交通事故の慰謝料請求の流れは?請求時に必要な書類や明細も解説
交通事故の慰謝料額は通常は相手の保険会社が提示してくるため、明細などを用意する必要はありません。しかし被害者請求を行う場合などは必要になります。
交通事故の被害に遭いケガを負ったときに請求できる慰謝料の金額は、通常は相手の保険会社が提示してくるため、明細や事故に関する書類などを用意する必要はありません。
ただし、以下のようなケースでは明細(事故に関する書類)があるほうがより適切な請求が行えるでしょう。
- 相手が任意保険に加入しておらず、直接請求を行うケース
- 被害者請求を行うケース(相手の自賠責保険会社に請求する)
- 保険会社に提示された慰謝料に納得がいかず、詳しい内容を知りたいケース
交通事故でケガを負ったときは、慰謝料以外の損害賠償金も請求できるので、書類や明細をきちんとそろえておくことが大切です。
本記事では、慰謝料を含む損害賠償で請求できる項目や請求の流れ、必要な書類・明細などを紹介します。
また、慰謝料をしっかりと請求するためのポイントなども詳しく解説します。
- 慰謝料を増額できる可能性がある
- 保険会社との交渉を徹底サポート
- 24時間365日全国どこでも相談受付中
目次
交通事故発生から慰謝料請求の流れともらっておくべき書類
交通事故の慰謝料については、通常は相手の保険会社が提示してくるため、明細(事故に関する書類)や事故に関する書類などは必要になりません。
しかし、次のようなケースでは明細(事故に関する書類)があったほうがより正確な金額の慰謝料を請求できるでしょう。
- 相手が任意保険に加入しておらず、直接請求を行うケース
- 被害者請求を行うケース(相手の自賠責保険会社に請求する)
- 保険会社に提示された慰謝料に納得がいかず、詳しい内容を知りたいケース
保険会社が提示してくる慰謝料額は、個別の事情を必ずしも詳しく反映しているわけではありません。
そのため、交通事故で被った損害を明らかにするために、明細(事故に関する書類)などの根拠となる資料が必要となります。
特に、相手の保険会社に対して自ら請求を行う「被害者請求」においては、ご自身で書類や明細書などをそろえなければなりません。
慰謝料の請求については、「示談交渉」の場で相手の保険会社との話し合いによって決められますが、具体的な流れとしては以下のようになります。
交通事故が発生してから慰謝料が支払われるまでには、
治療期間(完治もしくは症状固定まで)+示談交渉期間(約2~3ヶ月)
の期間が必要になります。
後遺障害等級認定の手続きを行ったり、保険会社との話し合いがまとまらずに裁判で争ったりするときはさらに時間を必要とするので注意しましょう。
交通事故が発生してから慰謝料を受け取るまでの流れや受け取っておくべき書類などについて、さらに詳しく解説します。
交通事故に遭ったら必ず警察に連絡する
交通事故の被害に遭ったら、必ず警察に連絡をして現場検証を行ってもらいましょう。
警察への報告は道路交通法で定められており、運転者の義務なのですみやかに連絡をする必要があります。
(交通事故の場合の措置)
第七十二条一項 交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、(中略)警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。
事故の当事者どうしで話し合うとトラブルのもとになるため、警察官に立ち会ってもらうことが大切です。
事故状況などをできるだけ詳しく警察官に報告し、ケガがあれば人身事故で届出を行いましょう。
また、ご自身が加入する保険会社にも連絡をして、事故状況や相手方の情報なども伝えておきます。
相手の身元を確認するために運転免許証などを見せてもらったり、余裕があれば現場の写真を撮っておいたりすることも大事です。
- 必ず警察に連絡して、現場検証を行ってもらう。
- 相手の身元を確認する(運転免許証・車両のナンバーなど)。
- 保険会社に連絡をして、事故状況や相手方の情報を伝える。
