交通事故で注意したい保険会社の対応は?納得いく示談の進め方を解説
交通事故に遭ってケガをした場合は、慰謝料などの損害賠償金(示談金)を請求するために相手側の保険会社と示談交渉をする必要があります。
事故のあとはショックが大きく、示談交渉のことまで考える余裕はないかもしれません。
しかし、相手側の保険会社に言われるがままにしていると、不利な条件で交渉が進んでしまう可能性があります。
この記事では、交通事故に遭った際に、相手側の保険会社とどのように示談交渉すべきかを解説します。
保険会社との交渉で後悔しないための注意点も説明しますので、交通事故の被害でお悩みの方は、ぜひご一読してください。
※この記事では「加害者=過失の割合が大きい交通事故の当事者」「被害者=過失の割合が小さい交通事故の当事者」としています。

- 慰謝料を増額できる可能性がある
- 保険会社との交渉を徹底サポート
- 24時間365日全国どこでも相談受付中
目次
相手側の保険加入状況によって交渉先は変わる
交通事故に遭ったときに損害賠償金(示談金)請求するための交渉先は、相手側の保険加入状況によって変わります。
- 相手が任意保険(自動車保険)に加入している場合=相手の加入している自動車保険会社
- 相手が自賠責保険しか加入していない(任意保険に加入していない)場合=相手本人
保険会社への正しい対応方法を確認する前に、それぞれの交渉についてご説明します。
相手が任意保険に加入している場合=交渉先は保険会社
「任意保険(自動車保険)」は、車の所有者(使用者)が自分の意思で加入を決める保険で、「自賠責保険」では補償しきれない範囲の損害をカバーすることがおもな目的です。
交通事故の相手が任意保険に加入していれば、交渉先(損害賠償金の請求先)は相手側の保険会社となります。
一般的に任意保険の補償には「示談交渉の代行サービス」が含まれているため、保険会社が相手の代わりに示談交渉を行うことになるのです。
相手側の保険会社は、あくまでも相手の立場で条件を提示してきます。
損害賠償金の上限額は契約内容によって異なりますが、保険会社も営利企業なので賠償金額を抑えようと弁護士を入れて交渉をする際の相場より低めの金額を提示してくる場合も少なくありません。
保険会社が提示した条件を無条件に受け入れてしまうと、納得のいく補償を得られないこともあるのでご注意ください。
なお、この記事でおもに説明している内容は、「相手が任意保険に加入している」ケースになります。
相手が自賠責保険しか加入していない場合=交渉相手は相手本人
「自賠責保険(共済)」は、すべての自動車やバイクに加入が義務づけられている保険で、車やバイクを購入すると強制的に加入することになります。
交通事故の相手が自賠責保険しか加入していない(任意保険に加入していない)場合は、損害賠償金の請求先は相手本人になります。
自賠責保険には示談交渉の代行サービスがないためです。
自賠責保険の目的は、事故で死傷させてしまった被害者に対する最低限の補償です。
そのため、必ずしも納得のいく損害賠償金を受け取れない場合もあります。
自賠責保険の補償限度額は次のとおりです。
- 傷害の場合:限度額120万円
※治療費や入通院慰謝料、休業損害などを含んだ上限額 - 死亡の場合:限度額3,000万円
※治療費、通院交通費、死亡慰謝料、近親者慰謝料、死亡逸失利益などを含んだ上限額
ケガのない物損(車の修理等など)は対象外となります。
参考:国土交通省「自賠責保険ポータルサイト」
なお、自賠責保険の慰謝料の計算基準は「自賠責保険基準」とよばれます。
万一、相手が自賠責保険にも入っていない「無保険」の場合の対処法には、こちらの記事もご参照ください。
【関連記事はこちら】
『無保険の相手と交通事故にあったらどうなる?泣き寝入りしない対処法』
交通事故後の保険会社との示談交渉はやり直しができない
交通事故に遭って相手が任意保険に加入している場合は、ケガが「完治」あるいは「症状固定」となったあとで相手側の保険会社と示談交渉を行います。
保険会社は手続きに慣れているので手際よく手続きを進めようとしますが、示談交渉は原則として成立するとやり直しができません。
そのため、提示された補償内容が納得のいくものか慎重に判断したほうがいいでしょう。
いったん示談が成立した後に身体に痛みが出て、あらためて治療をする場合の治療費や通院交通費などは請求できない恐れがあります。
早く損害賠償金を受け取りたいという気持ちも起きるでしょうが、相手側の提示内容にすぐ応じず慎重に進めた方が賢明といえるでしょう。

弁護士の〈ここがポイント〉
