借金には時効があります。
正確には消滅時効という制度で、以下のような条件がそろえば借金の返済義務がなくなるというものです。
- 返済期日または最後の返済から5年もしくは10年が経過していること
- 時効援用の手続きをとっていること
しかし、債権者に返済の意思を伝えるなど、借金の存在を認めてしまうと時効は成立しません。
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目次
借金の消滅時効とは?
「消滅時効」とは、一定期間債権者(お金を貸した側)が債務者(お金を借りた側)から借金を回収する権利を行使しないまま一定期間が経過した場合に、その権利を消滅させるという仕組みのことです。(民法166条)
借金の消滅時効について、すぐに知りたい方はこちらの動画をご覧ください。
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「借金に時効があるなんておかしいのでは?」と思われる方もいるかもしれません。
なぜ消滅時効というものがあるのでしょうか。
法務省は、消滅時効制度の意義を以下のように明示しています。
- 長期間の経過により証拠が散逸し、自己に有利な事実関係の証明が困難となった者を救済し、法律関係の安定を図る。
- 権利の上に眠る者は保護しない。
上の記載だけではわかりづらいので、例で考えてみましょう。
たとえば、借金を途中まで返済した後、20年以上放置していたAさんという人がいたとします。
ある日突然債権者がAさんに対して「貸したはずのお金が全額返済されていない、返してほしい」と主張した場合、消滅時効がなければどうなるでしょうか。
Aさんには途中までは借金を返済していた記憶があったとしても、20年以上前の借金の返済を証明する書類は捨ててしまっていることも十分ありえます。
証拠が出せないことによって裁判で債権者の主張が通ってしまい、Aさんが全額返済を命じられてしまうかもしれません。
Aさんは20年以上、その借金の返済がないことを前提に社会生活を築いているでしょう。
多額の借金を急に返済しなくてはいけなくなったAさんや家族の人生は、一変してしまうかもしれません。
消滅時効があれば、このケースでは債権者の借金を回収する権利は消滅し、Aさんの返済義務はなくなっています。
- 20年間、借金がないことを前提にAさんが築いてきた社会生活
- 20年間も借金を回収せずにいた(権利の上に眠っていた)債権者の権利
これらを比べれば前者を保護するべきだというのが、消滅時効の考え方だといえるのです。
借金の時効が成立する条件とは?
借金の時効が成立する条件は、以下の2つです。
- 返済期日または最後の返済から、5年もしくは10年が経過していること
- 時効援用の手続きをとっていること
2020年4月1日には民法が改正され、消滅時効の制度にも変更がありました。
以下、時効成立の条件や、民法改正による影響について詳しく解説します。
返済期日または最後の返済から、5年もしくは10年が経過していること
2020年3月31日以前に借り入れた借金については、債権の種類によって時効期間(時効が成立するまでの期間)は異なります。
消費者金融、クレジットカード会社、銀行などからの借金は5年です。
一方で、個人間での借金や会社組織でない信用金庫等からの借金の時効期間は10年とされています。
時効期間 | 債権の種類例 |
---|---|
10年(原則) |
・個人間の借金 ・信金(信用金庫)、信組(信用協同組合)、労金(労働金庫)、農協(農業協同組合)、住宅金融支援機構からの借金 ・奨学金 など |
5年(短期消滅時効、商事債権) |
・消費者金融、クレジットカード会社、銀行からの借金 ・家賃、土地代 ・扶養料、養育費 ・年金、NHK受信料 など |
3年(短期消滅時効) | ・医師への診療報酬 など |
2年(短期消滅時効) | ・弁護士報酬 など |
1年(短期消滅時効) |
・飲み屋のツケ ・レンタルビデオ店のレンタル料 など |
※2020年3月31日以前に借り入れた借金に適用される時効です。2020年4月1日以降に借り入れた借金については後述します。
このように細かい分け方がされていたのは、民法と商法で細かく規定があったためです。
もともと民法では、債権の消滅時効は原則10年、例外として5年、3年、2年、1年の短期消滅時効制度が定められていました。
