任意整理とは?メリット・デメリットと期間・費用を解説
「任意整理とはどういうもの?自己破産とは違うのかな?」
「自分の借金は、任意整理で解決できる?」
任意整理とは、債権者(お金を貸した貸金業者など)と交渉して借金減額を図る解決方法です。
借金の総額や、月々の返済額を減額できる可能性があります。
任意整理を行うためには弁護士・司法書士に依頼して行うのが一般的のため、数十万円の費用と3~6ヶ月ほどの期間が必要です。
「自分の借金をきっちり完済したい」と思っている人にとって、任意整理は有効な選択肢の一つと考えてよいでしょう。
この記事では任意整理のしくみとメリット・デメリットや、任意整理に必要な期間・費用などについて解説していきます。


任意整理とはどんなもの?メリット・デメリットは?
そもそも「任意整理」とはどのようなものでしょうか?
任意整理のしくみや、メリット・デメリットについて詳しく紹介します。
任意整理は、債権者と交渉して借金減額を図る解決方法
任意整理とは「債務整理」の一種です。
裁判所などの公的機関を通さず債務者(借りた側)と債権者(貸した側)が直接交渉し合意することで、借金の減額を図る解決方法です。
任意整理で重要なのは「債権者と交渉して合意を得ること」です。
債権者から任意整理の交渉内容について合意が得られないと、任意整理は行えません。
そのため交渉に臨む際には、借金の状況や債務額を調査・把握するなどさまざまな準備が必要です。
また金融機関や消費者金融などの債権者との交渉能力が問われることが多いため、法律の専門家である弁護士・司法書士に依頼するのが一般的です。
任意整理の5つのメリット
任意整理をすることで、主に5つのメリットが得られます。
●完済までの間に発生する「将来利息」が減額できる
●遅延損害金をカットできる
●長期分割返済ができる
●弁護士・司法書士に依頼後は借金の督促がなくなり、返済は一時ストップする
●「過払い金」が発生すれば返済に充当できる
1つずつ解説していきましょう。
-メリット1-
完済までの間に発生する「将来利息」が減額できる
「将来利息」とは、返済を続けていった場合に本来払うはずの利息です。
任意整理の交渉において債権者と和解できると、完済までの間に発生する将来利息を減額できる可能性があります。
和解内容によりますが、返済期間が3年になれば3年分の将来利息、5年になれば5年分の将来利息が減額できる可能性があります。
例えば債務額が300万円の場合、約168万円もの将来利息が減額できる可能性があるのです(下図参照)。
-メリット2-
遅延損害金をカットできる
支払いに行き詰ってしまい返済が滞納している場合は、損害賠償金である「遅延損害金」が発生していることもあります。
任意整理によって、この遅延損害金をカットすることも可能です。
ただし、滞納期間が長期(1年以上)に及ぶ場合、貸金業者側にカットを渋られることもあります。なるべく遅延損害金が発生する前に、任意整理手続きを取るようにしましょう。
-メリット3-
長期分割返済ができる
任意整理の和解後は将来利息の支払いはなくなり、元金のみを3年もしくは最長5年程度で分割返済するのが一般的です。
そのため、月々の返済額は減る場合もあります。
-メリット4-
借金の督促がなくなり、返済は一時ストップする
弁護士・司法書士に任意整理を依頼すると、債務者の代理人となったことを債権者に通知する「受任通知」を送付します。
任意整理を受け取った債権者からは借金の督促がなくなり、返済も一時ストップします。
これには法律上の根拠があります。
貸金業法の第21条1項9号(下記参照)に、債権者は、弁護士・司法書士から受任通知を受けた場合、取立て行為を止めるよう定められているからです。
(取立て行為の規制)
第二十一条 貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
(略)
九号 債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。
-メリット5-
「過払い金」が発生すれば、返済に充当できる
「過払い金」とは、本来支払う必要がないのに高い金利で借り入れていたために支払い過ぎていた利息のことです。
過去に適用されていた高い金利(いわゆるグレーゾーン金利)を現在の「利息制限法」で定める上限の金利に改めて計算する「引き直し計算」をすることで「過払い金」が発生する場合があります。
- 引き直し計算とは?