保険会社は営利目的の企業なので、できるだけ損害賠償額を抑えようとすることも想定されます。そのため、当初は自賠責保険基準と同水準の補償額を提示することも多いようです。
示談交渉の流れについて、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
【関連記事はこちら】
『交通事故の示談とは?交渉にかかる期間とよくあるトラブルと対処法』
交通事故で気をつけたい相手側の保険会社の対応
交通事故の示談交渉を、相手側の保険会社と行うときには納得のいかない条件のまま話を進められないように注意が必要です。
適切な示談交渉を進めるには、示談交渉時の基本的な知識を知っておくとよいでしょう。
相手側の保険会社の「よくある対応」を紹介します。
よくある対応1 低い基準で慰謝料を提示する
交通事故でケガを負った場合の示談交渉では「治療費」や「通院費」だけでなく、通院や入院の精神的苦痛に対する「慰謝料」も請求できます。
しかし保険会社から提示される慰謝料は、納得のいく金額ではないこともあります。
慰謝料の計算基準には「自賠責基準」「弁護士基準(裁判基準)」がありますが、保険会社では各社独自に設定している基準や計算方式も存在します。
これを「任意保険基準」と呼ぶこともあります。金額は保険会社によって異なりますが、一般的に自賠責保険基準と同額程度かやや多い程度の金額といわれています。
保険会社から提示される慰謝料額は、弁護士に示談交渉を依頼した場合に請求できる「弁護士基準(裁判基準)」より低い計算基準で算出されるため、納得のいく金額ではない場合が多いといえるのです。
- 弁護士基準(裁判基準)とは
「弁護士基準(裁判基準)」は、過去の裁判例などを基に設定されている計算基準です。
示談交渉を弁護士に依頼した場合や裁判時に用いられ、もっとも高額になる可能性の高い計算基準です。
たとえば通院期間1ヶ月間の場合の慰謝料額を比較すると、以下のようになる場合があります。
計算基準 | 慰謝料額 |
---|---|
自賠責保険基準 | 8.6万円* |
弁護士基準(裁判基準) | 19万円(軽傷)~28万円(重傷)程度 |
*自賠責保険基準は慰謝料対象となる日数20日×4,300円で計算
※必ずしもこの金額を受け取れるわけではありません。
上記はあくまで目安ですが、最大約3倍ほどの差が出る場合もあります。
慰謝料の仕組みや金額の詳細について詳しくはこちらの記事をご参照ください。
【関連記事はこちら】
『交通事故の慰謝料計算機|状況別の計算方法と注意点』
よくある対応2 休業損害や逸失利益の支払いを渋る
保険会社は、「休業損害」や「逸失利益」の支払いに難色を示すこともあるようです。
たとえば、主婦(主夫)が交通事故のケガで家事ができなくなったとき、本来は主婦(主夫)にも休業損害が認められているにもかかわらず、「主婦(主夫)には実収入がない」と休業損害の支払いを拒んだりることもあるようです。
またケガが完治せず「後遺障害」の等級に認定された場合でも、本来受け取れるはずの「逸失利益」に関して正当な金額を支払ってくれないケースもあるようです。
- 「休業損害」とは
交通事故によるケガのために休業した場合に、休業せずに働くことができていれば得られたはずの収入を失ったことに対する損害賠償です。
- 「逸失利益」とは
後遺障害が残ったり死亡しなければ将来得られたはずの収入の減少に対する損害賠償。

弁護士の〈ここがポイント〉
休業損害や逸失利益を的確に計算することは、一般の方には難しいといえます。また保険会社との交渉が必要になるため、ご自身で納得のいく請求をすることは、難易度が高いといえるでしょう。
主婦(主夫)が請求できる慰謝料について、詳しくはこちらの記事もご参照ください。
【関連記事はこちら】
『主婦も交通事故の慰謝料を請求できる?計算方法と増額を目指すには』
よくある対応3 被害者の過失を主張する
交通事故の示談交渉で「過失割合」が争点になることは珍しくありません。
「過失割合」が示談金(損害賠償金)の額を左右するので、保険会社は相手側に有利な過失割合を主張してくることもあるのです。
しかし保険会社は交通事故の示談交渉に慣れているため、法律の知識や示談交渉の経験が少ない一般の方が、保険会社と対等に交渉することは難しいといえます。
- 「過失割合」とは
交通事故が起きた際に、当事者のどちらにどの程度の過失(落ち度)があるかという責任の割合のことです。当事者双方の責任割合により、それぞれの損害からその過失分を差し引くことになります。
