ここでは債権者(お金を貸した側)として、実際に支払督促から強制執行(給与差押え)を行った一般の方の体験談を紹介します。
支払督促が届いても対処せず差押えの強制執行になると、このような事態になるという実例ですので、参考にしてください。
お話をお伺いした方:S様(東京都・女性)
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目次
事業用資金として数百万円を貸したことが発端
支払督促~強制執行を行った発端は、数年前に知人へお金を貸したことです。会社を立ち上げるという話があったので、応援する意味で数百万円のお金を用立てたのです。
返済については、最初は口約束だけでした。毎月一定額を返済するという話でしたが、当初から約束の期日に全く返済されませんでした。
そこで知人の弁護士に相談したところ、確実に返済をしてもらうためには「公正証書」を作っておいたほうが良いと言われたのです。
もちろんこの時点では、本当に支払督促を送ったり強制執行をすることはまったく考えていませんでしたが、公正証書を作成し、念のため執行文を作成することにしました。
金銭の貸し借りでは「強制執行認諾条項」を定めておくことで、返済が滞納した際に(本来は裁判で確定判決が必要)財産や給与の差押えなどの「強制執行」の申立が直ちに行えます。
公正証書を作成するためには、相手(債務者)の承認も必要になります。そのため相手と一緒に公証役場へ行くことにしました。
公証役場で強制執行認諾条項入りの公正証書を作成
公証役場に行く際には、あらかじめ相手の合意をとって債務額や返済金額などを記載した書類を作成しておきました。
その内容を公証人が双方相違がないか確認のうえ、清書してくれます。
たとえば遅延損害金の利率は最大限を要求したかったので、法的な上限利率を教えていただき上限利率の21.9%に設定しました。
さらに、返済を滞納した場合に一括返済を請求できる「期限の利益喪失条項」や、財産の差押えができる「強制執行認諾条項」についてはどうするかと聞かれたので、相手の承諾を得たうえで記載することにしました。
その結果、公正証書(金銭消費貸借公正証書)には、以下のような内容を記載しました。
- その時点の債権額:数百万円
- 返済期間:5年
- 遅延損害金の利率:上限利率の21.9%に設定
- 期限の利益喪失条項:返済が1ヶ月滞納した場合は一括返済とする
- 強制執行認諾条項:返済を滞納した場合は強制執行を行う
面倒くさい作業でしたが、損はしたくないので冷静に対応しました。
このときの手数料は約19,000円かかりましたが、相手と折半して払いました。
返済が止まり連絡もとれないため強制執行を決断
2019年末に公正証書を作成してから1年程度は、あまり問題なく返済が続きました。
実は返済期日に若干遅れることもありましたが、一応返済をしてくれたので、あえて遅延損害金は請求しませんでした。
しかし約1年4ヶ月たってから返済が止まり、連絡もとれなくなったのです。
しかたなく相手の実家や兄弟の家にも電話をしましたが、本人とは連絡がつかないと言われて途方に暮れてしまいました。意を決して相手の職場へ行きましたが、本人と会うことはできません。
腹が立ちましたが、この時点では「心を改めて返済さえしてくれれば強制執行はしない」と考えていました。
ところが…再度相手の実家へ電話をした際に、名前を言ったとたんガチャ切りをされたのです。このときはさすがに「馬鹿にされた!」と感じ、堪忍袋の緒が切れました。
そこで、支払いが滞ってから5ヶ月後に強制執行することを決断したのです。
強制執行をするためには、まず支払督促を送達する必要があるのですが、ここでも苦難が待ち受けていました。
相手の勤務先に支払督促を送達
給料差押えの強制執行をするためには、相手の勤務先住所(登記事項である本社所在地)を調べる必要があったので国税庁まで行って調べました。
また支払督促を送達するためには相手の住所が必要なのですが、どうやら相手は本来の住所に住んでいない様子です。
そこで、相手の居住地の区役所本庁へ出向き強制執行申立書と公正証書を見せて「強制執行するのでこの方の住所を教えてほしい」と依頼して、相手の住民票を発行してもらいました。
