破産管財人とは? 権限や調査内容・費用など自己破産前に知っておきたいこと

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破産管財人とは、自己破産手続きにおいて、債務者や債権者など関係者の利害を調整しながら、円滑・確実に進行するよう主導する人をいいます。

具体的な業務は

  • 債務者の財産等の調査・回収・管理・換価(現金化)する
  • 換価した財産を債権者に平等に分配する
  • 免責を認めても問題ないのか、調査する

などが挙げられます。

この記事では、破産管財人の役割、どのような権限、目的をもって調査を行うのか、さらにはそこで発生する費用についても詳しく説明していきます。

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目次

自己破産手続きにおける破産管財人とは?

自己破産手続きは、申立人(債務者)の債務を免除すると同時に、一定の財産を処分・換価(現金化)し、債権者に平等に分配する手続きでもあります。

この所有する財産を管理、回収し、売却してお金に換える役割を担うのが、破産管財人です。

破産法では「破産手続において破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する者」(同法2条12号)と定義されています。

また、申立人が免責不許可事由(自己破産が認められない事由)に該当していないかどうかを調査する権限も有しています。

このように大きな役割・権限を有しているため、破産管財人は破産事件について経験豊富な弁護士の中から、裁判所によって選任されます。

以下、その内容について詳しく解説していきます。

破産管財人はどうして必要なの?

自己破産は、債務者にとっては債務の返済が免除される点で利点の大きい制度であるものの、債権者にとっては貸金等の回収が基本的に出来なくなってしまう点で損失の大きい制度です。

そのため破産管財人は、裁判所の代理人として、公正、中立の立場で債権者と債務者の、両者の利害を調整するために、必要不可欠な存在となっています。

主な役割は以下のとおりです。

  • 債権者の保護

    上記条文にある「債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図る」とは、債権者に対して、平等かつ公平に、少しでも多く債務者の財産を調査、管理、換価し、これを分配することが、大きな役割となります。

  • 破産者の監督と生活再建

    破産者、すなわち自己破産を申告した人は、なぜ自己破産に至ったのか、その経緯について十分に調べる必要があります。

これは、自己破産の要因が、ギャンブルなどの免責不許可事由(借金返済を免除することができない理由として法律が定めるもの)に当たる原因による可能性もあるからです。

ただ、債権者の保護のためだけが、破産管財人の目的ではなく、上記条文にあるように、債務者(破産者)の経済生活再生の機会確保を図ることも、目的となります。

破産管財人が選任される管財事件とは?

自己破産の手続きには、「管財事件」「同時廃止(事件)」「少額管財事件」の3つがあります。

管財事件
管財事件とは、破産管財人が裁判所から選任される破産手続きをいいます。
自己破産手続きの基本系であり、法人・個人も自己破産は、原則として管財事件として進められます。
※ちなみに、ここでいう「事件」とは「手続き」を意味します。

同時廃止(事件)
一方、同時廃止は、破産手続きの開始と廃止(終了)を同時に行う手続きです。
破産者の財産を換価処分しても、債権者に配分できる財産がない場合等に適用されるもので、破産管財人も選任されません。
破産法上、「財産財団をもって支弁するのに不足すると認めるとき」は、同時廃止となることが定められています(同法216条1項)。
※ただし、法人の破産では、債権者などの利害関係者が多く、財産調査も多岐に渡るため、原則認められていません。

少額管財事件
管財事件のうち、裁判所に納付すべき予納金(自己破産の申告に必要な手数料など)が少額で済むようにした制度を「少額管財」といいます。
少額管財は、個人や零細企業が自己破産の申立をしやすくすることを目的としています。
また、予納金が少額のため、手続きも簡易、迅速になるという特徴があります。しかし、この制度は破産法で定められているものではなく、すべての裁判所が運用しているわけではありません。

このうち、破産管財人が選任されるのは、裁判所が「管財事件」または「少額管財事件」と判断したときです。

管財事件・少額管財事件と判断されるのは、

  • 20万円以上の財産、または33万円以上の財産を所有している
  • 借金の理由がギャンブルや投資など免責不許可事由に該当する

ようなケースです。

2020年の調査(日弁連破産事件および個人再生事件記録調査)によると、破産事件のうち、

  • 同時廃止は68.55%
  • 管財事件または少額管財事件は26.13%

となっています。

3種類ある自己破産手続の違いや判断基準については、以下の記事を参考にしてください。

破産管財人は誰が・いつ選任する?