こんな時は弁護士に示談交渉を依頼することで、相手側保険会社と対等な立場で示談交渉をしてくれます。
相手の保険会社から出された条件を公正に判断して、納得のいく損害賠償金を請求できるようサポートすることができるのです。
過失割合について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
【関連記事はこちら】
『交通事故の過失割合とは?適正な過失割合を知り変更する方法』
保険会社からの「治療費打ち切り」提案には注意
交通事故で負ったケガの治療を続けていると、相手側の保険会社から「治療費打ち切り」を打診されることがあります。
- 「治療費打ち切り」とは
治療を始めてから数ヶ月たつと、相手側の保険会社から「もう完治した」と判断されて治療費の支払いを止められてしまうことです。
しかし相手の保険会社に「打ち切り」を打診されても、治療を継続したほうがよいケースもあるので、医師に相談してみましょう。
打ち切りのタイミングを推し測るために、保険会社は「もうケガは良くなったのではないですか?」など、状況を聞いてくることがあります。
そこで安易に「ケガはもう良くなった」などと答えると、それ以降の治療費が支払われなくなる恐れがあるのです。

弁護士の〈ここがポイント〉
交通事故で負ったケガの治療をいつまで続けるかは、担当の医師に相談してみましょう。
保険会社から「治療費打ち切り」の打診を受けても、医師の明確な診断結果がない状態で回答をしないように気をつけましょう。
交通事故発生後の保険会社への対応の流れ
交通事故後の示談交渉を相手側の保険会社と行うとき、相手に言われるがままに話を進めると、不利な条件に合意して後悔してしまうかもしれません。
そうならないためには、示談交渉の適切な進め方を知っておくことが大切です。
そこで、
- ・交通事故発生後
- ・ケガの治療中
- ・完治または症状固定後
というそれぞれの段階ごとに、どのような行動を取るべきかを説明します。
交通事故発生直後の対応
交通事故の発生直後は、必ず警察へ連絡をしてください。ケガがある場合は救急車も呼びましょう。
相手の氏名・住所などの確認を行い、警察官とともに事故現場の状況や車両の損傷箇所の確認などを行います。
翌日以降に、通常は相手が加入している保険会社から連絡がきます。相手側の保険会社から連絡がない場合は、自分から連絡をしても構いません。
その後、保険会社から同意書が送られてきた場合は、内容をよく確認してください。
同意書には、難しい専門用語が並ぶだけでなく、
- ・相手側の保険会社が治療費を支払うことに同意するか
- ・個人情報を取得してよいか
- ・医師に治療状況を確認してよいか
- ・後遺障害等級の申請作業をしてよいか
といった内容が書かれていることがあります。
概ね問題がない内容といえますが、場合によっては不利になってしまう可能性もあるのでよく確認して回答しましょう。
交通事故で負ったケガを治療しているときの対応
交通事故に遭ってケガを負ってしまったとき、治療中でも気をつけることがあります。
合理的な理由がない治療や通院をすると、保険会社から補償の対象として認められないからです。
- ・医師の指示どおりに通院せず、自分の判断で通院ペースを減らす
- ・医師の指示がないのに、自分で選んだ接骨院・整骨院に通う
などをすると、保険会社からの補償を受けられないことがあります。
保険会社から十分な費用を支払ってもらうためには、医師の診断が不可欠といえます。ケガの状態は自分で判断せず、医師の指示どおりに受診しましょう。
相手側の保険会社には、治療費だけでなく通院交通費も請求できます。
移動に使った交通費の領収書など、通院のための移動を証明する記録は残しておきましょう。
※タクシーの利用には一定の条件があります。
請求できる通院費とその申請方法について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
【関連記事はこちら】
『交通事故の通院費はいくらもらえる?補償の範囲と手続きの注意点とは』
ケガの完治もしくは症状固定後の対応
治療を終えた後は、ケガの状態によって取るべき行動が異なります。
「完治」したとき
交通事故が原因のケガが完全に治った状態の「完治」になると、保険会社と示談交渉をする段階に入ります。
支払ってもらう損害賠償額を決めるために、相手の保険会社には
- ・治療費
- ・通院費・交通費
- ・装具、器具購入費
- ・休業損害
など支払いを求める項目を、領収書を添えて提出します。
保険会社は損害賠償額を提示してきますので、内容に納得すればサインをして交渉成立です。内容に合意できない場合は、合意できるまで交渉を続けることになります。
