借金には時効が存在します。
正式には「消滅時効」といって、成立すると借金の返済義務はなくなります。
借金の消滅時効は、以下の2つの条件を満たすときに成立します。
- 期限の利益喪失日の翌日(※)から5年以上が経過している
- 時効援用の手続きをとっている
※返済期日や最終返済日が目安です。以下、「返済期日または最終返済日」として表記します。
しかし、実際のところ、債権者(お金を貸した側)の措置によって、消滅時効の成立が阻止されることがほとんどです。
この記事では、消滅時効の具体的な成立条件や、時効援用の方法、時効の成立が阻止されるケースなどについて解説します。
消滅時効の成立が難しい場合も、借金の解決方法はあります。弁護士法人・響では、借金の状況に応じて、最適な解決策を提案いたします。相談料は無料ですのでお気軽にご相談ください。
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目次
借金がなくなる?「消滅時効」とはどんな制度?
借金には、時効があります。正式にはこれを「消滅時効」と呼びます。
消滅時効とは、一定期間、債権者(お金を貸した側)が債務者(お金を借りた側)から借金を回収する権利を行使しないまま一定期間が経過した場合に、その権利を消滅させる仕組みです(民法第166条)。
消滅時効が成立すると、利息や遅延損害金も含めた借金の返済義務がなくなります。
借金の消滅時効について、以下の動画で簡単に解説しています。
「なぜ、借金に時効があるの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。
法務省のホームページでは、消滅時効制度の意義を以下のように明示しています。
- 長期間の経過により証拠が散逸し、自己に有利な事実関係の証明が困難となった者を救済し、法律関係の安定を図る。
- 権利の上に眠る者は保護しない。
(出典:消滅時効に関する見直し_法務省)
「自己に有利な事実関係の証明が困難となった者を救済」とは、どういう意味でしょうか?
たとえば、債務者が長期間、返済の請求を受けていないことで、振込明細書や領収書などの書類を紛失してしまうこともあるでしょう。そうすると、借金を一部返済していたとしても、その事実を証明することが難しくなります。
債務者の救済は、そういった債務者にとっての不利益となる状況を回避すべき、という考え方です。
一方で、「権利の上に眠る者は保護しない」とは、借金を回収する権利があるのにもかかわらず、行使せず放置するのであれば、消滅させるべきという考え方です。
つまり、法律上、権利があるといっても、いつまでも保障されているわけではないため、適正に行使をする必要があるということです。
借金の消滅時効の条件とは?
借金の消滅時効が成立するためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
- 返済期日または最終返済日から5年以上が経過している
- 時効援用の手続きをとっている
それぞれの条件について、以下で具体的に解説します。
返済期日または最終返済日から5年以上が経過している
まず、「返済期日」または「最終返済日」から5年もしくは10年が経過している必要があります。
消滅時効の期間は一般的に、
- 借金をしたタイミング(2020年4月の民法改正の前か後か)
- 借入先の業態(借金の種類)
によって異なります。
まとめると、以下の表のようになります。
借入先の業態(借金の種類) | 消滅時効の期間 | |
---|---|---|
民法改正前 (2020年3月31日以前) |
民法改正後 (2020年4月1日以降) |
|
・貸金業者(消費者金融など) ・銀行 |
5年 | 主観的起算点から5年 または 客観的起算点から10年 |
・信用金庫 ・住宅金融公庫の住宅ローン ・信用保証協会の求償権 ・親族や友人など個人間の借金 ・奨学金 |
10年 |
(参考:法務省「民法(債権法)改正」)
民法改正後(2020年4月1日以降)の借金については、以下のうち、早いタイミングの時効期間が適用されます。
- 債権者が借金の請求権を行使できることを知ったとき(主観的起算点)
- 債権者が借金の請求権を行使できるとき(客観的起算点)
「請求権を行使できることを知ったとき」とは、返済期日が到来し、債権者が返済の請求ができるようになった翌日を指します。
たとえば、銀行や貸金業者は基本的に、契約締結日に返済期日について合意を取っているため、利用者に請求できるタイミングを知っています。
それゆえ、銀行や貸金業者の場合は主観的起算点が適用され、消滅時効の期間は5年となります。
時効援用の手続きをとっている
借金の消滅時効が成立するためには、「時効援用」の手続きをしている必要があります。
時効援用とは債権者に対して、「時効を迎えたので返済義務はありません」という旨を意思表示することをいいます。
時効援用に決まった方法はありませんが、時効援用通知書といった書類を作成し、証拠を残すために、配達証明付きの内容証明郵便で債権者に送付することが一般的です。
(時効の援用)
第145条 時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
(引用元:民法第145条)
時効援用の方法については、後で詳しく解説します。
借金の消滅時効の成立は難しい|失敗するケースとは
