債権譲渡とは、債権者(お金を貸している側)が持つ債権(貸したお金の返還を請求する権利)をそのまま内容を変えずに第三者に移転する行為のことです。
債権譲渡通知書は、債権譲渡がされたことを債務者(お金を借りている側)に知らせる通知であり、個人にこれが届くということは、多くの場合
- 借金の滞納を続けて、いわゆるブラックリストに載った状態(信用情報に事故情報が登録された状態)になっている
- 借金回収のプロである債権回収会社からの督促が始まる
ということを意味します。
債権譲渡通知書が届いたら、以下のような対応が必要です。
- 通知書が詐欺などではないか、内容を確認
- 条件がそろえば時効の援用を検討
- 支払い義務がある請求内容であれば、譲受人の債権回収会社と返済方法を交渉
- 支払いが難しいときは債務整理を検討
とはいえ、実際に通知書が届くと、対応に迷ってしまうかもしれません。
債権譲渡通知書が届いて対処法がわからなくなった場合は、一度弁護士に相談してみることで適切な対応をアドバイスしてもらえるでしょう。
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債権回収会社とは、金融会社に代わって借金を回収する業者のことです。安易に個人で督促に対応しようとすると、減額できたはずの借金を支払うリスクがあります。
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目次
債権譲渡とは?わかりやすく解説
債権譲渡とは、債権者(お金を貸している側)が持つ債権(貸したお金の返還を請求する権利)をそのまま内容を変えずに第三者に移転する行為のことです(民法第466条1項)。
債務者(お金を借りている側)にとっては、お金を返す相手が、もとの債権者から直接取引を行っていない第三者に変わることになります。
もともとの債権者を債権譲渡人、債権を持つことになる第三者を譲受人と呼びます。

債権譲渡自体は債権譲渡人と譲受人の契約ですが、通常、債務者には債権譲渡通知書が送付され、債権譲渡の事実が知らされます。
債権譲渡についてさらに知りたい方はこちらの動画をご覧ください。
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債権譲渡の目的は資金調達や不良債権の保有リスク回避など
債権譲渡が行われる目的には、大きく分けて以下の2つがあります。
- 債権譲渡人の資金調達
- 債権譲渡人の不良債権の所有リスク回避
個人の借金に関して債権譲渡が行われるときの目的は、2つ目のものであることが多いでしょう。
借金の返済が長期にわたって滞納され、自社から再三督促しても支払いがない場合、金融機関やクレジットカード会社などの債権者は不良債権を抱えてしまうことになります。
この不良債権保有のリスクを回避するために、債権者は債権回収会社に債権を譲渡することがあるのです。
債権回収会社とは債権の管理回収を専門で行う業者であり、いわば取り立てのプロといえる会社でもあります。
なお、1つ目の目的で行われる債権譲渡は、おもにビジネスシーンで多く見られるものです。
具体的には、すぐに資金が必要な会社が自社の売掛金債権を他社に売る、もしくは自社の債務を弁済するために他の会社に対する債権を譲渡する、というように利用されているようです
債権回収会社については、以下の記事で詳しく解説しています。
債権譲渡通知書とは債権者の変更を債務者に知らせる書類のこと
債権譲渡通知書とは、債権者の変更を債務者に知らせる書類のことであり、譲渡人から債務者に対して送られます。
個人宛てのものの多くは債権回収会社に債権が移ったことを知らせる内容です。
これが送られる理由は、債権譲渡に際しては債務者対抗要件と呼ばれる条件を満たす必要があるからであり、法的な証拠とするため内容証明郵便で送られることが一般的です。
債権譲渡通知書の内容、債権譲渡通知が送られる理由について詳しく紹介します。
債権譲渡通知書の記載内容
債権譲渡通知書は「債権譲受通知」といった名前で届くこともあり、以下のような情報が記載されています。
- 宛名(債務者の氏名・住所)
- 譲渡人、譲受人の情報(社名・住所・代表者名 など)
- 債権が譲渡されたという旨の記述
- 譲渡された債権の内容(債権の額など)
債権譲渡通知書の文例は以下のとおりです。

債権譲渡通知書を送る理由は債務者対抗要件を満たすため
債権譲渡通知書を送る理由は、債務者対抗要件を満たして譲受人から債務者への取立行為を可能にするためです。
これまで書いてきたとおり、債務者の許可がなくても債権を譲渡すること自体は可能です。
しかし、譲受人が債務者に返済を求める行為をするためには「譲渡人から譲受人へ債権が譲渡された」ということを債務者に対して通知するか、債務者の承諾を得る必要があります(民法第467条1項)。
これを「債務者対抗要件」と呼び、満たされていない場合は債務者は譲受人からの請求に応じる義務はないのです。
債権譲渡通知書が届いたらどうなる?
