後遺障害の等級認定されるのはどんな症状?申請の流れも解説
交通事故でケガを負った場合、治療を続けても後遺症が残るケースがあります。
必要な補償を受けるためには、後遺障害の等級認定手続きを行うことが重要です。
ではどのような症状が後遺障害の等級の認定をされるのでしょうか。
実際の症状に見合った等級に認定されるために、基本的な仕組みや必要書類、手続き方法などを押さえておきましょう。
この記事では、後遺障害の等級認定におけるポイントを詳しく解説します。
後遺症が残れば、必要な補償って受けられるのですか?
後遺症が残っているだけでは、必要な補償は受けられません。後遺障害の等級認定手続きを行い、認定されることが必要です。等級の症状や手続きについてみていきましょう。
- 慰謝料を増額できる可能性がある
- 保険会社との交渉を徹底サポート
- 24時間365日全国どこでも相談受付中
目次
交通事故の後遺障害の等級認定とは?
後遺障害とは、等級認定手続きを行うことで認められる後遺症のことです。
等級には第1級~第14級までがあり、症状に照らし合わせて当てはまる等級が決められます。
交通事故で負ったケガが完治せず、後遺症が残ったとしてもそのままの状態では損害賠償請求に反映させることができません。
後遺障害の等級認定手続きを行ってはじめて後遺障害として認められ、必要な補償を相手方に請求できます。
納得できる補償を受けるには欠かせない手続きであるため、申請条件などを踏まえたうえで適切に申請を行いましょう。
後遺障害の等級認定は中立の機関による認定
後遺障害の等級は、保険会社を通じて手続きを進めますが、保険会社が等級認定を行うわけではありません。
等級認定を行うのは「損害保険料率算出機構」と呼ばれる団体であり、各種保険料の計算やデータ収集・分析を行うほか、自賠責保険の損害調査を行っています。
申請方法は後述する「事前認定」と「被害者請求」の2つがありますが、いずれの場合も損害保険料率算出機構が認定結果を作成します。
認定結果に納得できない場合は、異議申立てを行って再び審査を受けることも可能です。
等級は症状に応じて14〜1級まである
後遺障害の等級は14~1級までに分かれており、各等級で具体的な症状が決められています。
ここでは、交通事故の後遺障害としてよく見られる14級・12級・8級・4級・1級の一部について見ていきましょう。
等級 | 症状 |
---|---|
14級 |
・一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの ・三歯以上に対し歯科補綴(てつ)を加えたもの ・一耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの ・上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの ・下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの ・一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの ・一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの ・一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの ・局部に神経症状を残すもの |
12級 |
・一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの ・一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの ・七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの ・一耳の耳殻の大部分を欠損したもの ・鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの ・一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの ・一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの ・長管骨に変形を残すもの ・一手のこ指を失ったもの ・一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの ・一足の第二の足指を失ったもの、第二の足指を含み二の足指を失ったもの又は第三の足指以下の三の足指を失ったもの ・一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの ・局部に頑固な神経症状を残すもの ・外貌に醜状を残すもの |
8級 |