さらに、商法には「商事債権」の消滅時効は5年と定められており、消費者金融などからの借入れはこれに当てはまるとされていたのです。
また、時効期間の起算日(時効期間のカウントが始まる日)は次のとおりです。
<時効期間起算日の例> | |
---|---|
返済期日が決まっている場合 | 返済期日または期日後の最後の返済の翌日から数える |
返済期日が決まっていない場合 | 借金をした日または最後の支払いから数える |
2020年3月31日以前に借り入れた借金については、以上の日から数えて時効期間が満了していれば、その借金について時効の援用ができます。
時効援用の手続きをとっていること
借金の時効を成立させるには、債務者が債権者に対して「時効の援用」を行う必要があります。
「時効の援用」とは、債務者が債権者に向けて「消滅時効となったので借金は返済しません」と意思を伝える手続きのことです。
口頭で伝えてもよいのですが、後に争いとなったときに証拠を残すために、「時効援用通知書」という書類を作成し、内容証明郵便で債権者に郵送するのが一般的です。
この書類の書き方や送り方については、後ほど詳しくご説明します。
時効の援用については以下の記事で詳しく解説しています。
故人から相続した借金、保証人になった借金などでも援用手続きは可能
亡くなった親族から相続した借金や、保証人として負った借金についても、時効援用の手続きをすることは可能です。
ただし、債務者本人が負う債務(主債務)と保証人が負う債務(保証債務)、連帯保証人が負う債務(連帯保証債務)の間には「付従性」があります。
付従性とは、主債務の時効について起きた出来事に従って影響を受けるというルールです。
これによって時効の更新(中断)の条件が複雑になるケースもあります(後述)。
不安があれば、弁護士などの法律の専門家に相談するとよいでしょう。
連帯保証人の借金の時効援用については、以下の記事で詳しく解説しています。
2020年4月1日の民法改正以降の借金の時効条件
2020年4月1日の民法改正により、消滅時効の制度は改正され、1年、2年、3年の短期消滅時効制度などは廃止されました。
改正後の民法では、下のいずれかのうち、早いほうのタイミングで借金の時効期間が満了となります。
- 債権者が借金の請求権を行使できることを知った時から5年
- 債権者が借金の請求権を行使できる時から10年
消費者金融や銀行からの借金であれば、時効期間は返済期日または最後の返済から5年間となることが多いといえそうです。
ただし、この時効期間が適用されるのは、2020年4月1日以降に借り入れた借金についてなので、注意しましょう。
なお、改正民法の原文は以下のとおりです。
(債権等の消滅時効)
第166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
時効の援用の成功率は高くない│失敗時のリスクとは?
ある程度の期間返済をしていないと借金の返済義務がなくなる「消滅時効」ですが、条件がそろっていても時効の援用は確実に成功するとはいえません。
なぜなら「時効の更新(中断)※」という制度があるためです。
時効の期間中、債務者が少額でも借金の返済をしてしまったり、債権者に訴訟提起をされ判決をとられてしまったりした場合、時効のカウントがリセットされてしまうのです。
もし時効が更新(中断)して成立していないのに援用手続きをしてしまうと、逆に借金の一括請求を受けてしまう可能性もあります。
借金の時効は、注意して運用するべき制度なのです。
以下から、詳しく解説します。
※ 改正民法で「時効の更新」という言葉に変わりました。
時効の中断(更新)については以下の記事で詳しく解説しています。
時効の更新事由(中断事由)があると5年・10年で時効が成立しない
何らかの理由で時効のカウントがゼロに戻ってしまう「時効の更新(中断)」があると、5年もしくは10年たっても時効は成立しません。
時効の更新(中断)が行われるのは、おもに以下のようなケースです。
これらは時効の更新事由(中断事由)と呼ばれます。
- 時効期間中に債務者(借りた側)が借金の存在を認めた
- 債権者が債務者に対し、返済請求手続きを行った
- 債権者が債務者の財産に対して法的措置をとった
また、「催告」という手続きが行われると、時効のカウントが止まる「時効の完成猶予(停止)※」というルールもあり、注意が必要です。
