借金の保証人の義務とは?勝手に保証人にされた場合の対処法も解説

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借金の保証人になったら、どんなリスクがあるの?
勝手に保証人にされていたら、どうすればいい?

もし、やむをえず借金の保証人になってしまい、本人が支払えなくなってしまったら、どうすればよいのでしょうか?

借金の保証人は、主債務者(借金をした本人)が返済できなくなった場合に、代わりに返済義務を負うため、大変厳しい立場にあるといえます。

ただし、

  • 勝手に保証人にさせられた
  • 自分以外にも保証人や連帯保証人がいる
  • 借金をした本人が資産を隠し持っている

といった状況であれば、借金を全額返済する責任を回避できる可能性もあります。

すでに主債務者の代わりに請求をされた方も今一度、保証人が追う責任やリスク、対処法について確認しておきましょう。

この記事では、借金の保証人の負う責任やリスク、連帯保証人との違いについて詳しく解説します。

さらに、「勝手に保証人にされていた」などのトラブルへの対処法も紹介していますので、参考にしてください。

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目次

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借金の保証人が負う義務と権利・連帯保証人との違い

借金の保証人は、主債務者(借金をした本人)が借金を返済できなくなったとき、代わりにその借金を返済する義務を負います。

たとえば、主債務者が失踪したり、死亡した場合は、保証人が代わりに借金を返済しなければなりません。

なお、保証人の負う債務のことを保証債務といいます。

保証義務には、借金の元本全額の返済だけでなく、借金の利息や違約金、遅延損害金の支払いなども含まれます。

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(保証債務の範囲)
民法第447条1項
保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。

引用元:民法第447条1項

とはいえ保証人は、債権者から返済を求められたときに主張できる3つの権利があります。

保証人に認められる3つの権利

借金の保証人は、以下の3つの権利が認められています。

催告の抗弁権

「催告の抗弁権」は、債権者に対し「自分より先に、主債務者本人に請求してください」と主張できる権利で、民法の第452条に制定されています。

保証人は「催告の抗弁権」を持つため、主債務者より先に支払いを請求されたとしても、それを拒否できます。

たとえば、AがBから100万円の借金をし、Aの友人であるCがその借金の保証人になったケースを考えましょう。

このとき債権者Bが、保証人Cに対して100万円の債務を支払うように請求したとします。

その際、保証人Cは「まず主債務者Aに対して借金返済の督促をしてください」と債権者Bに主張できます。

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(催告の抗弁)
民法第452条
債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。

引用元:民法第452条

検索の抗弁権

「検索の抗弁権」とは、主債務者の経済力を証明することで「主債務者が弁済するべき」と主張できる権利(民法第453条)です。

「検索の抗弁権」を持つ保証人は、債権者に対して主債務者の財産を差し押さえるよう主張できます。

さきほどと同様に、AがBから100万円の借金をし、Aの友人であるCがその借金の保証人になったケースを考えましょう。

このとき債権者Bが、保証人Cに対して100万円の債務を支払うように請求したとします。

その際に、保証人Cが「主債務者Aには強制執行が容易な銀行預金60万円がある」と証明し、検索の抗弁権を行使した場合、債権者Bはまず主債務者Aから60万円を取り立てなければなりません。

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(検索の抗弁)
民法第453条
債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

引用元:民法第453条

分別の利益

分別の利益とは、複数人の保証人が存在している保証契約の場合に、その人数で割った保証債務分のみを負えばよいとする権利(民法427・456条)のことです。なお、複数人の保証人が存在している保証契約を「共同保証」といいます。

保証人は、自分以外の保証人が払わなかった場合も、自分の負担分だけを払えばよいとされています。

たとえば、債権者、債務者、保証人A、保証人Bがいるケースを考えましょう。

債務者が債権者から100万円を借りた場合、 保証人A、Bの負担額はそれぞれ50万円となります。

このとき債権者が、保証人Aに対して100万円の債務を支払うように請求した場合、保証人Aは、「他にも保証人Bがいるので、50万円分はBに請求してください」と主張できます。

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(分割債権及び分割債務)
民法第427条
数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

(数人の保証人がある場合)
民法第456条
数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第四百二十七条の規定を適用する。

引用元:民法第427条、第456条

保証人と連帯保証人の違い

「保証人」と似た言葉に「連帯保証人」がありますが、両者の違いはなんでしょうか?