借金の消滅時効の成立条件を解説しましたが、実際に成立させることは難しいといえます。
というのも、銀行や貸金業社などの債権者が、消滅時効の成立を防ぐための措置をとることが多いからです。
以下、消滅時効の成立が失敗するケースについて、解説します。
- 時効が更新(中断)される
- 時効の完成猶予(停止)となる
時効が更新(中断)される
「時効の更新」とは、ある一定の事情があったときに時効期間の計算が振り出しに戻り、ゼロから再スタートするという考え方です。
時効の更新事由は以下のとおりです。
- 債務者本人が借金の返済意思を示す行為をした
- 裁判上の和解等の確定判決が出た
- 財産の差押えが行われた
なお、2020年4月の民法改正前は「時効の中断」と呼ばれており、「中断」という言葉がもつ意味と、上記の「時効の期間が振り出しに戻る」という効果の内容にズレがありました。
改正後は、言葉の意味と効果が一致したといえます。
時効の更新事由について、以下で詳しく見ていきましょう。
債務者本人が借金の返済意思を示す行為をした
債務者本人が借金の存在を認めた場合、時効は更新されます。
これは、民法第152条の定める(債務の)「権利の承認」に当たるためです。
(承認による時効の更新)
第百五十二条 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
2 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。
(引用元:民法第152条)
借金の存在を認めた場合とは、たとえば債権者に対する次のような行為が該当します。
- 借金額の一部返済
- 返済を待ってほしいというお願い
- 債務承認書へのサイン
銀行や貸金業者の多くは、債務の承認のために、さまざまな手段をとります。
電話口で「いつ支払えますか?」と返済予定日を聞き出したり、利息や少額のみの返済を迫るケースも考えられますので、注意が必要です。
債務の承認については、以下の記事で詳しく解説しています。
裁判上の和解等の確定判決が出た
借金の滞納期間が長引くと、債権者が裁判所を介して支払督促を送付したり、裁判所に訴訟を提起したり(この場合「訴状」が送付されます)することがあります。
支払督促とは、債権者の申立てにより、簡易裁判所が債務者に金銭の返済を命じる法的な手続きをいいます。
これに対し、債務者が「異議申立書」や「答弁書」を裁判所に提出しなければ、確定判決と同じ効力をもつことになり、消滅時効は確定日から10年に更新されます。
これは、民法第147条および第169条によって定められています。
(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)
第百四十七条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求
二 支払督促
三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停
四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
2 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。
(引用元:民法第147条)
(判決で確定した権利の消滅時効)
第百六十九条 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。
2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。
(引用元:民法第169条)
財産の差押えが行われた
債権者の申立てによって、債務者の財産の差押えが行われると、時効が更新されます。
これは、民法第148条1項1号の定める「強制執行」に該当するためです。
(強制執行等による時効の完成猶予及び更新)
第百四十八条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 強制執行
二 担保権の実行
(以下略)
(引用元:民法第148条)
強制執行は、確定判決や仮執行宣言付支払督促などを得た債務名義に基づいて行われます。
なお、債権者が強制執行を行うためには、「債務名義」を取得する必要があります。
債務名義とは、借金の返済等を請求できる権利の存在を証明し、その権利を強制的に実現してもよいことを、裁判所が許可した文書のことです。
強制執行による差押えについて、詳しくは以下の記事で解説しています。
時効の完成猶予(停止)となる
時効の完成猶予(停止)とは、ある事情があったときに、そこから法律の定める期間中は時効が完成しないという考え方です(民法第150条)。
「時効の更新」と違って時効期間がリセットされることはありませんが、時効のカウントがいったん停止されます。
時効の完成猶予は、債権者によって「催告書」が送られたときなどに生じます。

借金の滞納が3ヶ月以上あった場合に、債権者から、期日の指定とともに支払いを請求される書面。それ以前に送られる督促状とは異なり、「これ以上滞納が長引けば裁判をする」ことを示唆しているものが多い。
催告書が送付されると、時効のカウントが6ヶ月間止まります。
催告書については、以下の記事で詳しく解説しています。
借金の消滅時効が成立するまでの流れ|時効援用の手順
借金の消滅時効は、具体的にどのような流れで成立するのでしょうか?