それぞれについて見ていきましょう。
※ 改正民法で「時効の完成猶予」という言葉に変わりました。
時効期間中に債務者(借りた側)が借金の存在を認めた
借金の時効は「債務の承認」により更新(中断)されます。
債務の承認とは、債務者が口頭や文書、借金の返済などの行為によって借金を返済する意思を表明することを指します。
たとえば、時効期間に1円でも借金の一部を返済したり、債務者から「借金を返済します」と伝えたりすると時効の更新(中断)と評価される可能性があります。
それまでに積み重ねてきた時効期間がリセットされてしまうので、注意が必要です。
債務の承認については以下の記事で詳しく解説しています。
債権者が返済請求手続きを行った
支払督促、和解・調停の申立て、破産・再生・更生手続きへの参加など、裁判所が関与する手続きが発生して返済請求が行われた場合も時効が中断されます。
判決などが確定した後、時効期間は10年に延びてしまいます。
債権者が債務者の財産に対して法的措置をとった
債権者が債務者に対して裁判を起こし、その財産に対して差し押さえ(差押え)・仮差し押さえ・仮処分を行った場合も時効が更新(中断)されます。
「催告」が行われると時効の完成猶予(停止)が起きる
裁判所が関与する手続きでなくても、時効のカウントが6ヶ月間止まる「催告」という手続きがあります。(時効の完成猶予、停止)
催告は口頭や書面(通常は証拠化するために内容証明郵便が用いられます)などで支払いを請求する行為です。
時効のカウントが止まっている間に裁判等をすれば時効の更新(中断)となります。
内容証明郵便で「催告書」が届いたケースなどは、注意が必要です。
催告書については以下の記事で詳しく解説しています。
消費者金融や銀行などは時効を更新(中断)させる手段をとる
消費者金融や銀行などは、お金を貸すことが主な業務です。
簡単に時効が成立してしまうことが続くと、大きな損失を負ってしまいかねません。
よって、上で紹介したような時効を更新(中断)させる手段をとることが一般的です。
たとえば、時効成立間近に債務者の自宅を訪問して「1,000円でいいから払ってください」と言ってきたり、電話をかけ「いつ返済できますか?」などと尋ねてきたりする場合があるようです。
これに対して1円でも返済したり、口頭でも「返済は待ってください」などと返してしまったりすると「債務の承認」と見なされ、時効が更新(中断)してしまう可能性が高いでしょう。
消費者金融からの借り入れの時効については以下の記事で詳しく解説しています。
銀行からの借り入れの時効については以下の記事で詳しく解説しています。
時効の援用に失敗すると多額の返済を求められる可能性も
時効が完成する前に援用手続きを行ってしまった場合、「債務の承認」と捉えられてしまうケースがあります。
すると、時効の援用をきっかけに、多額の返済を一括で求められてしまう可能性があるので注意が必要です。
特に時効援用失敗時の一括請求の額は、多額になってしまうことが多いでしょう。
時効の援用を行うケースは、ほとんどの場合「借金を返済しないまま長い間放置している状態」でしょう。
したがって、長期間の間にたまっていた遅延損害金が返済額に加算されることになるのです。

借金の返済などを滞納した場合にかかる損害賠償金の一種。
借金の返済期日までに返済しなかった場合、その翌日から発生し、完済するまで発生し続けるのが一般的です。
たとえば、50万円の借金を4年間返済せずにいた場合、返済額に加算される遅延損害金(年利20%)は以下のようになります。
50万円×0.2(20%)×4年=40万円
このように、返済額が大きく増えて生活が圧迫されてしまう可能性もあるでしょう。
遅延損害金については以下の記事で詳しく解説しています。
状況によっては債務整理のほうが早く解決に至る場合も
時効の援用ができるまでには5~10年の時効期間を要し、時効の援用を行ったとしても時効が完成していなければ、多額の一括請求をされるリスクがあります。
しかし、「債務整理」なら借金を減額し、時効成立を目指すよりも短期間で完済を実現できる可能性があります。
詳しくは「返済が難しければ債務整理が選択肢」で解説しています。
債務整理については、以下の記事でも詳しく解説しています。
借金の時効が成立するまでの流れ│時効援用手続きのやり方とは?
