「個人再生でどのくらい借金は減る?デメリットもあるの?」
「個人再生と任意整理や自己破産は、何が違うの?」
借金解決の方法の一つに「個人再生」があります。
個人再生は、裁判所の認可を得て借金を減額してもらう債務整理の一つです。
個人再生には「借金を5分の1~10分の1程度に減額できる」などのメリットがあります。
一方で以下のようなデメリットや注意点があります。
- 定期的な収入がないと個人再生は難しい
- ブラックリストに載る
- 官報に載る
- 税金・養育費・罰金などは減額できない
- 手続きが複雑で期間も長い
個人再生は自己破産と混同されることが多いようですが、「住宅や自動車を残せる」という大きな特徴があります。
この記事では、個人再生のメリット・デメリット、自己破産など他の債務整理方法との違いや流れ、費用などについて具体的に解説します。
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目次
個人再生とは?借金をどのくらい減額できる?
個人再生とは、正当な手段で借金を解決する債務整理の一つで、借金返済が不能であることを裁判所に申し立てて、認可決定を受けることで借金を減額してもらう、民事再生法に規定されている手続きです。
民事再生との大きな違いとして、個人再生は、小規模の個人事業主やサラリーマン、アルバイトなど、個人を対象として行われる点が挙げられます。
企業や規模の大きな事業主を対象とした民事再生よりも、手続きが簡易化されています。


借金を減額したり、借金の返済を猶予したりするなど、借金を正当に解決するための手続きの総称をいいます。
債務整理については以下の記事で詳しく解説しています。
個人再生が認可される確率(いわば成功率)は、裁判所が発表している令和2年度の司法統計によると、93.2%となっており、手続きが終結にいたった総数は1万1,988件にものぼります。
個人再生であれば、預貯金などの財産とともに家も差し押さえられてしまう自己破産とは異なり、家を手元に残せる可能性もあるため、持ち家がある方などに向いている債務整理方法です。
では、個人再生の手続きを行えば、実際に借金をどのくらい減額できるのでしょうか?
具体的にわかりやすく解説します。
借金の減額幅は5分の1~10分の1程度
個人再生の手続きを行うと、借金総額に応じて5分の1~10分の1程度に減額できる可能性があります。
減額した金額は原則3年、最長5年で分割返済することになっています。
個人再生では、借金(債務)を抱える申立人が返済しなければならない最低限の金額として「最低弁済額」の基準が定められています。
最低弁済額は下の表のとおりです。借金総額に応じて異なります。
借金(債務)総額 | 最低弁済額 |
---|---|
100万円未満 | 借金総額全部 (減額なし) |
100万円以上 500万円以下 |
100万円 |
500万円超 1,500万円以下 |
借金総額の5分の1 |
1,500万円超 3,000万円以下 |
300万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
借金総額の10分の1 |
※借金総額からは住宅ローンを除く
※ただし、所有財産の合計額が(清算価値)が借金額を超える場合は、その金額が借金額として算出されます
具体的な借金減額後の残額は、以下の表のようになります。
借金(債務)総額 | 借金減額後の残額 |
---|---|
100万円 | 100万円(減額なし) |
200万円 | 100万円 |
300万円 | 100万円 |
700万円 | 140万円 (700万円の5分の1) |
1,000万円 | 200万円 (1,000万円の5分の1) |
1,600万円 | 300万円 (1,500万円超3,000万円以下) |
個人再生の最低弁済額については以下の記事で詳しく解説しています。
住宅ローン特則で住宅を残すこともできる
個人再生では「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」を利用すれば、所有する住宅を残すことが可能です。

住宅ローンを従来どおり返済し続けることで自宅を処分されないようにし、住宅ローンを除く借金は個人再生を行うことで減額できる制度をいいます。
個人再生の住宅ローン特則については以下の記事で詳しく解説しています。
個人再生のメリットは?
では、ここからは、個人再生をした場合のメリットを見ていきましょう。
個人再生のおもなメリットは以下のとおりです。
- 減額(圧縮)できる金額が大きい
- 原則3年(最長5年)での無理のない分割返済が可能
- 住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を使えば家を手元に残せる
- 車も手元に残せる可能性がある
- 給与などの差押えを停止できる
- ギャンブルや浪費が原因でも借金の減額が可能
それぞれ、具体的に解説していきます。
減額(圧縮)できる金額が大きい
個人再生は、後述する任意整理と比べ、借金の減額幅が大きい点がメリットといえます。
任意整理はおもに将来利息のカットを目指すため、最初に借り入れた元金(元本)は減らすことができないのに対し、個人再生は元金も含め、5分の1~10分の1まで借金を減額できる可能性があります。
借金が100万円未満の場合は減額は望めませんが、それ以上の大きな借金がある場合には、個人再生が有効といえます。
借金100万程度の返済方法については、以下の記事で解説しています。
原則3年(最長5年)での分割返済が可能
個人再生後は、原則3年(特別の事情がある場合は最長5年)で減額された残債を分割返済し、完済を目指します。
そのため、債務整理前よりも返済期間が延びる可能性もあり、月々の返済額の大幅な減額も期待できます。
たとえば、借金総額が700万円の場合に個人再生をすると、700万円の5分の1の、140万円まで減額できる可能性があります。