・一眼が失明し、又は一眼の視力が0.02以下になったもの ・脊柱に運動障害を残すもの ・一手のおや指を含み二の手指を失ったもの又はおや指以外の三の手指を失ったもの ・一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの ・一下肢を5センチメートル以上短縮したもの ・一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの ・一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの ・一上肢に偽関節を残すもの ・一下肢に偽関節を残すもの ・一足の足指の全部を失ったもの |
4級 |
・両眼の視力が0.06以下になったもの ・咀嚼(そしゃく)及び言語の機能に著しい障害を残すもの ・両耳の聴力を全く失ったもの ・一上肢をひじ関節以上で失ったもの ・一下肢をひざ関節以上で失ったもの ・両手の手指の全部の用を廃したもの ・両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
1級 |
・両眼が失明したもの ・咀嚼及び言語の機能を廃したもの ・両上肢をひじ関節以上で失ったもの ・両上肢の用を全廃したもの ・両下肢をひざ関節以上で失ったもの ・両下肢の用を全廃したもの |
14級の「局部に神経症状を残すもの」や12級の「局部に頑固な神経症状を残すもの」は、交通事故の後遺症として多い、むちうちに該当する症状です。
交通事故の状況によって、ケガの症状もさまざまであるため、痛みなどがひどくなくても、違和感があるようなら事故後はすみやかに医師の診察を受けるようにしましょう。
事故発生から時間が経過してしまうと、ケガとの因果関係が不明確になってしまうので後遺障害として認められる可能性が低くなる恐れがあります。
交通事故が原因で後遺症を負ったことを示すために、症状固定となるまでしっかりと治療を受けることが大切です。
等級を併合する場合もある
交通事故の状況によっては、同時に複数の後遺症が残ってしまう場合もあるでしょう。
この場合は1つずつ後遺障害の認定を受けた上で、まとめて1つの等級として認定されます。
等級の併合についてはおもに4つのルールがあり、具体的には以下のようになります。
ルール | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
1 | 5級以上の後遺障害が2つ以上ある場合は、そのうち最も重い等級を「3つ」上げる | 併合前の等級:4級、5級→併合後の等級:1級 |
2 | 8級以上の後遺障害が2つ以上ある場合は、そのうち最も重い等級を「2つ」上げる | 併合前の等級:5級と8級→併合後の等級:3級 |
3 | 13級以上の後遺障害が2つ以上ある場合は、そのうち最も重い等級を「1つ」上げる | 併合前の等級:12級と13級→併合後の等級:11級 |
4 | 14級の後遺障害が2つ以上ある場合は、等級が上がることはない (※いくつ障害があっても14級のまま) |
併合前の等級:14級を2つ→併合後の等級:14級 |
上記の表のように、たとえば12級と13級の後遺障害を負って11級と認定された場合、11級を基準として慰謝料額などが計算されます。
医師にしっかりと自覚症状を伝えて、後遺障害診断書に症状が適切に反映されるようにすることが大切です。
等級によって慰謝料と逸失利益の金額が決まる
後遺障害を負ったときに請求できる「後遺障害慰謝料」は、等級によって異なりますが、計算基準によっても違ってきます。
14級・12級・8級・4級・1級のそれぞれで慰謝料額の目安を比べてみましょう。
等級 | 自賠責保険基準 | 弁護士基準 (裁判基準) |
---|---|---|
14級 | 32万円 | 110万円 |
12級 | 94万円 | 290万円 |
8級 | 331万円 | 830万円 |
4級 | 737万円 | 1,670万円 |
1級 | 1,150万円 (1,650万円) |
2,800万円 |
※()の金額は介護が必要な場合を示しています。
※慰謝料額はあくまで目安ですので、実際の金額は示談交渉の結果によって異なります。
等級が1つ異なるだけでも慰謝料額は大きく違いますし、計算基準によって同じ等級でも金額に大きな差があります。
適正な補償を受けるためには、実際の症状に見合った等級認定を受けることが大切です。
また、後遺障害を負ったことで仕事が続けられなくなった場合には、「後遺障害逸失利益」が請求できます。
将来得られるはずだった収入に対する補償であり、年収や年齢によって受け取れる金額に違いはありますが、基本的な計算式は次のとおりです。
1年あたりの基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
基礎収入は交通事故に遭う前の年収を指し、労働能力喪失率は後遺障害によってどれくらい労働能力が失われたかを示すものです。
そして、労働能力喪失期間とは今後どの程度の期間で労働能力が喪失された状態が続くのかを指すものだといえます。
後遺障害逸失利益の計算にあたっては、専門的な知識が必要になるため、具体的な金額を知りたい場合は弁護士に相談をしてみましょう。
また、後遺障害についてさらに詳しく知りたい方は下記の記事も参考にしてみてください。
後遺障害等級認定のタイミングと申請の方法は?