時効成立に必要な「時効の援用」を始めるタイミングや手続きのやり方について、具体的に見ていきましょう。
時効が成立するまでの流れは以下のとおりです。
<借金の時効が成立するまでの流れ> | |
---|---|
(1) | 時効期間が満了する |
(2) | 時効が完成していることを以下の方法で確認する ・消費者金融や銀行などからの通知書を確認する ・信用情報機関に問い合わせる ・弁護士などの専門家に確認してもらう |
(3) | 時効の援用の手続きをする |
(4) | 債権者が時効援用通知書を受け取る |
(5) | 時効が成立し、返済の義務がなくなる |
それぞれについて、詳しく解説します。
(1)時効期間が満了する
時効の更新事由(中断事由)などがなく上記で説明した時効期間が満了していれば、時効の援用は可能です。
ただし、時効期間が満了していても、債権回収会社や相手の弁護士からの督促があったり、訴訟を起こされてしまったりするケースがあります。
こうした場合の注意点をそれぞれ解説します。
債権回収会社や弁護士からの督促への対応に注意
時効期間が満了して時効の援用が可能な状況にもかかわらず、貸金業者や債権回収会社、代理人となった弁護士などから借金の督促がくる場合があります。
その場合は、時効を更新(中断)させないために適切な対処を行うことが必要です。
とはいえ、債権回収会社や弁護士からいきなり連絡がきてしまうと、冷静に対処できる方のほうが少ないかもしれません。
時効満了後でも、「返済します」などと債務の承認をしてしまうと、返済義務が生じてしまうケースがあります。
いったん返答を保留し、ご自身で弁護士などの法律の専門家に相談するのもひとつの手段といえるでしょう。訴訟を起こされていても、裁判を通して時効が援用できることも
場合によっては、すでに時効期間が満了した後「一括返済請求」の裁判を起こされることもあるようです。
しかし、時効期間がきちんと満了していれば、裁判で時効を主張することによって時効の援用が間に合うケースもあります。
ただし、裁判で敗訴して判決が出てしまうと、たとえ事実上時効が成立していても、支払い義務が生じてしまいます。
裁判になった場合は、無理にご自身で対応せず弁護士などに相談して適切に対処したほうがよいでしょう。
(2)時効が完成していることを確認する│確認方法は3つ
時効援用失敗時のリスクを回避するためには、時効が完成していることをきちんと確認することが重要です。
銀行や消費者金融からの借金については、借金の返済期日や期日後の最後の返済日を確認して、時効期間を計算する必要があります。
確認方法には、以下の3つがあります。
- 消費者金融や銀行などからの通知書を確認する
- 信用情報機関から信用情報を取り寄せる
- 弁護士などの法律の専門家に確認してもらう
上2つの方法は債務者本人でも行うことができます。
しかし、時効の更新事由(中断事由)がないかをできるだけしっかりと確認したい場合、弁護士などの法律の専門家に確認してもらうのがよいでしょう。
それぞれ説明します。
消費者金融や銀行などからの通知書を確認する
消費者金融や銀行からの借金を滞納していると、督促の通知がハガキや封書で届いているはずです。
これらの通知文面から、返済期日や、最終返済日がわかるケースがあります。
通知に詳細の記載がなかった場合には、消費者金融や銀行に情報の開示を求めることも可能ですが、時効の更新(中断)となるリスクが伴います。
気をつけなければ情報の開示請求が「債務の承認」と見なされることがあるためです。
信用情報機関から信用情報を取り寄せる
消費者金融や銀行からの督促通知が手元になかったり、詳細な情報が載っていなかったりした場合は、信用情報機関から債務者自身の信用情報を取り寄せるのがよいでしょう。