以下、時効援用の手順も含めて、具体的に解説します。
- 時効期間が経過する
- 時効が完成していることを確認する
- 時効の援用の手続きをする
- 債権者が時効援用通知書を受け取る
- 時効が成立し、返済の義務がなくなる
1.時効期間が経過する
第一に、時効の更新(中断)事由などがなく、前述した時効期間が経過している必要があります。
ただし、時効期間が経過していても、債権回収会社や相手の弁護士から督促されたり、訴訟を起こされたりするケースもあるため、注意が必要です。
2.時効が完成していることを確認する|確認方法は3つ
次に、時効が完成していることを確認します。
銀行や消費者金融からの借金については、借金の返済期日もしくは最終返済日を確認して、時効期間を計算する必要があります。
具体的な確認方法について、以下で解説します。
- 消費者金融や銀行などからの督促状を確認する
- 信用情報を開示請求する
- 弁護士などの法律の専門家に確認してもらう
消費者金融や銀行などからの督促状を確認する
消費者金融や銀行からの借金を滞納していると、督促状がハガキや封書で届きます。
この督促状の文面で、返済期日や最終返済日を確認しましょう。
最終返済日は、消費者金融や銀行に開示請求をすることも可能ですが、やめたほうがよいでしょう。
「債務の承認」と見なされ、時効の更新(中断)となる可能性があるからです。
督促状については、以下の記事で詳しく解説しています。
信用情報を開示請求する
督促状が手元になかったり、詳細な情報が記載されていなかったりする場合は、信用情報機関から自身の信用情報を取り寄せる(開示請求する)という手段もあります。
借金の最終返済日など、必要な情報を確認できます。

クレジットカードやローンなどの、利用者の借り入れや返済に関する情報を一括で管理している機関。金融機関が審査をする際も信用情報機関から信用情報を取り寄せている。
各信用情報機関の概要と、信用情報の開示請求方法、手数料は以下のとおりです。
信用情報機関 | 信用情報機関の概要 | 信用情報の開示請求の方法・手数料(税込)※ |
---|---|---|
CIC | おもにクレジットカード(信販)会社が加盟 | ・パソコン・スマートフォン:500円 ・郵送:1,500円 |
JICC | おもに消費者金融が加盟 | ・スマートフォン専用アプリ:1,000円 ・郵送:1,000円 |
KSC | おもに銀行や信用金庫、信用保証協会などが加盟 | ・パソコン・スマートフォン:1,000円 ・郵送:1,124〜1,200円 |
(※2023年4月時点。ご利用の際は、各サイトで最新の情報をご確認ください。)
弁護士などの専門家に確認してもらう
督促状や信用情報を見ても、時効成立の確認は十分ではありません。なぜなら、時効の更新(中断)事由の有無が判断できないからです。
以下のような時効の更新(中断)事由に該当するような事実は、督促状や信用情報には記載されていません。
- 時効期間中に引っ越しをして住所が変わり、裁判所から届いた「訴状」や「支払督促」を受け取れなかった
- 裁判所から届いた支払督促を家族が処分してしまった
- 裁判所からの郵便(特別送達)の不在通知を放置していた
そのため、時効の更新(中断)事由がないかを確実に確認するなら、弁護士などの専門家に依頼する方がよいでしょう。
3.時効援用の手続きをする
時効が完成していることが確認できたら、債権者に内容証明郵便で「時効援用通知書」を送ります。
時効援用通知書には、次の内容を記載します。
- ①時効援用通知書を記載した日付
- ②債権者(受取人)の住所・氏名
- ③債務者(差出人)の住所・氏名
- ④時効の援用手続きを行う旨の意思表示
- ⑤借金を特定できる情報 ※
- ⑥信用情報機関からの事故情報削除依頼
※ 債務者の生年月日や借金を契約した年月日、借入額、借金の契約番号など
時効援用通知書の書き方、送り方|文面例
