不当利得返還請求権とは、本来自分にあるべき利益(不当利得)が相手にあるとき、これを返すよう求める権利をいいます。
不当利得に当たるのは以下のようなものです。
- グレーゾーン金利に係る貸付けで発生していた過払い金
- 一部の相続人によって遺産分割前に使い込まれていた相続財産
- 過払いされた賃金
- 売買契約の解除後に未返金になっている料金
お金ではなく、家や絵画・漁獲物などが不当利得となることもあります。
不当利得返還請求権の行使をするには、不当利得が生じていた証拠を集めたり、交渉や訴訟を進めたりする必要があり、スムーズに行うには法的な知識が必要といえるでしょう。
不当利得返還請求を考えたら、まず弁護士に進め方などを相談するのがよいでしょう。
過払い金返還請求については、弁護士法人・響の無料相談をご利用ください。
-
過払い金について無料相談する
- 何度でも
相談0円 - 24時間
365日受付 - 全国対応
- 何度でも
目次
不当利得返還請求権とは?
不当利得返還請求権とは、本来自分にあるべき利益が相手(受益者)にあるとき、これを返すよう求める権利です。
(不当利得の返還義務)
第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
不当利得とは何かについては、次の項目で解説します。
不当利得とは?具体例を挙げて解説
不当利得とは、本来自分にあるべき利益が、法律上の原因なく相手(受益者)にあることにより、自分が損失を受けている状態をいいます。
不当利得が成立するための要件を解説し、具体例を紹介します。
不当利得となる要件は4つ
上で紹介した民法703条に基づいて、不当利得返還請求権が生じる要件は以下の4つです。
- 受益者が他者の財産または労務により利益を受けたこと
- 他者に損失が生じたこと
- 受益と損失との間に因果関係があること
- 受益者の利得について法律上の原因がないこと
それぞれについて、詳しく解説します。
受益者が他者の財産または労務により利益を受けたこと
1つ目の条件は、受益者が他者の財産や労務によって利益を受けたことです。
単純な例を示します。
- Aさんのお金がBさんに渡ったことでBさんのお金が増えた
Bさんにとっては「お金が増えた」ことが利益です。
もちろん、これだけでは不当利得にはならず、他3つの要件を満たしている必要があります。
他者に損失が及んだこと
次の要件が、他者に損失が生じることです。
上の例では、「Aさんのお金が減る」というのが損失に当たります。
損失を埋め合わせて不公平をなくすという不当利得制度の目的から導かれる要件です。
受益と損失の両者に因果関係があること
3つ目は、利益と損失との間の因果関係です。
上であげた例では、Bさんのお金の増加の理由が、Aさんのお金が渡ったことにあることが明確です。
逆に、Aさんのお金がBさんに渡ったことが明確に示せない場合、不当利得の要件を満たさないと判断されるケースもありえます。
利得について法律上の原因がないこと
最後の条件が、法律上の原因なしに利益を得ることです。
「法律上の原因」とは、利益を得る法的裏付けを意味します。
- Aさんのお金がBさんに渡ったことでBさんのお金が増えた
この場合において、AさんがBさんにお金を渡すという内容の贈与契約や合意といった法的裏付けがない場合、Bさんは不当利得を得ていたということになります。
不当利得の例
実社会でよく見られる、不当利得の例は次の4つです。
- グレーゾーン金利に係る貸付けで発生していた過払い金
- 一部の相続人による遺産分割前の相続財産の使い込み
- 過払いされた賃金
- 売買契約の解除後に未返金になっている代金
1つずつ解説します。
グレーゾーン金利に係る貸付けで発生していた過払い金
かつて行われていた、グレーゾーン金利での貸付けによる過払い金は、不当利得に当たりうるといえます。
消費者金融やクレジットカード会社などの貸金業者が受益者となります。
グレーゾーン金利とは、利息制限法の上限金利(15~20%)と、かつて存在した出資法の上限金利(29.2%)の間の金利を指す俗称です。
グレーゾーン金利には刑事罰が課されておらず、グレーゾーン金利貸付をしている貸金業者は2007年頃までは少なくありませんでした。
グレーゾーン金利については以下の記事で詳しく解説しています。
グレーゾーン金利での貸付けによる過払い金は、次の2つを満たし、不当利得となります。
- 利息制限法に反する点で「法律上の原因」がない
- 借主に損失を与えつつ貸金業者に利益をもたらす
なお、2010年に出資法は改正されており、現在グレーゾーン金利での貸付けは行われていません。
過払い金の仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。
一部の相続人による遺産分割前の相続財産の使い込み
一部相続人による遺産分割前の相続財産使い込みも不当利得に当たりうる行為です。
相続人が複数いる場合、遺産分割が整わない限り、相続財産は全相続人の共有となるため(民法898条)、原則としてこうした行為は認められません。
相続財産使い込みとしては、主に以下のような行為が問題となります。
- 預貯金の引き出し
- アパート賃料の横取り
- 生命保険解約返戻金の受け取り
- 不動産や株式の売却
相続財産の使い込みは、遺産分割という「法律上の原因」なしに相続財産を得る一方、他の共同相続人の相続分を害するという点で不当利得となります。