- 余裕があれば、事故現場の写真を撮っておく。
するべきこと
- 交通事故証明書
- 実況見分調書(もらえないが閲覧・謄写は可能)
必要な書類・もらっておくべき書類など
完治か症状固定までしっかりケガを治療する
交通事故に遭ってケガがある場合は、病院で医師の診察を受けましょう。
そして、ケガが完治もしくは症状固定となるまでしっかり治療することが大切です。
- 症状固定とは
ケガの治療を続けても、症状の改善が見込まれない状態のことをいいます。
ケガの治療を継続していると、相手方の保険会社から治療費の打ち切りを伝えられることがあるので注意が必要です。
治療費打ち切りと言われた場合は、医師の判断や弁護士に意見を求めましょう
いつ症状固定になったかは保険会社ではなく、最終的には裁判所が医師の診断などのさまざまな事情を考慮しながら判断することになります。
- 病院で医師の診察を受ける。
- 定期的に通院し、完治もしくは症状固定となるまで治療を続ける。
- 相手方の保険会社から治療費打ち切りを伝えられたら、医師か弁護士に相談をする。
するべきこと
- 交通事故による医師の診断書
- 診療報酬明細書
- 交通費の明細(領収書や病院までのルートを記したメモ書きなど)
必要な書類・もらっておくべき書類など
後遺症が残った場合は後遺障害等級認定の申請をする
ケガの治療を続けても後遺症が残ってしまったときは、後遺障害等級認定の申請を行いましょう。
申請手続きを行い、後遺障害として認定される(14~1級)ことで後遺障害慰謝料などの請求ができます。
手続きにかかる時間は、ケガの程度や事故状況などによって違ってきますが、全体の約86%の事故は申請から2ヶ月ほどで調査が完了します。
参考:損害保険料率算出機構『自動車保険の概況 2021年版』
後遺障害診断書の作成や各種検査(レントゲン検査・MRI)なども必要になるので、全体としては3~4ヶ月程度を手続きにかかる時間として見込んでおきましょう。
- 症状固定になったら、後遺障害等級認定の申請を行う。
- 医師に後遺障害診断書を作成してもらう。
- 交通事故とケガとの因果関係を証明するために、必要に応じて各種検査を受ける。
するべきこと
- 後遺障害診断書
- 検査資料
- 画像データなどの検査資料
必要な書類・もらっておくべき書類など
治療が終わったら示談交渉をする
ケガの治療が終わりすべての損害額が明らかになったら、相手方の保険会社と示談交渉を行います。
示談交渉ではおもに「慰謝料・損害賠償金の金額」や「過失割合」について話し合われます。
- 過失割合とは
- 交通事故の原因について当事者間でどの程度の責任があるかの割合を示すものです。
過失割合が大きくなると、その分だけ慰謝料や損害賠償金(示談金)を差し引かれるので注意が必要です。
ご自身では交通事故の被害者だと思っていても、過失割合がつく場合もありますが、実況見分調書があると過失割合を判断するのに役立ちます。
保険会社とのやりとりや過失割合の判断は専門的な知識が必要になるため、どのように示談交渉を進めればいいか迷うこともあります。
交通事故案件の解決実績が豊富な弁護士に相談をすれば、保険会社との示談交渉を任せられるので、必要に応じて早めに相談をしてみましょう。
- 相手方の保険会社と示談交渉を行う。
- 根拠となる資料をもとに、過失割合を算出する。
するべきこと
- 実況見分調書があると過失割合の算出に有利
- ドライブレコーダーの動画
必要な書類・もらっておくべき書類など
示談成立したら示談金を受け取る
相手方との示談が成立したら、示談書を交わして示談金(損害賠償金)を受け取ります。
示談が成立した後では内容を覆すのが難しくなるため、書かれている内容に不明点や疑問点があるときはその場で確認をすることが大切です。
示談書は基本的に、相手方の保険会社が作成するので、内容をよくチェックしておきましょう。
示談書に盛り込まれている内容は、おもに次のような項目になります。
- 加害者と被害者の氏名、住所
- 事故の詳細(事故が発生した日時・場所・内容・車のナンバーなど)
