「自己破産をすると退職金も没収されるの?」
「退職する予定がないから退職金は関係ないのでは…?」
自己破産の手続きを行うと、原則として退職金の一部も没収(回収)の対象になります。
退職する予定がない、退職するのは遠い将来という場合でも、回収の対象になるため注意が必要です。
しかし、受け取る予定の退職金額によっては回収されない場合や、受け取る時期によって回収される割合が異なるなど、いろいろなケースがあります。
簡単にまとめると、下記のようになります。
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退職金の受け取り状況 | 没収される退職金の額 |
---|---|
在職中(直近で受け取る予定がない) | 見込み金額の8分の1 |
退職済みだが退職金を受け取っていない | 見込み金額の4分の1 |
退職金を既に受け取っている | 全額 |
この記事では、自己破産における退職金の扱いや、回収される割合などについてくわしく説明します。
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目次
自己破産すると退職金の扱いはどうなる?状況別に解説
自己破産をすると、原則として退職金の一部は没収(回収)されてしまいます。
退職金が財産とみなされる割合と、回収の対象となる金額は、退職金の受け取り状況によって異なります。
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退職金の受け取り状況 | 財産の対象割合/回収対象金額 |
---|---|
在職中の場合 | ・退職金見込み額の1/8が財産とみなされる ・1/8にあたる額が20万円を超える場合は1/8相当額が回収の対象になる(または支給される金額の1/8) |
退職後、退職金を受け取っていない | ・退職金見込み額の1/4が財産とみなされる ・1/4にあたる金額が20万円を超える場合は回収の対象になる |
すでに退職金を受け取っている | ・現金保管されていれば現金として、預金口座に入っていれば預貯金として扱われる ・退職金を含めた現金が99万円を超える、預貯金が20万を超える場合は預金全額が回収の対象になる |
退職金制度がない | 回収されない |
以下でくわしく説明します。
退職金制度がある会社に在職中の場合:8分の1が没収対象
在職中で当分退職金を受け取る予定がない、退職の時期が遠い将来の場合などは、退職金試算額の8分の1が財産とみなされます。
その8分の1にあたる金額が20万円を超える場合は、8分の1相当額が回収されることになります。
退職金は、勤務先を退職しないかぎり受け取ることはできません。
また退職金を確実に受け取れる保証もないため、その4分の1を財産とみなすことは、破産申立人の負担が大きくなってしまうため、このような運用が行われているのです。
この場合は、在職中であっても受け取れる退職金を算出し、裁判所に報告する必要があります。
- 退職金見込み額500万円の場合
500万円×1/8=625,000円 - 退職金見込み額160万円の場合
160万円×1/8=200,000円
この場合は62万5,000円が財産とみなされ、62万5,000円が回収されます。
この場合は20万円が財産とみなされ、回収されない。
しかし、実際に退職していないのに退職金を受け取ることはできないため、破産手続を進めるためには、退職金見込み額の8分の1にあたる金額を自ら確保しなければならないのです。
退職済みの場合は状況によって没収額が異なる
既に退職している場合、退職金の没収額は「自己破産の手続き時点で退職金を受け取っているか/いないか」で変わってきます。
手続き時点で退職金を受け取っていない:退職金見込み額の4分の1が没収対象
すでに退職をしてまだ退職金を受け取っていない(退職金を受け取る予定がある、あるいは近い将来に退職金を受け取ることが決まっている)場合は、その金額の4分の1が財産とみなされます。もし受け取る予定の退職金の4分の1にあたる金額が20万円を超える場合は、回収されることになります。
退職金というのは本来は退職後の生活を補償するためのものなので、破産申立人の生活を考慮して支給額の4分の1までしか差し押さえられることはありません。
自己破産の申立てを行う際に、一定額(20万円を超える)の財産がある場合には、原則として「管財事件」として扱われます。
管財事件になると「破産管財人」が破産者の財産を管理・処分し、債権者へ分配します。
管財事件になると免責許可が出るまでに1年程度かかる場合や、裁判所の費用が最低50万円かかるなどのデメリットがあります。
手続き時点で退職金を受け取っていない:退職金見込み額の4分の1が没収対象
すでに退職金を受け取っている場合は、「現金」もしくは「預貯金」として扱われます。
現金で保管していれば現金として、預金口座に預け入れていれば預貯金として扱われることになります。
退職金だからといって特別な扱いになるわけではないので、注意が必要です。
この場合は20万円を超えた場合の預貯金や、99万円を超える現金は原則として回収の対象になってしまいます。
退職金制度がない場合:回収されない
勤務先に退職金の制度が設けられておらず、支給されることがない場合は、回収されることはありません。
しかし、裁判所に退職金制度がないことを証明する必要があります。
勤務先に「退職金制度がない」ことを証明する書面を作成してもらうか、「退職金の規定(就業規則)」などを明示する必要があるのです。
勤務先の協力が必要となるため、自己破産の事実がバレてしまう可能性はあります。
「自由財産拡張」で20万円を超えた分も回収されないことも
このように退職金の一部は回収対象となると前述しましたが、裁判所によっては「自由財産拡張」という制度が適用され、退職金が20万円を超えた場合でも回収されないこともあります。
前述のように退職金は、退職金相当額の1/8もしくは1/4が破産財団組み入れの対象になります。
この1/8または1/4の金額が他の財産と併せて99万円以下の場合には、破産財団組み入れの対象にならないこともあります。