本来、700万円を3年で分割返済するためには、月々約19万4,400円(700万円÷36回)を返済する必要があります。
しかし、個人再生手続後は140万円を3年で分割返済することになり、月々の返済額は約3万8,800円(140万円÷36回)と、大幅な減額が期待できます。
住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を使えば家を手元に残せる
家などの財産を差し押さえられてしまう自己破産と異なり、家を手元に残せる可能性がある点も、個人再生のメリットです。住宅ローンを支払っている場合でも同様です。
個人再生には、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)という制度が設けられており、条件を満たすことで、抵当権の実行を中止でき、家が競売にかけられることを止められます。
その後、通常どおりにローンの返済をしながら家に住み続けることが可能です。
住宅ローン特則(住宅資金特別条項)は、民事再生法・第196〜206条で定められており、おもな利用条件は以下のとおりです。
- 住宅資金貸付債権(住宅ローンとしての借入れ)であること
- 再生債務者(個人再生の申立人)が所有している住宅であること
- 再生債務者の居住用の建物であること
- 床面積の2分の1以上の部分が居住用であること
- 住宅を住宅ローン以外の借入れの担保にしていないこと
- 保証会社からの代位弁済後、6ヶ月以内に再生手続開始の申立てがされていること
上記の条件に当てはまる家が2戸以上ある場合には、より長く居住用として使っている建物1戸にかぎられます。
なお、住宅ローンの返済を含めた再生計画案で認可がおりる見込みがない場合には、住宅ローンの約定利息と遅延損害金を含めて支払うことを条件に、支払期限を延ばす(リスケジュールをする)選択肢もあります。
個人再生による住宅ローンへの影響は以下の記事で詳しく解説しています。
車も手元に残せる可能性がある
車を所有している場合には、以下の条件に当てはまっていれば、手元に残すことができます。
- 自動車ローンを完済している
- 自動車ローンを完済していなくても、債務者自身が名義(所有権)を持っている
それぞれの場合について、見ていきましょう。
自動車ローンを完済している
自動車ローンを完済している場合には、車はディーラーや信販会社に引き揚げられることなく、手元に残すことができます。
ただし、ローンを完済していた場合、その車の財産としての価値が高ければ、「清算価値保障の原則」により、返済額が増える可能性がある点には注意が必要です。

「清算価値」とは、債務者が保有する財産をすべて処分・清算したときに得られる総額をいいます。
「清算価値保障の原則」とは、この清算価値を最低限、債権者に支払わなければならないというルールのことです。
清算価値保障の原則については以下の記事で詳しく解説しています。
先に述べた「個人再生における借金の最低弁済額」と比べて、清算価値が高額である場合には、清算価値分までは最低限、債権者に返済しなければならないのです。

そのため、車などの財産がある場合には、返済額が上がる可能性があります。
以下の条件で、例を見てみましょう。
借金総額:300万円
債務者が所有する財産の総額(清算価値):自動車(時価200万円)
債務整理方法:小規模個人再生手続
借金総額が300万円の場合には、最低弁済額は100万円となります。
一方で、債務者が所有する清算価値は自動車の200万円分です。
このとき、最低弁済額と清算価値の関係は以下のようになります。
最低弁済額:100万円 < 清算価値:200万円
最低弁済額よりも清算価値が高いため、債権者に返済しなければならない金額は清算価値の200万円となります。
このように、車を手元に残したことによって、返済額が高くなってしまうケースもあります。
次に、ローンを完済していない場合について見ていきましょう。
自動車ローンを完済していなくても、債務者自身が名義(所有権)を持っている
ローンを完済していなくとも、個人再生を行った債務者が車の所有権を持っている場合には、車は引き揚げられることはありません。
しかし、自動車ローンを組む際、多くの場合ディーラーや信販会社などの債権者は、車を債権の担保とするため、「所有権留保」を契約に盛り込んでいます。

借金を完済するまでの間は、財産の名義(所有権)が債務者ではなく、借金を貸し出した債権者にあることをいいます。
そのため、所有者留保の契約をしている自動車ローンの場合には、個人再生手続を行ったタイミングで、契約どおりに返済できなくなったと見なされて、契約にもとづき、車を引き揚げられてしまうことになります。
自分の車が所有権留保の状態であるかどうかは、「自動車検査証(車検証)」を見て確認することが可能です。
車検証の以下2項目に信販会社やディーラーの名義が記載されている場合は、所有件留保が適用されている状態といえます。
- 所有者の氏名又は名称
- 所有者の住所
個人再生で車を残す方法については、以下の記事でも紹介しています。
給与などの差押えを停止できる
借金の返済を滞納し続け、督促状や催告書などの請求も無視すると、給与や預貯金などの財産を差し押さえられてしまう可能性があります。
そこで、個人再生の申立てを行い再生手続開始決定がなされるか、「強制執行中止命令」を申し立てることで、この差押え(強制執行)を停止することが可能です。
それぞれの方法について見ていきましょう。
差し押さえについては以下の記事で詳しく解説しています。
再生手続開始決定がなされる
個人再生の申立てから約1ヶ月後、再生手続開始決定がなされると、以下の民事再生法・第39条に定められているように、強制執行等の申立てができなくなり、すでにされている手続きは中止されます。
民事再生法
第三十九条第一項(他の手続の中止等)
再生手続開始の決定があったときは、破産手続開始、再生手続開始若しくは特別清算開始の申立て、再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行等若しくは再生債権に基づく外国租税滞納処分又は再生債権に基づく財産開示手続若しくは第三者からの情報取得手続の申立てはすることができず、破産手続、再生債務者の財産に対して既にされている再生債権に基づく強制執行等の手続及び再生債権に基づく外国租税滞納処分並びに再生債権に基づく財産開示手続及び第三者からの情報取得手続は中止し、特別清算手続はその効力を失う。
注意しておきたいのは、この強制執行は一度中止されるものの、強制執行手続自体が取り消されているわけではない点です。
給与の一部は差し押さえられたまま、債権者にも債務者にも渡らず、勤務先か、法務局などの供託所に預けられます。

金銭や有価証券などの管理を国の機関(供託所)に委ねることで、一定の法律上の目的を達成するための制度。
給与の返還を受けるには、再生計画案が裁判所に認可され、個人再生手続が完了するまで待つか、「強制執行取消命令」を申し立てる必要があります。
強制執行取消命令を申し立てる場合は、「強制執行取消の上申書」を作成し、強制執行を行っている裁判所に提出しましょう。
〈強制執行取消の上申書の書式例〉※山口地裁より引用
- 取消命令正本
- 郵便切手84円×債権者・債務者・第三債務者の数
強制執行を行うことで、個人再生を行うにあたって支障が出ると判断された場合には、取消が認められる可能性があります。
強制執行中止命令を申し立てる
「強制執行中止命令」を申し立てることでも、強制執行の停止は可能です。
個人再生の手続開始決定が出されるには、申し立ててから1ヶ月程度時間がかかる場合もあります。
そのため、強制執行によって生活に大きな負担がかかるといった場合には、以下のような上申書を作成し、強制執行中止を申し立てるとよいでしょう。
〈強制執行停止の上申書の書式例〉※山口地裁より引用