- 示談条件(示談金・支払い方法・支払期日)
- 示談金の支払いが遅れたときの取り決め
- 清算条項(示談書で決めた条件以外で金銭などを双方が請求できない旨を明記)
- 後遺障害が発生したときの留保事項
示談が成立した後では内容を覆すのが難しくなるため、書かれている内容に不明点や疑問点があるときはその場で確認をすることが大切です。
- 示談書の内容をよくチェックする。
- 内容に不明点などがあれば、その場で確認をする。
するべきこと
- 示談書
必要な書類・もらっておくべき書類など
交通事故の慰謝料請求時に必要な書類・明細書
前述したように、通常は相手方の保険会社が慰謝料を提示してくるので、明細(書類)などは特に必要ありません。
しかし、提示された慰謝料額などに納得できないときなどには、自分の主張を裏付ける根拠として必要になる書類や明細をそろえておきましょう。
ここでは、交通事故の慰謝料請求時に必要となる書類や明細書について、入手先も含めて解説します。
入通院慰謝料の請求に必要な書類・明細書
交通事故でケガを負った場合には、入通院慰謝料(障害慰謝料)を請求することができます。
慰謝料請求のためには、さまざまな必要な書類が必要になります。
書類・書式のおもな入手先は、次の通りです。
必要書類 | 書類・書式のおもな入手先 |
---|---|
交通事故証明書 | 自動車安全運転センター |
事故発生状況報告書 | 保険会社 ※請求者自身が記載 |
診断書 | 病院 |
診療報酬明細書 | 病院 |
整骨院などの施術を受けた場合は 施術証明書・施術費明細書 |
整骨院など |
通院交通費明細書 | 保険会社 ※請求者自身が記載 |
タクシーや駐車場を利用した場合は レシート・領収書 |
タクシー会社 駐車場管理会社 など |
印鑑証明書 | 市区町村役場 |
入通院慰謝料を自分で請求する場合は、相手方の自賠責保険会社に問い合わせれば、請求書一式を窓口もしくは郵送で受け取れます。
相手の加入している自賠責保険会社は、自動車安全運転センターが発行する交通事故証明書に記載されているのでよく確認しておきましょう。
おもな書類・書式の例を紹介
おもな書類・書式の実例を紹介します。
必ずしもこの通りでなくても良い場合がありますが、記載する内容は概ねこのようなものになります。
●事故発生状況報告書の書式(自賠調7号様式)
●診断書の書式(自賠調8号様式)
後遺障害等級認定の申請に必要な書類・明細書
ケガの治療を行っても完治せず、後遺症が残ってしまったときは、後遺障害等級認定を受けることで後遺障害慰謝料の請求ができます。
後遺障害等級認定の申請には、先に述べた「入通院慰謝料の請求に必要な書類・明細書」に加えて、次のものが必要となります。
必要書類 | 書類の入手先 |
---|---|
後遺障害診断書 | 病院 |
各種検査資料 | 病院 |
後遺障害診断書は医師が作成するものなので、自覚症状をしっかりと伝えて、実際の症状をきちんと反映してもらいましょう。
〈後遺障害診断書書式の例〉
各種検査資料はレントゲン検査やMRIなどの画像資料のことであり、医師の指示に従って必要な検査を受けることが大切です。
死亡慰謝料の請求に必要な書類・明細書
交通事故によって被害者が亡くなられてしまった場合、死亡慰謝料(近親者慰謝料)を請求できます。
請求をするときには「入通院慰謝料の請求に必要な書類・明細書」に加えて、次の書類が必要です。
必要書類 | 書類の入手先 |
---|---|
死亡診断書または死体検案書 | 病院 |
除籍謄本 | 市区町村役場 |
戸籍謄本 | 市区町村役場 |
除籍謄本や戸籍謄本は、遠隔地の自治体に請求するときは時間がかかるため、早めに手続きを行うことが大切です。
慰謝料以外の損害賠償金の請求に必要な書類・明細書
交通事故で被った損害に対する補償は、慰謝料以外にも請求できるものがあります。
損害は「積極損害」と「消極損害」の2つに分けられます。
積極損害とは、交通事故が起こらなければ出費する必要がなかった費用のことで、積極的に財産を失わざるを得なかった損害を指します。