過払いされた賃金
会社の計算違いによる過払い賃金は、従業員の不当利得になります。
過払い賃金は、会社と従業員間で締結された雇用契約に係る給与規程に沿わない点で「法律上の原因」のない賃金であり、従業員が利益を得つつ会社に損失を与えるからです。
この場合、会社に計算違いについての過失があっても、不当利得になります。
すなわち、不当利得制度の趣旨が、利得者と損失者の利益の均衡を図る点にあり、本件において会社の過失の有無は、不当利得の要件と関係がないからです。
売買契約の解除後に未返金になっている代金
売買契約解除後に売主の手元に残っている代金は、売主の不当利得です。
たとえば、バイクの売買契約を交わした後、買主が代金を支払ったのに売主がバイクを渡さないため買主が契約を解除すると、売買契約はなかったことになります。
つまり、「法律上の原因」が消滅することになるのです。
よって、売主が持つバイク代金は「法律上の原因」なく売主に渡り、売主の利益になりつつ買主の損失となるので、不当利得に当たります。
不当利得返還請求で何ができる?請求可能な範囲はケースにより異なる
不当利得であることを理由に返還を請求できるものは、相手の状態に応じ、次のとおりとなります。
- 相手が善意の場合:現存利益
- 相手が悪意の場合:受けた利益・利息・損害賠償金
それぞれ解説します。
相手が善意の受益者の場合は現存利益を請求可能
善意の相手には、現存利益の返還を請求できます。
不当利得における「善意」とは、「法律上の原因」がないことを知らないことです。
「現存利益」とは、与えたそのもの、または形を変えて残っているものをいいます。
たとえば、絵画の取得が不当利得になるときの現存利益は、次のとおりです。
- 絵画が残っていれば、絵画そのもの
- 絵画が売られていれば、絵画の相場価格(市場での通常価格)
善意の受益者が絵画を不当利益として返還する場合、たとえ絵画に傷がついていても、修復せずそのまま返せば足るのが原則だといえます。
修復までさせることは、過分の負担となり、不公平と判断されるためです。
相手が悪意の受益者の場合は利息・賠償を請求可能
不当利得における「悪意」とは、「法律上の原因」がないことを知っていることです。
悪意の相手には、次の3つを請求できます。
- 相手が受けた利益(利益を受けた時点における価値)
- 返還までの利息
- 損害賠償金
上記の絵画の例であれば、悪意の受益者が絵画を返還する際に傷がついていた場合、修復を求めることができるといえます。
また、上でふれた過払い金返還請求においては、過払い金に加え、返還日までの利息を貸金業者側に請求できることが多いでしょう(※)。
これは、貸金業者はグレーゾーン金利での貸付けが違法であると認識していた可能性が高いため、悪意の受益者と認められるケースが多いためです。
※ 必ずしも利息を含めて過払い金が返還されるわけではありません
不当利得返還請求権の時効に注意!民法改正での変更点を解説
2020年4月1日以降に発生した不当利得返還請求権の時効は5年もしくは10年です。
時効の起算日、2020年3月31日以前に生じていた不当利得返還請求権の時効の考え方を詳しく解説します。
2020年4月1日以降の不当利得返還請求権の時効は原則5年もしくは10年
不当利得返還請求権には消滅時効があります。
消滅時効とは、時の経過によって権利が消滅する制度です(民法166条)。
2020年4月1日以降に生じた不当利得返還請求権は、次のどちらか先に経過した時点で時効を迎え、消滅します。
- 不当利得返還請求できることを権利者が知ったときから5年(主観的起算点)
- 不当利得返還請求できるときから10年(客観的起算点)
2020年4月1日は、改正民法が施行された日です。
2020年3月31日以前に生じた不当利得返還請求権の消滅時効については、次に解説します。
借金の消滅時効については以下の記事で詳しく解説しています。
旧民法での不当利得返還請求権の時効は原則10年
2020年3月31日以前に生じた不当利得返還請求権の消滅時効期間は、請求できるときから10年です。
2020年3月31日以前に生じた債権の消滅時効期間については旧法にのっとるとの規定があるため、改正後の民法に追加された「主観的起算点」は適用されません(改正民法 附則10条4項)。
不当利得返還請求権を行使するには?過払い金返還請求の場合を解説
不当利得返還請求で求められるものは多岐にわたりますが、ここでは過払い金の取り戻しについて解説します。
不当利得返還請求で過払い金を取り戻す流れは、次のとおりです。
- 取引履歴の開示請求をして引き直し計算を行う
- 消費者金融など不当利得の受益者と和解交渉を行う
- 和解できなかった場合は管轄裁判所に訴訟を提起する
- 和解・判決後に過払い金が返還される
それぞれ解説します。
取引履歴の開示請求をして引き直し計算を行う
まず不当利得である過払いがあった証拠として、貸金業者から取引履歴を取り寄せます。
取引履歴とは、日付・借入額・利率・利息額・返済額が書かれた、借入返済の経過記録です。
取り寄せは、電話・店舗窓口・Webサイトでできます。
次に、借入元金をもとに利息制限法上の利息を計算します。これは引き直し計算と呼ばれます。
「支払い利息>引き直し利息」なら「支払い利息-引き直し利息」が過払い金となります。
100万円借りて、1年後に“元金100万円+利息25万円”を支払ったときの過払い金は?