連帯保証人は法律上、保証人とは別の立場で、上記で説明した「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」を持たない保証人をいいます。

この3つの権利がないことによって、実質的に、連帯保証人は主債務者本人と同様の返済義務を負うことになります。

たとえば主債務者が借金を滞納してしまうと、貸金業者は即座に連帯保証人に対して返済を迫ることができ、このとき連帯保証人は反論できません。

また、連帯保証人が支払いに応じることができなかった場合、連帯保証人の資産を差し押さえられる可能性があります。

連帯保証人は、それだけの重い責任を負う立場にあるため、安易に引き受けるべきではありません。

連帯保証人についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
連帯保証人とは?なってはいけない理由や回避する方法【2020年民法改正】

2020年の民法改正で保証人が負う義務は極度額までに

上述したように、連帯保証人が負う責任やリスクがあまりに大きい点が問題視され、2020年、民法の大改正によって、連帯保証人制度が改正されました。

それまで連帯保証人には適用されていなかった「極度額」が適用されることになったのです。

極度額とは、連帯保証人が負う可能性がある最大負担額をいいます。これを契約の際に明記することが義務付けられました。

民法改正前はたとえば借金の連帯保証人は、主債務者が借りた全額に対して、返済義務を負っていました。

一方で、改正後は、連帯保証人は契約または契約更新時に取り決めた極度額を負担すればよいことになりました。

民法が改正されたのは2020年以降のため、それ以前の契約では極度額が設定されているケースは多くはありませんが、念のため、保証契約を確認してみるとよいでしょう。

勝手に借金の保証人にされた場合の対処法

ここまで説明してきたように、保証人・連帯保証人は、主債務者が借金を返せないときに、主債務者に代わって借金を返す義務を負います。

そのため、安易に保証人を引き受けることは避けなければなりませんが、まれに「勝手に借金の保証人にされていた」ケースがあります。契約をそのままにしておくと、後々大きなトラブルのもとになりかねません。

勝手に借金の保証人にされていた場合は、契約を解除できる可能性があります。契約を解除するための具体的な方法を紹介します。

以下の手順で、確認・対応を行ってみてください。

1.本当に保証人になっているか保証契約を確認する

まず大切なのは、本当に保証人になっているかどうか確認することです。

保証人になっているならば「債務者が無断で契約した」など、何らかの経緯で保証契約書に署名されていたり、実印が押されているはずです。

債権者に問い合わせて保証契約書の写しを送ってもらい、署名の筆跡や印鑑が本当に自分のものかどうか、確認しましょう。

2.無権代理であることを内容証明書で通達

勝手に保証人にされていた事実が確認できた場合は、次のように対処します。

まず債権者に「自分は保証人ではない」「保証債務が無効である以上、支払い義務はない」旨を、内容証明郵便によって通達します。内容証明郵便は、のちに裁判となった場合に証拠として利用できます。

なお無権代理とは、本人を代理する権限(代理権)がないにもかかわらず、ある者が本人に代わって契約を結ぶなど、勝手に本人の代理人として振る舞うことをいいます。無権代理である場合、その保証契約は無効になると民法第113条に規定されています。

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(無権代理)
民法第113条1項
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。

引用元:民法第113条1項

3.裁判で無権代理を主張

内容証明郵便を送っても債権者が無権代理を認めず、保証契約の有効性を主張する場合は、裁判によって無権代理を主張する必要があります。

具体的な手段としては、債務がないことを確認するための裁判(債務不存在確認訴訟)があります。

これは、裁判所に対し、「債権者が保証債務の履行を求めてきているが、連帯保証債務が無権代理で無効な以上、支払義務はない」と主張するものです。

裁判所がこうした主張を受けて、無権代理であることを認めれば、支払い義務を回避できる可能性があります。

保証人が代わりに返済することになってしまったら

実際に主債務者が返済不能になった場合、保証人が返済義務を逃れる手段はあるのでしょうか。

主債務者が返済不能となった場合、保証人や連帯保証人がとれる手段を解説します。

保証人は債権者の請求を拒否できる場合も

前述のように、保証人には連帯保証人にはない「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」があります。

