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公務員の交通事故の慰謝料は違う?休業損害と逸失利益の計算のしかた

公務員として働いているんですが、交通事故できちんと補償は受けられますか?

交通事故の損害に対する補償は、働く方の立場に関わらず請求可能です。ただし、公務員の方の場合は独自の補償制度が設けられているため、相手の保険会社との示談交渉が難航してしまう場合もあります。判例に基づいて、正しく請求することが大切です。

公務員として働く方が交通事故の被害に遭った場合、どのような対応をすべきか気になる部分もあるでしょう。

一般的な交通事故と比べて、慰謝料や休業損害の計算に何か異なる点があるのか把握しておく必要があります

公務員だからといって必要な補償が受けられないわけではなく、判例に基づいた請求が可能です。

どういったポイントに気をつけるべきかを詳しく解説します。

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  1. 慰謝料を増額できる可能性がある
  2. 保険会社との交渉を徹底サポート
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この記事の監修者
西川 研一
弁護士
西川 研一Kenichi Nishikawa
所属団体
第二東京弁護士会所属 第36318号
役職
弁護士法人・響 代表弁護士/西新宿オフィス所長

目次

公務員が交通事故に遭ったら慰謝料の相場は?

公務員として働く方が交通事故の被害に遭ったからといって、受け取れる慰謝料額は一般的な交通事故と変わりがありません

慰謝料額に影響を与えるのは病院への通院期間であり、治療が長くなるほど慰謝料額も増える傾向があります

また、慰謝料の計算では次の3つの計算基準が設けられています。

3つの計算基準
  • 自賠責保険基準
  • 任意保険基準
  • 弁護士基準(裁判基準)

自賠責保険基準は交通事故の被害者に対して、国が定めた最低限の補償基準となります。

任意保険基準は保険会社が独自に定めるものですが、金額としては自賠責保険基準より少し高いくらいです。

そして、弁護士基準は弁護士に依頼をして裁判を前提に交渉することで請求できる計算基準です。

交通事故における慰謝料のとらえ方や、通院期間によって慰謝料額がどの程度異なるのかを解説します。

公務員でも慰謝料の金額は変わらない

公務員が交通事故に遭ったからといって、受け取れる慰謝料額に違いはありません

交通事故における慰謝料は、事故に遭ったことで受けた精神的な苦痛に対する補償といった意味合いがあります。

そのため、職業や年齢は関係がなく、どのような立場の方であっても一定の計算方法に沿って支払われます

慰謝料額に影響を与えるのは病院への通院期間なので、次は具体的な通院期間別の金額の目安を見ていきましょう。

通院期間別の慰謝料額

交通事故の慰謝料額は、ケガの治療を受けた通院期間によって異なります

ここでは、通院期間3~6ヶ月(軽傷)の慰謝料額について、自賠責保険基準と弁護士基準(裁判基準)を比べてみます。

通院期間 自賠責保険基準 弁護士基準
(裁判基準)
3ヶ月 38万7,000円 53万円
4ヶ月 51万6,000円 67万円
5ヶ月 64万5,000円 79万円
6ヶ月 77万4,000円 89万円

※慰謝料額はあくまで目安です。 ※自賠責保険基準は対象日数=1ヶ月あたり30日として計算しています。

自賠責保険基準による計算は、慰謝料の対象となる日数1日あたり4,300円(2020年4月1日以降に発生した交通事故の場合。それ以前は日額4,200円)と決められており、計算方法は次のとおりです。

慰謝料の対象となる日数×4,300円

治療の対象となる日数とは「治療期間」と「実通院日数×2」を比較して少ない方の日数です。

また、自賠責保険では上限額が設けられており、傷害分(後遺障害以外の部分)は慰謝料や治療費などを含めて120万円までとなっています。

一方、弁護士基準は自賠責保険基準と比べて、慰謝料額が高くなる傾向が見られます

公務員は減収しにくいので休業損害はもらえない?