具体的には、治療費や交通費、介護費用などが当てはまります。
一方、消極損害とは交通事故が起こっていなければ、被害者が将来得られるはずだった利益を失ったことの損害です。
具体的には、逸失利益(いっしつりえき)や休業損害などが該当します。
各項目の内容や補償額の相場などについてまとめると、以下の通りです。
請求できる項目 | 内容 | 補償額の相場 | |
---|---|---|---|
自賠責保険基準 | 弁護士基準 (裁判基準) |
||
治療関係費 | 治療にかかる費用 | 実費 | 実費 |
器具等購入費 | 車いす・松葉づえなど | 実費 眼鏡は50,000円が限度 |
実費 |
通院交通費 | 通院のための交通費 | 実費 | 実費 |
付添看護費 | 入通院で付き添いが必要になった際の費用 | ・入院:1日あたり4,200円 ・自宅看護もしくは通院:1日あたり2,100円 |
・入院:近親者付添人1日あたり6,500円程度 職業付添人の場合は実費程度 ・通院:1日あたり3,300円程度 ※症状などによる |
入院雑費 | 入院中に必要なものの購入・利用費用 | 1日あたり1,100円 | 1日あたり1,500円程度 |
家屋等改造費 | 後遺症が残ることによってかかる自宅のバリアフリー化などの費用 | 補償なし | 実費相当額 |
葬儀関係費 | 葬儀に関する費用 | 100万円 | 150万円程度 |
休業損害 | 休まずに働いていれば、得られた現在の収入の減少に対する損害賠償 | 1日あたり6,100円 | 1日あたり事故前の基礎収入額から算出 ※職業によって異なります |
車両破損による損害費用 | 車両の修理にかかった費用 | 補償なし | 適正修理費相当額 |
逸失利益 | 後遺障害が残ったり死亡したりしなければ、将来得られたはずの収入の減少に対する損害賠償 | 基礎収入・労働能力喪失率・喪失期間などによって算出 | 基礎収入・労働能力喪失率・喪失期間などによって算出 |
着衣や積み荷等の損害に関する費用 | 交通事故が原因で破損したものの費用 | 補償なし | 実費相当額 |
※参考:自賠責保険ポータルサイト「限度額と保障内容」
公益財団法人 日弁連交通事故相談センター東京支部「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準上巻 2022年版」
次に各項目を請求するために必要な書類や明細書について紹介します。
治療や入院に関する費用
交通事故で負ったケガの治療や入院などに関する費用を請求する場合、次のような書類が必要になります。
費用項目 | 必要書類・明細 | 書類の入手先 |
---|---|---|
治療費 | 診断書、診療報酬明細書 | 病院 |
手術費用 | 診断書、診療報酬明細書 | 病院 |
リハビリ費用 | 施術証明書・施術費明細書 | 整骨院など |
入通院費用 | 診断書、診療報酬明細書 | 病院 |
通院交通費 | 通院交通費明細書 | 保険会社 |
針灸・マッサージ費用 | 施術証明書・施術費明細書 | 整骨院など |
治療や手術に関する費用は、病院で診断書や診療報酬明細書を受け取ってから、相手方の保険会社に対して請求しましょう。
保険会社がすでに明細などを取得している場合もあるので、書類を入手する前に保険会社に問い合わせておいたほうがスムーズです。
リハビリや針灸、マッサージ費用などは通院した整骨院や接骨院などで、施術証明書や施術費明細書を発行してもらいます。
〈施術証明書・施術費明細書書式の例〉
また通院交通費については、電車やバスなど、公共交通機関の利用金額のメモを残しておくことが大事です。
付添看護に関する費用
付添看護費とは、ケガの治療を受ける方に付き添い介護・介助を行う必要があるときに請求できる費用です。
家族などの近親者の場合は付添看護自認書、専門業者に依頼したときは付添看護領収書を保険会社に提出します。
書式は損害賠償請求書と一緒になっている場合もあるので、保険会社に確認してみましょう。
