- 弁護士会所属
- 第二東京弁護士会 第54634号
- 出身地
- 熊本県
- 出身大学
- 大学院:関西大学法学部 同志社大学法科大学院
- 保有資格
- 弁護士・行政書士
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- 理想の弁護士像は、「弱い人、困った人の味方」と思ってもらえるような弁護士です。 そのためには、ご依頼者様と同じ目線に立たなければならないと思います。そのために日々謙虚に、精進していきたいと考えています。
期限の利益とは、借金などの債務を負った人が、期限が到来するまで返済をしなくてもよいという権利(利益)のことです。
債権者は期限がくるまで請求できず、債務者にとっては債務に猶予が生まれるため利益となります。
一方で、返済滞納などがあると期限の利益を喪失し、一括返済を求められる場合があります。
期限の利益を喪失した場合、対処法は以下の3つです。
- 一括返済をする
- 債権者と交渉する
- 債務整理をする
期限の利益の喪失後は、放っておくと差押えや訴訟に発展する可能性もあります。
そのため、できるだけ早く対処する必要があるでしょう。
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目次
期限の利益は期日まで返済しなくていいという利益
期限の利益は、債務者(お金を借りた人)が、期限が到来するまで返済をしなくてもよいという権利(利益)のことです。
これは、借金の分割返済が可能になる根拠となります。
期限の利益については、民法第136条の1項に定められています。
(期限の利益及びその放棄)
第百三十六条 期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
たとえば、100万円の借り入れを行なった債務者が、債権者(お金を貸した側)との間で「3ヶ月後までに100万円を返す」という合意をした場合を考えてみましょう。
債権者は、この合意に基づき、自分の事情で100万円がすぐに必要になったとしても、3ヶ月後までは債務者に対して返済を強制することはできません。
合意によって、債務者の期限の利益が守られているのです。
しかし、債務者の事情や行動によって期限の利益が失われれば(期限の利益の喪失)、債権者がすぐに返済をしなければならなくなることがあります。
この後に続けて解説します。
期限の利益の喪失とは?何が起きる?
期限の利益の喪失とは、文字通り期限の利益が失われることです。
返済滞納などで事前に債権者・債務者間で合意していた内容に反してしまうと、この利益の喪失が起きます。
債務者が期限の利益を喪失すると、債権者に一括返済を求められます。
期限の利益が喪失された際に起きることには、以下のようなものがあります。
- 「期限の利益喪失通知」などが届く
- 遅延損害金をふくむ残高の一括返済を求められる
- 担保がある場合は回収される
- 保証人や連帯保証人が一括返済を求められる
- いわゆるブラックリストに載っていることも多い
- 訴訟や差押えに発展することも
それぞれ解説します。
「期限の利益喪失通知」などが届く
期限の利益が喪失されると「期限の利益喪失通知」などと呼ばれる書面が届きます。
この書面は債権者によって記載が異なり、「一括返済催告状」という名称になっていることもあるようです。
いずれも、以下のような内容が記載されています。
遅延損害金をふくむ残高の一括返済を求められる
期限の利益が喪失となったときには、遅延損害金をふくむ借金残高の一括返済が求められます。
返済が遅れたことに対する、損害賠償金の一種。
一括返済が求められた場合、返済するまでの間、借金残高の全額に対して遅延損害金がかかります。
- 未返済の借金残高:50万円
- 遅延損害金の金利:年20%
上記の条件で、支払期日から60日たった場合の遅延損害金の金額は以下のとおりです。
50万円(未返済残高)×20%÷365(1日あたりの遅延損害金利率)×60(遅延日数)=16,438円
なお、期限の利益を喪失していなければ、返済が遅れた際に支払う必要があるのは、分割返済の1回分に対する遅延損害金のみです。
期限の利益喪失は重大な問題であることがわかるでしょう。
遅延損害金については、以下の記事で詳しく解説しています。
担保がある場合は回収される
期限の利益を喪失すると、債権者によって担保回収が行われることがあります。
担保回収とは、借金に不動産などの担保(抵当権)が設定されている場合に、抵当権が行使され、競売にかけられてしまうことです。
借り入れを行う際、土地や建物などに設定される権利のこと。
この権利を持つ債権者は、借金の返済がなかった場合、抵当権が設定された土地、建物を売却し、借金を回収することができます。
たとえば住宅ローンの場合、購入する住宅に抵当権が設定されています。
もし住宅ローンを滞納し期限の利益を失うと、ローン会社がその住宅を回収して競売にかけるのです。
保証人や連帯保証人が一括返済を求められる
債務者の期限の利益喪失によって、保証人または連帯保証人がいる場合は、債権者から請求を受けることになります。
保証人・連帯保証人は、債務者本人が返済不能に陥った際に代わりに返済する立場にあるためです。
民法にもとづいて、期限の利益の喪失から2ヶ月以内に保証人に連絡がいきます。
主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務
第四百五十八条の三 主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から二箇月以内に、その旨を通知しなければならない。
2 前項の期間内に同項の通知をしなかったときは、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない。
3 前二項の規定は、保証人が法人である場合には、適用しない。
この際、期限の利益が喪失されているため、保証人は残高を一括で返済するよう求められるという点も注意が必要です。
いわゆるブラックリストに載っていることも多い
借金の滞納で期限の利益が喪失された場合、長期滞納となっている可能性が高いでしょう。
滞納期間が2ヶ月以上になっている場合、いわゆる「ブラックリストに載っている」ことも少なくありません。
いわゆるブラックリストとは、信用情報機関に事故情報が載ることの俗称です。
この場合、金融機関の審査に通らないため、他社からの借り入れで一括返済することは難しいといえます。
信用情報機関とは、金融商品の取引状況や返済履歴などの個人情報(信用情報)を収集・管理している機関で、以下の3つがあります。
2ヶ月以上の滞納・債務整理など、利用者の返済能力に問題があると判断しうる情報は事故情報(異動情報)として信用情報機関に登録されます。
信用情報機関はそれぞれ情報を共有しているため、どこかの信用情報機関で事故情報が登録されるとすべての金融機関・貸金業者がその情報を参照可能です。
訴訟や差押えに発展することも
借り入れの際に担保を設定せず、保証人や連帯保証人を立てていない場合には、債権者は裁判上の手続きを使って返済を求めることになります。
具体的には、支払督促を簡易裁判所に申し立てたり、民事訴訟を提起したりといった手段が用いられます。
これらの手段が講じられた後でも債務者が返済に応じない場合には、債権者は裁判所を通じて差押えの強制執行を行うことができます。
債権者の給与や家、各種財産など、幅広いものが対象になります。
差押えについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
期限の利益の喪失事由とは?