- 過去に適用されていた高い金利(いわゆるグレーゾーン金利)を現在の「利息制限法」の上限の金利に改めて計算し直すこと。
引き直し計算をすることで過払い金があることがわかれば、借金がなくなります。
また、ほかにショッピングの債務があった場合などは相殺することも可能です。
債務額よりも多くの過払い金が発生している場合には、現金が戻ってくる場合があります。
任意整理の3つのデメリット
任意整理にはメリットがある一方で、以下のデメリットもあります。
●事故情報が登録される(いわゆるブラックリストに載る)
●元金の減額は難しい
● 交渉の長期化は危険
1つずつ解説していきましょう。
-デメリット1-
事故情報が登録され「ブラックリストに載る」状態になる
任意整理をすれば信用情報機関の「信用情報」に事故情報が登録され、いわゆる「ブラックリストに載る」状態になります。
- 信用情報とは?
- クレジットカードやローンなどの申し込みや契約に関する情報(本人を識別するための情報、申込内容や契約内容、支払状況、借入残高など)です。
- 信用情報機関とは?
-
個人ごとにクレジットやローンの利用状況を管理することでその信用力を把握し、過剰な貸付け等を未然に防ぐことを目的として創設された機関です。
信用情報機関は
・株式会社シー・アイ・シー(CIC)
・株式会社日本信用情報機構(JICC)
・全国銀行個人信用情報センター(KSC)
の3つがあります。
ブラックリストに載った状態の間は、クレジットカードや消費者金融などのローンが利用できなくなります。。
任意整理の場合、和解から5年程度は信用情報機関から事故情報が消去されないため、その間はクレジットカードやローンの新規の契約・利用はできないことになります。
-デメリット2-
元金の減額は難しい
任意整理で金融機関や消費者金融などの債権者と和解ができても、減額される可能性があるのは今後払う「将来利息」などです。
原則として「元金」自体は減額されません。
しかし、過去に利息制限法による上限金利を超えた、いわゆるグレーゾーン金利で高すぎる利息を払っていた場合は、過払い金が発生することがあります。
その際、過払い金を返済に充てることによって、元金を減額できる可能性はあります。
原則として任意整理後は、元金のみの返済を続ける必要があります。
-デメリット3-
交渉の長期化は危険
任意整理は貸金業者との交渉がまとまらないと、いつまで経っても解決には至りません。
交渉が長期化してしまうと、しびれを切らした貸金業者側が裁判手続きに踏み切る恐れもあります。
こうなってしまうと、銀行口座や給与を差押えされてしまう可能性もありますので、交渉が長引きそうな場合は、ある程度の妥協は必要といえるでしょう。
任意整理ができる2つの条件
任意整理をする際、借金額の多さや借金の理由などが債務者に問われることはありませんが、債権者が任意整理に応じてくれるには主に2つの条件が必要になります。
-条件1-
完済できるだけの定期的な収入がある
任意整理で借金の返済負担を軽減できても、原則として元金の返済は続ける必要があります。
任意整理をすることで返済が続けられる人、完済できるだけの定期的な収入がある人であれば、債権者も任意整理に応じてくれる可能性は高いです。
一方で定期的な収入が見込めない無職の人などは、任意整理ができない場合があります。
-条件2-
返済を行う意思がある
債権者としては、任意整理をしたら本当に借金を返済してくれるのか、債務者の思いを確認しておきたいところです。
債権者から和解内容について同意を得るためにも、借金の返済を続ける意思があることを示す必要があります。
こんな場合は任意整理できる?