付添看護が必要であるかは医師の判断によるため、事前に確認をしておくことが大事です。
認められる費用の目安は通院・入院の場合で異なり、さらに計算基準によっても違ってきます。
請求できる費用の目安についてまとめると、次の通りです。
費用項目 | 自賠責保険基準 | 弁護士基準(裁判基準) |
---|---|---|
通院付添看護費 | 自宅看護もしくは通院:1日あたり2,100円 | 通院:1日あたり3,300円程度 ※症状などによる |
入院付添看護費 | 1日あたり4,200円 | 近親者付添人1日あたり6,500円程度 職業付添人の場合は実費程度 |
入院雑費に関する費用
入院雑費とは、入院中にかかる治療費以外の費用で、具体的には以下のものなどが該当します。
- 日用品、雑貨の購入費(パジャマや洗面具、食器などの購入費)
- 栄養補給費(医師の指示による牛乳やヨーグルトなどの摂取費用)
- 通信費(電話代や切手代など)
- 家族通院交通費(家族がお見舞いなどで訪れたときの交通費)
- 文化費(新聞代やTVカード代など)
これらの費用は入院雑費として、自賠責保険基準で1日あたり総額1,100円、弁護士基準(裁判基準)で1日あたり総額1,500円程度となっています。
自賠責保険基準 | 弁護士基準(裁判基準) |
---|---|
1日あたり1,100円 | 1日あたり1,500円程度 |
どのような支出でも認められるわけではなく、必要かつ妥当な支出にかぎられているので注意が必要です。
領収書は基本的に不要ですが、高額な支出がある場合はトラブルを避けるために、領収書をきちんと残しておくとよいでしょう。
入院雑費についても、損害賠償請求書でまとめて保険会社に請求します。
車いすなどの装具購入に関する費用
ケガの程度に応じて、車いすなどの器具が必要だと認められれば、器具等購入費として相手方の保険会社に請求ができます。
代表的なものとしては、次のようなものです。
- 車いす
- 松葉づえ
- 義手
- 義足
- 義眼
- 義歯
- 補聴器
- 眼鏡
- コンタクトレンズ
など。
使い始めて一定期間が経過すれば交換が必要になるため、将来の買い替え費用もあわせて請求できます。
請求できる金額は実費分となりますが、眼鏡は自賠責保険基準の場合は5万円が上限となるので注意しましょう。
請求方法は、購入した業者から受け取った領収書を添えて、損害賠償請求書と一緒に提出します。
診断書やレントゲンなどの文書料
ケガの状況を把握するために病院でレントゲンなどの検査を受けたり、診断書を作成してもらいますが、これらの費用は文書料として請求できます。
具体的なものとしては次のようなものがあります。
- ・診断書の作成費
- ・診療報酬明細書(レセプト)作成費
- ・医師の意見書の作成費
- ・レントゲンやMRIなどの検査費用
などです。
書類を取得するためにかかった費用を示す領収書を病院で発行してもらい、保険会社に請求しましょう。
休業損害=交通事故によるケガが原因で仕事を休んだ場合の補償
休業損害とは、交通事故が原因で仕事を休まざるを得なくなったときに、休業せずに働くことができれば本来得られるはずだった収入を失ったことに対する補償を指します。
休業損害を請求する場合に必要な書類は、職業によって異なります。
給与所得者の場合は、勤務先に休業損害証明書を作成してもらう必要があります。
職業 | 必要書類 | 書類の入手先 |
---|---|---|
給与所得者 (パート・アルバイトを含む) |
休業損害証明書 | 勤務先 |
源泉徴収票 (事故前年のもの) |
勤務先 | |
事業所得者・事業所得者の家族専従者(従業員) | 確定申告書(控)(事故前年のもの) | 請求者自身が作成 |
家事従事者(主婦・主夫) | 住民票 | 市区町村 |
休業損害証明書の書式は、相手方の保険会社から送られてくるので、手元に届いたら勤務先の担当者に渡しましょう。
また休業損害の具体的な計算方法は、自賠責保険基準と弁護士基準(裁判基準)で異なります。
<自賠責保険基準の場合>
1日あたり6,100円*×休業日数
で計算を行います。