交通事故の影響によって仕事を休まざるをえなくなった場合、「休業損害」という形で補償が受けられます。

しかし、公務員の方は休業したとしても給与が減額されないので、そもそも支払われなかった給与がないとして、休業損害の認定が行われない場合があります

ただし、休業損害の計算においては個別の事情が絡んでくる面があるため、公務員だからといって一概に休業損害が認められないわけではありません

交通事故における休業損害のとらえ方について、さらに詳しく見ていきましょう。

公務員も休業損害が認められる

公務員には病気やケガによる休職制度(病気休暇制度)が設けられていますが、休業損害の請求も認められています

病気休暇は原則として90日を超えて取得することはできませんが、この制度を使うことで給与は全額補償されます。

一般的な有給休暇とは異なるものであり、病気やケガの治療のために仕事を休む必要があると認められる場合に取得できるものです

休業した損失分を補償する「休業損害」

休業損害とは、交通事故が原因のケガで仕事を休まざるをえず、その間に給与が支払われなかったことに対する補償を指します。

自賠責保険基準の場合では、次の計算式に当てはめて算出します。

1日あたり6,100円×休業日数=自賠責保険基準による休業損害の金額

自賠責保険では日額6,100円が休業損害の基本となる金額であり、それを上回る収入があると認められるときには日額1万9,000円を上限として支払われます

しかし、傷害分の場合は上限120万円までしか補償を受けられず、休業損害を含めたトータルで120万円までとなっている点に気をつけておきましょう。

一方、弁護士基準では次の計算式に当てはめます。

1日あたりの基礎収入額×休業日数=弁護士基準による休業損害の金額

自賠責保険基準と異なる点は、計算のもととなる基礎収入額の上限がない点です

給与所得者であれば、交通事故に遭う3ヶ月前の給与が計算のベースとなります。

具体的な金額については個別の事情などを考慮する必要があるので、交通事故案件に詳しい弁護士に相談をしてみましょう。

保険会社は休業損害を認めないケースもある

公務員の場合、休業をしても給与が減額されない制度が使えるため、相手の保険会社との示談交渉でもめてしまう場合があります

保険会社の主張としては、公務員には病気休暇制度などの休職制度が設けられているので、休業損害の支払いは認められないという部分があるでしょう。

しかし、病気休暇を利用しても休業損害として認められる項目もあります

保険会社の主張をそのまま受け止めるのではなく、妥当なものであるかを慎重に判断してみましょう。

弁護士の〈ここがポイント〉
公務員の病気休暇は、有給休暇のように自分の都合で取得できるものではありません。
そのため、休業損害として認められるケースもあり、相手の保険会社と粘り強く交渉することが大切です。
弁護士であれば過去の裁判例に基づいた請求が可能ですので、お困りの際はお気軽にご相談ください。