任意整理は、どのような借金(債務)だとのできるでしょうか。
任意整理が可能なケースと、任意整理の注意点について解説しましょう。
クレジットカードのショッピング・キャッシングの場合
クレジットカードの場合は、ショッピングの利用額やキャッシングの利用額はともに任意整理ができる可能性があります。
クレジットカード会社も、将来利息の減額や分割払いに応じてくれるのが一般的です。
ただし任意整理をすることで、クレジットカードで買った商品を引き揚げられる場合もあります。
ただし信用情報機関に事故情報が登録され、いわゆる「ブラックリストに載る」状態になります。
ブラックリストに載っている間(完済後5年程度)は、クレジットカードの利用は難しくなる点も注意が必要です。
奨学金の場合
結論から言うと、奨学金の返済は任意整理で解決できる可能性があります。
ただし、奨学金の任意整理には注意すべき点があります。
保証人がいる場合、奨学金を任意整理しても保証人の返済義務は消えません。
奨学金の返済は保証人となっている親や親族に請求されることになるため、任意整理をする場合は、あらかじめ保証人に相談したほうがよいでしょう。
なお、奨学金制度によっては、任意整理の交渉に応じてくれないケースもあるようです。
また奨学金は金利も低く利息もほとんどないケースも多く、任意整理による減額のメリットはあまりないかもしれません。
住宅ローンの場合
住宅ローンの返済分も任意整理できる可能性があります。
住宅を任意売却してその売却代金を住宅ローンの返済に充てて、それでも残った債務額を任意整理する方法です。
ただし、住宅ローンを借り入れている金融機関が住宅に対し抵当権を設定していることが一般的です。
住宅を任意売却するには、住宅ローンを借り入れている金融機関から承諾を得なければなりません。
任意整理でよくある4つの誤解
「任意整理をしたら周囲にバレるんじゃないの?」
「銀行口座が使えなくなるの?」
など任意整理について、さまざまな誤解や疑問を持っている人は少なくないようです。
任意整理でよくある誤解や疑問について、解いていきます。
-誤解1-
任意整理をしたことがバレる
「任意整理をしたことが周囲にバレる」と思っている人がいるようですが、それは誤解といえます。
例えば「個人再生」や「自己破産」をした場合は、個人再生や自己破産をした人の住所や名前などが「官報」に掲載され公表されることになります。
一方、任意整理をした場合は官報に自分の住所や名前などが掲載されることはありません。
必ずバレないとは言い切れませんが、任意整理はバレにくい借金の解決方法といえます。
- 官報とは?
- 国が発行する、法律・政令・条約等の公布を国民に広く知らせるための発行物です。 官報の中にある「裁判所公告」に、個人再生や自己破産をした人の住所や名前などが掲載されます。
-誤解2-
保証人に迷惑がかかる
借金の際に保証人を立てた場合、任意整理をすると返済義務は保証人に移ります。
つまり通常は、任意整理をすると借金の返済は保証人が負うことになるのです。
しかし、これは保証人のいる借金を任意整理の対象から外すことで回避することができます。
対象から外すことで借金返済の請求はいかないため、保証人に迷惑がかかることはありません。
-誤解3-
銀行口座が凍結される
任意整理をすると、銀行が借金の債権者となっている場合は一定期間「口座凍結」が行われることがあります。
- 口座凍結とは?
- 現金の引き出し、給料の振り込み、公共料金等の自動引き落としなどの口座を使った取引が、入金以外できなくなることです。
例えば銀行系金融機関のカードローンを任意整理の対象にすると、その銀行の口座が凍結となるケースがほとんどです。
ただし、銀行からの借金を任意整理の対象から外せば、口座凍結されることはありません。
口座凍結は、弁護士・司法書士が債権者である銀行に対して受任通知を送ったときから開始されます。
一般的に口座凍結の期間は3ヶ月程度と言われています。保証会社が銀行からの借金を肩代わりする「代位弁済」をすると、口座凍結は終了します。
-誤解4-
住宅や車が没収される
任意整理をしたら「所有する住宅や車が没収される」というのも誤解です。
任意整理で和解をして返済を続けて完済すれば、住宅や車が没収されることはありません。
住宅ローンや自動車ローンが残っている場合は、住宅ローンや自動車ローンを債務整理の対象から外すことで、家や車を手放さなくて済みます。
ただし、自動車ローンの残債がある車を任意整理の対象にした場合、その車は引き揚げられる可能性があります。
任意整理の和解後に返済ができなくなったとしても、それ自体で住宅や車が没収されることはありません。
任意整理と個人再生・自己破産との違いは?
任意整理のほかにも債務整理には「個人再生」と「自己破産」といった解決方法があります。
任意整理と個人再生・自己破産との違いは何なのか、下の表にまとめてみましたので比較してみましょう。
任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | |
---|---|---|---|
ブラックリストに載る | ◯ 載る |
◯ 載る |
◯ 載る |
クレジットカードなどを 新規契約できない期間 |
5年程度 | 5~10年程度 | 5~10年程度 |
元金の減額 | △ 原則できない |
◯ 5分の1~10分の1 程度に減額 |
◯ ほぼ全額免除 |
住宅の没収 | ✕ 任意整理の対象から 外すことで回避可 |
△ 「住宅ローン特則」を 利用することで回避 |
◯ 没収される |
車が没収される | ✕ 任意整理の対象から 外すことで回避可 |
△ ローン残債があると 引き揚げられる |
◯ 没収される |
官報に載る | ✕ 載らない |
◯ 載る |
◯ 載る |
家族や会社に バレる |
✕ バレにくい |
△ バレる可能性もある |
◯ バレる可能性は高い |
借金を5分の1~10分の1程度に減額する「個人再生」
「個人再生」とは、債務者に返済不能のおそれがあることを裁判所に申立てて再生計画の認可決定を受けることで債務を減額してもらう解決方法です。
個人再生をすると、借金が債務額に応じて5分の1~10分の1程度に減額になることがあります。
「個人再生」については以下の記事で詳しく解説しています。
個人再生とは?
