準(裁判基準)は「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」
申請の際に書類の不備などがあると認定が受けられなくなる可能性があるため、弁護士に相談しましょう。
後遺障害等級認定について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。【関連記事はこちら】
後遺障害等級認定をわかりやすく解説!申請方法と補償制度について
ポイント4.相手が自転車のときは自身が加入している保険を活用
自動車やバイクを購入する際には、自賠責保険への加入が必須です。
しかし自転車の場合は保険加入が義務付けられておらず、購入者が任意保険に加入するケースもまだ多いとはいえません。
この場合は、慰謝料請求も難しくなってきます。
交通事故でけがをした本人が任意保険に加入していれば、申請することで慰謝料を受け取れる場合もあります。
加入している任意保険の内容を確認しておきましょう。
【まとめ】交通事故の打撲による慰謝料のトラブルは弁護士に相談
ここまで説明してきた内容について、重要な点を振り返ってみましょう。
交通事故の慰謝料を算定する際は、以下の2つの基準が用いられます。
- 自賠責保険基準
- 弁護士基準(裁判基準)
この中では、弁護士基準(裁判基準)がもっとも慰謝料が高く算定される可能性のある基準です。
弁護士基準(裁判基準)で慰謝料を請求するには、弁護士に依頼する必要があります。
打撲の症状で「弁護士に依頼するのは大げさかも…」と思うかも知れませんが、以下のようなケースなら相談するメリットがあります。
- 長期間にわたり完治しない
治療期間が長くなると傷害慰謝料も大きくなるため、弁護士費用をかけても高い基準で請求できる可能性がある - 後遺症が残ってしまった
後遺障害等級認定を受けると、傷害慰謝料とは別に後遺障害慰謝料も請求できる - 保険に弁護士費用特約が付帯している
ご自身やご家族の保険に弁護士費用特約が付帯されていると、弁護士費用が補償される場合がある
また弁護士に依頼することで、相手方や保険会社に対する示談交渉を任せられる利点もあります。
歩行中の事故や過失のない事故などでは、ご自身が加入している保険会社が交渉することができません。
そこで弁護士に依頼すると、他の損害賠償(休業損害など)や過失割合についての交渉も任せることができます。
弁護士費用特約が使えない場合でも相談料や着手金が無料の弁護士事務所もあるので、まずは気軽に相談してみましょう。
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