「損害賠償があると自己破産はできない…?」
「損害賠償の分は、自己破産しても免除されないって本当?」
損害賠償請求の支払いは、自己破産によって免責になるものとならないものがあります。免責とは、債務(お金を支払う義務)を免除されることです。
損害賠償が次のものに当てはまると、免責されない可能性があります。
- 悪意による不法行為に基づく損害賠償義務
例)・他人からお金をだまし取った - 故意または重過失により、人の生命や身体を侵害した不法行為に基づく損害賠償義務
例)・人に暴力をふるって、ケガをさせた
自分が支払っている損害賠償が免責の対象となるか、損害賠償金が免責されない場合はどうするべきかわからない方は、弁護士への相談を検討しましょう。
弁護士法人・響では、状況に合わせたアドバイスをすることができます。
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目次
自己破産すると損害賠償請求の支払いも免責になる?
損害賠償請求には、次の2つのパターンがあります。
- 債務不履行(約束を果たさないこと)による損害賠償請求
- 不法行為(他人の権利を違法に侵害すること)に基づく損害賠償請求
(1)に関しては、自己破産をした際に免責となります。しかし、(2)の一部は非免責債権に当たるため、免責の対象外となってしまいます。
非免責債権とは、自己破産をしても免責の対象外となってしまう債権のことです。
実際にどのような損害賠償請求が免責になるのか、ならないのか、具体例を交えて解説していきましょう。
自己破産で免責になる損害賠償金は3種類【具体例つき】
債務不履行に基づく損害賠償請求は、自己破産を行うことで免責となります。
この債務不履行に基づく損害賠償請求は、大きく次の3種類に分けられます。
- 履行遅滞による債務不履行(約束を守らないこと)
- 債務の履行が不可能になる履行不能(約束を守れなくなること)
- 債務の履行内容が不完全な不完全履行(約束を守ったものの不完全なこと)
債務不履行とは、債権者(お金や物品を貸した側)に対して、契約で交わした約束を果たさないこと。
その約束を果たさないと債権者に迷惑がかかるため、損害賠償という形で金銭の支払い請求をできる仕組みになっています。
ちなみに、この約束は契約に基づくものなので書面締結が基本になりますが、法的証明が可能な証拠があれば口頭でも適用されます。
また、それは故意・過失どちらにおいても同じです。
ここからは債務不履行に基づく損害賠償請求の具体例を紹介していきます。
1. 履行遅滞による債務不履行
「履行遅滞による債務不履行」とは、正当な理由がなく契約の期日までに支払いをしないなど、約束を果たさないケースを指します。
具体的には、次のような事例が当てはまります。
- 借金の返済期日までに決められた額を支払わなかった
- 約束した日までに注文された商品を製作できず、納品が遅れた
- レンタカーを借りて、車を返却しなかった
- 不動産売買契約を結んだ不動産を期日が来ても引き渡さなかった
- 引っ越しを手伝う約束をしていたのに、当日行かなかった
2.債務の履行が不可能になる履行不能
「履行不能による債務不履行」とは、どうしても約束を果たすことができなくなってしまったケースを指します。
具体的には、次のような事例が当てはまります。
- 天災などによって売却予定の家具を壊してしまい、引き渡すことができなくなった
- 売却契約をした1点ものの絵を火事で消失してしまい、引き渡すことができなくなった
- 売却契約をした1点ものの有名選手のサインボールを、契約後に他者に売却してしまい引き渡すことができなくなった
3.債務の履行内容が不完全な不完全履行
「不完全履行による債務不履行」とは、約束を果たしたものの十分とはいえないケースを指します。
具体的には、次のような事例が当てはまります。
- 借金の返済期日に支払ったものの、支払った金額に不足があった
- 約束した日までに注文された商品の一部しか納品できなかった
- 売買契約をした書籍の一部が落丁した状態で引き渡した
- 売買契約をした商品を期日までに引き渡したが、その中身が契約したものと異なっていた
自己破産しても免責にならない損害賠償金は2種類【具体例つき】
不法行為に基づく損害賠償請求は、自己破産を行っても基本的には免責となりません。
この不法行為に基づく損害賠償請求は、大きく次の2種類に分けられます。
- 悪意による不法行為に基づく損害賠償義務
- 故意または重過失により、人の生命や身体を侵害した不法行為に基づく損害賠償義務
不法行為とは、故意または過失によって、他人の権利を違法に侵害する行為のことです。
それぞれの具体例を紹介していきましょう。
1. 悪意による不法行為に基づく損害賠償義務
「悪意による不法行為」とは、他人を害する悪意をもって他人に損害を与えたケースを指します。