借金の最終返済日など、必要な情報がわかります。

クレジットカードやローンなどの利用者の借入れや返済に関する情報を取り扱う機関。
金融機関や消費者金融、クレジットカード会社などが利用者の信用情報を信用情報機関でチェックし、過剰な貸付けを行わないようにしている。
各信用情報機関の概要と信用情報の取り寄せ方、手数料は以下のとおりです。
信用情報機関名 | 信用情報機関の概要 | 信用情報の取り寄せ方と手数料(税込)※ |
---|---|---|
CIC | おもにクレジットカード(信販)会社が加盟 |
・インターネット:1,000円 ・郵送:1,000円 ・窓口:500円 |
JICC (日本信用情報機構) |
おもに消費者金融が加盟 |
・スマートフォン専用アプリ:1,000円 ・郵送:1,000円 ・窓口:500円 |
KSC (全国銀行個人信用情報センター) |
おもに銀行や信用金庫、信用保証協会などが加盟 | ・郵送:1,000円 |
※2022年4月20日時点の情報です。
弁護士などの専門家に確認してもらう
督促の通知や信用情報を見ても、時効の成立を十分確認できたとはいえないケースは少なくありません。
なぜなら上記の書類からは、時効の更新事由(中断事由)の有無の判断ができないためです。
督促の通知や信用情報には「消費者金融や銀行が訴訟を起こしたり、裁判所に申立てをしたりしたかどうか」は記載されていないのです。
時効の更新事由(中断事由)がないかをできるだけ確実に確認するなら、弁護士などの専門家に依頼するのがよいでしょう。
たとえば、以下のようなケースでは、債務者本人が知らないうちに判決などが確定してしまい、時効が中断されてしまっていることがあります。
- 時効期間中に引っ越しをして住所が変わり、裁判所から届いた「訴状」や「支払督促」を受け取れなかった
- 裁判所から届いた上記書類を家族が受け取って処分してしまった
- 裁判所からの郵便(特別送達)の不在通知を放置していた
(3)時効の援用の手続きをする
時効が完成していることが確認できたら、債権者に内容証明郵便で「時効援用通知書」を送ります。
時効援用通知書には、次の内容を記載します。
- 時効援用通知書を記載した日付
- 債権者(受け取り人)の住所・氏名
- 債務者(差し出し人)の住所・氏名
- 時効の援用手続きを行う旨の意思表示
- 借金を特定できる情報 ※
- 信用情報機関からの事故情報削除依頼
※ 債務者の生年月日や借金を契約した年月日、借入額、借金の契約番号など
時効援用通知書の書き方、送り方│文面例
上で示した項目がわかれば、時効援用通知書の書き方自体に決まったルールはありません。
もし迷うことがあれば、以下のような文面で書くとよいでしょう。
時効援用通知書
令和〇年〇月〇日
〇〇県〇〇市〇〇 〇〇ビル〇〇〇号室
〇〇消費者金融株式会社 代表者代表取締役 〇〇〇〇殿
〇〇〇県〇〇市〇-〇-〇 〇〇〇〇 印
電話番号〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
FAX番号〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
前略 貴社は私に対し、以下に記載する内容の貸金の返還請求をしていますが、私が貴社より借り受けた当該債務については、最終弁済日の翌日(平成〇〇年〇月〇日)からすでに5年以上が経過しており、時効が完成しております。
契約番号:〇〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
借入人氏名:〇〇〇〇(ふりがな)
生年月日:〇〇年〇月〇日