個人で借金をしていた場合に債権譲渡通知書が届くとどうなるのかについて、時系列でまとめると以下のとおりです。
起きること | 詳細・リスク |
---|---|
債権譲渡通知書が届く | 通知書が届いた時点で、信用情報機関に事故情報が登録されている(いわゆるブラックリストに載った状態)。 |
債権回収会社から督促や取り立て・一括請求を受ける | 債権回収会社から、電話やハガキによる督促・遅延損害金を含んだ金額の一括請求を受ける。 取立ての中で「訪問予告通知書」が届き、自宅を訪問されることもある。 |
差押えの可能性が生じる | 一括請求を無視すると、裁判所から支払督促または訴状が届く。 裁判に出廷しない場合や、支払督促を無視した場合、給与などが差し押さえられることもある。 |
それぞれについて解説します。
届いた時点で信用情報機関に事故情報が登録されている(ブラックリスト状態)
債権譲渡通知書は、届いた時点ですでに信用情報機関に事故情報が登録されています(いわゆるブラックリストに載った状態)。
借り入れを行い、債権者への返済が2ヶ月以上滞ると、「延滞」の事故情報が登録されるからです。
事故情報が登録されている間は、以下のような影響が出ます。
- クレジットカードの利用、発行ができなくなる
- 金融機関や消費者金融などで新たなローンが組めなくなる
- 賃貸住宅の新規契約、契約更新ができないケースがある
金融機関などが債権を債権回収会社に譲渡した際には、信用情報に「移管終了」と記載されます。
「移管終了」も事故情報として一定期間残るため、記載されている間はローン、クレジットカードの契約などはできません。
つまり、延滞が続いて債権回収会社に債権が移り、債務者に連絡がきた段階で、クレジットカードなどが使えない状態になっているのです。

ローンなどの審査時には各企業、機関は信用情報機関で情報照会を行い、利用者の信用情報をチェックします。
日本の信用情報機関には、以下の3つがあります。
・全国銀行個人信用情報センター(KSC)
・株式会社シー・アイ・シー(CIC)
・株式会社日本信用情報機構(JICC)
ブラックリストについては、以下の記事で詳しく解説しています。
債権回収会社からの督促・取り立て・一括請求を受ける
債権譲渡通知書が届いた後は、債権者対抗要件を満たしたことから、譲受人である債権回収会社から債務者への督促・取り立てが始まります。
取立ての中で「訪問予告通知」が届き、債権回収会社の担当者が自宅を訪問する可能性もあるほか、内容証明郵便で借金の一括返済を求められるケースもあります。
内容証明郵便で借金の一括返済を求められます。
内容証明郵便は、郵送した事実及びその内容を公的に証明する郵便です。
内容証明郵便で一括請求を受けるということは、法的手段に出る前の最終通告ともいえるでしょう。
借金の一括請求までの流れは以下の記事で詳しく解説しています。
さらに、この際一括請求される金額には「遅延損害金」が加算されているため、もとの借入金よりかなり高額になっていると想定されます。
遅延損害金とは借金返済などを滞納した際にかかる損害賠償金の一種であり、延滞期間が長いほど高額になるのです。
一括請求を受けている場合、遅延損害金を算出する計算式は、以下のとおりになります。
遅延損害金=借入金額×遅延損害金利率÷365(日)×延滞日数
遅延損害金については、以下の記事で詳しく解説しています。
裁判所からの連絡も無視すると差押えの可能性も生じる
債権回収会社からの一括請求を無視し、その後の裁判所からの通知にも応じなかった場合などは、差押えに発展する可能性があります。
一括請求をしても対応がなかった場合、債権回収会社が裁判所に支払督促の申立てや訴訟の提起を行うことがあります。
これらが受理されると、裁判所から債務者宛てに支払督促または訴状が届くことになります。
訴状を無視して裁判に出廷しない場合や、支払督促やその後送られてくる仮執行宣言付支払督促を無視した場合、基本的に債権者である債権回収会社は確定判決などの債務名義を得ることになります。