借金はほぼ全額免除になる「自己破産」
自己破産とは、裁判所を通じてほぼすべての債務の支払義務を免除(免責)してもらう解決方法です。
裁判所が免責の許可を決定すると、残っている借金はほぼ全額減額できます。
「自己破産」については以下の記事で詳しく解説しています。
自己破産とは?
任意整理は誰に頼めばいい?
任意整理は自分自身で行うこともできますが、法律の専門家である弁護士・司法書士に依頼する選択肢もあります。
任意整理を行うには、誰に頼むのが望ましいのでしょうか?
弁護士に依頼する
法律の専門家としてまず頭に思い浮かぶのが「弁護士」ではないでしょうか。
弁護士は依頼者である債務者(借りた側)本人に代わって、任意整理をはじめすべての債務整理の業務を取り扱うことができます。
弁護士の場合は、取り扱える債務額は無制限となっています(司法書士に扱える債務額には制限があります)。
債務整理の取り扱い実績が豊富な弁護士かどうかを、Webサイトなどで確認した上で相談してみるとよいでしょう。
司法書士に依頼する
司法書士も弁護士と同様、任意整理をはじめ債務整理の業務を取り扱うことができます。
ただ司法書士の場合、取り扱える債務額に上限があります。
司法書士は、債務額が140万円を超えると債務整理の業務は行えません。
「引き直し計算」をして過払い金が140万円以上あった場合も、司法書士は債務整理の業務を取り扱えません。
例えば債務額が100万円程度と比較的少なめの額であれば、司法書士に依頼する選択肢も考えてよいでしょう。
法テラスを利用する
「法テラス」とは「日本司法支援センター」の愛称のことです。
法的トラブルに遭った経済的な余裕がない人に対して、無料の法律相談や弁護士・司法書士の紹介、費用などの立て替えを行っています。
法テラスでの弁護士・司法書士の相談料は無料、相談時間は一回30分程度まで。一つの問題について、相談回数は3回までと定められています。
弁護士・司法書士事務所に直接依頼するより、法テラスを利用するほうが費用を抑えられる可能性があります。
また費用の支払いは、月額5,000円~1万円ずつの分割払いも可能です。
自分で任意整理をする
任意整理の手続は自分で行うこともできます。
弁護士・司法書士に依頼すれば費用を払わなければなりませんが、自分で任意整理ができれば弁護士・司法書士費用を払う必要はありません。
しかし、自分で任意整理をする場合、債権者と直接交渉して和解内容をまとめたり、必要書類を準備・作成したりするなどかなりの手間や時間がかかります。
交渉している間も債権者からの借金の督促は止まらず、返済も続けなければなりません。
一般の方が自分で任意整理を行うのは、負担が大きいといえます。
弁護士・司法書士に依頼することで、必要書類の準備や債権者との交渉などを任せられ負担も軽くなるので、望ましいといえるでしょう。
任意整理を自分で行うデメリットについては、以下の記事で解説しています。
「任意整理は自分一人でもできる?」
任意整理の流れは?どのくらいの期間と費用が必要?
実際に任意整理を行う場合、どういう流れで進んでいくのでしょうか?
任意整理にかかる期間と費用の目安はどのくらいでしょうか?