破産管財人は、債務者が自己破産を申立てをした裁判所が破産手続きの開始決定と同時に選任します。

ただし、実務では候補者との面接や打ち合わせなどを経て選任されることもあります。

また、破産手続きの開始決定は、申立に対して不備がないか、支払不能や債務超過といった破産手続き開始が認められる要因があるかどうかなどで、判断されます。

この際、債権者に配当できるような財産がある(またはその可能性がある)、また免責に関わる調査の必要があると判断されれば、管財事件となり、裁判所の代理人として破産管財人が必要となるのです。

破産管財人は原則、裁判所の管轄にある法律事務所の弁護士が選任されます。

自己破産手続きの流れは以下の記事で詳しく解説しています。

破産管財人がもつ権限とは?

破産管財人は裁判所により選任され、裁判所の監督のもと、中立、公正な立場で破産手続きを進めることがその役目となりますが、それを遂行するために、破産管財人としての権限が法律上、許されています。

管財人に許された権限は大きく分けて、以下の3つとなります。

  • 財産の管理・処分をする権限
  • 郵便物を閲覧できる権限
  • 書類や物件などを調査する権限

これらは基本的には、裁判所の許可や指示が必要となりますが、許可があれば破産管財人の権限となります。

以下、それぞれの権限について、破産法の条文とともに解説していきます。

1.財産の管理・処分をする権限

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破産法78条1項

破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属する。

債権者により多くの資金を配当できることを目的として、破産管財人は破産財団の管理、処分を専属的に行う権利を有します。

「破産財団」とは、債務者の財産のうち、債権者に配当される原資となる、破産管財人が専属的にその管理処分を行う権利のある財産を意味します。

対して、自己破産時に破産人が手元に残すことのできる財産を「自由財産」といい、これは破産管財人により管理、処分はされません。

2.郵便物を閲覧できる権限

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破産法82条1項

破産管財人は、破産者にあてた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができる。

破産管財人が選任されると、その後、破産者に届く郵便物はすべて破産管財人宛に届くことになり、破産管財人は届いた郵便物の内容を確認することができます。

その目的は、財産の申告漏れがないか、破産者が故意に財産を隠したりするようなことがないかをチェックするためです。

一覧表に記載のない債権者の有無の確認も行います。また、事前に報告がなかった財産関連の郵便物が届いた場合、破産者はそれについて説明をしなければいけません。

一方、破産者にとって手元にないと生活等に支障の出る郵便物に関しては、破産管財人に問い合わせをし、受け取りに行くことができます。たとえば、水道光熱費や税金の納付書、就活中であればそれに関する通知書などです。

3.書類や物件などを調査できる権限

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破産法83条1項

破産管財人は、第四十条第一項各号に掲げる者及び同条第二項に規定する者に対して同条の規定による説明を求め、又は破産財団に関する帳簿、書類その他の物件を検査することができる。

破産管財人には、調査の実効性を保つため、各種の調査権限が与えられています。

そのひとつが、上記条文の前半にある「説明請求権」です。

説明義務者として規定されているのは、破産者やその代理人、破産者が法人であればその取締役や監査役人などです(破産法40条1項)。

しかし、説明だけでは財産や負債に関する正確な情報を得られない可能性もあります。

そのため、上記条文の後半にあるように、破産管財人は破産財団に関する帳簿、種類、その他の関係する物件を検査することができるものとされています。

この権限は「帳簿等の検査権」と呼ばれています。

破産管財人の業務や調査内容とは?

破産管財人は、法的に認められた権限をもって、債権者により多くの資金を配当することを目指します。

そのために、実際に行う業務は、主に次の4つとなります。

  • 破産者との面談
  • 破産者の財産を調査・換価(現金化)
  • 債権者への配当
  • 免責調査(破産を被った経緯・原因の調査)

以下で詳しく解説していきます。

管財人の職務内容については以下の記事でも詳しく解説しています。

破産者との面談

破産管財人が最初に行う業務が、破産者との面談です。

この場には、破産者が破産申立を依頼した弁護士も同席できます。

面談で破産者が質問されることは、主に以下の3点です。いずれも破産手続きを進める上で重要な内容となります。

  • 収入はどのくらいか?
  • 所有している財産の内容や価額はどのくらいか?
  • 借金をつくってしまった理由は?