- 中止命令正本
- 郵便切手84円×債権者・第三債務者の数
ギャンブルや浪費が原因でも借金の減額が可能
個人再生は、ギャンブル、株取引などの射幸行為(偶然の利益や成功を目的とした行為)や浪費によってできた借金でも、減額が可能です。
自己破産の場合、借金の返済の免責が期待できますが、ギャンブルなどでの借金の場合、「免責不許可事由」に当てはまり、免責が認められない可能性があります。
個人再生の場合には、こうした借金の理由は問わないため、どのような理由での借金も減額を目指せます。
ギャンブルが理由による借金の解決方法は以下の記事で詳しく解説しています。
個人再生のデメリットは?
以上で述べたように、個人再生にはメリットがありますが、デメリットや注意点もあります。
- 定期的・継続的な収入がないと個人再生の利用は難しい
- 信用情報に事故情報が載る(いわゆる「ブラックリスト」に載る状態)
- 国の広報誌である「官報」に載る
- 保証人に一括返済の請求が来る
- 税金・養育費・罰金などは減額できない
- 手続きが複雑で期間も長い
これらのデメリットの内容や、生活にどのような影響があるのか、ここから具体的に解説していきます。
定期的・継続的な収入がないと個人再生の利用は難しい
個人再生を利用できる条件の一つに「返済の見込みがあること」が挙げられます。
つまり将来も、定期的かつ継続的な収入が見込めないと、再生計画案の認可は難しくなります。
そのため、債務者の収入状況や所有財産の状況、借金総額などを加味したうえで、返済能力があるかどうか判断されます。
さらに、東京地方裁判所などの一部の裁判所では、3〜6ヶ月の間、債務者が決まった金額を毎月振り込む「履行テスト(履行可能性テスト)」という返済シミュレーションが行われています。
これにより、債務者がきちんと返済を続けられるかどうかを見極めているのです。
もし多額の借金があって、定期的かつ継続的な収入が見込めない場合は、債務整理の一つである「自己破産」を検討する必要が出てくるかもしれません。
信用情報に事故情報が載る(いわゆる「ブラックリスト」に載る状態)
個人再生の手続きを行うと、個人再生の開始決定から5~10年程度の間、信用情報機関の信用情報に「事故情報」が登録されます。
信用情報機関とは、クレジットカードやローンなどの利用者の信用情報を取り扱う機関のことです。
信用情報はクレジットカードやローンなどの利用者に関する情報(申込内容や契約内容、支払い状況、借入残高など)で、過剰な貸付けを行わないよう、クレジットカード会社や金融機関、消費者金融などが利用者の信用情報を信用情報機関でチェックをしています。
この信用情報に事故情報が登録されることを、いわゆる「ブラックリストに載る」状態ということもあります。

クレジットカードやローンの返済や携帯電話・スマホ料金の支払いを滞納したり、債務整理の手続きをしたりなど「事故」が生じた場合に登録される情報です。
信用情報機関に事故情報が登録されると、使用中のクレジットカードやローンの利用が停止されます。
事故情報が登録されている間は、原則としてクレジットカードやローンの新規契約・利用ができません。
もし、現金以外の決済手段が必要な場合には、デビットカードやプリペイドカードなどを代替として利用するようにしましょう。
債務整理によるブラックリストの影響については以下の記事で詳しく解説しています。
国の広報誌である「官報」に載る
官報とは、いわゆる「国の広報誌」です。
個人再生をすると、国の広報誌である官報に
- 再生手続開始決定後
- 書面の決議に付する旨の決定後
- 再生計画の認可決定後
の合計3回、個人再生をした事実と名前・住所などが掲載されます。
官報に掲載されることにより、借金があったことや個人再生をしたことが周囲にバレる可能性もあります。
ただし、官報は販売している場所もかぎられており、インターネットでも無料では過去30日までのものしか閲覧できません。
官報の情報を必要とするのは、信用情報機関や、金融機関、不動産業者などのごく一部の人にかぎられるため、一般の人にバレる可能性はあまりないといえるでしょう。
個人再生による官報掲載については以下の記事で詳しく解説しています。
保証人に一括返済の請求が来る
個人再生を行うと、保証人に大きな影響を与える可能性が高くなる点もデメリットといえるでしょう。
個人再生では、特定の借金だけを選んで手続きを行うことができません。住宅ローンを除いたすべての借金が個人再生の対象となります。
保証人がいる借金の場合は、個人再生をすることで保証人に一括返済の請求が来ます。
民事再生法・第177条で定められているように、個人再生計画は保証人に対して効力を有しないため、債務者の借金が減額されたからといって、保証人が負担する分は減額されません。
債権者(貸した側)は減額した分の残りの借金を保証人に一括返済するよう請求することができます。
たとえば、もとの借金が300万円だったとしたら、個人再生によって債務者の返済額を100万円に減額できたとしても、その差分の200万円は保証人に請求されてしまいます。
つまり、個人再生をした債務者は借金が減額できても、保証人が返済を肩代わりすることになってしまうのです。
保証人への影響は以下の記事で詳しく解説しています。
税金・養育費・罰金などは減額できない
個人再生の場合、借金を5分の1~10分の1程度に減額できる可能性がありますが、税金や養育費、罰金などは減額の対象外です。
個人再生をしても税金・養育費・罰金などの支払い義務が残ることは注意しておきたいところです。
手続きが複雑で期間も長い
個人再生の場合、準備・提出すべき必要書類が数多くあり、手続きが複雑な点もデメリットといえるでしょう。
申立て時には、再生手続開始申立書のほか、陳述書や債権者一覧表、財産目録などの各種書類が求められ、内容に漏れがあると個人再生手続の失敗のリスクもあります。
また、再生計画案の作成においては、収入や借金額、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)の利用の有無など、さまざまな要素を考慮しなければなりません。
情報を正確に記載し、不備のない状態にして計画案を提出しなければ、不認可となってしまうおそれもあります。
こうした手続きを個人で行うことは難しく、弁護士や司法書士に依頼することが一般的です。
また手続きに要する期間は、1年~1年6ヶ月程度になることもあります。
借金の解決に1年〜1年半以上も待てないという場合は、もう少し早く解決できる「任意整理(手続期間3~6ヶ月程度)」や、「自己破産(手続期間6ヶ月~1年程度)」など、別の債務整理の方法も検討する必要があるかもしれません。
債務整理の手続き期間については以下の記事で詳しく解説しています。
個人再生と自己破産・任意整理とは何が違う?
債務整理には個人再生の他に「自己破産」や「任意整理」があります。
個人再生と比べて、自己破産や任意整理は何が違うのでしょうか?
それぞれを比較してわかりやすく解説します。
個人再生、任意整理、自己破産の違いは以下の記事で詳しく解説しています。
自己破産=借金のほぼ全額の返済を免除してもらえる
「自己破産」とは、裁判所を介して一部の債務を除きすべての借金の支払いを免除(免責)してもらう、債務整理の一つです。