後遺障害の等級認定手続きはいつでも行えるわけではなく、申請すべきタイミングがあります。
また、申請方法は「事前認定」と「被害者請求」の2種類あるため、それぞれの違いを押さえておくことも肝心です。
ここでは、後遺障害の等級認定手続きを行うタイミングや申請方法、手続きの流れを紹介します。
症状固定したら申請する
後遺障害の等級認定手続きは、「症状固定」と診断された段階で行います。
症状固定の診断は法的な判断であり、医師や保険会社だけで決めるものではありません。
また、手続きにあたっては後遺障害診断書の提出が必要であるため、医師に作成をしてもらいましょう。
実際の症状を正しく反映させるためにも、症状固定となるまでしっかりと治療を受け、後遺障害診断書に内容を反映してもらうことが重要です。
申請の方法1 事前認定
後遺障害の等級認定手続きとして、相手の任意保険会社に対して申請を行う「事前認定」という方法があります。
事前認定の特徴としては、医師が作成した後遺障害診断書を提出すれば、あとの必要な手続きは保険会社が行ってくれる点が挙げられます。
手続きに手間がかからずに、スムーズに申請を行えるのがメリットです。
一方で、事前認定の場合は提出した後遺障害診断書の内容が不十分であっても、調査が可能な程度であればそのまま手続きが行われてしまうデメリットがあります。
保険会社が積極的に有利な情報を提出してくれるわけではないため、実際の症状よりも低い等級で認定される可能性がないとはいえない点に注意が必要です。
申請の方法2 被害者請求
事前認定とは別に、「被害者請求」という形で後遺障害の等級認定手続きを行うことも可能です。
被害者請求の場合、相手の自賠責保険会社に対して必要な書類をすべてそろえて提出します。
被害者自身が積極的に手続きに関われるため、自分に有利な証拠を出せるというのがメリットです。
デメリットとしては、書類をそろえるのに時間がかかる点であり、事前認定よりも手間が必要な部分が挙げられます。
しかし、納得がいくまで提出内容にこだわれる被害者請求であれば、正しい情報をもとに等級認定がなされるともいえるでしょう。
弁護士の〈ここがポイント〉
後遺障害の等級認定では、提出された書類をもとに審査が行われるので、しっかり書類を整えておく必要があります。
また、事前認定よりも被害者請求のほうが納得のいく結果を得ることにつながります。
書類の収集や手続きについてわからないことがある場合は、お気軽に弁護士へご相談ください。
後遺障害の等級認定の申請手続きの流れは?
後遺障害の等級認定手続きには、前述のように事前認定と被害者請求の2種類があります。
各手続きの流れをまとめると、次のようになります。
■事前認定の流れ
症状固定と診断されてから、医師に後遺障害診断書を作成してもらいます。
↓
後遺障害診断書を相手の任意保険会社に提出します。
↓
任意保険会社が書類をそろえ、損害保険料率算出機構に審査を申請します。
↓
損害保険料率算出機構から、任意保険会社に認定結果が伝えられます。
↓
任意保険会社から被害者に、認定結果が通知されます。
※この記事では「加害者=過失割合が大きい交通事故の当事者」「被害者=過失割合が小さい交通事故の当事者」としています。
■被害者請求の流れ
症状固定と診断されてから、医師に後遺障害診断書を作成してもらい、検査結果の資料など必要書類を被害者自身が収集します。
↓
そろえた書類を相手の自賠責保険会社に提出します。
↓
自賠責保険会社は提出された書類の内容を確認し、損害険料率算出機構に類一式を提出します。
↓
損害保険料率算出機構は提出れた書類をもとに審査を行い、認定結果を自責保険会社に伝えます。
↓
自賠責保険会社から、被害者宛に認定結果が通知されます。
等級認定の結果が送られてくるのには、どちらの方法でも申請してから2ヶ月程度がかかります。
被害者請求の場合は書類の収集に時間がかかるので、症状固定と診断されたら早めに準備に取りかかることが大切です。
後遺障害等級認定の条件を確認する
後遺障害の等級認定のためには、少なくとも次の4つの条件を満たしておく必要があります。
