自己破産は、裁判所の免責許可を受けてほぼすべての借金の支払いが免除される法的手続きです。
しかし、例外的に支払い義務が免責にならない債権(自己破産をする方にとっては債務)があります。
それを「非免責債権」といいます。たとえば、税金や養育費などが該当します。
- 税金(所得税や住民税など)
- 公共料金(電気代や水道代など)
- 国民健康保険料や介護保険料
- 離婚時の慰謝料や養育費
- 交通事故を起こした際の損害賠償請求権
- スピード違反の反則金 など
この記事では、非免責債権に該当するものや、実際に支払えない場合の対処法について詳しく解説していきます。
自己破産を検討している、もしくは非免責債権の支払いについてお悩みを抱えている方は、弁護士法人・響にお気軽にご相談ください。
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目次
非免責債権とは?
「非免責債権」とは、自己破産しても免責許可の効力が及ばない債権をいいます。
いい換えれば、自己破産をしても支払い義務がなくならない債権ともいえるでしょう。
では、なぜ非免責債権が存在しているのでしょうか?
そもそも自己破産の目的は、借金の返済が難しくなってしまった債務者に経済生活の再生の機会を与えることです。
とはいえ、自己破産によってすべての債務の支払い義務が免除されるとすれば、一方で、社会的な公平・公正さを失い、社会や特定の人に不利益をもたらすことにもつながります。
最たる例が、税金です。
税金は全国民が支払い義務のある債務です。支払いを免除してしまうと、結果として他の納税者への負担が大きくなってしまいます。
そうすると、社会の公平さが保てなくなります。
そのため税金は、非免責債権であることが破産法に明記されています(破産法253条1項1号)。
自己破産については以下の記事で詳しく解説しています。
非免責債権とみなされる債権とは?項目ごとに具体例を解説
非免責債権とみなされる債権(自己破産する方にとっては債務)には、たとえば以下のようなものがあります。
- 所得税や住民税
- 公共料金(電気代や水道代など)
- 国民健康保険料や介護保険料
- 離婚時の慰謝料や養育費
- 交通事故を起こした際の損害賠償請求権
- スピード違反の反則金 など
これだけでも、非免責債権とみなされる範囲の広さがわかります。破産法では、253条1項の各条文に明記されています。
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
四 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
五 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
七 罰金等の請求権
※出典:「破産法」e-Gov法令検索
これら条文について、以下に詳しく説明していきます。
債権とは、相手方に特定の行為を請求できる「権利」のこと、債務は、相手方に特定の行動をする「義務」のことです。
たとえば、Aさんが不動産仲介業者のBさんからマンションを購入したとします。
Aさんにとっては、マンションを受け取る権利が債権であり、代金を支払う義務が債務です。
また、Bさんにとっては、代金を受け取る権利が債権、マンションを引き渡す義務が債務となります。
税金や健康保険、水道料金など
税金や国民健康保険料、国民年金保険料など、公益性が極めて高い債権は、非免責債権とされています。
納税は国民の三大義務のひとつです。
税金を納める義務は、社会の公正性、納税者の公平性を保つうえで欠かせないものとして位置づけられています。
公的保障制度である健康保険料や国民健康保険料なども同様です。
ただし、電気・ガス・水道など公共料金については、下水道料金だけが非免責債権となります(上水道料金は免責される)。
これは、下水道は公衆衛生のために設けられる設備で、上水道よりもさらに公益性が高いことが理由とされています。
以下、「租税等の請求権(破産法253条1項1号)」に該当する非免責債権をまとめました。
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項目 | 非免責債権に該当する | 非免責債権に該当しない |
---|---|---|
税金 | 所得税 法人税 消費税 贈与税 相続税 市町村民税(住民税) 固定資産税 自動車税 事業税 など |
原則なし |
公的保障制度の保険料 | 健康保険料 国民健康保険料 厚生年金保険料 国民年金保険料 雇用保険料 など |
原則なし |
公共料金など | 水道料金(下水道) 保育所の保育料 公立病院の医療費 公営住宅の賃料 など |
水道料金(上水道) 電気料金 ガス料金 通信料金 など |
離婚慰謝料などの不法行為による損害賠償請求権
損害賠償の請求権は、非免責債権にあたる場合があります。
自己破産をするからといって、損害賠償請求権を免責してしまえば、他者を害する行為を助長しかねませんし、もちろん、被害者(債権者)の権利、利益を守るという目的もあり、非免責債権となっています。
ただし、非免責債権となる損害賠償請求権は、破産法により2つの要件のどちらかに該当するものに限ります。
そのうちのひとつが「破産者が悪意で加えた不法行為に基づくもの(同法253条1項2号)」です。
ここでいう「悪意」とは、単に故意にとどまらず、積極的に他人を害するという強い意識といった解釈になります。
また不法行為とは、故意や過失によって他人の権利や利益を侵害する行為をいいます。
例としては、
- 商取引の契約違反
- ネット上での過度な誹謗中傷
- 詐欺
などが挙げられるでしょう。
具体例として、離婚時の慰謝料について考えてみます。
離婚理由が不倫行為の場合、法的に「悪意」があった、すなわち意図的に配偶者を害そうとしたとは、いい難いとされています。