面接時間は通常30分程度ですが、事案の内容や管財人のキャラクターにより10分程度で終わることもあれば2時間超に及ぶこともあります。また、、免責に関わる調査(後ほど詳しく説明)も必要となるため、面談が複数回行われる場合もあります。

破産者の財産を調査・換価(現金化)

破産手続きとは、いいかえれば「破産者の財産を処分し、現金に換える」手続きです。

したがって、破産管財人は破産者の財産を調査し、処分すべき財産は破産財団として、換価します。

処分の対象となる主な財産は、以下のものがあります(破産法34条)。

  • 99万円を超える現金
  • 残高の合計が20万円を超える預貯金や有価証券
    …預貯金は現金とは分けて扱われることもあります。また、暗号資産も処分対象となります
  • 生命保険等の解約返戻金
    …合計が20万円を超える部分。基本的には、解約して現金化することとなります。
  • 支給見込額の8分の1相当額が20万円を超える退職金(在職中の場合)
    …支給見込額の8分の7は自由財産となる。
  • 不動産
    …土地、建物。住宅ローンが残っている場合は、破産管財人が金融機関の許可を得て売却処分(任意売却)するか、金融機関が競売にかけることもある。
  • 売掛金・貸付金
    …通常破産管財人によって回収される。
  • 自動車・バイク
    …ローンの支払いが残っている場合は、所有権保留を設定し、売買代金の担保となる。
  • 美術品、貴金属、高級家具やブランド品など
    …価値が20万円を超えていると処分対象になります。

自己破産でなくなるものは、以下の記事で詳しく解説しています。

一方、処分されない財産(自由財産)としては、以下のものが該当します。この財産についても破産法34条に明記されています。

  • 新得財産
    …破産手続き開始決定後に取得した財産
  • 差押禁止財産
    …破産者の生活に必要不可欠なもの(衣服、寝具、家具、台所用品など)、破産者の職業、業務に欠くことのできないもの、など
  • 99万円以下の現金
  • あらかじめ自由財産の拡張が認められているもの(裁判所によって異なる場合がある)
    …残高の合計が20万円以下の預貯金、見込額の合計が20万円以下の生命保険等の解約返戻金、支給見込額8分の1相当額が20万円以下の退職金、など
  • 裁判所に申立をして自由財産の拡張が認められた財産
  • 破産管財人が破産財団から放棄した財産

処分対象となる財産は破産管財人によって換価されますが、要する期間は破産手続きの開始から3〜6ヶ月です。ただし、不動産は1年程度かかる場合もあります。

自由財産については以下の記事でも詳しく解説しています。

債権者への配当

破産管財人は財産の調査後に、裁判官、債務者、弁護士(申立代理人)が出席する債権集会で、申立人の財産、収支内容、免責の調査結果について報告をします。

出席者との質疑応答も可能ですが、一般的には5分程度で終了します。

その後、報告会を経て、債権者への配当手続きを行います。

ただし、その前に配当よりも法律上優先順位の高い、税金や破産者が支払うべき従業員の給料などがあれば、それを完済してから配当します。

債権調査などで確定した債権額に応じて、公正に比例配分をして支払います。

免責調査(破産に至った経緯・原因の調査)

破産管財人は、破産人の借金、財産について調査するとともに、「免責不許可事由」の有無についても調べます。

用語集 免責不許可事由とは?

自己破産において借金の返済義務を免除(免責)することを認めないとして法律が定める事実のこと。破産法252条1項に定められています。

具体的には、以下のようなものが該当します。

  • ギャンブルや過大な浪費が原因で借金をした
  • 意図的に財産を隠し、自己破産を申し立てた
  • 返済する意思がなく、自己破産を前提として借金をした
  • 特定の債権者にだけ返済を行った(偏頗弁済〈へんぱべんさい〉)
  • 裁判所や破産管財人への説明を拒んだ、虚偽の説明をした
  • 過去7年以内に免責を受けたことがある     など

免責不許可事由については以下の記事でも詳しく解説しています。

ただし、免責不許可事由に該当する点があっても、裁判所の判断で免責を許可する「裁量免責」という制度があります(破産法252条2項)。

裁量免責となるには、今後二度と借金を繰り返さないという意思が伝わる態度、行動が必要です。

たとえば、裁判所や破産管財人から反省文の提出を求められれば早急に提出をする、破産管財人との面接で誠実に対応するといったことが必要となります。

裁量免責については以下の記事でも詳しく解説しています。

破産管財人に支払う費用はどのくらい?