「自由財産拡張」とは、本来は自由財産とはいえない財産でも、裁判所の決定があれば自由財産として扱われるものです。
これによって、他の財産と合わせて99万円の範囲内であれば、退職金も自由財産として認められることが多いようです。

本来自由財産に該当しないが、裁判所の判断で自由財産として扱われる財産のこと。自由財産だけでは最低限の生活を維持できないと判断される場合などに認められる場合があります。(破産法34条4項)
たとえば退職金の一部が20万円を超えている場合でも、財産の総額が99万円以内であれば自由財産の拡張として扱ってくれる場合もあります。
※裁判所によって運用が異なる場合もあります。
自由財産拡張を適用してもらうためには「自由財産拡張申立て」を行う必要があります。
また財産の総額が99万円を超える場合は、どの項目を自由財産拡張申立ての対象とするかを考慮する必要があるなど、一般の方には判断が難しいことが多いといえます。
そのため、このようなケースでは弁護士に相談することも検討してみてください。
※自由財産拡張の運用は裁判所によって異なる場合があります。自己破産申立てを行う裁判所でどのような運用になっているかは、弁護士に聞いてみましょう。
自由財産については以下の記事で詳しく解説しています。
回収される金額を一括で払えない場合は分割で支払うことも可能
前述したように、在職中で退職の時期が遠い将来の場合などは、その金額の8分の1が財産とみなされます。
たとえば退職金の試算額が1,000万円の場合は、
1,000万円×1/8=125万円
となり、20万円を超えているので125万円は回収されることになります。
※他に財産がないと仮定した場合。
しかし、回収予定の退職金相当額を一括で支払うことが難しい場合は、破産手続き中に毎月分割(積立)で支払うことも可能です。
※裁判所によって運用が異なる場合もあります。
自己破産で差押えの対象にならない退職金もある
例外的に、自己破産をしても回収されない退職金や退職金代替制度からの給付金があります。
回収の対象とならない退職金制度や退職金代替制度は、おもに次のようなものです。
種別 | 名称 |
---|---|
退職金共済制度 | 中小企業退職金共済(中退共) |
小規模企業共済 | |
社会福祉施設職員等退職手当共済 など | |
退職金の代替制度 | 確定給付企業年金(DB) |
確定拠出年金(DC) | |
厚生年金基金 など |
「中小企業退職金共済」や「小規模企業共済」などは、企業が加入している共済から退職金を受け取る制度です。
「社会福祉施設職員等退職手当共済」は、おもに福祉施設で働く職員のための退職金制度です。
これらから支給される退職金は、差押えが禁止されているため破産財団の組入れの対象になりません。そのため支給額にかかわらず、全額を残すことができます。
法律上では以下のように定められています。
〈中小企業退職金共済法〉
第二十条 退職金等の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、被共済者の退職金等の支給を受ける権利については、国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。
出典:e-GOV法令検索「中小企業退職金共済法」
〈社会福祉施設職員等退職手当共済法〉
第十四条 退職手当金の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。
出典:e-GOV法令検索「社会福祉施設職員等退職手当共済法」
また、退職金の代わりに「確定給付企業年金」や「確定拠出年金」「厚生年金基金」などの制度を導入している企業もありますが、これらの給付金も自己破産によって回収されません。
確定給付企業年金・確定拠出年金・厚生年金基金も「差押禁止財産」となっているためです。
民法では以下のように定められています。
〈確定給付企業年金法〉
第三十四条 受給権は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。ただし、老齢給付金、脱退一時金及び遺族給付金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえる場合は、この限りでない。
出典:e-GOV法令検索「確定給付企業年金法」
〈確定拠出年金法〉
第三十二条 給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。ただし、老齢給付金及び死亡一時金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえる場合は、この限りでない。
出典:e-GOV法令検索「確定拠出年金法」
差押禁止財産については以下の記事で詳しく解説しています。
自己破産するには「退職金見込額証明書」の提出が必要
自己破産の手続きをするためには、退職金がいくら支給されるかという金額を証明して裁判所へ提出する必要があります。
一般的には次のようなものが挙げられます。
- 退職金見込額証明書や退職金計算書
- 退職金規程(就業規則)
退職金がいくら支給されるかを証明するための一般的な方法は、退職金の見込み額が記載された「退職金見込額証明書」「退職金計算書」といった書類の提出です。
これは、勤務先の総務部署や経理部署などに依頼して計算・作成してもらう必要があります。
これらの書類に記載された金額は、正しいものとして認められやすいといえるでしょう。
また勤務先に「退職金見込額証明書」「退職金計算書」の作成を依頼することが難しい場合は、就業規則に記載されている「退職金規程」を確認してみましょう。
一般的に退職金規程には退職金の計算方法などが記載されているので、それをもとに退職金見込み額を計算して裁判所へ報告することも可能な場合があります。
しかし、企業によっては就業規則を社外に持ち出すことを禁止している場合もあるので、注意が必要です。
そのような場合や、計算の方法などがわからない場合には、自己破産の手続きを含めて一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。
退職金見込額証明書の取得で勤務先に自己破産がバレない?