一方、DVやハラスメントと認められる行為が離婚原因であるなら、「悪意」があったと理解され、慰謝料は非免責債権とみなされる可能性が高いでしょう。
自己破産による離婚への影響は以下の記事で詳しく解説しています。
暴力・交通事故などで他人の生命や身体を害したときの損害賠償請求権
不法行為の損害賠償請求権が非免責債権となるもうひとつの要件は「破産者が故意または重過失で加えた生命・身体を害する不法行為に基づくもの(破産法253条1項3号)」です。
この条文では故意または重過失の解釈がポイントになります。
「故意」は相手に損害を与える意識はあったものの、上で説明しました「悪意」ほどは強くない行為。
「重過失」はあくまで法的な注意義務違反の程度が大きいものとなります。
交通事故を例に考えてみましょう。
信号無視や飲酒運転、あおり運転は「故意」か、あるいは「悪意」とみなされるケースだといえ、前述の不法行為に該当します。
一方、わき見運転や居眠り運転は、故意ではなくとも、それによるリスク、起こりうる被害の大きさを考慮すれば、「重過失」となる可能性があります。
そのため、不法行為ではないものの被害が大きすぎるため、非免責債権となります。
夫婦や親子など家族の扶養義務に基づく債権
夫婦や親子など、一定の家族間の義務についても非免責債権となります。
これに関しては、破産法253条1項4号に定められていますが、いずれも民法が規定する義務に関わる請求権となっています。
その請求権は以下の4つです。
- 夫婦間の協力・扶助の義務(民法752条)
- 婚姻費用(夫婦間の日常の生活費)の分担(民法760条)
- 子の監護に要する費用(主に教育費)の分担(民法766条)
- 親族間の扶養義務(民法877条〜880条)
実際に発生する請求権としては、2に該当する別居中の婚姻費用、33に該当する離婚後の養育費などがあります。
自己破産後の養育費については以下の記事で詳しく解説しています。
個人事業主が支払う従業員への給与などの請求権
個人事業や商店経営など、従業員を雇っている個人が破産した場合、その従業員の未払い給与、預かり金、その他、雇用関係の債務については非免責債権となります(破産法253条1項5号)。
「未払い給与」には退職金も含まれます。
また、「預かり金」とは、社内積立などが該当します。
目的は、労働者保護にあります。
ただし、法人が破産した場合、従業員の請求権は非免責債権にはなりません。
法人破産については以下の記事で詳しく解説しています。
破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
破産者が知りながら、債権者名簿に記載しなかった請求権は、非免責債権となります(253条1項6号)。
「債権者名簿」とは、裁判所に自己破産の申立てをする際に提出する債権者一覧表のこと。
この条文では、単に記載漏れをしたのではなく、「破産者が知りながら」という場合に限定しています。
したがって、故意に特定の債権者を外すと、その債権者の借金は免責にはなりません。
なぜなら、公平な債権者への配当が実行できなくなるからです。
自己破産で債権者漏れをした時の影響については以下の記事で詳しく解説しています。
罰金や訴訟費用などの請求権
非免責債権のひとつに「罰金等の請求権」があります(破産法253条1項7号)。
罰金等の請求権は、罰金の他に科料、刑事訴訟費用、追徴金、過料なども該当します。
罰金と科料は、ともに刑罰、つまりは罪を犯した場合に科される金銭です。
金額が
- 1万円以上であれば罰金
- 1,000円以上1万円未満だと科料
と、呼び方が変わります。
過料は、刑事罰以外に強制的に取られる金銭です。
行政上の規律違反、ペナルティのようなもので、路上喫煙禁止区域での喫煙をした際に取られる金銭などが該当します。
また、スピード違反などの交通違反による反則金も、過料と同じ行政上の処分という扱いです。
追徴金は犯罪に使用されたり、犯罪によって手に入れた物品について、本来は没収すべきものですが、それができない場合に代わりに支払わせる金銭です。
刑事訴訟費用は、刑事訴訟をする際に発生する費用のことです。
非免責債権が払えない! 対処法は3つ
自己破産する段階にある方では、非免責債権が払えない状況に置かれていることもあるでしょう。
非免責債権が払えないときの対処法は次の3つです。
- 税金などは役所に相談する
- 養育費は減額請求が可能
- 非免責債権の時効を待つ
非免責債権は自己破産をしても免責にならない債権です。
そもそも、借金を返済するめどが立たないために、自己破産を検討している人にとっては、大きな問題です。
「税金をずっと滞納すれば、給与が差し押さえられる」
「健康保険料が未納だと、健康保険が利用できなくなる」
そんな不安を抱くかもしれません。
以下より対処法を詳しく解説します。
税金などは役所に相談する
市区町村の相談窓口を訪れて、実際に相談をするのもひとつの対処法です。
支払方法を分納(分割払い)に変更したり、延滞金の免除など、柔軟に対応してくれる可能性があります。
納税などがきびしいと思ったら、とにかく早めに相談に行くことです。
特に督促状が届いてるにもかかわらず、数ヶ月放置しているのであれば、かなり遅い行動となります。
「現在は生活が苦しいが何とか返済していく」という意思を伝えるためにも、早い行動を心掛けましょう。
養育費は減額請求が可能
養育費に関しては、まずは当事者間で話し合います。
そこで合意できれば、減額が可能です。
合意に至らなければ、家庭裁判所に申立てを行います。
裁判所の調停委員が間に入り、調停を行いますが、それでも合意ができなければ、審判に移行します。
裁判では、自身と相手の年収や主張、置かれている状況などから総合的に判断され、妥当な金額が決められます。
裁判になったとしても養育費が減額できるかどうかは、ケースバイケースではあるものの、どうしても生活に苦しい状態であれば元配偶者に相談してみてはいかがでしょうか?