自己破産には主に3つのメリットがあります。
- 残っている借金は税金や養育費など非免責債権を除いて、全額減額できる
- 免責後に得た収入や財産は原則として自己破産を申し出た本人が自由に使える
- 手続を開始すると、債権者は給料・財産を差押さえるなどの強制執行ができなくなる
自己破産と個人再生の違い=「借金の減額幅」と「住宅・自動車を残せるか」に注目
自己破産と個人再生は何が違うのか、下の表で比較してみました。
個人再生 | 自己破産 | |
---|---|---|
借金の減額 | 5分の1~10分の1程度に減額可 | ほぼ全額減額可 |
住宅の処分 | 「住宅ローン特則」を利用することで回避可 | 処分される |
自動車の処分 | 自動車ローンを完済していれば残せる | 処分される |
手続きの期間 | 1年~1年半程度 | 6ヶ月~1年程度 |
かかる費用の総額 | 50万~90万円程度 | 50〜130万円程度 |
家族や会社にバレる | バレる可能性もある | バレる可能性もある |
信用情報に事故情報として載る | 載る | 載る |
クレジットカードやローンが新規契約できない期間 | 5~10年程度 手続きの開始が決定した日から |
5~10年程度 免責の許可が確定した日から |
保証人への影響 | 保証人は借金の一括返済を求められる | 保証人は借金の一括返済を求められる |
官報に名前や住所が載る | 載る | 載る |
個人再生と自己破産とのおもな違いを見てみると、まず注目したいのは「借金の減額幅」です。
自己破産ではすべてが減額されますが、個人再生では5分の1~10分の1程度の減額にとどまります。
「住宅・自動車の処分」でも、個人再生と自己破産では違いがあります。
自己破産では原則として住宅は処分しなければなりませんが、個人再生であれば「住宅ローン特則」を利用することで住宅を残すことが可能です。
自動車は、自己破産では原則として処分しなければなりませんが、個人再生では自動車ローンを完済していれば車を残すことができます。
※自動車ローンが残っていれば、車は引き揚げられる可能性があります。
自己破産についての詳細は以下の記事もご参照ください。
任意整理=債権者と交渉して借金の減額を図る
「任意整理」とは、裁判所を通さずに、それ以降の借金の返済方法について貸金業者・金融機関など債権者と直接交渉することで借金の減額を図る、債務整理の一つです。