- 交通事故とケガの因果関係が明確であること
- 症状固定日に症状が残っていること
- 自覚症状が医学的に証明・説明できるものであること
- 後遺症の症状が、自動車損害賠償保障法施行令で定められている1~14級に該当すること
症状固定とは、これ以上治療を続けても症状の改善が見られない状態を指します。
医師の意見を踏まえた法的な判断であり、症状固定と診断されてから後遺障害の等級認定手続きを行うことになります。
申請を行うにあたって、上記の4つの条件を満たしているかを確認しておきましょう。
後遺障害等級認定の申請にかかる期間
後遺障害の等級認定手続きでは、必要書類を提出して申請を行ってから約2ヶ月以内には認定結果が送られてくることになります。
損害保険料率算出機構が公表している「2020年度 自動車保険の概況」によれば、後遺障害の等級認定にかかる期間は、1ヶ月以内が全体の75.9%、2ヶ月以内も含めると88.3%となります。
事故状況が複雑な場合は調査に時間を要しますが、多くのケースでは申請から2ヶ月ほどで認定結果がわかります。
2ヶ月以上経過しても結果が伝えられない場合は、保険会社に問い合わせてみましょう。
また、送られてきた認定結果に納得がいかない場合は、異議申立てを行って再審査を行ってもらうことも可能です。
しかし、異議申立てを行うときは新たな証拠を示す必要があり、一般の方にはハードルが高い部分もあります。
異議申立てを行うべきか迷うときは、後遺障害に詳しい弁護士に相談をしてみましょう。
後遺障害等級認定に必要な書類や費用は?
後遺障害の等級認定は提出した書類をもとに審査が行われるため、どのような内容が書かれているかがカギとなります。
特に、必須の書類となる後遺障害診断書の内容はとても重要です。
しかし、後遺障害診断書の作成にあたる医師が、必ずしも後遺障害について詳しいとはかぎりません。
内容についてよく確認をしないまま手続きを進めても、実際の症状より低い等級で認定されたり、そもそも認定を受けられなかったりするでしょう。
そのため、医師に作成をお願いする前に、あらかじめ弁護士に相談してみるのも1つの方法です。
医師に対してどういったコミュニケーションを取ればよいかをアドバイスしてもらえますし、作成された後遺障害診断書の内容をチェックしてもらえます。
弁護士を通じて必要書類を整えることで、納得できる認定結果を得やすくなるはずです。
後遺障害の等級認定の申請(被害者請求)に必要な書類
事前認定と被害者請求では、提出すべき書類に違いがあります。
事前認定の場合は医師が作成した後遺障害診断書を相手の任意保険会社に提出すれば、その他の書類は保険会社のほうで準備してくれます。
一方、被害者請求の場合は多くの書類を自分で集める必要があります。漏れがないようにきちんとそろえておきましょう。
被害者請求で必要となる書類は、次のようなものが挙げられます。
- 後遺障害診断書
- 検査データの資料(レントゲン・MRIなど)
- 保険金(共済金)・損害賠償金・仮渡金支払請求書
- 交通事故証明書
- 事故発生状況報告書
- 診療報酬明細書
- 休業損害証明書・確定申告書の控えなど
- 印鑑証明書
- 委任状(家族や専門家に委任する場合)
実際の症状を正しく認定してもらうためにも、必要な書類をきちんと集めて、記載されている内容に間違いがないかを確認しておきましょう。
症状を証明できる証拠
後遺障害の等級認定は、各等級で定められた症状とひもづいている点を押さえておきましょう。
そのため、等級認定を受けるには症状の根拠となる診断書や検査データの資料などを提出する必要があります。
診断書に記載された内容を裏付ける根拠を明確にするために、精度の高い書類や資料をそろえることが大切です。
等級認定は提出された書類をもとに審査が行われるので、提出前に書類に不備がないかをよく確認しておくことも大事だといえます。
レントゲン・MRIの画像
レントゲンやMRIといった各種検査は、医師の指示に従って受けるようにしましょう。