非免責債権には時効がある
税金には制度上、時効があります。
時効が成立すれば、納税義務も消滅します。また、損害賠償の請求権にも時効はあります。
時効を迎えるまでの期間は、税金の種類によって異なります。
非免責債権 | 時効に要する期間 |
---|---|
所得税、住民税、固定資産税、消費税など | 原則、納期限から5年 |
国民健康保険料 | 納期限から2年 |
不法行為に基づく損害賠償請求権 | 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき または、不法行為の時から20年間行使しないとき |
生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権 | 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないとき、または権利を行使することができる時から20年 |
ただし、時効は容易に成立するものではありません。
その間、督促状や催告書が届けば、時効は延長されたりします。
税務署や自治体が税金の滞納を長く放置しておくことは考えにくいでしょう。
時効を期待して、未納を続けることは、かえって自身を苦めます。
延滞税も発生し、最終的に差押えとなる可能性もあるからです。
借金の消滅時効については以下の記事で詳しく解説しています。
自己破産の相談は弁護士へ
自己破産は借金を免責してもらうことで、生活の再生を目指す法的手続きですが、すべての債務の支払いが免除される、というわけではありません。
安易に自己破産を申請することで、かえって再生の選択肢を狭める可能性もあります。
非免責債権がどの程度あるのか?
最初にここを明確にしておくことが、自己破産をするうえでは重要です。
しかし、非免責債権かどうかの判断は、とくに交通事故などの損害賠償請求では専門知識がないとその判断が難しいでしょう。
そこで、頼りになるのが、自己破産案件の解決に豊富な実績のある弁護士事務所です。
無料相談を受け付けている事務所もあるので、まずは気軽に相談してみましょう。
非免責債権に関するよくある質問
非免責債権に関してよく聞かれる質問をまとめました。
非免責債権と免責不許可事由の違いとは?
「免責不許可事由」とは、自己破産を申し立てても、一定の事由があることで免責そのものが認められないことをいいます。
対して、非免責債権は、免責の可否とは関係なく、免責されないと決められている債権のことです。
「免責不許可事由」は、たとえば、以下のようなものです。- 財産の隠匿行為、損壊行為
- 価値を不当に減少させる行為
- ギャンブル、浪費が要因による負債 など
言葉そのものは「非免責債権」とよく似ていますが、その内容は大きく異なります。
免責不許可事由については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
非免責債権を優先して返済すると偏頗弁済になる?
自己破産を検討している方の中には、「偏頗弁済(へんぱべんさい)があると自己破産が無効になる」と耳にした方もおられるかもしれません。
非免責債権は自己破産の可否に関わらず、支払わなくてはなりません。
したがって、免責不許可事由にはあたりません。
仮に自己破産前に優先して税金を支払ったとしても問題はありませんので、安心してください。
そもそも偏頗弁済とは、特定の債権者を優遇して借金の返済や担保の提供を行う行為です。
たとえば、以下のようなケースは偏頗弁済とみなされる可能性があります。
- 自己破産の申立てを行ったものの、以前から世話になっている親戚の借金だけは返したいと考え、返済した
- 顧客が自己破産の申立てをしていることを知ったローン会社から、先にローンを一括返済してほしいと言われ、完済した
こういった行為は、「破産者の財産は、債権者に対して、その債務額の大きさ等に応じて配分される」という、債権者平等の原則に反します。
そのため偏頗弁済は、免責不許可事由に該当します。債務者から見れば、自己破産そのものが無意味になってしまう、それほど大きな行為なのです。
偏波弁済については以下の記事で詳しく解説しています。
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