任意整理をすると、本来支払わなければならない将来利息、経過利息、遅延損害金を減額できる可能性があります。
- 将来利息:通常どおり返済を続けていく場合に本来払うはずの利息
- 経過利息:最後に借金を返済した日から一定の日(和解日、和解提案日、取引履歴開示日など)まで発生する利息
- 遅延損害金:借金の返済を滞納している間に発生する損害賠償金の一種
任意整理と個人再生の違い=「借金の減額幅」と「期間の短さ」に注目
任意整理と個人再生とでは何が違うのか、下の表で比較してみました。
個人再生 | 任意整理 | |
---|---|---|
借金の減額 | 5分の1~10分の1程度に減額可 | 原則元金は減額できない |
住宅の処分 | 「住宅ローン特則」を利用することで回避可 | 住宅ローンを対象から 外すことで回避可 |
自動車の処分 | 自動車ローンを完済していれば残せる | 自動車ローンを対象から外すことで回避可 |
手続きの期間 | 1年~1年半程度 | 3~6ヶ月程度 |
かかる費用の総額 | 50万~60万円程度 | 10〜20万円程度 |
家族や会社にバレる | バレる可能性もある | バレにくい |
信用情報に事故情報として載る | 載る | 載る |
クレジットカードや ローンが 新規契約できない期間 |
5~10年程度 手続きの開始決定日から |
5年程度 和解成立日もしくは完済日から |
保証人への影響 | 保証人は借金の一括返済を求められる | 対象から外せば影響を回避可 |
官報に名前や住所が載る | 載る | 載らない |
個人再生と任意整理では、違うところはさまざまありますが、まずは「借金の減額幅」に違いがあります。
個人再生では借金が5分の1~10分の1程度まで減額される可能性がありますが、任意整理では原則として元金は減額されません。
利息などをカットした元金を、原則3年~5年で返済していくことになります。
また、任意整理は裁判所を通さず、債権者との直接交渉となります。
そのため、個人再生のような複雑な手続きはなく、3~6ヶ月程度の短期間で交渉を終えられる可能性があります。
また、任意整理では、交渉をする債権者を選べるため、保証人付きのローンなどは整理対象にしないなど、保証人に影響を及ぼさないように調整できる点もメリットといえるでしょう。
その他、「家族や周囲へのバレやすさ」でも、個人再生と任意整理では違いがあります。
任意整理では、官報に名前や住所が掲載されないので家族や周囲にバレにくいですが、個人再生では官報に名前や住所が掲載されてしまいます。
任意整理についての詳細は以下の記事もご参照ください。
実際に個人再生を行った人の体験談
では、ここからは、実際に個人再生を行った方の体験談をご紹介します。
【事例1】1,000万円以上の借金を400万円弱まで減額した例
Aさん(50代・男性)の事例&体験談 | |
---|---|
個人再生前後の返済総額 | 約1062万円→約385万円 |
個人再生前後の月々の返済額 | 約10万円→約7万円 |
【個人再生をするにいたった経緯】
結婚をしていたころから、お小遣いでは足りない分を借金していました。
離婚したあとも、家具の購入や引っ越し費用でお金がかかったり、自分で使えるお金が増えたと錯覚して、ギャンブルや娯楽費などで浪費をしてしまいました。
多額の借金を負い、自転車操業になったため、自身の収入では返済していくことは困難と思い、個人再生を考えました。
【個人再生手続において大変だったこと】
出張先にいたため、書類を準備するのに別の県の自宅に戻らなければならなかったのが特に大変でした。
また、個人再生手続の依頼直後は返済がないためいったん楽にはなりましたが、コロナ渦で予想外のことが立て続けに起こったりしたので、収入面でちゃんと進めていけるか不安はありました。
【個人再生を弁護士に依頼してよかったこと】
まだ返済中ではありますが、今後何かあった場合には、どうしたらいいかを相談できる場所があるというのがよかった点だと思います。
一から相談先を探さなくてもよく、すでに相談できる窓口があるのは心強いです。
【事例2】約800万円の借金を半分以下まで減額した例
Bさん(50代・女性)の事例&体験談 | |
---|---|
個人再生前後の返済総額 | 約792万円→約364万円 |
個人再生前後の月々の返済額 | 約18万円→約5万9,000円 |
【個人再生をするにいたった経緯】
高齢の母や弟家族、妹と同居をしており、自分と弟で生計を立てていました。
しかし、弟家族の援助や生活費などを工面するために借金が増えていき、返済困難になってしまったため、個人再生を検討しました。
【個人再生手続において大変だったこと】
手続きをほとんど弁護士さんへお任せできたため、苦労は特にありませんでした。
【個人再生を弁護士に依頼してよかったこと】
借金を減額できたことはもちろん、気持ちの面で新たなスタートができた点がよかったと感じました。
質問にきちんと答えていただけたので不安もなく、思い切って相談して本当によかったと思います。
個人再生の利用条件は?
実際に個人再生手続を利用するためには、手続きによってそれぞれ条件が定められています。
まず、個人再生には以下の2つの手続きがあります。
- 小規模個人再生手続
- 給与所得者等再生手続
申立ての際は、上記のいずれを行うかを申立書に記入したうえで、裁判所が判断することになります。
一般的には「小規模個人再生手続」の方が利用者が多く、裁判所の調査(令和元年分)によると、
- 小規模個人再生手続の新規受付件数 1万2,764件
- 給与所得者等再生手続の新規受付件数 830件
となっています。
「小規模個人再生手続」は、おもに個人商店主や小規模の事業を営んでいる人などを対象とした手続きです。ただし、会社員でも利用は可能です。
「給与所得者等再生手続」は、おもに会社員を対象とした手続きとなります。
給与所得者等再生手続は、小規模個人再生の「特則」という位置づけになっています。
原則的には、借金の減額幅が大きい小規模個人再生手続が選ばれます。
ただし、債権者(貸した側)が個人再生に反対しているなどの事情がある場合などには、債権者の同意がいらない給与所得者等再生手続が選ばれるケースもあります。
ここからは、それぞれの利用条件について見ていきましょう。
小規模個人再生手続の利用条件
小規模個人再生手続を利用するには、次の条件を満たす必要があります。
- 借金総額(住宅ローンを除く)が5,000万円以下であること
- 返済の見込みがあること
小規模個人再生手続では、借金の減額に同意しない債権者(貸した側)が過半数である場合、または同意しない債権者が持つ債権額が借金総額の2分の1を超える場合は、認可されないこともあります。
給与所得者等再生手続の利用条件
給与所得者等再生手続を利用するには、次の条件を満たす必要があります。
- 借金総額(住宅ローンを除く)が5,000万円以下であること
- 返済の見込みがあること
- 継続的な収入を得ていて、その収入が給与で安定していて変動が小さいこと
- 過去7年以内に、自己破産や給与所得者等再生を行っていないこと
給与所得者等再生手続では「可処分所得の2年分の金額」を最低限返済しなければならないという条件もあります。

可処分所得は、自分で自由に使えるお金のことです。
一般的には、収入から税金(所得税・住民税など)や社会保険料(健康保険料、介護保険料、年金保険など)を差し引いた手取り収入をいいます。
可処分所得を算出するには、法令に基づく複雑な計算をしなければなりません。
以上のような条件があるため、会社員であっても小規模個人再生手続を選択するケースが多いようです。
なお、給与所得者等再生手続は、借金の減額に同意しない債権者がいても認可されます。
給与所得者等再生手続について詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
個人再生に失敗するケースや対処方法は?
ここからは、個人再生に失敗するパターンと、その対処法について解説していきます。
個人再生失敗の可能性があるNG行動
個人再生に失敗する可能性がある「やってはいけないこと」としては、以下が挙げられます。
- 虚偽の報告をする
- 書類の提出期限を守らない
- 特定の債権者にだけ返済する
- 返済を途中でやめる
- 新しく借入れをする
それぞれ詳しく見ていきましょう。
個人再生を失敗するケースは以下の記事で詳しく解説しています。
虚偽の報告をする
書類の不足はもちろん、書類に記載された内容に不備があった場合には、個人再生に失敗するリスクが生じます。
個人再生手続を行う際には、再生手続開始申立書をはじめとした、さまざまな書類の提出が必要です。
その際、収入状況などに虚偽の報告があると、正確な情報をもとに再生計画案を立てられなくなるため、再生計画案の不認可につながるおそれがあります。
さらに、債務者の財産状況を記載する「財産目録」に、実際に持っている財産を記載しなかった場合には、「財産を隠匿した」として、民事再生法・第255条の「詐欺再生罪」と見なされてしまう可能性もあります。
書類の修正は、書類提出前〜再生手続開始決定前まで可能ですので、記載漏れなど、書類に不備がないようにきちんと確認し、不備に気づいたらすぐに修正をするようにしましょう。
書類の提出期限を守らない
書類の提出期限を守らなかった場合も、失敗のリスクがあります。
裁判所では、個人再生手続の一連のスケジュールが決められているため、個人の都合で変更することは不可能です。
特に、個人再生後の返済のスケジュールを定める再生計画案の提出期限に遅れた場合には、民事再生法・第191条によって、「再生手続廃止の決定をしなければならない」と定められているため、再生手続が途中で廃止となってしまうので、注意しましょう。
特定の債権者にだけ返済する
再生手続開始決定前に、特定の債権者にだけ優先的に返済を行う(偏頗弁済〈へんぱべんさい〉)も、失敗につながる可能性があります。
そもそも、債務整理を行う際には、「債権者平等の原則」というルールがあります。