元金100万円の利息上限は年15%なので、100万円×0.15=15万円が引き直し計算を行った後の利息です。
この場合、25万円-15万円=5万円が過払い金となります。
ただし、実際の過払い金は毎月の借入残高に応じて都度算出していく必要があるため、過払い金の算出方法は非常に複雑です。
過払い金の計算方法は以下の記事で詳しく解説しています。
消費者金融など、不当利得の受益者と和解交渉を行う
引き直し計算が終わったら、貸金業者に「過払い金返還請求書」と「引き直し計算書」を内容証明郵便で送ります(参考 日本郵便WEBサイト「内容証明」)。
請求書に書くのは次の項目です。
- 貸金業者の会社名と代表者名
- 借主の住所・氏名・電話番号
- 借り入れの契約番号または会員番号
- 過払い金振り込み用の借主の口座
- 「引き直し計算による〇〇円の過払い金の返還を求める」旨の文言
続いて、貸金業者との直接交渉となり(任意交渉)、交渉がまとまれば、その条件で和解書を作成します。
和解できなかった場合は管轄裁判所で訴訟を提起する
交渉を通して満足できる条件で和解できなかった場合、過払い金返還請求裁判が選択肢になります。
過払い金返還請求(不当利得返還請求)の裁判を提起する場合、管轄裁判所は以下のようになります。
過払い金額 | 相手 | 管轄裁判所 |
---|---|---|
140万円以下 | 貸金業者などの法人 | おもな営業所の所在地を管轄区域とする簡易裁判所 |
個人 | 住所地を管轄区域とする簡易裁判所 | |
140万円を超える | 貸金業者などの法人 | おもな営業所の所在地を管轄区域とする地方裁判所 |
個人 | 住所地を管轄区域とする地方裁判所 |
裁判は、取り戻せる過払い金の額が高くなる傾向がありますが、任意交渉より時間はかかります。
交渉ではある程度柔軟な態度を示すものの、裁判では徹底的に争う貸金業者もあるため、訴訟を起こすかどうかは弁護士によく相談して決めるのがよいといえます。
和解・判決後に過払い金が返還される
次の場合、貸金業者から過払い金が返還されます。
- 任意交渉で和解が成立する
- 過払い金返還裁判で原告の勝訴判決が出る
- 裁判中に和解が成立する
過払い金返還は、通常、口座振り込みとなります。
振込先は、任意交渉なら借主の口座、裁判なら弁護士事務所の口座とされることが多いでしょう。
弁護士事務所の口座に振り込まれた過払い金は、弁護士費用が差し引かれた後、借主の口座に振り込まれます。
不当利得返還請求を考える際は弁護士に相談を
自分にあるべき利益が相手にあるという不当利得の状態をなくし、自分に利益を戻す権利が不当利得返還請求権です。
不当利得返還請求をするには、相手の不当利得を証明しなければなりませんが、これには手間暇がかかります。
不当利得の相手との任意交渉は交渉に慣れていない人には大きな負担ですし、訴訟の提起も複雑な手続きが必要です。
不当利得の証明・交渉・裁判については、弁護士に頼むのが確かな方法といえるでしょう。
不当利得返還請求権については、請求できるときから10年、または請求できることを知ってから5年という時効(※)があります。
不当利得の中でも過払い金の返還請求については、弁護士法人・響で無料相談を受け付けております。
※ 2020年3月以前は原則請求できるときから10年
-
過払い金について無料相談する
- 何度でも
相談0円 - 24時間
365日受付 - 全国対応
- 何度でも