上記の項目を記載する以外は、時効援用通知書の書き方に決まったルールはありません。
もし迷うことがあれば、以下のような文面で書くとよいでしょう。
時効援用通知書
①令和〇年〇月〇日
②
〇〇県〇〇市〇〇 〇〇ビル〇〇〇号室
〇〇消費者金融株式会社 代表者代表取締役 〇〇〇〇殿
③
〇〇〇県〇〇市〇-〇-〇 〇〇〇〇 印
電話番号〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
FAX番号〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
前略 貴社は私に対し、以下に記載する内容の貸金の返還請求をしていますが、私が貴社より借り受けた当該債務については、最終弁済日の翌日(平成〇〇年〇月〇日)からすでに5年以上が経過しており、時効が完成しております。
⑤
契約番号:〇〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
借入人氏名:〇〇〇〇(ふりがな)
生年月日:〇〇年〇月〇日
住所:〇〇県〇〇市〇〇
当初借入額:〇〇万円
④
つきましては、私は貴社に対し、本通知書をもって上記貸金債権について、消滅時効を援用しますので、その旨ご通知いたします。
⑥
本書面を受領後、速やかに信用情報機関宛てに適切な通知をして、登録された事故情報を抹消されますよう、併せてお願い申し上げます。
時効援用通知書を送るための内容証明郵便には、行数などに以下のようなルールがあるので、注意が必要です。
縦書き | 1行20字以内、1枚26行以内 |
横書き | 1行20字以内、1枚26行以内 1行13字以内、1枚40行以内 1行26字以内、1枚20行以内 |
(参考:内容証明 ご利用の条件等 - 日本郵便)
使える文字の種類などにも決まりがあるので、条件をきちんと確認し、不備なく送るようにしましょう。
もし時効援用通知書の書き方や送り方に不安があれば、弁護士などの法律の専門家に相談するようにしましょう。
4.債権者が時効援用通知書を受け取る
時効援用通知書が債権者に届くと、債権者は債務者の取引履歴を確認し、時効期間が経過しているかどうかを確認します。
確認の結果、時効期間が経過していなければ、時効を更新(中断)されたり、一括請求されたりする可能性もあるため、時効期間の計算は慎重に行う必要があります。
5.時効が成立し、返済の義務がなくなる
債権者によって時効期間が経過していることが確認されれば、消滅時効が成立します。
時効成立時には「債務不存在証明書」などが債権者から届くケースもあります。
もし上記のような書類が送付されない場合は、債権者が時効援用を認めたことを確認するために、内容証明文書を送付した方がよいでしょう。
時効成立時、対応に迷うことがあれば、弁護士などの法律の専門家に相談しましょう。
なお、時効の成立後に債権者から返済を求められる可能性もありますが、それに応じて返済する必要はありません。
むしろ、少しでも返済請求に応じると時効援用の効力がなくなってしまう可能性もあるので、毅然とした態度で「その借金は時効です」と返答しましょう。
借金の消滅時効の援用手続の費用はどれくらい?
時効援用の手続きにかかる費用は、大きく分けて2つあります。
- 内容証明郵便の費用
- 法律の専門家への依頼費用
それぞれの目安は、以下のとおりです。
時効の援用手続の費用目安 | |
---|---|
内容証明郵便費用 | 1,279円程度~ (内訳) ・普通郵便費用 84円~ ・内容証明郵便費用 440円~ ・書留郵便費用 435円 ・配達証明費用 320円 |
法律の専門家への依頼費用 | 弁護士に依頼した場合:30,000〜60,000円程度 ※場合により異なる |
合計 | 32,000〜62,000円程度 |
弁護士・司法書士への依頼費用は事務所によって異なりますので、HPで確認するようにしましょう。
借金の消滅時効が成立した後の影響は?