主債務者より先に支払いを請求されたとしても、「催告の抗弁権」によってそれを拒否できます。

また、主債務者に借金を返済できるだけの財産があるにもかかわらず返済を拒否している場合は、「検索の抗弁権」によって、債権者に対して主債務者の財産を差し押さえるよう主張できます。

具体的な手続きについては、弁護士や司法書士などの専門家に相談するとよいでしょう。

連帯保証人は債権者の請求を拒否できない

前述のように、催告・検索の抗弁権は、保証人にのみ認められた権利です。

連帯保証人の場合は、催告・検索の抗弁権の主張ができないため、基本的に返済義務を免除することはできません。

借金を返済できない場合の法的解決策

ある日突然、他人が返すはずだった借金の返済義務を課せられても、返済が難しいケースもあるはずです。そんなときに保証人がとれる法的な解決策を解説します。

時効の援用を行う

一定期間請求がなされず、かつ返済していない借金には、「時効によって消滅する」という制度があります。これを「消滅時効」といい、そのための手続きを「時効の援用」といいます。保証人契約にも適用されます。

ただし次の2つの条件があります。

  • 返済期限または最後の返済から5〜10年が経過していること
  • 消滅時効の援用手続を行うこと

返済期限期限または最後の返済から5〜10年が経過していても、必要な手続きを行わなければ消滅時効は成立しません。

時効の援用手続を行うにあたって明確な決まりはありませんが、「時効援用通知書」を作成し、内容証明郵便で送るのが一般的です。時効を援用する日付や、債権者・債務者・債権の内容などを記載します。

ただし、前述の2つの条件を満たしていたとしても、実際に時効を成立させるのは容易ではありません。それは「時効の更新」、または「時効の完成猶予(停止)」という制度があるためです。

時効の更新とは

時効の更新とは、何らかの理由で時効のカウントがゼロに戻ってしまうことを指します。
時効の更新が起きる事情(時効の更新事由)は、主に以下の3つです。

時効の更新事由
  • 時効期間中に、借金の一部を返済するなど、債務者が借金の存在を認めた
  • 債権者が債務者に対し、支払督促をするなど、返済請求手続きを行った
  • 債権者が債務者の財産に対して、差押えなどの法的措置をとった

時効の完成猶予(停止)とは

「時効の完成猶予(停止)」とは、法律で定められた事由が発生すると、一時的に時効の完成が阻止される(時効期間が経過してもしばらくの間時効が完成しないこととなる)という仕組みです。

たとえば、債権者が口頭や書面などで支払いを請求する「催告」の手続きをすると、時効のカウントが6ヶ月間止まります。

用語集 催告とは?

催告は、口頭や書面(通常は証拠化するために内容証明郵便が用いられます)などで、支払いを請求する行為

債権者は、時効を更新させるために、さまざまな手段を講じてくることでしょう。そのため、実際に時効を成立させる可能性は高くないのが現実です。

連帯保証人の時効援用について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
連帯保証人も借金の時効援用できる?条件3つや相続した場合も解説!

弁護士に相談して債務整理を行う

どうしても返せない借金は、「債務整理」によって返済負担を軽くすることができます。

債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産の3種類があります。借金総額や収入、借金の種類によって、とるべき手続きは異なります。

債務整理

任意整理

任意整理は、裁判所を介さずに貸金業者などの債権者と借金の返済方法について直接交渉し、借金の返済を軽くする手続きです。借金の元本は減りませんが、将来利息と遅延損害金をカットしたうえで、3〜5年程度の分割返済を目指します。

個人再生、自己破産に比べると、借金の減額幅が小さいこと、完済から5年程度は、信用情報機関に事故情報が登録され、その間はクレジットカードやローンの利用などができなくなることなどがデメリットです。