債務者が所有している財産は、すべての債権者に対して、その債権額に比例して分配されるというルールのこと。
このルールがあるため、たとえ身内に対しても、一部の債権者だけに返済をすることは認められていないのです。
また、先述の清算価値保障の原則によって、偏頗弁済をした分も財産として清算価値に加えられてしまうため、その分弁済額に上乗せされます。
すでに再生計画案を作成していた場合、そのまま提出すると不認可になってしまう可能性があるため、弁済額を上乗せして作り直す必要があるといえるでしょう。
返済を途中でやめる
個人再生手続後は、再生計画案どおりに返済をしていきます。
このとき、途中で債務者が返済をできなくなってしまった場合には、債権者が申し立てることで、再生計画が取り消されてしまう可能性があります。
再生計画の取り消しが起こると、個人再生手続によって減額された借金は、もとの金額に戻ってしまいます。
もし、再生計画どおりの返済が困難になった場合には、民事再生法・第234条に定められている「再生計画の変更(リスケジュール)」の申立ても検討しましょう。
この申立てが裁判所に認められた場合、最大で2年の返済期限の延長が可能です。
新しく借入れをする
個人再生手続中の新たな借入れも避けるべきでしょう。
そもそも、個人再生を行ったり、借金の返済の長期延滞があった場合、信用情報機関に事故情報が登録されてしまうため、審査に通らない可能性が高く、新規の借入れは現実的ではありません。
それでも新規借入れを行った場合は、「再生計画どおりに遂行される見込みがない」として、再生計画の棄却または計画案の不認可につながるおそれがあるのです。
個人再生に失敗した場合の対処法は2つ
上述した行為などが原因で、個人再生に失敗した場合のおもな対処法は以下の2つです。
- もう一度申立てを行う
- 自己破産を検討する
それぞれの方法について見ていきましょう。
差し押さえについては以下の記事で詳しく解説しています。
もう一度申立てを行う
過去に個人再生の申立てを行ったことがあったとしても、再度申し立てることは可能です。
ただし、給与所得者等再生手続や、自己破産を行ったことがある場合には、原則として手続開始決定から7年間、給与所得者等再生手続を申し立てることはできません。
自己破産を検討する
個人再生で返済していくことが難しい場合には、自己破産も検討してみるとよいでしょう。
定期的な収入がなく、再生計画が不認可になってしまったり、返済計画の履行ができない場合には、自己破産であれば解決できる可能性があります。
先述のとおり、自己破産は一部の債務を除き原則、借金の全額免除が期待できる債務整理方法です。
ただし、個人再生と異なり、住宅や車などの財産は換価処分され、債権者へ分配されてしまう点は理解しておきましょう。
個人再生手続の流れや期間は?
ここからは、実際の個人再生手続の流れをご紹介します。
基本的に、個人再生には1年〜1年6ヶ月程度の期間を要します。
個人再生手続の大筋の流れは以下の図のとおりです。

それぞれの段階別に詳しく見ていきましょう。
1. 弁護士・司法書士に依頼
まず、弁護士や司法書士に依頼を行います。
借金総額や収入状況を伝え、個人再生の進め方や、個人再生にかかる期間や費用がいくらなのか、または別の適切な債務整理方法がないかなどについて相談し、確認します。
2. 受任通知の送付
弁護士・司法書士は、正式に依頼がなされると、債権者に「受任通知」を送付し、取引履歴の開示を求めます。

弁護士や司法書士が、債務者の代理人として債務整理する旨を債権者に知らせる通知のこと。
この受任通知を受け取った債権者は、貸金業法・第21条で定められているとおり、督促や取り立てを一時的にストップしなければなりません。
なお、個人再生手続を弁護士に依頼した場合、これ以降の手続きのほとんどを弁護士に代理してもらうことが可能です。
受任通知については以下の記事で詳しく解説しています。
3. 利息の引き直し計算
2.で債権者から取引履歴を取り寄せたら、利息制限法で定められた上限金利にもとづいて、利息を払いすぎていないか計算する「引き直し計算」を行います。
この引き直し計算によって、過去に払いすぎた利息「過払い金」が発生しているかどうかがわかります。
利息については以下の記事で詳しく解説しています。