住所:〇〇県〇〇市〇〇
当初借入額:〇〇万円
つきましては、私は貴社に対し、本通知書をもって上記貸金債権について、消滅時効を援用しますので、その旨ご通知いたします。
本書面を受領後、速やかに信用情報機関宛てに適切な通知をして、登録された事故情報を抹消されますよう、併せてお願い申し上げます。
時効援用通知書を送るための内容証明郵便には、行数などに以下のようなルールがあるので、注意が必要です。
縦書き | 1行20字以内、1枚26行以内 |
横書き |
1行20字以内、1枚26行以内 1行13字以内、1枚40行以内 1行26字以内、1枚20行以内 |
使える文字の種類などにも決まりがあるので、条件をきちんと確認して、不備なく送るようにしましょう。
もし時効援用通知書の書き方、送り方に不安があれば、弁護士などの法律の専門家に相談するのがよいでしょう。
(4)債権者が時効援用通知書を受け取る
時効援用通知書が債権者に届くと、債権者は債務者の取引履歴を確認し、時効期間が満了しているかどうかをチェックします。
確認の結果、時効期間が満了していなければ、時効を更新(中断)されたり、一括請求をされたりする可能性もあるため、時効期間の計算は慎重に行う必要があります。
(5)時効が成立し、返済の義務がなくなる
債権者が確認しても時効期間が満了していれば、借金の時効が成立します。
時効成立時には「債務不存在証明書」などが債権者から届くケースもあります。
もし上記のような書類が送付されてこない場合は、債権者が時効援用を認めたことを確認する内容証明文書を作成し、債務者から送付することになるでしょう。
時効成立時、対応に迷うことがあれば、弁護士などの法律の専門家に相談しましょう。
なお、時効の成立後に債権者から返済を求められる可能性もありますが、それに応じて返済する必要はありません。
むしろ、少しでも返済請求に応じると時効援用の効力がなくなってしまう可能性もあるので、毅然とした態度で「その借金は時効です」と返答しましょう。
借金の時効援用手続きの費用とは?
借金の時効援用手続きの費用の目安は、以下のとおりです。
<時効援用手続きの費用目安> | |
---|---|
内容証明郵便費用 |
1,279円程度~ (内訳) ・普通郵便費用 84円~ ・内容証明郵便費用 440円~ ・書留郵便費用 435円 ・配達証明費用 320円 |
法律の専門家への依頼費用 | 司法書士に依頼した場合:35,000円程度~ 弁護士に依頼した場合:30,000〜60,000円程度 ※場合により異なる |
生活保護受給中などの場合、法テラスを通せば援用手続きの費用免除も
「生活保護を受けているが、10年以上返済していない借金の督促が突然きてしまった」という場合、法テラス(日本司法支援センター)に弁護士などの費用を立て替えてもらい、時効援用手続きを行うことができます。
手続きの終結後も生活保護を受給している場合は、立替費用の返済の免除を申請できます。
法テラスの利用時には、資力などの審査があります。
不明点があれば、サポートダイヤルに連絡してください。
法テラス・サポートダイヤル
電話:0570-078374(IP電話からは03-6745-5600)
利用料:0円
通話料:固定電話からは全国一律3分9.35円(税込)
受付日時:平日9時〜21時、土曜9時〜17時(日曜・祝日は除く)
なお、生活保護費から借金の返済をすると不当受給に当たる可能性があります。
もし時効援用ができなかった場合は、免責(支払い免除)を申し立てる自己破産の手続きに移ることになるでしょう。
生活保護受給中の借金問題については以下の記事で詳しく解説しています。
借金の時効援用後の影響は?信用情報や抵当権はどうなる?