しかし相手の住所は変わっていなかったのです。すなわち、戸籍の附票を取って確認しても、引越しの履歴が載っていなかった。
しかたがないので、住民票に記載された住所へ支払督促を送達することにしました。
支払督促を行うための申立書は、裁判所のWebサイトからダウンロードして自分で書きました。
あらかじめ公正証書作成時に執行文を作成していたので、申立てを行うことですぐに裁判所から支払督促を送達してもらえました。
ところがこの支払督促は、裁判所に返送されてしまったのです。やはり相手は、住民票に記載された住所に住んでいなかったのです。
次に相手の勤務先へ送達することにしました。
支払督促をもう一度送達するには「再送達上申書」が必要と言われたので、書いて裁判所へ提出しました。
これにより、支払督促が相手の勤務先へ送達されることになりました。
〈参考:支払督促申立書〉
出典:裁判所「支払督促申立書」
給料差押えのために仮執行宣言付支払督促を相手の勤務先へ送達
相手の勤務先に送達された支払督促は、会社の方が受け取ってくれて本人には届いたはずです。
しかし何の反応もなく、返済もされません。そのまま異議申し立てもされないまま2週間が経過しました。
そこで、2回めの支払督促(仮執行宣言付支払督促)を、再度相手の勤務先へ送達しました。
この支払督促には、給料差押えをする旨が記載されています。
受け取った相手の勤務先は、内容に相違がない旨を確認して「送達通知書」と「陳述書」を裁判所へ返送する必要があります。
陳述書には、勤務先の方に相手の勤務状況や給料・差押えの予定額などを記載してもらいます。また勤務先は自動的に「第三債務者」になってしまいます。
そのため相手の勤務先には、借金と差押えの事実がバレてしまうのです。
本来、裁判で判決が確定するまでは強制執行をすることができません。しかし上訴などによって判決の確定が遅れることによる不利益から債権者を救済するために、判決が確定する前に強制執行を認めるという制度です。
〈参考:仮執行宣言申立書〉
出典:裁判所「仮執行宣言申立書」
差押えの金額を相手の勤務先と交渉し給料明細を確認
2回目の支払督促(仮執行宣言付支払督促)を送達したあとは、差押えの金額などについて相手の勤務先と直接話をする必要があります。
そのため、ちょうど2週間経った日の朝に相手の勤務先へ電話をしました。社長さんと直接お話をすることができたのですが、お忙しいようで正直、迷惑そうでした。
元金数百万円+遅延損害+執行費用(申立手数料・送達費用)
差押えできる額は原則として給料の1/4と決まっています。そのため、毎月返済してほしい金額どおりには返済してもらえませんが、しかたがありません。
しかも相手の給料は「日給月給」で毎月変わるということだったので、差押えの金額も毎月変わってしまいます。
そこで給料と差押えの金額に相違がないことを確認するために、勤務先の人にお願いして相手の給料明細を毎月FAX送信してもらうことにしました。当然、相手の給料明細は丸見えです。
給料明細には私の名前と振込んだ金額も記載されており、私にとっても迷惑なことですが相手にとっても恥ずかしい状態だと感じました。
給料の差押えをしたあとは、「強制執行」の名の通り毎月間違いなく振込みがされています。
今後は定期的に裁判所へ「取立届」を提出することになります。毎月の取立金額や残債、取立継続中であることを報告するのです。
つまり、万一振込が途絶えた場合は、その事実を裁判所へ報告することになるのです。
強制執行されると勤務先にバレて迷惑をかけてしまう
お金を貸した側としてみれば、手続きはいろいろ大変でしたが、この制度は返済させるための最終手段になります。
逆に借りた側は、お金を返さずに支払督促、その後の強制執行をされると、かなり恥ずかしい思いもすることになりますね。
勤務先に借金の額や裁判沙汰になったことが全部バレますし、給料明細には第三者に振込んだ事実が記載されます。
また手続きや毎月の処理のために、勤務先にかなりのご負担をかけてしまいます。多くの人に迷惑をかけることになりますね。
借りたお金を返さず放置しておくと、こういう事態になることを知っておいてほしいと思います。
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