自己破産の申出を行う場合、破産者は手続き費用として裁判所に「予納金」を支払います。自己破産の予納金としては、以下のようなものがあります。

●自己破産の予納金とその金額例〈東京地方裁判所立川支部の場合〉
申立手数料(収入印紙代) 1,500円
予納郵便切手代 3,630円
官報公告費 18,543円(同時廃止事件の場合11,859円)
引継予納金 同時廃止=なし
管財事件=約50万円〜
少額管財=約20万円

(※)各費用は裁判所によって異なる場合があります。
出典 : 東京地方裁判所立川支部『破産・個人再生事件の手続き費用一覧』

上記予納金のうち、引継予納金が破産管財人の報酬となります。

引継予納金は、少額管財で約20万円です。

管財事件(特定管財)では債務額によってその額は異なります。

東京地裁の場合、負債額の合計が5,000万円未満ならば50万円、5,000万円以上〜1億円未満であれば80万円1億円以上〜1億5,000万円未満で150万円となっています。

自己破産にかかる費用については以下の記事で詳しく解説しています。

自己破産の相談は弁護士へ

自己破産は、借金が全額免責になるという点が大きな特徴で、返済困難な場合の最終手段であることは確かです。

しかし、破産管財人が選任され、管財事件となると、破産管財人の報酬=費用が発生します。

また、破産管財人は財産の調査、換価、さらには免責を認めるかどうかも調べます。その間、破産者の精神的負担、不安も小さくありません

したがって、自己破産を検討している場合、まずは弁護士に相談することをおススメします。

そのメリットは、少額管財にできる可能性があるということ。

また、自己破産以外の解決方法も示してくれるからです。以下で詳しく見ていきましょう。

自己破産については以下の記事で詳しく解説しています。

少額管財にできる可能性がある

自己破産が管財事件となった場合、それが少額管財となれば、先に説明したとおり、その費用は大きく軽減されます。

しかし、少額管財となるには一定の要件をクリアする必要があります。

そのひとつが、破産者が破産の申立を弁護士に依頼しているということです(他に、破産手続きが3ヶ月程度で終了する、債権者が50社未満、など。裁判所の運用基準によって要件は異なります。)。

代理人として弁護士に依頼することで、その後の調査や手続きがスムーズに進むことが期待できるためです。

ただし、少額管財は法律に定められた制度ではなく、あくまで裁判所が運用しているもの。全国すべての裁判所で、少額管財を運用しているわけではありません。

管財事件については以下の記事で詳しく解説しています。

家や財産を失いたくない場合などは別の借金解決方法を示してくれる

借金問題は自己破産だけではなく、別の解決方法もあります。それが「任意整理」と「個人再生」です。

任意整理とは?
主に今後発生する借金の利息部分をカットして、残りの元本部分を3〜5年かけて分割で返済するというもの。

元本は減りませんが、返済の負担は軽減されます。

また、裁判所を介さず手続きをするため、家族や勤務先に知られる可能性は、自己破産や個人再生と比較して低いでしょう。

また、住宅や自動車のローンが残っていても、債務整理の対象から外す(ローンを払い続ける)ことで、没収されることもありません。

ただし、借金の減額や支払い方法については、債権者と直接交渉する必要があります。

任意整理については以下の記事で詳しく解説しています。

個人再生とは?
裁判所を介して、借金そのものをおよそ5分の1〜10分の1に減額し、残債を原則3年間の分割で支払うことで、問題解決を目指す手続きです。

自動車などの財産は基本的に換価する必要がなく、住宅ローンが残っていても特例を活用することで、住み続けることができます。

また、自己破産のような免責不許可事由がないため、ギャンブルや浪費による借金でも気兼ねなく利用できます。

個人再生については以下の記事で詳しく解説しています。

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債務整理の実績・経験が豊富な弁護士であれば、残したい財産を考慮しつつ相談者の状況に応じて借金問題の解決方法を提案してもらえます。

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監修者情報
監修者:弁護士法人・響 弁護士
宮澤 謙太
弁護士会所属
第二東京弁護士会所属(第60942号)
出身地
埼玉県
出身大学
一橋大学法科大学院
保有資格
弁護士
コメント

[実績]
43万件の問合せ・相談実績あり
[弁護士数]
43人(2023年2月時点)
[設立]
2014年(平成26年)4月1日
[拠点]
計7拠点(東京、大阪、香川、福岡、沖縄)
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