借金の時効援用後、対象の借金を返す義務はなくなります。
さらに、以下のような影響があるでしょう。
- 信用情報機関の事故情報が消える場合もある
- 不動産などの抵当権も原則として消滅する
ただし注意すべき点もあるため、あわせて説明します。
信用情報機関の事故情報が消える場合も
借金の時効援用を行った後、信用情報機関によっては、滞納による事故情報が訂正される場合もあります。
それにより、いわゆる「ブラックリスト入り」の状態にあった場合はそれが解除され、再びクレジットカードやローンが利用できるようになる可能性もあるでしょう。
たとえば、JICC(日本信用情報機構)に登録された事故情報は削除されます。
CICでは登録情報が「延滞」などから「完了」「契約終了」などに訂正され、5年後をめどに事故情報が完全に削除されるケースが多いようです。
事故情報が消えても時効の援用をした業者では借入れ不可に
時効の援用をすると、対象とした貸金業者や銀行、その系列業者からは、それ以降借入れができなくなります。
信用情報機関への登録情報とは別に、時効援用は事故情報として社内で半永久的に保存、共有されるためです(いわゆる「社内ブラック」)。
時効の援用は、借金返済義務から解放される債務者側から見ればメリットが大きい手続きです。
しかし、債権者側から見れば「借金を合法的に踏み倒される形」となり、損害でしかありません。
「そのような債務者に再びお金を貸せば、また借金を踏み倒されるかも」と債権者が考えるのも仕方のないことでしょう。
時効の援用には、債権者の信用を取り戻せないというデメリットがあるといえます。
不動産などの抵当権も原則として消滅する
抵当権とは、債権者が貸付金を確実に回収するため、債務者が所有する不動産などを担保として利用できる権利です。
債務者が借金を返せないと、債権者が不動産を売却し、借金の回収に充当します。
しかし抵当権が設定された借金の時効を援用した場合、借金と一緒に抵当権も消滅します。
つまり、「家を担保に借り入れていた借金の時効が成立したにもかかわらず、家だけが取り上げられてしまった」というようなことは起きません。
借金返済が難しければ債務整理が選択肢
「時効の援用は無理そう…だけどこのままでは借金は返せない」
という場合は、債務整理が選択肢のひとつになります。
債務整理とは、正当に借金問題を解決するための方法です。
「任意整理」「個人再生」「自己破産」といった方法があります。
もし一定の安定した収入があり、返済のめどが立つケースであれば、任意整理が選択肢になりやすいでしょう。
時効の成立を狙うよりリスクを低く抑えながら、早めの解決を図れる可能性もあります。
以下で解説します。
任意整理で借金問題の早期解決が狙える可能性も
任意整理とは、裁判所を通さずに債権者と直接交渉し、今後の返済計画について決めていく方法です。
通常、将来利息などをカットし、残った元金を3〜5年程度で返済することを目指します。
かかる期間の目安は3〜6ヶ月程度です。
たとえば「時効まであと6年」で「更新(中断)されないという保証もない」という状況であれば、任意整理を選択し、3〜6ヶ月で和解を目指したほうが早めの解決を目指せるでしょう。
任意整理する借金は選べるため、車や家のローンを対象から外せば、手元に残しておくことも可能です。
ただし、任意整理をすると信用情報機関に事故情報が登録されます。
債権者との和解成立日あるいは完済日から5年程度で削除されます。
任意整理は自分で行うことも可能ではありますが、借金を長年返してない債務者の立場から、債権者と利息カットなどの交渉をすることは容易ではありません。
弁護士などの法律の専門家への依頼を検討するのがよいでしょう。
任意整理については以下の記事で詳しく解説しています。
個人再生、自己破産では元金の減額、免除が可能
個人再生と自己破産は、裁判所に申立てをすることで、借金の圧縮や免責(支払い免除)をしてもらう方法です。
「収入が減って返済が難しくなり、借金を放置してしまっていた」などという場合であれば、これらの方法が適する可能性があるでしょう。
それぞれ、以下のような手続きです。
個人再生
裁判所を通じて債権者と交渉し、借金を5分の1~10分の1程度に減額することを認めてもらう方法。
減額された借金は、原則3年(最長5年)で返済することになる。
期間の目安:1年〜1年半程度
費用の目安:50〜90万円程度自己破産
裁判所に申立てを行い、一部を除いてすべての借金の免責(支払い義務の免除)を認めてもらう方法。
期間の目安:3ヶ月〜1年程度
費用の目安:50〜100万円程度