2010年頃まで存在していた高金利(グレーゾーン金利)で借り入れ、返済していた場合に発生している、払いすぎた利息のこと。
引き直し計算によって算出され、対象の金融業者との最後の取引から10年以内であれば「過払い金返還請求」ができます。
過払い金が発生していれば、債権者に過払い金返還請求を行うことで、借金が相殺される可能性もあります。
過払い金については以下の記事で詳しく解説しています。
4. 申立ての書類作成
個人再生を申し立てるために、再生手続開始申立書などの書類の作成をします。
おもな必要書類は以下のとおりです。
- 再生手続開始申立書
- 陳述書
- 財産目録
- 債権者一覧表
- 家計簿
この他、持ち家を残したい場合には、住宅資金特別条項を利用する必要があるため、住宅ローンの契約書や、住宅の登記事項証明書などの書類が必要になります。
ここで必要になる書類は非常に多いため、弁護士などに依頼した場合には、アドバイスを受けながら、分担して用意しましょう。
個人再生で必要な書類は以下の記事で詳しく解説しています。
5. 裁判所に個人再生の申立て
申立人の住所地を管轄する地方裁判所に必要書類を提出し、個人再生の申立てを行います。
弁護士に依頼している場合は、これらの手続きも代理してくれます。
6. 再生手続の開始決定
申立てから約1ヶ月後、書類内容に不備などがなければ、再生手続の開始決定が下されます。
裁判所から各債権者に対し、個人再生の手続きの「開始決定書」と、借金額を調査・確定する「債権届出書」が送付されます。
各債権者は、個人再生の手続きの開始決定から約6週間後を期限に、債権届出書を裁判所に提出します。
その後、申立人または代理人の弁護士が債権届出書の金額を認めるかどうかを示す「債権認否一覧表」などを裁判所に提出することになります。
7. 裁判所へ再生計画案を提出
手続開始決定から約3〜4ヶ月後の期日までに、個人再生後の返済スケジュールを決定する再生計画案を作成し、提出します。
弁護士に依頼している場合には、よく協議したうえで、返済方法や返済期間を設定します。
8. 債権者による決議・意見聴取
再生計画案の提出から約1ヶ月後、債権者による決議または債権者の意見聴取が行われます。
「小規模個人再生手続」の場合は、再生計画案が裁判所から各債権者に送付され、書面での決議が行われます。
このとき、「債権者の過半数の不同意」もしくは「債権額の2分の1を超える不同意」があったときは、再生計画案は否決となり、個人再生は廃止(中止)となってしまいます。
「給与所得者等再生手続」の場合は、決議は行われず、債権者への意見聴取のみ行われます。
9. 裁判所が認可・または不認可を決定
裁判所は上記の再生計画案の認可、または不認可の決定をします。
再生計画案どおりの借金の返済が見込めないと判断されたり、先述の虚偽報告や偏頗弁済などの事実があった場合には、不認可となってしまう可能性があります。
個人再生に認可決定については以下の記事で詳しく解説しています。
10. 再生計画に沿って返済開始
再生計画案が認可された場合、その翌月から、債権者への再生債権(残りの借金)の返済が始まります。
返済期間は原則3年、最長で5年です。
個人再生の流れについては、以下の記事でも解説しています。
個人再生にかかる費用はいくら?
では、実際に個人再生をする際に、費用はいくらかかるのでしょうか。
裁判所費用や弁護士費用の相場を確認していきましょう。
個人再生の費用相場は50万~80万円程度
個人再生を行う際の費用相場は、裁判所費用と弁護士費用を合わせて、50〜80万円程度とされています。
各費用の内訳を詳しく見ていきましょう。
裁判所費用の内訳
個人再生手続時に裁判所へ支払うおもな費用は、以下の表のとおりです。
名称 | 費用の目安 |
---|---|
予納金(官報掲載料) | 1万3,744円 |
収入印紙(申立手数料) | 1万円程度 |
個人再生委員の報酬 | 15万~25万円程度 |
郵便切手 | 2,769円 |
封筒代(債権者全員の分および申立人の分) | 数百円(実費) |
合計 | 18万〜28万円程度 |
※表は一例です。裁判所によってかかる費用は異なります。
個人再生委員は、裁判所が認めた場合に選任される弁護士で、債務者の財産や収入をチェックし、再生計画案の作成などにおいてアドバイスを行う役割を担います。
東京地方裁判所であれば、原則としてすべての事件で個人再生委員が選任されますが、名古屋、大阪などの地方裁判所であれば、代理人弁護士がいる場合には選任されないなど、裁判所によって基準が異なります。
そのため、個人再生委員が選任されていない事件では、「個人再生委員の報酬」はかからない場合もあります。
なお、東京地裁などの一部の裁判所では、個人再生委員が選任された後、債務者の返済能力を測る履行テストが実施されます。
個人再生手続開始決定前の3〜6ヶ月間、指定された銀行口座に、指定の金額を振り込む形で行われます。
振り込んだお金は、裁判所によって異なりますが、テスト終了時に個人再生委員の報酬に充てられたり、積立金として申立人へ返還されるのが一般的です。
弁護士費用の内訳
次に、弁護士費用の内訳を見ていきましょう。
個人再生にかかるおもな弁護士費用は以下のとおりです。
名称 | 費用の相場 |
---|---|
相談料 法律相談をする際に必要 |
1時間1万円程度 ※無料の場合もあり |
着手金 案件を依頼する際に必要 |
30万円程度~ |
報酬金 案件が成功した際に必要 |
住宅なしの場合 20万円程度~ |
住宅ありの場合 30万円程度~ |
|
合計 | 50万~60万円程度 |
一般的には、住宅を残すことができる住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用すると、弁護士費用の相場は高くなります。
個人再生にかかる費用相場は以下の記事でも詳しく解説しています。
個人再生の相談はどこにすればいい?
ここまで解説してきたように、個人再生手続は非常に複雑で、必要書類も多いため、法律の知識のない方が一人で行うには難しいといえるでしょう。
では、個人再生を行いたいと思った場合、どこに相談すればよいのでしょうか?
ここからは、以下の相談先について、それぞれのメリットとともに見ていきましょう。
- 法テラス(日本司法支援センター)
- 弁護士・司法書士事務所
法テラス(日本司法支援センター)
法テラス(日本司法支援センター)は、法務省所管の公的な法人であり、無料で法律相談ができる窓口を設けています。
この法テラスを利用することで、弁護士・司法書士費用を抑えられる可能性があるのは大きなメリットといえます。
以下は、法テラス埼玉を例に、民事再生事件に必要な標準的な費用をまとめたものです。
債権者の数 | 実費 | 着手金 |
---|---|---|
1~10社 | 3万5,000円 | 16万5,000円 |
11~20社 | 18万7,000円 | |
21社以上 | 22万円 | |
過払い金がある場合は別途「報酬金」がかかる |
※表は一例です。
法テラスの紹介の場合、弁護士・司法書士費用は、一括払いか、月額5,000〜1万円程度の分割払いのいずれかとしている事務所が多いです。
もし費用が支払えない場合には、「民事法律扶助制度」を利用すれば、法テラスに費用を立て替えてもらうことも可能です。
ただし、この制度を利用できるのは経済的な余裕がない人にかぎられているため、収入や保有資産に条件が設けられているので、注意が必要です。
また、基本的には法テラスから弁護士を紹介してもらうシステムのため、担当となる弁護士が選べません。