検査資料は多いに越したことはありませんが、後遺障害診断書に記載されている内容とデータに整合性があるかを確認することも大切です。
認定が想定される等級の症状に該当するのかをチェックし、検査データがその根拠となっているかを確認しておきましょう。
レントゲン検査でかかる費用は、撮影する部位や撮影回数によって異なりますが、1回あたり5,000~1万円程度です。
MRI検査は頭部や頚部・腰部の神経を損傷している可能性がある場合に受ける精密検査であり、1回あたり2万円程度がかかります。
検査回数が多くなればそれなりの負担額となるため、検査を行うべきかどうかは医師の指示を仰ぎましょう。
後遺障害診断書(整骨院・接骨院では対応できない)
後遺障害の等級認定手続きでは、事前認定・被害者請求のどちらの場合も後遺障害診断書が必要になります。
後遺障害診断書は医師のみが作成できるものであり、整骨院や接骨院では対応できないので注意しましょう。
整骨院や接骨院で治療を受ける場合は、医師の指示を仰いでから受診をするほうがよいといえます。
医師の診断を受けていなければ、整骨院や接骨院で治療する必要性等を証明するのが難しくなるため、痛みなどがひどくなくても、違和感があるようならすみやかに医師の診察を受けることが大事です。
申請に必要な費用
後遺障害の等級認定手続自体は無料で行えますが、申請するために提出をする書類の作成費用はかかります。
まず、後遺障害診断書の作成費用として5,000~1万円程度がかかります。
他にも、レントゲンやMRIなどの検査費用は実費分を負担しなければなりません。
交通事故証明書や印鑑証明書などは、それぞれ数百円ほどの交付手数料がかかります。
これらの費用は後遺障害が認定されれば後から相手方に請求できる可能性があるので一時的な負担ともいえます。
どの書類を集めるのにいくら必要だったかをきちんとメモに残し、領収書などをしっかり保管しておきましょう。
後遺障害等級認定の結果に満足いかない場合の対処法は?
後遺障害等級の申請を行っても、必ずしも認定されるわけではありません。
また等級認定された場合でも、想定していた等級に認定されるとはかぎりません。
そのような場合でも対処法があります。以下でくわしく説明します。
後遺障害等級認定の異議申立てを行う
認定結果の内容に納得できないときは、異議申立てを行うことが可能です。
異議申立ては何度でも行うことができますが、やみくもに行っても結果が変わらないので、根拠となる資料をそろえられるかがポイントになります。
ただし、異議申立てに必要な書類は専門的な知識が必要になることがあるため、自分では内容が正しいかどうかの判断がつかない面もあります。
異議申立てで困ったときは、交通事故案件に詳しい弁護士に相談をしてみるのも1つの方法です。
また、自賠責紛争処理機構に申請を行ったり、裁判を起こしたりする方法もあります。
それぞれの手続きについて、どのように取り組むべきかを解説します。
異議申立ての流れと必要な書類
後遺障害の等級認定について、異議申立てを行うときの流れは次のようになります。
・被害者請求の形で異議申立てを行うには、相手の自賠責保険会社に対して異議申立書と検査データなどの書類を提出します。
↓
・一括扱いのまま異議申立てを行うときは、相手の任意保険会社に対して異議申立書と検査データなどの書類を提出します。
↓
損害保険料率算出機構によって、異議申立ての審査が行われます。
↓
審査結果が保険会社を通じて、被害者に伝えられます。
一括扱いとは、任意保険会社が自賠責保険の部分を含めた損害賠償金を被害者に支払い、その後に立て替えた分を自賠責保険会社に請求する方式です。
また、異議申立てに必要となる書類は以下のものが挙げられます。
- 異議申立書
- 診断書、後遺障害診断書
- 主治医の意見書、カルテ
- 医療照会の回答書
- 診療報酬明細書
- 各種検査データの資料
- 被害者自身が症状を記載した陳述書
- 委任状、印鑑証明書(弁護士に依頼した場合)
初回の等級認定手続きと同じように多くの書類や資料が必要になるため、状況に応じて必要なものを集めましょう。