任意整理については下記の記事で詳しく解説しています。
任意整理とは?デメリットと対処法から費用、期間まで弁護士が解説

個人再生

個人再生は、借金の返済が不可能になった人が裁判所に申し立てを行うことで、借金を5分の1~10分の1程度に減額してもらい、その借金を原則3年(最長5年)で分割返済する手続きです。任意整理より減額幅が大きく、また「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」を利用することで、住宅ローンが残っている自宅も手放さずに済むなどのメリットがあります。

ただし、信用情報機関に事故情報が登録される、国の機関紙である「官報」に名前や住所などの個人情報が載るなどのデメリットもあります。

個人再生については以下の記事で詳しく解説しています。
個人再生とは?自己破産との違いやデメリットをわかりやすく解説

自己破産

自己破産は、借金の返済が不可能になった人が裁判所に申立てを行うことで、一部の債務を除きすべての借金の支払いを免除してもらう手続きのことです。

借金が原則としてゼロになることが自己破産の最大のメリットですが、その分デメリットも大きく、不動産や自動車など所有している財産を売却・清算し、債権者(借入先)への返済に充てることになるため、財産の大半を失います。また例外的に、自己破産をしても支払い義務が免除されない借金があります。

また個人再生と同様に、「官報」に名前や住所などの個人情報が載ります。

債務整理は専門的な知識を必要とするため、個人で手続きすることは簡単ではありません。

実際に手続きをする場合は、法律の専門家である弁護士に相談するとよいでしょう。

自己破産については以下の記事で詳しく解説しています。
自己破産とは?弁護士や破産者に聞くメリットデメリットと手続きの流れ

借金の保証人に関するQ&A

主債務者が自己破産した場合はどうなる?

主債務者が自己破産した場合、借金の支払い義務を免れるのは本人だけです。

連帯保証人には返済義務が残るため、原則一括で返済するよう求められます。

もし連帯保証人が返済できない場合は、連帯保証人自身も、債務整理を検討しなければならない可能性があります。

保証人が死亡した場合はどうなる?借金も相続財産?

借金の保証人が死亡すると、保証債務も相続財産となるため、死亡した保証人の家族などが相続人として引き継ぐことになります。

ただし、相続を知ってから3ヶ月以内に相続放棄の手続きをすることで、支払い義務を回避することが可能です。

離婚したら借金の保証人から抜けられる?

夫または妻の借金の保証人だった場合、離婚をしたとしても、保証契約を解除することは原則できません。

債権者の同意を得られるならば可能ですが、現実には、同意を得られるケースはまれだと考えるべきです。

借金の保証人は途中で変更できる?

債権者の同意があれば可能ですが、現実には難しいでしょう。

例外的に、勝手にあるいはだまされて保証人にされていた場合や、保証人が未成年だった場合などは、債権者側が変更に応じる可能性があります。

ただその場合も、一度でも借金を返済していると、連帯保証契約を自分で認めたものとして見なされ、変更不可となります。

まとめ
  • 借金の保証人は、主債務者が借金を返せないときに、主債務者に代わって借金を返す義務を負います。

  • 保証人には「保証人」と「連帯保証人」の2つがあり、連帯保証人には、保証人には認められている「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」がありません。

  • 債務者が借金を返済できなくなった場合、連帯保証人がその返済義務を回避することは基本的に難しいといえます。

  • 勝手に借金の保証人にされた場合は、本当に保証人になっているかどうか確認し、本当であれば「無権代理」であることを債権者に通達する必要があります。

  • 保証人に返済義務があるにもかかわらず返済できない場合は、「時効の援用」の手続きや「債務整理」を行う必要があります。

  • その場合は、法律の専門家である弁護士に相談するとよいでしょう。

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監修者情報
監修者:弁護士法人・響弁護士
西島 弘起
弁護士会所属
東京第二弁護士会 第59420号
出身地
東京都
出身大学
中央大学法学部 上智大学法科大学院
保有資格
弁護士・行政書士
コメント
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[実績]
43万件の問合せ・相談実績あり
[弁護士数]
43人(2023年2月時点)
[設立]
2014年(平成26年)4月1日
[拠点]
計7拠点(東京、大阪、香川、福岡、沖縄)
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