公務員の後遺障害逸失利益は問題になりやすい

公務員は給与体系がしっかりと確立されているため、後遺障害が認定されても給与が減額されないことが多いといえます。

そのため、相手方からは「減収していないので、逸失利益が発生していない」という主張がなされるケースがあるのです。

しかし、たとえ減収がない場合であっても、逸失利益を認める事例があることがわかります。

逸失利益の定義や判例について解説します。

公務員は減収しにくいので逸失利益でもめる

「逸失利益」とは
交通事故に遭わなければ本来得られたはずの収入に対する補償を指します。

逸失利益は慰謝料の計算とは異なり、年齢や職業、年収などによって金額が異なります

公務員の場合は給与体系がはっきりとしているので、金額の計算自体は難しくありません。

しかし、給与が減額されない部分の取り扱いをどうするかによって金額が大きく違ってくるため、相手の保険会社との間でもめてしまう原因となりやすいでしょう

公務員も逸失利益が認められるケース

公務員の場合、交通事故が原因で昇給や昇格が遅れたときに、その分を将来的な損害としてとらえ逸失利益として認められることがあります

公務員は昇給のモデルケースが規定によってわかりやすいため、昇給遅れによる損害がどれくらい発生したかが比較的把握しやすいでしょう。

逸失利益の請求にあたっては、しっかりと証拠に基づいて主張をすることが大切です

これまで支払われてきた給与や他の職員の事例なども踏まえたうえで、正確に計算を行ってみましょう。

公務員特有の問題を解消するには弁護士に依頼

公務員の立場という性質から、一般的な交通事故のケースよりも問題が複雑になる場合があります

自分だけで解決しようとしても、時間や手間ばかりがかかる恐れがあるので注意が必要です。

対応に困ったときは、経験豊富な弁護士に相談をしてスムーズに解決する流れをつくってみましょう。

ここでは、弁護士に交通事故案件を依頼するメリットを紹介します。

休業損害・逸失利益の請求がしっかりできる

交通事故案件に詳しい弁護士であれば、実務の取扱いや裁判例を参考に示談金(損害賠償金)の計算をしっかりと行ってくれます

休業損害や逸失利益の計算は、個別の状況によって違ってくるので、自分で計算を行うのは大変です。

そのため、専門的な知識と豊富な経験を備えている弁護士に依頼をするほうが、正確な計算を行えます

まずはどれくらいの補償を受けられるのかを把握するためにも、弁護士に相談をしてみましょう。

慰謝料を増額できる可能性がある

交通事故案件を弁護士に依頼することで、弁護士基準(裁判基準)に基づいた請求が可能となります

慰謝料は弁護士基準とその他の計算基準とでは、金額に大きな違いがあるため、十分な補償を受けるには弁護士に依頼をするほうがよいといえます

長期にわたって通院をしたり入院をしたりすれば、それだけ慰謝料額も大きくなるものです。

弁護士基準が適用されることで慰謝料額が増える可能性があるので、ぜひ前向きに検討してみましょう。

保険会社とのやりとりを代行してもらえる

弁護士に依頼をすることは、慰謝料などの金額面だけでなく、時間的な部分でもメリットがあります

相手の保険会社とのやりとりや示談交渉を弁護士に任せられるので、時間的・精神的な負担の軽減につながるでしょう。

交通事故の被害に遭うとさまざまな対応に追われることになるため、少しでも負担を軽減していく流れをつくることは重要です。

特に、休業損害や逸失利益の支払いなどで相手方との交渉が難航しているときは、迷わず弁護士に相談をしてみましょう。

後遺障害の等級認定手続きを代行してくれる

ケガの治療を継続しても完治せず、後遺症が残ったときは後遺障害の等級認定手続きを行う必要があります

しかし、申請手続きを進めるためには多くの書類をそろえなければならず、書類の内容を読み解く知識も必要です。

手続きに不備があれば、後遺障害として認められなかったり、実際の症状よりも低い等級で認定されたりする恐れがあります。

適正な補償を受けるためにも、弁護士に依頼をして実際の症状に見合った等級が認定されるようにしましょう

認定結果に納得できないときも、弁護士を通じて異議申立を行えます。

後遺障害の等級認定にまつわるさまざまな手続きをサポートしてもらえるので、負担の軽減につながります。

公務員が事故に遭った場合の注意点は?

公務員の方が交通事故の被害に遭ってしまったときには、さまざまな問題が生じます。

交通事故に関して職場への報告義務がありますし、昇進・昇格への影響も気になるでしょう

それぞれのポイントについて、詳しく解説します。

職場への報告義務がある

公務員が交通事故を起こしたり、被害に巻き込まれたりした場合は職場への報告義務があります。

報告をしなければ補償が受けづらくなるだけでなく、懲戒処分の対象となることもあるので注意が必要です

そのため、交通事故の被害に遭ったらすみやかに職場へ報告を行いましょう

スムーズに示談交渉を進めるためには、職場の理解や協力が必要になる部分もあるため、きちんと伝えることが大切です。

昇進・昇格に関わる場合がある

交通事故の影響によって仕事を休んだ場合、病気休暇などの制度によって経済的な部分で困ることは少ないでしょう。

しかし、昇進・昇格といった部分で少なからず影響が出ることもあるので注意が必要です

長期にわたって仕事を休んでしまえば、勤務評定でプラスとなる要素がないので、結果として昇進・昇格に影響が出る可能性があります。

示談金以外にも公務員への補償はある?