支払督促については以下の記事で詳しく解説しています。
すると、債権回収会社の申立てにより、給与の一部などが差し押さえられることもありえるのです。
差押えについては、以下の記事で詳しく解説しています。
債権譲渡通知書が来た場合の対処法
債権譲渡通知書が来たら、慌てて払ってしまうのではなく、きちんと内容を確認し、場合によっては弁護士などのアドバイスを受けて適切に対処するようにしてください。
具体的な対処法は、以下のとおりです。
- 通知書と請求内容を確認する
- 条件がそろっていれば時効の援用を検討する
- 支払い義務がある債権の場合は譲受人と返済方法を交渉する
- 支払いが難しければ債務整理を検討する
それぞれについて解説します。
通知書と請求内容を確認する
債権回収会社を名乗る架空業者による詐欺は少なくありません。
債権譲渡通知書が来たら、送り主が架空業者でないか、請求内容が正しいかを念のためきちんと確認しましょう。
確認のポイントは以下のとおりです。
- 内容証明郵便で届いたか(※)
- 請求されているのが心当たりのある借金か
- 完済している借金について請求されていないか
- 多数の電話番号を連絡先として載せたり、携帯電話への連絡を求めたりしていないか
- 個人名義の口座を支払先に指定していないか
- 譲受人に「法務省認定債権回収業者加盟店」「法務省認定特別法人」「法務省認可特殊法人」といった架空の肩書きがついていないか
- 譲受人の債権回収会社が、法務省の認可を受けているか
参考:法務省:債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧
※ 内容証明郵便は日本郵便の配達員から手渡しで届けられ、押印を求められます。
もし架空業者からの請求だった場合、支払わないのはもちろん、折り返しなどでの連絡もしないようにしましょう。
連絡をしてしまうと、電話番号等の個人情報を知られてしまう可能性があるためです。
「これは自分が支払うべき借金なのかわからない」「対応すべき通知なのか判断がつかない」という場合は、法律の専門家である弁護士に相談してみるのもよいでしょう。
条件がそろっていれば時効の援用を検討する
長期にわたって返済していない借金については、消滅時効が成立しており、時効援用の手続きを行うことで返済義務をなくせる可能性があります。
消滅時効の成立に必要なのは、以下のような条件です。
- 最終取引日から5年(個人間の借金や信用金庫などからの借金の場合は10年)たっている
- 時効が更新されていない
借金の消滅時効については以下の記事で詳しく解説しています。
注意すべきなのは、時効の更新についてです。
時効成立までの間に以下のようなことがあると、時効期間のカウントがリセットされ、法律に定める期間が経過していても時効が成立しないことがあるのです。これは時効の更新と呼ばれています。
- 裁判上の請求や支払督促
- 差押え、仮差押え、仮処分
- 債務者による借金の承認
このように時効が成立しているかの判断は難しいこともあるので、迷ったら弁護士などの法律の専門家に相談してみるのもよいでしょう。
時効の中断(更新)については以下の記事で詳しく解説しています。
支払い義務がある債権の場合は譲受人と返済方法を交渉する
請求の内容が正当であり、自分に返済義務があることが確認できたら、譲受人である債権回収会社と返済方法を交渉しましょう。
請求を分割払いにすることが可能なら、返済の計画も立てやすくなるといえます。
債権回収会社との交渉に不安がある場合や、交渉時に返済できないような提案を受けた場合は、法律の専門家であり、交渉にも慣れている弁護士に相談する方がよいでしょう。
返済しやすい条件で合意できる可能性があります。
支払いが難しければ債務整理を検討する
請求された借金を自力で払えない場合、有効な選択肢となるのが債務整理です。
債務整理とは、交渉や裁判所での手続きを通して借金問題を解決する方法です。
債務整理は自分で行うことが可能なケースもありますが、弁護士などに依頼するとスムーズに進みやすいでしょう。
