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逸失利益とは?交通事故で損害賠償をもらえる条件と計算のしかた

計算

交通事故に遭って「後遺症」が残ってしまうと、今後の生活に不安を抱いてしまうのも無理はありません。 後遺症のために働けなくなったり収入が減ってしまうなど、本来得られたはずの収入が失われた場合は「逸失利益」として請求することができます

そのためには後遺障害の「等級認定手続き」が必要となります。 この記事では逸失利益の基本的なポイントと計算、請求のしかたを紹介します。

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目次

逸失利益とはなに?慰謝料とは違う?

「逸失利益(いっしつりえき)」とは、将来得られるはずだった収入のことです。

交通事故に遭い後遺障害が残り、働けなくなったり、労働能力が低下したことで収入が減った場合、損害賠償(示談金)として相手に請求することができます。

「慰謝料」は事故で負った精神的な苦痛への補償であるのに対して、逸失利益は将来的な損害に対する補償といえます。

また逸失利益には「後遺障害逸失利益」と「死亡逸失利益」との2種類があります。

「後遺障害逸失利益」とは
後遺障害が残ることで生じる労働能力の低下や、転職・退職などによる収入低下なども考慮されます。
「死亡逸失利益」とは
死亡した場合は、将来的に得られたはずの収入に対してだけでなく、日常生活に必要となるはずだった生活費などは控除されることになります。

それぞれ計算のしかたが異なり、事故前に得ていた収入や年齢などが関係してきます。

逸失利益を正しく計算するポイントを知っておきましょう。

逸失利益を受け取れる条件

逸失利益はどのような場合でも受け取れるものではなく、請求するための条件があります。

おもな条件をあげると、次のとおりです。

  • 被害者が交通事故の影響によって亡くなっている
  • 後遺障害として等級認定を受けた
  • 原則として無職ではなく労働対価としての収入があること。

交通事故によって被害者の方がお亡くなりになられた場合、逸失利益はご遺族が代わりに請求します。

この場合は「死亡逸失利益」の請求となり、事故当時に学生であっても請求可能です。

後遺障害と認定されたときには、「後遺障害逸失利益」を受け取ることができます。

後遺障害を負うことによって、どれくらい労働能力が低下したかは等級ごとに決められています。

そして、逸失利益の計算は原則として67歳未満であることを前提としています。

これは事故に遭わなければ、67歳まで働けたはずだという考えに基づくものであり、判例も67歳までを基準としています。

しかし就労可能年数を「平均余命の半分」と捉える計算方法もあるので、本人に働く意欲があったと認められれば、67歳以上でも請求できる可能性があります。

逸失利益の計算はさまざまな角度から計算するものであり、重傷であるほど金額も大きくなります。

詳しい金額を把握したい場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談することも検討してください。

弁護士の〈ここがポイント〉
逸失利益の計算には、事故前に得ていた収入額や年齢、労働能力の算出などさまざまな要素が絡んできます。事故に遭われた方の年齢、職業や立場によってケースバイケースとなるので、具体的な金額は弁護士に相談して確認してみましょう。

逸失利益をもらえないケースもある

逸失利益は、条件に当てはまれば必ず請求できるわけではなく、場合によっては受け取れないこともあります。

逸失利益がもらえないのには、次のようなケースが想定されます。

逸失利益がもらえないケース
  • 後遺障害が軽傷で、交通事故後の収入が減っていない
  • 将来にわたって収入が減る可能性がない

将来にわたって収入が減る見込みがなければ、損害補償として請求が行えません。

しかし、本人が特別な努力をして収入を維持しているケースや、職業の性質によって不利益を被る恐れがあるケースでは、逸失利益の請求が認められたこともあります。

逸失利益はいくらもらえる?裁判の判決例を紹介

交通事故で後遺障害になってしまった場合、逸失利益はいくらぐらいもらえるのでしょうか。
実際の裁判で下された、判決の例をご紹介します。

後遺障害12級(むちうち)の逸失利益の判例

交通事故の被害として多く見られる症状の一つに、「むちうち」があげられます。

むちうちは後遺障害「14級」もしくは「12級」に当てはまる可能性があり、それをもとに逸失利益を計算すると以下のとおりです。

■後遺障害12級(年収500万円・37歳)のケース
後遺障害逸失利益 597万1,000円
500万円(基礎収入)×14%(労働能力喪失率)×8.53(労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数)=597万1,000円

※必ずしもこの金額が受け取れるわけではありません。

上記の例では受け取れる逸失利益の金額として、597万1,000円が想定されます。

むちうちの場合は、ある程度の期間が経過すると症状が軽くなる可能性があるとされ、労働能力喪失期間が短縮される傾向が見られます。

後遺障害12級13号で5年~10年程度、後遺障害14級9号で3年~5年程度が目安となります。

むちうちの慰謝料について詳しくはこちらの記事をご参照ください。

後遺障害3級の逸失利益の判例

「後遺障害3級」が認定された方の逸失利益について、実際に起こった交通事故案件の判例をもとに紹介します。

■後遺障害3級(17歳)のケース
後遺障害逸失利益 8,605万9,619円
【事故の概要】
後続車から追突された事故であり、被害者(当時17歳)が事故の影響によって高次脳機能障害になったとして争われた裁判です。裁判所は後遺障害逸失利益として、8,605万9,619円を認定しました。