異議申立てにかかる期間
後遺障害の等級認定について異議申立てを行う場合、必要な期間としては2~4ヶ月程度が目安となります。
初回の申請時よりも少し長めにかかる傾向があるため、異議申立てを行う際は早めに準備を進める必要があります。
異議申立ては何度でも行うことが可能ですが、自賠責保険金の請求権は時効が3年と定められているので注意が必要です。また、人身損害の時効は5年となっています(2020年4月1日以降発生の事故の場合)。
時効となる期間を過ぎてしまうと、たとえ後遺障害の等級認定を受けたとしても、損害賠償請求そのものが行えなくなる恐れがあります。
また、異議申立てでは新たな証拠を示す書類をそろえる必要があるため、準備に時間がかかる場合もあるといえます。
交通事故案件に詳しい弁護士に相談をしたうえで、異議申立てを行うべきかを判断しましょう。
自賠責紛争処理機構へ審査を依頼する
自賠責紛争処理機構とは、医師や弁護士など専門的な知識を備えた専門家から構成される組織であり、公正中立な立場で審査を行う機関です。
申請者から提出された書類や保険会社の説明だけでなく、場合によっては機構が独自に調査をして書面審査を行います。
基本的な仕組みとして、異議申立てが認められなかった場合に行うものであり、申請回数も1回に限られています。
審査期間としては3ヶ月以上がかかるので、損害賠償請求の時効に影響が出ないかを確認してから申請を行うか判断しましょう。
審査を受けるには申請書の提出が必要ですが、紛争の問題点や交渉の経過、請求内容などを記載します。
異議申立てと同様に、検査データの資料などを添付して客観的な証拠を示すことが大切です。
裁判(訴訟)をする
等級認定の結果に納得できないときは、裁判による解決を求めることができます。
双方がそれぞれ主張をしたうえで、裁判所の判断が下されますが、判決が出る前に和解で解決するケースも多いといえます。
裁判を行うには、書類作成や出廷するための準備に多くの時間と手間がかかるので注意が必要です。
自力で裁判を起こしても、思うような主張ができずに時間ばかりを費やしてしまう場合もあります。
そのため、実際に裁判を起こすときは弁護士に依頼をするほうがよいでしょう。
後遺障害の等級認定手続きを弁護士に依頼するメリット
後遺障害の等級認定手続きはそろえるべき書類が多く、内容も専門的なので一般の方が自力で取り組むのは大変です。
必要な手続きは弁護士に任せることが可能であるため、異議申立てを行うときも心強いといえるでしょう。
後遺障害の等級認定手続きを弁護士に依頼するメリットについて紹介します。
後遺障害等級認定の申請をまかせられる
交通事故案件に精通している弁護士であれば、後遺障害の等級認定手続きをまかせることがでいます。
法律的な知識で頼りになるだけでなく、医師への対応についてのアドバイスなども受けられます。
後遺障害の等級認定手続きにおいて、医師が作成する後遺障害診断書は重要な書類であるため、実際の症状を正しく反映した内容になっているかの確認が大事です。
後遺障害診断書は専門的な内容で記載されているため、一般の方では読み解くのが大変でもあります。
そのため、診断書の内容に不備があれば、いち早く指摘してくれる弁護士の存在が大きな意味を持ちます。
的確なアドバイスを受けられることで、納得のいく認定結果を得やすくなるでしょう。
弁護士基準で後遺障害慰謝料を請求できる
後遺障害等級が認定されれば、相手側に後遺障害慰謝料を請求できます。
弁護士に依頼することで、最も高額の慰謝料になる可能性のある「弁護士基準」で計算・請求してくれます。
最低限の補償である自賠責保険の計算基準と比較すると、等級にもよりますが数十万円~数百万円も金額ことなる場合もあります。
交通事故の解決実績が豊富な弁護士であれば、過去の裁判例や最新情報にも明るく、依頼者の状況に応じた最適な対応を行ってくれるでしょう。
1日でも早く適正な補償を受けるためにも、交通事故案件に詳しい弁護士に相談をしてみましょう。
弁護士特約を使えば弁護士費用はほぼかからない