依頼後は「受任通知」が送付され、債権回収会社などからの督促も止まります。
債務整理にはおもに任意整理、個人再生、自己破産という方法があります。

どの方法が適しているかは、弁護士に相談して決めるとよいでしょう。
なお、借金問題を司法書士に相談することは可能ですが、司法書士に債務整理を依頼する場合、以下のような注意点があります。
- 裁判所を通した手続きを代理で行ってもらうことが難しいため、手続きの手間が増える
- 債権者1社あたり140万円以上の債務整理の案件は受けられない(司法書士法第3条)
債務整理については、以下の記事で詳しく解説しています。
債権譲渡通知書が届いたら弁護士法人・響に相談を
債権譲渡とは債権者が持つ債権を第三者に移転する行為であり、債権譲渡通知書が個人に届くということは、長期にわたって滞納した借金があり、それによるリスクが生じているということです。
債権譲渡通知書が届いたら内容をきちんと確認し、適切に対応する必要があります。
しかし、債権譲渡通知書の内容を正しく確認して対処法を決めるのは、一般の人には難しいこともあります。
対処法に迷ったら、返済方法の交渉や裁判の可能性も考え、弁護士事務所に相談するのがよいでしょう。
弁護士法人・響は相談無料なので、債権譲渡通知が届いて不安を感じたら、まずは気軽に相談してみてはいかがでしょうか。
2020年4月の民法改正での債権譲渡に関する変更点
2020年4月に民法の大幅な改正が行われ、その中で債権譲渡の「債権譲渡禁止特約」について変更がありました。
この変更によって、債務者の支払い義務が取り消しになるケースが変わっていますので、押さえておきましょう。
改正前民法では、事前に債権者と債務者の間で「債権譲渡禁止特約」が交わされていれば、債権者が断りなく債権譲渡すると原則として無効になると定められていました。
債権譲渡禁止特約とは、債権者と債務者の間で交わされる契約であり、債権譲渡を禁止にするという旨のものです。
しかし、改正後の民法においては、事前に当事者が債権譲渡禁止特約を交わした場合でも原則として「債権の譲渡は、その効力を妨げられない」と変更されたのです。
債権譲渡禁止特約によって債権者の資金調達が妨げられる例があり、債権譲渡の自由を担保した方が、経済活動にプラスの効果をもたらすと考えられるようになったためです。
このように、債権譲渡禁止特約の有無によって支払い義務がなくなるケースは少なくなりましたが、譲受人に故意または重過失が認められた場合には支払いの義務がなくなるため、債務者の立場が著しく不利になったというわけではありません。
債権譲渡と債権譲渡禁止特約について定められた改正後民法の条文は以下のとおりです。
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
4 前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。
- 債権譲渡とは、債権者(お金を貸している側)が持つ債権(貸したお金の返還を請求する権利)をそのまま内容を変えずに第三者に移転する行為です。
- 債権譲渡通知書は、債権譲渡がされたことを債務者(お金を借りている側)に知らせる通知です。
- 個人に債権譲渡通知書が届いた場合、多くの場合借金の滞納を続けて、いわゆるブラックリストに載った状態(信用情報に事故情報が登録された状態)になっているということを指します。
- 通知後は債権回収会社からの督促が始まるため、まずは通知書の内容を確認したうえで、放置せずに以下のような対応を検討しましょう。 ・時効の援用を検討 ・譲受人の債権回収会社と返済方法を交渉 ・支払いが難しいときは債務整理を検討
とはいえ、上の対応をとるにあたって、判断に迷うこともあるでしょう。 債権譲渡通知書が届いたら、一度弁護士に相談してみることで適切な対応をアドバイスしてもらえるでしょう。
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