出典:裁判所 平成18年5月26日/ 札幌高等裁判所 第2民事部/平成16(ネ)5031

【後遺障害逸失利益の計算】
499万8,700円(賃金センサス平成10年全年齢平均賃金)×100%(労働能力喪失率)×17.2164(67歳までのライプニッツ係数-18歳に達するまでのライプニッツ係数)=8,605万9,619円

後遺障害が重いほど逸失利益として請求できる金額も多くなるため、実際の症状に見合った等級認定を受けることが大切です。

高齢者の死亡逸失利益の判例

次は、交通事故によって被害者が亡くなってしまったケースです。

高齢者の「死亡逸失利益」については、以下のような判例があります。

■死亡逸失利益(75歳)のケース
死亡逸失利益 1,134万788円
【事故の概要】
歩行中の被害者(当時75歳)が車に追突されて死亡した事故です。亡くなられた方は専業主婦として家事を担っており、死亡逸失利益の請求が認められました。

出典:裁判所 令和2年6月22日/ 岐阜地方裁判所 民事第2部/平成29(ワ)729

【死亡逸失利益の計算】
319万1,900円(賃金センサス平成26年女性学歴計70歳以上の平均賃金)×(1-0.3)×5.0757(労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数)=1,134万788円
※生活費控除率30%・就労可能年数6年として計算

歩行者の交通事故では、高齢者が巻き込まれてしまう場合も少なくありません。

上記の判例のように、生活を支える中心的な役割を担っていれば、死亡逸失利益の請求が行えることもあります。

学生の死亡逸失利益の判例

事故当時学生の場合は、交通事故に遭わなければ将来的な収入を得ていたことが想定されます。

以下の判例では、事故に遭って死亡した学生に対して死亡逸失利益の請求が認められています。

■死亡逸失利益(17歳)のケース
死亡逸失利益 5,080万1,691円
【事故の概要】
バイクを運転していた被害者(当時17歳)が、大型貨物自動車と衝突して死亡した事故です。すでに受験が決まっており、将来的に実家の家業を継いで中心的な役割を果たすことが考慮され、死亡逸失利益が認められました。

出典:裁判所 平成21年4月22日/仙台地方裁判所 第1民事部/平成20(ワ)566

【死亡逸失利益の計算】
489万3,200円(賃金センサス平成18年全労働者男女計の年収額)×(1-0.4)×17.3035(67歳までのライプニッツ係数-18歳に達するまでのライプニッツ係数)=5,080万1,691円
※生活費控除率40%として計算

逸失利益はどう計算する?2つの計算式を紹介

逸失利益には「後遺障害逸失利益」と「死亡逸失利益」の2種類があり、それぞれ計算方法が異なります。

また、18歳未満の未就労者のケースでも計算方法が異なるので注意しましょう。

■後遺障害逸失利益の計算式

後遺障害逸失利益=年間の基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

※18歳未満の未就労者の場合は「67歳までのライプニッツ係数-18歳に達するまでのライプニッツ係数」を用います。

■死亡逸失利益の計算式

死亡逸失利益=年間の基礎収入×(1-生活費控除割合)×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

※18歳未満の未就労者の場合は「67歳までのライプニッツ係数-18歳に達するまでのライプニッツ係数」を用います。

具体的に金額を当てはめて計算していくには、各用語についても理解しておく必要があるので紹介します。

基礎収入とは
交通事故に遭う前の収入(年収)を指します。給与所得者であれば源泉徴収票や給与明細などから判断し、自営業者であれば前年度の確定申告をもとにします。主婦(主夫)や子どもの場合は後述する賃金センサスを計算基準とします。
労働能力喪失率とは
後遺障害を負うことによって、労働能力がどれくらい失われたかを示す割合です。等級ごとに5%~100%の間で目安が決められており、職業や後遺障害の部位などによって変動します。具体的な目安数値は、次の章で紹介しています。
ライプニッツ係数とは
逸失利益は一括で受け取ることになるため、利息などの利益分(中間利息)を差し引いて適正な金額にするために用います。労働者として働ける残存期間(労働能力喪失期間)によって、ライプニッツ係数は変わります。
賃金センサスとは
厚生労働省が賃金統計として公表しているもので、正式には「賃金構造基本統計調査」といいます。被害者が学生や主婦などの場合には、基礎収入を計算する根拠として用います。産業・企業規模・性別・年齢・学歴などで分けられた平均賃金を当てはめて計算します。
参考:厚生労働省 賃金構造基本統計調査 
生活費控除割合とは
死亡逸失利益の計算で必要となるもので、生活費としてかかると見込まれる分を差し引きます。性別や年齢、扶養家族の有無などによって異なりますが、30%~50%の間で設定されています。