弁護士に依頼をするときに気になるのが、弁護士費用ではないでしょうか。
費用がいくら必要なのかわからなければ、依頼をすること自体にためらいを感じてしまうでしょう。
しかし、ご自身が加入する任意保険に弁護士特約(弁護士費用特約)が付いていれば、弁護士費用をほぼ気にせずに依頼を行うことができます。
弁護士特約とは、弁護士費用の一部を保険会社が補償してくれる仕組みであり、一般的には上限300万円程度までをカバーしてくれます。
自動車保険だけでなく、生命保険や火災保険などにも付帯していることがあり、家族が加入する保険の特約でも利用できる場合があります。
そのため、交通事故の被害に遭った早い段階で弁護士特約の利用が可能かどうかを保険会社に確認しておきましょう。
後遺障害の等級認定に関するQ&A
後遺障害の等級認定では、申請を行うにあたって押さえておくべきポイントがいくつかあります。
労災保険を利用するときや、相手が保険未加入であったときの対応を把握しておきましょう。
どのような点に気をつけるべきかを解説します。
Q1 労災保険には後遺傷害の認定はある?
勤務中や通勤途中で交通事故の被害に遭った場合、労災保険を利用することが可能です。
労災保険では後遺障害が残ってしまった場合に「障害補償給付」を受給することができます。
そのため症状固定と診断されたらすみやかに、労働基準監督署に請求する必要があります。
また、労災保険と自賠責保険の両方に請求することは可能です。
ただし、重複する補償内容で二重取りをすることは認められていないため、重なる部分は片方しか補償を受けられない点を押さえておきましょう。
Q2 相手が任意保険に加入していなかった場合でも後遺障害等級認定を受けられる?
事故相手が任意保険に入っていない場合は、事前認定を行うことができません。
したがって、後遺障害の等級認定手続きとしては被害者請求を選択することになります。
被害者請求ではそろえる書類が多く、申請までに時間がかかる部分もありますが、きちんとやればその分だけ納得できる認定結果を得られる可能性を高められます。
手続き方法について困ったときは、交通事故案件に詳しい弁護士に相談をしてみましょう。
Q3 後遺障害は申請すれば必ず認定される?
後遺障害の等級認定は、申請すれば必ず認定されるわけではありません。
後遺症として残っている症状が、後遺障害の等級として掲げられている症状に当てはまっている必要があります。
逆に言えば、後遺障害の等級に当てはまる後遺症があるならば、申請することで後遺障害として認められる可能性があるでしょう。
また、等級に該当しない症状であっても、相当等級として認められるケースもあります。
後遺障害の等級認定手続きを行うにあたって、自分の症状が当てはまるのか不安なときは、後遺障害に詳しい弁護士に相談をしてみましょう。
【まとめ】後遺障害の等級認定手続きは弁護士に相談してみよう
交通事故によるケガが治療を続けても完治せず、後遺症として残った場合は後遺障害の等級認定手続きを行うことが重要です。
後遺障害として認められることで必要な補償を受けることができるため、事故後の生活を立て直すめどがつけやすくなります。
しかし、申請にあたっては専門的な知識を求められる部分が多く、一般の方にはハードルが高い面があります。
医師が作成する後遺障害診断書の内容を読み解くだけでも、多くの時間や労力を費やす場合があるでしょう。
後遺障害の等級認定手続きをスムーズに進めるには、後遺障害に精通した弁護士に相談することが大切です。
弁護士法人・響には、交通事故案件で豊富な実績を持つ弁護士が在籍しています。
法律的な観点からのアドバイスだけでなく、医師とのコミュニケーションの取り方や申請手続きのサポートもいたします。
納得できる形で補償を受けるためにも、後遺障害の等級認定について弁護士へご相談ください。
※本メディアは弁護士法人・響が運営しています
※本記事の内容は2022年8月19日時点の情報です。
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