消滅時効が成立すると、下記3点の影響があります。
- 信用情報が回復するかどうかはケースによる
- 時効援用をした業者からの借り入れはできない
- 不動産などの抵当権は原則として消滅
信用情報が回復するかどうかはケースによる
消滅時効の成立によって、信用情報が回復するか(事故情報が削除されるか)気になる方もいるでしょう。
一般的に、滞納期間が2ヶ月以上に及ぶと、信用情報機関に事故情報が登録されます(いわゆるブラックリストに載る状態)。
消滅時効の時効期間を迎えた時点で、滞納期間が5年以上に及んでいることになるため、必然的に事故情報が登録されます。
実際のところ、事故情報が削除されるかどうかはケースバイケースです。
というのも、時効成立後の事故情報の取り扱いは、信用情報機関によって異なるからです。
以下は時効成立後の事故情報の取り扱いを、信用情報機関ごとにまとめたものです。
- JICC:原則として削除される
- CIC:削除されない場合がある(最低でも5年間は登録される)
- KSC:原則として削除されない(最低でも5年間は登録される)
おもに消費者金融の信用情報が登録されるJICCは、時効成立後、原則として事故情報は削除されます。
一方で、おもにクレジットカードの信用情報が登録されるCICは、最低でも5年間登録される可能性があるのです。
そのため、不明な場合は各信用情報機関に、信用情報の開示請求をする方がよいでしょう。
事故情報の登録による影響や、信用情報の開示請求方法について詳しくは、以下の記事で解説しています。
時効援用をした業者からの借り入れはできない
時効援用をすると、対象とした銀行や貸金業者からはそれ以降、基本的に借り入れができなくなります。
なぜなら、借金の滞納や時効援用による事故情報は、前述した信用情報機関とは別に、対象の銀行や貸金業者の社内で、半永久的に保存されるからです(いわゆる「社内ブラック」)。
消滅時効の成立は、債権者側からすれば「借金を合法的に踏み倒された」ということですし、損害でしかありません。
「そのような債務者に再びお金を貸せば、また借金を踏み倒されるだろう」と債権者が考えるのもしかたのないことでしょう。
不動産などの抵当権は原則として消滅
消滅時効が成立すれば、不動産などの抵当権は原則として消滅します。

債権者が貸付金を確実に回収するため、債務者が所有する不動産などを担保として利用できる権利。
債務者が借金を返済できないと、債権者が不動産を売却し、借金の回収に充当します。
しかし、抵当権が設定された借金の消滅時効が成立した場合、債務と一緒に抵当権も消滅します。
つまり、「家を担保に借り入れていた借金の時効が成立したにもかかわらず、家だけが取り上げられる」ことはありません。
借金の消滅時効の援用手続が失敗した場合のデメリットは?
消滅時効の成立は難しく、時効援用が失敗するケースがあることは前述したとおりです。
それでは、時効援用が失敗すると、どのようなデメリットが生じるのでしょうか?
具体的には、以下のようなデメリットが考えられます(時効成立を狙って滞納を続けるデメリットも含む)。
- 「債務の承認」と見なされて時効期間がリセットされる
- 遅延損害金が膨らみ続ける
- 過払い金を回収できる機会を逃す
- 時効成立までのストレスが大きい
時効成立を狙って時効援用するということは、このようなリスクがあるということを、理解しておきましょう。
時効援用が失敗した場合のデメリットについて詳しくは、以下の記事で解説しています。
借金の消滅時効の成立・自力での返済が難しい場合の解決策は債務整理
消滅時効の成立が難しく、自力での返済もできない場合は、どうすればよいのでしょうか?