弁護士との相性が悪かったり、そもそも債務整理に慣れていない弁護士が担当となってしまう可能性もある点はデメリットといえるでしょう。
法テラスに債務整理を依頼した場合の費用や流れについては、以下の記事もご覧ください。
弁護士・司法書士事務所
債務整理に慣れている担当者を探す場合は、解決実績の豊富な弁護士や司法書士事務所に直接相談するという方法もあります。
特に、個人再生においては、法定代理人として裁判所へ代わりに出席できる弁護士に依頼するのが一般的です。
ここからは、弁護士に個人再生を依頼すると、どのようなメリットがあるのか紹介します。
個人再生を弁護士に依頼するメリット
個人再生を弁護士に依頼するおもなメリットは、以下のとおりです。
- 債務整理に関する法律に精通しているため、適切なアドバイスが受けられる
- 個人再生の手続きをほぼ任せられる
- 受任通知の送付で督促・返済が一時止まる
債務整理に関する法律に精通しているため、適切なアドバイスが受けられる
債務整理の取り扱い実績が多い弁護士なら、法律の専門知識に詳しいのはもちろん、経験も豊富で実務にも強く、的確なアドバイスが期待できます。
個人再生だけでなく、債務整理全般についての知識があるため、依頼者の収入や借金額、返済状況に合わせた解決方法を提案してくれるといえます。
個人再生の手続きをほぼ任せられる
債務整理の中でも個人再生は特に手続きが複雑で、手続きにかかる期間も1年~1年半程度と長期にわたります。
債務者(借りた側)本人が自力で個人再生の手続きを行うのは困難です。
しかし弁護士に個人再生を依頼すれば、その後の手続きについて、代理してもらうことができます。
債務者本人が行うことはほとんどないといっていいでしょう。
受任通知の送付で督促・返済が一時止まる
弁護士は債務者から個人再生の依頼を引き受けた場合、直ちに債権者(貸した側)に対し、債務者の代理人になったこと、個人再生を行う予定であることを伝える「受任通知」を送付します。
受任通知が債権者に届いたら、借金の督促・返済は一時ストップします。
これにより、個人再生手続が終了するまで督促や返済のプレッシャーから解放されます。
個人再生に関する無料相談は弁護士法人・響へ
弁護士法人・響では、個人再生を含む債務整理に関する相談を無料で受け付けています。
【弁護士法人・響の主な特徴と相談のメリット】
- 相談実績が43万件以上・債務整理の解決事例も多数
- 24時間365日、全国で対応可能
- 相談は何度でも無料
相談者様の借金額や返済状況、収入によっては、必ずしも個人再生が必要でない場合もございます。そうした場合に個人再生を強要することは一切ございませんので、安心してご相談ください。
弁護士法人・響に個人再生の無料相談をする個人再生の費用(着手金・報酬金)
個人再生(住宅なし)の費用
着手金 33万円〜(税込)
報酬金 22万円〜(税込)
個人再生(住宅あり)の費用
着手金 33万円〜(税込)
報酬金 33万円〜(税込)
- 依頼人 50代男性
- 借金950万円 借入先 7社
- 個人再生(住宅あり)で申立
- 費用:
着手金33万円
報酬金33万円
個人再生に関するQ&A
最後に、個人再生手続におけるさまざまな疑問に答えたQ&Aを確認しましょう。
Q1.個人間の借金も個人再生の対象になりますか?
個人間の借金もすべて個人再生の対象となります。
そのため、友人や身内の人に借金をしていた場合には、借金額が5分の1〜10分の1まで減額され、他の債権者と同じように返済していく形になります。
友人からの借金を債務整理できるかについては以下の記事でも詳しく解説しています。
なお、個人再生手続中に友人や身内にだけ返済する「偏頗弁済」はNG行為です。個人再生の失敗や返済額の増額につながります。
偏波弁済については以下の記事で詳しく解説しています。
Q2.奨学金も個人再生で解決できますか?
個人再生を行うことで、他の借金と同じように奨学金も減額できる可能性があります。
ただし、奨学金に保証人・連帯保証人がついていた場合には、その保証人に対し、減額した分の借金の一括返済を請求されてしまう点には注意が必要です。
Q3.個人再生で繰り上げ返済は可能ですか?
個人再生の返済中に繰り上げ返済することは可能です。
ただし、すべての債権者に平等に繰り上げ返済を行う必要があるため、手元にまとまった資金があるときだけなど、無理のない範囲で返済するようにしましょう。
繰り上げ返済のメリットとして、再生計画案よりも早期に完済ができる可能性があります。
一般的に、借金の滞納や債務整理による事故情報は、完済から5〜10年程度で削除されるため、繰り上げ返済により早期の完済を目指すことで、信用情報の回復も目指せます。
Q4.個人再生をしたら退職金はどうなりますか?
退職金は、認可前時点の受取見込み額の8分の1か、またはすでに退職していて、退職金を受け取っている場合には、その4分の1が「財産」として計上されます。
そのため、退職金の額によっては清算価値が増え、返済額が増えてしまう可能性があります。
個人再生による退職金への影響は以下の記事で詳しく解説しています。
Q5.個人再生をしたら生命保険はどうなりますか?
原則、個人再生によって生命保険を強制的に解約させられることはありません。
ただし、解約返戻金といって、解約したときに返還される金額の分は、個人の財産と見なされ、清算価値に計上されます。
そのため、退職金などと同様に、清算価値が増えることで、返済額も増える可能性があります。
Q6.個人再生中に転職できますか?
個人再生手続中でも、転職を行うことは可能です。
ただし、再生計画案の認可前のタイミングで、転職によって大幅に収入が変動する場合は、再生計画案の見直しや修正が必要になる可能性があります。
また、返済期間中に収入が下がってしまう場合には、返済計画案どおりに返済ができなくなってしまうおそれもあります。
返済を滞納すると、そのまま個人再生の中止につながりますので、再生計画の変更(リスケジュール)も視野に入れておきましょう。
Q7.個人再生中にマンションやアパートなどの賃貸契約はできますか?
個人再生手続中でも、マンションやアパートなどの賃貸契約を結ぶことは可能です。
ただし、信用情報機関には事故情報が登録されているため、家賃の支払い方法がクレジットカードのみの場合や、保証会社を利用する場合には、事故情報が参照され、契約を断られるケースもあります。
現金払い可能な物件を選んだり、原則クレジットカード払いの物件でも、大家さんとの直接交渉によって現金払いにしてもらったりするなどの方法で対処が可能です。
個人再生には、借金を5分の1~10分の1程度に減額できる可能性があるというメリットがある。
その一方で「手続きが複雑で期間も長い」といったデメリットや注意点もある。
自己破産とは、家や車などの財産を残せる点で異なり、任意整理とは、減額幅が大きい点で違いがある。
書類の不備などが原因で再生計画案が認可されず、失敗する可能性もある点に注意。
個人再生の手続きを滞りなく進めたいなら、個人再生をはじめ債務整理の取り扱い実績が豊富な弁護士に相談・依頼するのが一般的。
個人再生の手続きに関するアドバイスはもちろん、他の債務整理についても知ることができるため、依頼者の状況に合った債務整理の方法を見つけられる。
弁護士法人・響では相談は何回でも無料で承っています。
借金問題にお悩みの方は、ぜひ一度、債務整理の取り扱い実績が豊富な弁護士法人・響へご相談ください。
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