では次に、具体例として逸失利益の計算を解説します。

逸失利益を計算してみよう

逸失利益としてどの程度の金額が受け取れるのかを知るには、具体例をもとに考えていくのがスムーズです。

ここでは、次の条件で後遺障害逸失利益を計算してみましょう。

  • 40歳男性
  • 年収600万円
  • 後遺障害7級

600万円(基礎収入)×56%(7級の労働能力喪失率)×18.327(労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数)=6,157万8,720円

このケースでは、後遺障害逸失利益として6,157万8,720円を受け取れる計算となります。

「労働能力喪失率」は後遺障害等級ごとに目安が決められており、以下のようになります。

〈労働能力喪失率〉

等級 労働能力喪失率
第14級 5%
第13級 9%
第12級 14%
第11級 20%
第10級 27%
第9級 35%
第8級 45%
第7級 56%
第6級 67%
第5級 79%
第4級 92%
第3級 100%
第2級 100%
第1級 100%

基礎収入や後遺障害の等級によって、請求額も大きく異なってくるので綿密な計算が重要です。

逸失利益の計算・請求は複雑なので弁護士に相談しよう

逸失利益の計算は、後遺障害の等級と年齢、職業などさまざまな条件を勘案し計算する必要があります。

また自分で計算をしてみても、実際に算出された金額が正しいものなのか判断が難しいものです。

逸失利益の計算を適正に行いたい場合は、交通事故案件に詳しい弁護士に相談してみましょう。

弁護士であれば逸失利益の計算だけでなく、後遺障害の等級認定手続きや、慰謝料などの示談交渉まで幅広く対応できます。

また算出した逸失利益を請求するためには、相手の保険会社と交渉する必要があります。

そんなとき交通事故案件の経験豊富な弁護士であれば、心強い味方となってくれるはずです。

弁護士費用が心配な場合は、ご自身や家族が加入する保険(自動車保険や火災保険など)に弁護士特約(弁護士費用特約)が付いていないか確認してみましょう。

保険に弁護士特約がついていれば、弁護士費用負担を気にせずに頼むことができるのです。

弁護士特約とは
保険の特約として保険会社が提供しているサービスです。弁護士特約が付いていれば、弁護士費用を(300万円程度まで)保険会社が補償してくれます。

また弁護士へ依頼することで相手側との交渉や書類の作成のサポートなどもおまかせでき、負担も軽減できるなどのメリットも多くあります。

交通事故に遭った場合は、早めに弁護士に相談をしてみてはいかがでしょうか。

弁護士の〈ここがポイント〉
逸失利益を計算しても実際にその賠償金を請求するためには、相手の保険会社との交渉が必要になります。一般の方が交渉することも可能ですが、満額支払ってもらえるとは限りません。弁護士に依頼することで保険会社との交渉を任せることができ、納得のいく賠償金を請求できる可能性が高くなります。

逸失利益についてよくあるQ&A

逸失利益についてよくある疑問について、お答えします。

Q.交通事故後に収入が減っていなくても、逸失利益は受け取れますか?

A.逸失利益は将来的な減収に対する補償ですが、たとえ交通事故後の収入が減っていなかったとしても、受け取れる場合があります

収入を減らさないために本人が特別な努力をしていたり、後遺障害の影響によって昇進・昇格などに影響を与えたりしたと認められるケースがあげられます。

個別の事案となるため、詳しくは弁護士に相談されることをおすすめします。

Q.自営業の場合は、どのように基礎収入を計算すればいいですか?

A.逸失利益の計算には基礎収入が関係しますが、自営業者の場合は前年の確定申告書をもとに計算します

売り上げから諸経費を除いた所得をベースとして、労働能力喪失率やライプニッツ係数をかけ合わせて算出します

仮に事業が赤字であったとしても、過去の売り上げの推移や年齢、事業内容などをもとに判断されます

Q.働いていない無職の場合でも、請求は可能でしょうか?

A.無職であったとしても、働く意欲や能力があると認められる場合は、逸失利益の請求が可能です。

賃金センサスや以前得ていた収入をもとに、逸失利益を計算します。専業主婦(主夫)・兼業主婦(主夫)・学生・子ども・年金生活者などの方は、現在無職であったとしても請求が行えます。

【まとめ】交通事故の逸失利益の請求は複雑。弁護士に相談してみよう

交通事故に遭った場合は、示談金の一部として「逸失利益」を請求できる場合があります。

後遺障害を負ってしまったり、ご不幸にもお亡くなりになられたりした場合に、将来得ていたはずの収入を補償する意味で請求します。

年収や職業、年齢や後遺障害の程度などによって受け取れる金額は大きく変わるため、慎重に計算を進めていく必要があります。

逸失利益の計算には専門的な知識が必要なため、一般の方が取り組まれるのは難しい面があります。

また算出した額どおりの金額を相手の保険会社に請求して払ってもらうためには、示談交渉を行う必要があります。

弁護士法人・響には交通事故案件の経験豊富な弁護士が在籍していますので、逸失利益の請求をはじめ交通事故の示談に広く対応いたします。

交通事故に遭って不安なときでも、ご相談者様の状況を理解したうえで親身になって対応いたしますので、まずはお気軽にお問合せください。

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