それぞれ、減額幅も大きいぶんデメリットも比較的大きい手続きなので、行う際は弁護士などの専門家に相談し、自分の状況に合った方法をとるのがよいでしょう。
個人再生については以下の記事で詳しく解説しています。
自己破産については以下の記事で詳しく解説しています。
借金の時効で迷ったら弁護士などの法律の専門家に相談を
借金の時効は、成立するためにさまざまな条件があります。
援用の失敗によるリスクも無視できません。
借金の時効について迷うことがあれば、弁護士などの法律の専門家に相談するのがよいでしょう。
以下のようなメリットがあるためです。
- 時効の援用が可能かどうかを判断してくれる
時効の成立条件は複雑ですが、弁護士などの法律の専門家に依頼すれば、法律、実務の知識に基づき、時効援用ができる可能性を測ってくれるでしょう。 - 時効の援用手続きを代理で行ってくれる
時効援用通知書には書くべき情報や書式の条件が多くありますが、弁護士などに依頼をすれば正確に書類作成を行ってくれます。 - 時効の援用ができない場合の借金問題の解決方法も提案してくれる
時効の援用ができないと判断された場合にも、状況に合わせた債務整理の方法などを提案してくれます。
そのまま債務整理の手続き、交渉に移ることも可能です。
「家族に伏せて手続きをしたい」など、希望を伝えれば最大限配慮してくれる可能性もあるでしょう。
なお、借金の時効援用は司法書士に相談することも可能ですが、以下のような制限があるので注意が必要です。
- 借金額が140万円以上の案件は受けることができない(司法書士法第3条)
- 債務者の法定代理人にはなれないため、訴訟がすでに起きている場合は債務者自身が出廷する必要がある
- 債務整理をする場合には、債権者との交渉や裁判所などとのやりとりを代理できないため、債務者自身で行う必要がある
より多くの場面で負担を抑えて借金問題を解決するなら、弁護士事務所への相談がよいケースが多いといえます。
まずは、時効の援用をふくめ、不安なことを相談無料の弁護士事務所に相談してみるのが借金問題の解決への第一歩かもしれません。
借金には、時効によって消滅するという制度があります。これは「消滅時効」と呼ばれています。
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借金の時効が成立する条件は以下のとおりです。
・返済期日または最後の返済から、5年もしくは10年が経過していること
・時効援用の手続きをとっていることしかし、時効の援用の成功率は高くありません。時効の更新事由(中断事由)があると5年・10年たっても時効が成立しないためです。
時効の更新事由(中断事由)は、以下のようなものです。
・時効期間中に債務者が借金の存在を認めた
・債権者が債務者に対し、返済請求手続きを行った
・債権者が債務者の財産に対して法的措置をとった消費者金融や銀行などは、通常、時効を更新(中断)させる手段をとります。時効が更新(中断)され、成立していない場合は、時効の援用は失敗となってしまうでしょう。
すると、多額の一括返済を求められる可能性もあります。 -
借金の時効が成立するまでの流れは以下のとおりです。
(1)時効期間が満了する
(2)時効が完成していることを確認する
(3)時効の援用の手続きをする
(4)債権者が時効援用通知書を受け取る
(5)時効が成立し、返済の義務がなくなる 借金の時効援用手続きの費用内訳は、内容証明郵便の実費と、弁護士などへの依頼料です。弁護士への依頼料の目安は、30,000円〜60,000円です。ただしケースごとに異なるので、まず相談無料の事務所に問い合わせてみるのがよいでしょう。
借金の時効援用が成功すれば、借金の返済義務はなくなります。
援用手続き後、さらに以下のような影響もあるでしょう。・信用情報機関の事故情報が消える場合もある(ただし、事故情報が消えても時効の援用をした業者では借入れ不可になる)
・対象の借金に設定されていた不動産などの抵当権も原則として消滅する現段階で時効の援用ができない可能性が高いうえに借金が返済できない場合、債務整理が選択肢となります。時効の成立を待つより、リスクが低く、早く借金の解決を図れる可能性もあります。
借金の時効で迷ったら弁護士などの法律の専門家に相談するとよいでしょう。以下のようなメリットが考えられます。
・時効の援用が可能かどうかを判断してくれる
・時効の援用手続きを代理で行ってくれる
・時効の援用ができない場合の借金問題の解決方法も提案してくれる
相談無料 全国対応 24時間受付対応
- ご自身の返済状況から、時効が成立するか判断します
- 時効成立までのお手続きをサポート!
- 成立が難しい場合、他の返済方法を相談できます