*2020年3月31日以前は5,700円
1日あたりの減収分が6,100円を超えることが証明できるなら、最大で1万9,000円までの補償を受けられます。
ただし、自賠責保険の傷害分の支払い限度額はケガの治療費や入通院慰謝料、休業損害などを含めて120万円までとなっているので注意が必要です。
<弁護士基準(裁判基準)の場合>
1日あたりの基礎収入×休業日数
で計算します。
1日あたりの基礎収入とは、給与所得者であれば事故に遭う3ヶ月前に得ていた収入の平均額から計算します。
自営業者などの場合は、確定申告書の控えなどの書類をもとに計算を行うので、収入を示す書類を用意しておきましょう。
なお、休業損害は主婦(主夫)や学生でも請求することができます。
逸失利益=将来受け取れることができた収入の補償
交通事故による後遺障害が残らなければ、将来受け取ることができたであろう収入の補償として逸失利益(いっしつりえき)を請求できます。
後遺障害として等級認定を受け、労働能力が低下したことで収入が減ったと認められれば、後遺障害逸失利益の請求を行えます。
ただし、原則として事故当時に無職ではなく、労働対価としての収入があることや将来にわたって収入が減る見込みがあることなどが請求条件となっているので注意しましょう。
後遺障害逸失利益の計算方法は、次の通りです。
後遺障害逸失利益=年間の基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
※18歳未満の未就労者の場合は「67歳までのライプニッツ係数-18歳に達するまでのライプニッツ係数」を用います。
逸失利益の計算は一律で決められるものではないため、具体的な金額を算出するには専門的な知識が必要です。
交通事故案件で豊富な解決実績のある弁護士に相談をして、具体的な金額を算出してもらいましょう。
なお、逸失利益は後遺障害等級認定の結果などを踏まえたうえで、示談交渉の場で話し合いによって決められます。
交通事故の慰謝料請求額は各基準によって異なる
交通事故の慰謝料額は、計算する基準によって異なります。
慰謝料の計算方法は、おもに次の3つがあります。
- ・自賠責保険基準
- ・弁護士基準(裁判基準)
- ・各保険会社が独自に設定している基準
それぞれの計算方法で金額が異なるだけでなく、通院・入院や軽傷・重傷によっても慰謝料額は違ってきます。
次に各計算方法について、さらに詳しく解説します。
自賠責保険基準の慰謝料計算方法
「自賠責保険基準」は、自動車損害賠償保障法(自賠法)に基づいた計算方法です。
交通事故の被害者を保護し、最低限の補償を行うことを目的としています。
(この法律の目的)
第一条 この法律は、自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする。
通院・入院にかかわらず金額は同じであり、自賠責保険の傷害分の支払い限度額は治療費や入通院慰謝料、休業損害などを含めて120万円までです。
自賠責保険基準での慰謝料の計算方法は、次の式に当てはめて計算します。
慰謝料の対象となる日数×4,300円*
*2020年3月31日以前は4,200円
慰謝料の対象となる日数とは、
- ・治療期間
- ・実通院日数×2
を比較して少ない方の日数で計算します。
自賠責保険基準についてくわしくは下記の記事をご参照ください。
「交通事故でもらう自賠責保険の慰謝料はいくら?早く受け取る方法は?」
弁護士基準(裁判基準)の計算方法
「弁護士基準(裁判基準)」は、弁護士に慰謝料請求を依頼した場合の基準額で、過去の裁判例に基づいて設定されています。
自賠責保険基準と異なり、通院・入院の場合や軽傷(むちうちや打撲など)・重傷(骨折など)といったケガの程度によって慰謝料額は違ってきます。
慰謝料額の目安を軽傷・重傷の場合でそれぞれまとめると、以下のようになります。
入院期間 通院期間 |
なし | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