「症状固定」となったとき
ケガが完治せず後遺症が残ってしまったまま「症状固定」となったときは、「後遺障害等級認定」の手続が必要です。
「後遺障害等級認定」の手続を進める方法として、「事前請求」と「被害者請求」があります。
- 「事前請求」とは
相手側の保険会社に「後遺障害等級認定」の申請を任せる手続きです。手続の全工程に目を通せるわけではないので、書類に不備があっても気付かないケースや、検査結果が反映されないまま手続が進んでしまう恐れがあります。
- 「被害者請求」とは
自分で「後遺障害等級認定」を申請する方法です。手続を行う手間はありますが、自分で確認をできるので「事前請求」のようなチェック漏れや不備を防げます。
ただし、相手の保険会社が治療費の支払対応をしている最中に被害者請求を行うと、治療費の支払対応が終了してしまうので、注意してください。

被害者請求を確実に行うためには、弁護士に相談してみましょう。
後遺障害について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
【関連記事はこちら】
『後遺障害等級認定をわかりやすく解説!申請方法と補償制度について』
保険会社との示談交渉で後悔しないために
交通事故に遭ってしまった後は、心理的に不安定な状態に陥りがちです。保険会社と慰謝料を含む損害賠償金の示談交渉をするのは、大きな負担となります。
保険会社と対等に交渉をするために、大切なポイントを押さえておきましょう。
交通事故でケガを負ったら治療のために病院へ通院する
交通事故で負ったケガを治療するときは、医師の診断を受けるために病院へ通院しましょう。
保険会社が損害賠償額を判断するには、その根拠になるケガの状態を把握しなければなりません。
症状に基づいた補償を認めてもらうためには、医師の診察が必要です。
交通事故では健康保険証を使えないと誤解されている方もいますが、そのようなことはありません。
健康保険機関に「第三者行為による傷病届」や「負傷原因報告書」などの書類の提出が必要になりますが、健康保険証を利用した治療は可能です。
過失がついてしまう場合など、むしろ健康保険証を利用した方が最終的に受取れる示談金を多くなるケースもあります。
交通事故に遭った場合でも健康保険は使えますので、まずは症状の把握とケガの治療を優先してください。
交通事故後の保険会社とのやりとりは記録に残す
相手や、相手側の保険会社との会話など、交通事故後のやりとりは記録に残しましょう。
交渉相手になる相手側の保険会社は、あくまでも相手側の代理人です。
そこで相手や保険会社と話した内容は、日付もあわせて手帳やメモ帳などに記録することをおすすめします。
ケガを負った患部や車の破損部分などを写真に撮っておく、会話をスマートフォンなどで録音しておく、といった方法もいいでしょう。
保険会社とのやりとりだけでなく、以下の項目も意識的に記録しておきましょう。
- 診察(診断書)
- 医師のコメント
- 治療の経過
- 生活上での困り具合
弁護士に示談交渉を依頼する
保険会社との示談交渉で後悔しないためには、弁護士に相談することも検討してください。
交通事故の示談交渉を弁護士に依頼すると、以下のようなメリットが期待できます。
- 相手側の保険会社(あるいは相手本人)との交渉をおまかせできる
- 弁護士基準(裁判基準)を元に交渉してくれる
- 後遺障害の等級認定手続を代行してくれる
弁護士は、法律を熟知しているため、保険会社の提示する条件が妥当な水準なのかどうかを的確に判断できます。
複雑な手続でも安心して任せられるので、弁護士に示談交渉を依頼すれば精神的なストレスも軽くなるでしょう。
弁護士依頼するメリットについて、詳しくはこちらの記事もご参照ください。
【まとめ】保険会社との示談交渉は難易度が高い。交通事故に遭ったら弁護士に相談を
交通事故に遭ったら、相手側の保険会社との交渉は慎重に進めたほうがいいでしょう。
保険会社は
- ・低い基準で慰謝料を算出する
- ・休業損害や逸失利益の支払いを渋る
- ・相手側に有利な過失割合を主張する
といった応をしてくることがあり、正しい対処法を知らないまま交渉を行うリスクは高いといえます。
保険会社との交渉で後悔しないために、交通事故案件の解決実績が豊富な弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
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