公務員は公務上または通勤中に療養が必要なケガを負った場合や後遺障害が残ったときに、災害補償制度を利用できます

国家公務員、地方公務員それぞれに災害補償制度が設けられており、必要に応じて制度を活用することが大切です

どのような補償が受けられるのかを詳しく見ていきましょう。

療養が必要な場合

療養が必要な場合に受けられる補償として、次の4つが挙げられます。

補償の種類 補償内容
療養補償 公務上または通勤中にケガを負ったり、病気にかかったりした場合に受けられる補償です。治るまでの期間の療養費が支給されます。
休業補償 療養のために勤務することができないとき、平均給与額の60%が支給されます。ただし、傷病補償年金が支給される場合は該当しません。
傷病補償年金 療養を開始してから1年6ヶ月が経過しても完治せず、傷病等級の第1級~第3級に該当するとき、等級に応じて以下の日数分の年金が支給されます。
  • 第1級:平均給与額の313日分
  • 第2級:平均給与額の277日分
  • 第3級:平均給与額の245日分
介護補償 傷病補償年金・障害補償年金の受給者が、常時または随時介護を必要とする場合に一定額が支給される仕組みです。

相手方からの慰謝料の支払いを待たずに支給が受けられるため、積極的に制度を活用することが大事です

後遺障害が残った場合

後遺障害が残ったときに受けられる補償としては、次の3つが挙げられます。

補償の種類 補償内容
介護補償 傷病補償年金・障害補償年金の受給者が、常時または随時介護を必要とする場合に一定額が支給される仕組みです。
障害補償年金 障害等級の第1級~第7級に当てはまる障害が残った場合、障害等級に応じて以下の年金が支給されます。
  • 第1級:平均給与額の313日分
  • 第2級:平均給与額の277日分
  • 第3級:平均給与額の245日分
  • 第4級:平均給与額の213日分
  • 第5級:平均給与額の184日分
  • 第6級:平均給与額の156日分
  • 第7級:平均給与額の131日分
障害補償一時金 障害等級の第8級~第14級に当てはまる障害が残った場合、障害等級に応じて以下の一時金が支給されます。
  • 第8級:平均給与額の503日分
  • 第9級:平均給与額の391日分
  • 第10級:平均給与額の302日分
  • 第11級:平均給与額の223日分
  • 第12級:平均給与額の156日分
  • 第13級:平均給与額の101日分
  • 第14級:平均給与額の56日分

後遺障害として認められるためには、単に後遺症が残っているだけではなく、後遺障害の等級認定手続きを行う必要があります

医師による診断書のほかに、さまざまな書類をそろえて申請する必要があるので、後遺障害の等級認定に詳しい弁護士に相談をしてみましょう

地方公務員災害補償基金

地方公務員の場合も、国家公務員と同じように災害補償制度が設けられています

この制度は公務上の災害について使用者の無過失責任の立場をとっているため、地方公共団体に過失がない場合でも補償義務が発生すると定められているのが特徴です。

療養補償や休業補償、介護補償など基本的な仕組みは国家公務員災害補償制度と同様です。

制度そのものは各地方公共団体からの負担金によってまかなわれているので、自治体に所属する公務員は利用が可能です

【まとめ】公務員の方で交通事故の慰謝料でお悩みのときは弁護士へ相談

交通事故の被害に遭ったときには、相手方に対して必要な補償を求めることができます。

しかし、公務員として働く方の場合は休業中も給与の補償が受けられるため、保険会社との交渉が難航する場合があります

また、交渉が進まないからといって訴訟にまで発展すれば、解決までに長く時間がかかってしまいます。

早期に問題の解決を図るならば、交通事故案件に詳しい弁護士に相談をしてみましょう

弁護士法人・響には、経験豊富な弁護士が在籍しており、個別の状況に合わせた対応が可能です。

弁護士特約を利用すれば、費用の負担を気にせずに弁護士への依頼が行えます

相手方に対する休業損害や逸失利益の請求でお悩みのときは、お気軽にご相談ください。

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西川 研一
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