具体的には、次のような事例が当てはまります。
- 債務超過を認識したうえでクレジットカードを利用して、商品を購入した
- 金融機関からの借り入れの際に、他社からの債務の状況などについて虚偽の説明をした
- 故意に他人をだましてお金を詐取した
- 違法な労働条件を認識したうえで、外国人研修生を働かせた
- 相手が既婚者であることを認識しながら不倫をした
2. 故意または重過失により、人の生命や身体を侵害した不法行為に基づく損害賠償義務
「故意または重過失により、人の生命や身体を侵害した不法行為」の具体的なケースは2つあります。
- 故意に他人の生命や身体に危害を与えたケース
- 故意でなくても重過失によって損害を与えたケース
民法709条で、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定められています。
具体的には、次のような事例が当てはまります。
- 自動車で飲酒運転をして人と衝突し、ケガをさせた
- 人に暴力をふるって、ケガをさせた
- 配偶者にDVやモラハラをして、身体に危害を加えた
損害賠償以外に免責されないものはある?非免責債権の一覧
損害賠償請求のように、自己破産をしても免責許可の効力が及ばない債権を「非免責債権」といいます。
非免責債権は、破産法第253条で定められています。
なぜ、定められているかというと、自己破産によってすべての債務の支払い義務が免除されると、社会的な公平・公正さを失い、特定の人や社会全体に不利益をもたらすことにもつながるからです。
例えば、税金が免責されるとしたら、ほかの納税者の負担が大きくなってしまいかねません。そのため、税金は非免責債権として扱われます。
上述のような損害賠償請求の他で、非免責債権に当たるものは次のようなものが挙げられます。
- 所得税、住民税
- 国民健康保険料、介護保険料
- DVなどの暴力行為を理由とする離婚時の慰謝料、養育費
- スピード違反などの反則金 など
ただし、非免責債権があるからといって、自己破産を行った際に免責許可が下りないということはありません。非免責債権以外の債権は、基本的に免責となります。
もし、免責許可が下りないとしたら、それは非免責債権の影響ではなく、「免責不許可事由」があるからだと考えられます。
免責にならない場合とは、免責不許可事由があるようなケースのことです。
具体的には次のような例が該当します。
- 財産の隠匿行為、損壊行為
- 破産前にわざと借金をする行為
- 完済できないと認識したうえで借金をする行為
- 特定の債権者にだけ優先して返済する行為
- 資産の価値を不当に減少させる行為
- ギャンブル、浪費が要因による負債
- 過去7年以内に自己破産をして免責の許可を得た経験がある
免責不許可事由については以下の記事で詳しく解説しています。
損害賠償の支払いが苦しい方は弁護士法人・響へ相談を
損害賠償の支払いに苦しみ、悩みを抱えているようであれば、弁護士へご相談ください。
弁護士法人・響へ無料相談いただくと、次のような対応を取ることができます。
- 損害賠償金が時効になっていないか確認する
- 非免責債権の有無にかかわらず自己破産の手続きを行う
損害賠償金が時効になっていないか確認する
損害賠償請求権には、時効があります。
「悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権」の時効が成立する条件は2つあります。
- 被害者またはその法定代理人が、損害・加害者を知ったときから3年間行使しないとき
- 不法行為のときから20年間行使しないとき
「故意または重過失により、人の生命や身体を侵害した不法行為に基づく損害賠償請求権」の時効が成立する条件も2つあります。
- 被害者またはその法定代理人が、損害・加害者を知ったときから5年間行使しないとき
- 不法行為のときから20年
もし上述のような不法行為があったとしても、損害賠償請求をされず一定期間が経過しているのなら、時効は成立しているといえます。
時効が成立している場合に時効の援用手続きを行うと、支払いを免除することができます。
非免責債権の有無にかかわらず自己破産の手続きを行う
非免責債権があるからといって、自己破産の免責許可が下りないということはありません。
前述のとおり、免責許可が下りないのは「免責不許可事由」がある場合に限られます。
非免責債権の債権者が「こんな悪質な不法行為を行っているのだから、免責不許可とすべきだ」と主張するケースもないとはいえませんが、その主張が免責許可に関する裁判所の判断を左右することはないと考えていいでしょう。
非免責債権があっても、自己破産によってその他の借金を免責してもらうことは可能なのです。
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