時効成立以外の借金の解決策としては、「債務整理」が考えられます。
債務整理とは、債権者の合意または裁判所の決定に基づいて、借金を減額もしくは免除してもらう方法です。
消滅時効の成立を目指すよりも、短期間で借金を解決できる可能性があります。
消滅時効の成立までに5〜10年程度の期間が必要であるのに対し、債務整理は早ければ3年半程度で借金を解決できるケースもあります。
債務整理にはおもに3つの手続きがあります。
以下で具体的に解説します。
任意整理は借金を早期解決できる可能性がある
任意整理とは、債権者と交渉することで、将来利息や遅延損害金をカットし(※)、毎月の返済額の減額や、返済スケジュールの調整を行う手続きです。
(※債権者によってはカットできないこともあります。)
債権者と和解契約を結んだ後は、3~5年での完済を目指します。
現在、一定の安定した収入があり、元金を3〜5年で完済できる見込みがあるなら、任意整理を検討した方がよいでしょう。
任意整理の手続きに必要な期間は、3〜6ヶ月程度です。完済までの期間を含めても3年半〜5年半程度ですので、消滅時効の成立を待つよりも早期に、解決できる可能性があります。
任意整理については、以下の記事で詳しく解説しています。
個人再生は借金が1/5から1/10程度に減額される
個人再生とは、裁判所に申立てを行うことで、借金を最大1/5〜1/10程度に減額してもらう手続きです。
減額された借金については、原則3年、最大5年での完済を目指します。
収入減などの理由により、元金の返済も難しくなっている状態であれば、個人再生が適するかもしれません。
なお、個人再生では、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」という制度を利用することで、住宅ローン返済中であっても家の処分を免れる可能性があります。
個人再生については、以下の記事で詳しく解説しています。
自己破産は原則すべての借金の返済が免除される
自己破産とは、裁判所に申立てを行うことで、一部を除いたすべての借金の返済義務を免除(免責)してもらう手続きです。
返済義務を免除してもらえる一方で、家や車などの財産は、原則として換価処分され、債権者へ配当されます。
自己破産は、生活への影響も大きなものとなりますので、最終手段として考えるようにしましょう。
自己破産については、以下の記事で詳しく解説しています。
借金の返済で困ったら弁護士法人・響にご相談を
自力での借金返済が難しい場合は、弁護士法人・響にご相談ください。
時効援用できる可能性があるか確認したり、援用手続を代理したりすることも可能です。
時効援用を行うためには、通知書の作成が必要ですが、記載すべき情報や書式に関する条件が少なからずあるため、ご不安がある場合には弁護士に依頼されることをおすすめします。
また、消滅時効の成立が難しい場合、ご相談者さまの借金総額や収入、資産の状況などを踏まえて、債務整理をすべきか、債務整理をするならどの方法をとるべきか判断させていただきます。
弁護士法人・響は、債務整理の相談実績が43万件以上ありますので、安心してご相談ください。
ご相談は24時間365日、無料で受け付けています。
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*2023年4月時点
借金の消滅時効に関するよくあるご質問
最後に、借金の時効に関するよくあるご質問に回答いたします。
ご不明点があれば、弁護士法人・響の無料相談窓口でもご相談を受け付けていますので、お気軽にご相談ください。
故人から相続した借金・保証人になった借金なども時効援用できる?
亡くなった親族から相続した借金や、保証人・連帯保証人として負った借金などについても、時効援用を行うことは可能です。
債務の相続は、消滅時効の更新事由とならないため、時効の起算点は相続前と変わりません。つまり、相続した時点ですでに時効期間が経過していれば、時効援用ができるということです。
一方で、保証人・連帯保証人の返済義務(保証債務・連帯保証債務)は、債務者本人が負う債務(主債務)の影響を受けます(これを付従性といいます)。
たとえば、主債務者が「時効の更新」に当たる行為をしてしまうと、保証人・連帯保証人の行為とは無関係に、消滅時効が不成立となるため、注意が必要です。
消滅時効の付従性について詳しくは、以下の記事で解説しています。
生活保護受給中でも時効援用できる?
生活保護受給中であっても、時効援用することは可能です。
時効援用に関する法律(民法第145条)でも、生活保護の受給者が時効援用できないとは定めていません。
とはいえこれまで解説しているとおり、消滅時効を成立させることは簡単ではありません。
そのため、生活保護を受給されている方の借金の解決手段としては、債務整理がとられることが多いといえます。
生活保護受給中に債務整理する場合の注意点などについて、以下の記事で解説しています。
時効の援用後、クレジットカードは作れる?
時効援用によって消滅時効が成立し、信用情報が回復すれば、クレジットカードを新規に作成できる可能性はあります。
ただし、基本的にクレジットカードの滞納による事故情報の登録期間は5年ですので、消滅時効の成立後も、すぐに信用情報が回復するとはかぎりません。
また、時効援用の対象としたクレジットカード会社では、基本的に新規のクレジットカードの作成はできません。
借金の滞納や時効援用による事故情報は、信用情報機関とは別に、対象のクレジットカード会社で半永久的に保存されるためです。
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