これから詳しく説明していきましょう。
任意整理の流れは7つのステップ。約3~6ヶ月程度かかる
任意整理の手続はどんな流れで進められるのか、任意整理が終わるまでどれくらいの期間がかかるのか、下の図にまとめてみました。
- 任意整理の流れと期間の目安
-
1. 弁護士・司法書士に相談・依頼
↓
2. 債権者への受任通知の送付(即日~3日程度)
↓
3. 取引履歴の開示請求、債務額の調査(1ヶ月程度)
↓
4. 利息制限法による引き直し計算(1~2週間程度)
↓
5. 債権者との和解交渉(3ヶ月程度)
↓
6. 和解成立(即日)
↓
7. 返済開始~終了(3~5年程度)
弁護士・司法書士への依頼から和解成立まで早くて3ヶ月、一般的には4~6ヶ月程度の期間がかかります。
任意整理の流れを1つずつ、手順を追って紹介していきましょう。
1. 弁護士・司法書士に相談・依頼
自分の借金(債務)の状況を弁護士・司法書士に伝えた上でこれからどうしたらよいかを相談します。
相談する際には債務額や月々の返済額、返済期間、債権者(貸した側)の数、自分の収入などが確認できる必要書類を用意しておくとスムーズに話を進められます。
任意整理をすることで納得できたら、弁護士・司法書士と委任契約を交わし正式に依頼することとなります。
2. 債権者への受任通知の送付
弁護士・司法書士は債権者に受任通知を送付し、債務者(借りた側)の依頼を受けて任意整理の手続に入ることを伝えます。
前述しましたが、貸金業法の第21条1項9号(取立て行為の規制)にもとづき、債権者は債務者に対する借金の督促を止め、債務者の返済も一時ストップします。
受任通知の送付は、一般的に依頼当日~3日程度で行われます。
3. 取引履歴の開示請求、債務額の調査
受任通知の際は債権者からの取立てをストップさせると同時に、債権者へ「取引履歴」の開示を請求します。
取引履歴とは、債務者の借り入れや返済の記録のことです。弁護士・司法書士は取引履歴をもとに債務者の現状の債務額を調査します。
取引履歴の開示はおよそ1~2ヶ月程度かかります。
4. 利息制限法による引き直し計算
弁護士・司法書士は取引履歴の調査に加え、「利息制限法」に基づいた金利で利息を再計算する「引き直し計算」をして、実際の債務額を確定させます。
引き直し計算を行うことで債権者に払いすぎていたお金、つまり「過払い金」が発生していないか、発生している場合は過払い金の金額を確認します。
引き直し計算は、債権者の数にもよりますが1~2週間程度かかると見ておいたほうがよいでしょう。
5. 債権者との和解交渉
引き直し計算で確定させた債務額をベースに弁護士・司法書士と依頼者が相談して、返済計画(和解案)を立てます。
債務者が無理なく返済できるよう、借金の減額や分割回数・返済期間を決めていきます。
和解案をもとに弁護士・司法書士と債権者の間で交渉し、和解内容を詰めていきます。通常は依頼者本人が交渉に参加することはありません。
一般的な交渉期間は3ヶ月程度ですが、債権者が和解交渉になかなか応じてくれないなど調整が長引くケースもあります。
6. 和解成立
債権者から和解案の合意が得られれば和解は成立となり、和解契約を結びます。和解書(合意書)を作成し、債権者と債務者で取り交わします。
和解契約の締結は基本的に1日で終わります。
この和解成立で任意整理の手続は完了となります。
7. 返済開始~終了
債務者は和解契約書に記載されている支払開始日から返済を再開します。
和解内容によって異なりますが、返済期間・方法は3~5年程度の分割払いとなるのが一般的です。
任意整理にかかる費用の相場
弁護士・司法書士に任意整理を依頼した場合は、費用(報酬)を払う必要があります。
弁護士に払う任意整理の費用の内訳と相場は、以下のとおりです。
内訳 | 相場 |
---|---|
相談料 法律相談を受ける際に 必要 |
1時間1万円程度 (無料の場合あり) |
着手金 案件を依頼する際に 必要 |
1万円程度~ (無料の場合あり) |
報酬金 案件が成功した際に 必要 |
2万円以下 (債権者1社につき) |
減額報酬金 借金を減額させた際に 必要 |
減額分の10%以下 |
債権者の数などによって異なりますが、弁護士に払う任意整理の費用はトータルで10万~20万円程度を基本として見ておいたほうがよいでしょう。
司法書士に依頼する場合は、一般的に相談料・着手金などがかからない場合も多く、弁護士に比べて費用はやや安い傾向にあります。
なお、任意整理は裁判所を通さずに行う借金の解決方法なので、裁判所に費用を払う必要はありません。
無料相談や分割払いができる弁護士・司法書士事務所もある
弁護士・司法書士の中には、任意整理をはじめ債務整理に関する相談について相談料を無料にしている事務所も多いです。
なかには、着手金も無料で依頼を引き受けてくれる弁護士事務所もあります。
弁護士・司法書士費用を一括で払えない場合は、分割払いに応じてくれる事務所も少なくありません。
借金問題に悩んでいるなら、まずは無料相談の弁護士・司法書士に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。
任意整理後に完済した後はどうなる?