0ヶ月 | 0 | 35万円 | 66万円 | 92万円 | 116万円 | 135万円 | 152万円 |
1ヶ月 | 19万円 | 52万円 | 83万円 | 106万円 | 128万円 | 145万円 | 160万円 |
2ヶ月 | 36万円 | 69万円 | 97万円 | 118万円 | 138万円 | 153万円 | 166万円 |
3ヶ月 | 53万円 | 83万円 | 109万円 | 128万円 | 146万円 | 159万円 | 172万円 |
4ヶ月 | 67万円 | 95万円 | 119万円 | 136万円 | 152万円 | 165万円 | 176万円 |
5ヶ月 | 79万円 | 105万円 | 127万円 | 142万円 | 158万円 | 169万円 | 180万円 |
6ヶ月 | 89万円 | 113万円 | 133万円 | 148万円 | 162万円 | 173万円 | 182万円 |
※参考:公益財団法人 日弁連交通事故相談センター東京支部「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準上巻 2022年版」
※入院期間と通院期間の交差した欄が慰謝料額の基準となります。慰謝料額はあくまで目安です。
入院期間 通院期間 |
なし | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
0ヶ月 | 0 | 53万円 | 101万円 | 145万円 | 184万円 | 217万円 | 244万円 |
1ヶ月 | 28万円 | 77万円 | 122万円 | 162万円 | 199万円 | 228万円 | 252万円 |
2ヶ月 | 52万円 | 98万円 | 139万円 | 177万円 | 210万円 | 236万円 | 260万円 |
3ヶ月 | 73万円 | 115万円 | 154万円 | 188万円 | 218万円 | 244万円 | 267万円 |
4ヶ月 | 90万円 | 130万円 | 165万円 | 196万円 | 226万円 | 251万円 | 273万円 |
5ヶ月 | 105万円 | 141万円 | 173万円 | 204万円 | 233万円 | 257万円 | 278万円 |
6ヶ月 | 116万円 | 149万円 | 181万円 | 211万円 | 239万円 | 262万円 | 282万円 |
※参考:公益財団法人 日弁連交通事故相談センター東京支部「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準上巻 2022年版」
※入院期間と通院期間の交差した欄が慰謝料額の基準となります。慰謝料額はあくまで目安です。
また、慰謝料額は「慰謝料計算機」を使えば、手軽に金額をシミュレーションできます。
ケガの程度や通院期間など、数項目を入力すれば計算できるので、ぜひ活用してみてください。
慰謝料計算機でシミュレーション
任意保険は各保険会社によって金額が異なる
入通院慰謝料の計算においては、自賠責保険基準や弁護士基準(裁判基準)とは別に、各保険会社や共済が独自に設定している基準や計算方法もあります。
これらは「任意保険基準」などと呼ばれており、おおむね自賠責保険基準と弁護士基準(裁判基準)の中間程度とされています。
しかし、実際の基準値や計算方法は各保険会社や共済によって異なるため、統一的な基準となるものがあるわけではありません。
慰謝料について説明したWebサイトなどでは、任意保険基準と紹介されていることも多いですが、現在、統一的な基準としての任意保険基準と呼べるものは厳密には存在しない
といえます。
かつて存在した「旧任意保険支払基準」のなごりでこのように紹介されているにすぎません。
具体的に「通院XX日で慰謝料XX万円」などと紹介することはできないため、本記事では原則として任意保険基準や旧任意保険支払基準については記載していません。
慰謝料の請求を弁護士に依頼することのメリット
交通事故に遭って慰謝料を請求する場合は、交通事故の解決実績が豊富な弁護士に相談すると、さまざまなメリットがあります。