勤務先に「退職金見込額証明書」「退職金計算書」の作成を依頼すると、提出先や理由を聞かれることもあるでしょう。
「弁護士に言われたので」「裁判所へ提出する」などと答えると、自己破産をすることがバレてしまう可能性もあります。
その場合は、次のようなことを理由にしてみるとよいかもしれません。
- 住宅ローンや教育ローンを組むために必要
- 保証人になるために提出する必要がある
- FPに老後の資金相談をするために確認したい
もし会社にバレたくない、といった悩みをお持ちの方は、参考にしてみてください。
退職金の計算や自己破産の手続きは弁護士にお任せできる
ここまで紹介してきたように自己破産の手続きは、退職金の計算だけでも面倒で手間のかかるものです。
そのため自己破産の手続きを行う場合は、弁護士に相談・依頼することが一般的といえます。
自己破産の取り扱い実績が豊富な弁護士に依頼すれば、勤務先から「退職金見込額証明書」をもらうことが難しい場合の退職金の計算や、裁判所への提出といった手続きの多くをお任せすることができます。
弁護士に自己破産手続を依頼すると、ほかにも以下のようなメリットがあります。
借金の督促や返済が一時ストップする
弁護士に自己破産の手続きを依頼すれば、借金の督促・返済を一時的にストップできます。
弁護士は、債務整理の依頼を受任すると、債務者(依頼者)の代理人となったことを債権者(貸金業者など)へ告知する「受任通知」を送付します。
受任通知には、貸金業法の第21条1項9号に基づいて借金の取り立て行為を規制する法的な効力があり、借金督促や返済をストップできます。
それにより一定の期間、督促や返済のプレッシャーから解放されるのです。
受任通知については下記の記事で詳しく解説しています。
自分に合った借金の返済方法を提案してくれる
自己破産は、正当な借金解決方法である「債務整理」の一つです。
債務整理には「自己破産」以外にも 「任意整理」 「個人再生」 といった方法があり、それぞれ特徴が異なります。
借金の額や状況によっては、自己破産以外の方法が向いていることもありますが、一般の方には、どの債務整理がよいのか判断するのは難しいといえます。
弁護士に相談することで、ご自身に向いている債務整理の方法を提案してくれます。
債務整理については下記の記事で詳しく解説しています。
自己破産をすると、原則として退職金の一部は財産として没収(回収)される。
・退職金を受け取る予定がある場合:退職金見込み額の4分の1が財産とみなされ20万円を超える場合は回収される
・退職金を受け取る予定がない場合:退職金見込み額の8分の1が財産とみなされ20万円を超える場合回収される
・すでに退職金を受け取っている場合:現金もしくは預貯金として扱われ20万円を超える場合は回収される
・退職金制度がない場合:回収されない
・「自由財産拡張」で99万円までは回収されないこともある退職金額を算出するにはいくら支給されるかという金額を証明する必要がある。
証明するには「退職金見込額証明書」「退職金計算書」などの提出という方法があるが 請求できない場合は「退職金規程(就業規則)」から計算できる場合もある。- 退職金の計算や自己破産の手続きは弁護士にお任せできる。
相談無料 全国対応 24時間受付対応
- 月々の返済額を5万→2万へ減額できた事例あり
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