任意整理をしても、完済まで返済さえ続けることができればその後の生活にほとんど影響はありません。
ただし、任意整理をすることによって「ブラックリストに載る」ことになりますので、数年間じゃ新たにクレジットカードを使ったり、ローンを組んだりするといったことは難しくなります。
任意整理をすると、どういった制限があるのかを解説しましょう。
任意整理後は生活にどのような影響が出るのかは、以下の記事で詳しく説明しています。
「任意整理後はどんな生活になる?」
クレジットカードの新規発行は、和解後5年程度経ってから
任意整理をすると、信用情報機関に債務者(借りた側)の「事故情報」が登録されます。
これがいわゆる「ブラックリストに載る」というものです。
任意整理の対象となっているクレジットカードは強制的に解約され、使用できなくなります。
任意整理の対象にしないクレジットカードであっても、クレジットカード会社が事故情報の事実を確認したら利用停止になる可能性があります。
事故情報は、任整整理の和解から5年程度経たないと消えないといわれています。
事故情報が残り続ける限り、クレジットカードの申し込みをしてもクレジットカード会社の審査は通らないので、新たにクレジットカードを発行・利用することはできません。
ローンの新規契約は、和解後5年程度経ってから
ローンもクレジットカードの場合と同様、任意整理で和解できたとしてもすぐに利用できるわけではありません。
事故情報は、任意整理の和解から5年程度は経たないと消えないとされています。
信用情報機関に事故情報が残り続ける間は、金融機関や消費者金融などにローンの申し込みをしても、審査は通らないのでローンを組むことはできないのです。
任意整理の返済が払えないとどうなる?
任意整理で和解した後に返済が払えないと、債権者(貸した側)から返済金の全額や遅延損害金の一括返済を求められる可能性があります。
任意整理の返済が払えなくなった場合のリスクと、解決法を解説します。
返済額の全額を一括請求されるリスクがある
一般的に返済を2回(2ヶ月)滞納すると、債権者は債務者(借りた側)に対し残っている返済金の全額を「一括請求」してくる可能性があります。
債権者は「期限の利益の喪失」を主張するため、債務者の分割払いが認められなくなり、返済金の一括返済を求めてくるのです。
- 期限の利益の喪失とは?
- 「期日までに分割して返済する」という債務者の利益が失われること。
債権者によっては、1回分の返済を滞納しても2回目の期限までに1回分を返済すれば、一括返済を待ってもらえる可能性もあります。
滞納している分を返済したいなら、速やかに債権者へ連絡して返済を済ませるようにしましょう。
遅延損害金も一括請求されるリスクがある
返済を滞納すると、返済金の全額だけでなく「遅延損害金」の一括返済も求められる可能性があります。
遅延損害金とは、返済が滞納した場合に発生する「損害賠償金」の一種です。
遅延損害金は以下の計算式で算出されます。
遅延損害金=返済額×年率×滞納日数÷365日
クレジットカード会社や消費者金融などによって異なりますが、遅延損害金の年率は15%前後~20%で定められているのが一般的です。
「再和解」など別の解決方法もある
返済を滞納して債権者から返済金の全額や遅延損害金が一括請求された場合、返済を分割払いに戻したいなら、再び任意整理(再和解)をする選択肢があります。
ただし、1回目の任意整理と同じ和解内容で債権者と再和解ができるとは限りません。
再和解では再び債権者と交渉し合意を得たうえで、和解書(合意書)を取り交わす必要があります。
任意整理後の返済が払えなかったわけですから、例えば「月々の返済額を上げる」「返済期間を短くする」など、1回目の任意整理のときよりきびしい条件でないと再和解はできない可能性があります。
任意整理が払えない時の解決方法については以下の記事で解説しています。
「任意整理の返済が払えないとどうなる?リスクと解決方法とは」
任意整理の体験談
総額350万円の借金を任意整理で自己返済 (50代男性)
元々5社から借り入れをしていて、そのうちの4社について任意整理の手続きを依頼しました。 100万円程借りている会社が3社で、残りの一社からは50万円程借り総額は約350万円でした。
リボ払いも使っていたため、なかなか元本が減らず利息を支払っている状態が続いて悩んでいました。自分なりに調べて弁護士事務所に相談したところ、任意整理なら利息をカットして、借金の元本の返済に集中できることを知りました。
依頼した後も、弁護士の先生が債権者の方としっかり交渉してくれたおかげで、利息のカットだけではなく、何社か返済期間を7年に引き延ばしていただくこともできました。
私は時間がかかっても自己返済を希望していたこともあり、依頼して本当に良かったと思いました。