交通事故の相手に直接請求する場合や被害者請求を行うときは、先に述べたように多くの書類や明細書を自分で集める必要があります。
すべてを集めるには時間がかかりますし、内容が正しいものかを判断するには手間もかかります。
交通事故案件で豊富な解決実績のある弁護士に任せると、次のようなメリットがあります。
- 必要書類・明細書の準備や示談交渉を任せられる
- 弁護士基準(裁判基準)の慰謝料を請求できる
- 後遺障害等級認定の申請を任せられる
各メリットについて、それぞれポイントを見ていきましょう。
必要書類・明細書の準備や示談交渉を任せられる
弁護士に依頼をすることで、必要書類や明細書の準備が整うだけでなく、相手方の保険会社との示談交渉も任せられます。
実際に資料を集めても、それをもとに慰謝料などを話し合う示談交渉の場で納得のいく結果を導きだすことは、一般の方では難しい部分もあるでしょう。
交通事故案件の解決実績が豊富な弁護士であれば、資料をもとに有利な交渉を進められる可能性が高まります。
弁護士に依頼することで、相手方の保険会社と直接やりとりをせずに済むため、依頼者にとって時間や精神的な負担の軽減につながるでしょう。
その分、治療や仕事に専念できるともいえます。
弁護士基準(裁判基準)の慰謝料や損害賠償金を請求できる
弁護士に依頼をすると、弁護士基準(裁判基準)で慰謝料や損害賠償金の請求が行えます。
同じ事故状況であっても、自賠責保険基準と弁護士基準(裁判基準)では慰謝料額に大きな違いがあります。
弁護士基準(裁判基準)は、弁護士に依頼をすることで適用されるものであり、納得のいく形で慰謝料請求が行えるでしょう。
法律の知識を備えた弁護士に依頼をすることで、示談交渉においても有利な交渉を進めやすくなります。
相手方の保険会社から提示された慰謝料額などに納得できないときは、交通事故案件の解決実績の豊富な弁護士に相談をしてみましょう。
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後遺障害等級認定の申請を任せられる
ケガが完治せずに後遺症が残り、後遺障害等級認定の手続きを行うときにも弁護士に任せられます。
相手の保険会社に手続きを任せず、自ら被害者請求を行うときは、後遺障害診断書の他にさまざまな書類や資料を準備しなければなりません。
専門的な知識が求められる部分が多く、初めて手続きを行うときは何から始めればいいのか迷うことも多いでしょう。
後遺障害等級認定の手続きで実績のある弁護士であれば、個別の状況を踏まえたうえで対応してもらえるので、実際の症状に合った認定結果につながりやすいといえます。
また、医師や保険会社とのやりとりに困ったときも、中立的なアドバイスをもらえるので納得のいく形で手続きを進められるでしょう。
- 交通事故の被害に遭うとケガの治療だけでなく、後遺障害等級認定の手続きや相手方の保険会社との示談交渉など、さまざまなことに対応する必要があります。
- 慰謝料額は通常、相手方の保険会社が提示してくれますが、必ずしも個別の状況を反映した内容になっていないこともあるため、自ら請求を行う場合もあるでしょう。
- しかし、自分で請求を行おうとすれば、請求の根拠を示す書類や明細書などを準備しなければなりません。
- 事故状況やケガの程度によっては集める書類が多く、時間や手間が多くかかり、負担を感じることもあります。
- そこで交通事故後の対応は、交通事故案件に豊富な解決実績のある弁護士に相談をしてみてはいかがでしょうか。
- 弁護士法人・響では、豊富な解決実績を持つ弁護士が多数在籍しており、ご依頼者様の状況に合わせたていねいな対応を心がけております。
- ご自身の保険に弁護士費用特約がついていれば、弁護士費用の自己負担が不要になる可能性が高いですし、弁護士費用特約に加入していない場合は、相談料と着手金は無料です。
- まずはお気軽にお問い合わせください。
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