期限の利益を喪失するきっかけ(喪失事由)には、大きく分けて、民法上(民法137条)の理由と、個別の契約上の理由があります。
それぞれについて解説します。
民法上の期限の利益喪失事由に該当した場合
民法第137条に定める以下の事項に該当した場合、債務者の期限の利益は喪失となります。
- 自己破産手続きを行った
- 担保を壊した、損傷させた
- 担保を提供しなかった
条文の原文は以下のとおりです。
一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
自己破産手続きを行った
期限の利益を喪失する事由の一つ目として定められているのは、債務者が自己破産手続きをした(破産手続開始の決定を受けた)ことです。
しかし、そもそも自己破産は返済ができないときにとる手続きです。
期限の利益が喪失されても、債務者が直接返済しなくてはいけないわけではありません。
債務者が破産手続きに入ると、破産管財人が債務者の財産を処分し、債権者に弁済します。
債権者は破産手続きによる弁済を一括で受けることになるのです。
担保を壊した、損傷させた
期限の利益を喪失する事由の二つ目として定められているのは、債務者が担保を壊したり、損傷させたりしたことです。
返済不能になったときに債権者が回収できる手段がなくなるため、期限の利益も認められなくなるのです。
ここでいう担保には、保証人もふくまれます。
よって、以下のような行為が当てはまるでしょう。
- 債務者が抵当権が設定されている建物を取り壊した
- 債務者が保証人の命を奪った
担保を提供しなかった
民法に定められている期限の利益を喪失する事由の三つ目は、債務者が担保を提供しないことです。
実際には、そもそも担保の提供がないと借金の契約をしないことがほとんどであるため、この項目が作用することは少ないでしょう。
契約上の期限の利益喪失条項に該当した場合
借金の契約(金銭消費貸借契約)に個別に定められている期限の利益喪失条項に該当した場合、期限の利益は喪失されます。
定められている内容は契約によって異なりますが、代表的なものは以下のとおりです。
- 借金の返済を滞納した
- 債務整理を行った
- 申し込み内容の虚偽が発覚した
- 差押えなどを受けた
- 住所不明になった
それぞれの内容を解説します。
借金の返済を滞納した
多くの借金の契約では「一回でも期日までの支払いを怠った」場合に期限の利益を喪失すると定められています。
ただし、実際のところは、数日の遅れであれば期限の利益の喪失には至らないことがほとんどです。
もし滞納期間が2~3ヶ月以上になると、その後の返済も望めないと判断され、期限の利益の喪失が主張されることが多いでしょう。
債務整理を行った
自己破産以外にも、契約内に個人再生や任意整理といった債務整理を行った場合に期限の利益が喪失される条項が定められている可能性もあります。
債務整理することにより、返済に支障が生じることが想定されるためです。
債務整理をすると、債権者宛に、弁護士などの専門家から「受任通知」が送られます。
受任通知を受け取った債権者は、債務整理の事実を知り、期限の利益の喪失を主張するのです。
代位弁済については、以下の記事で詳しく解説しています。
申し込み内容の虚偽が発覚した
契約時に職業や収入を偽り、それがわかった場合、期限の利益が喪失されると定められていることが多いでしょう。
大きな偽装は、その後の借金の返済に問題が出ることが想定されるためです。
たとえば年収100万円の人が1,000万円と偽って多額の借金をしていた場合、返済不能に陥る可能性が高いでしょう。
差押えなどを受けた
預金(口座)の差押えなどを受けた場合に、期限の利益が喪失される条項が定められていることもあります。
差押えを受けた段階で、その後の借金の返済に支障が生じることが想定されるためです。
住所不明になった
返済期間中に債務者の住所がわからなくなった場合に、期限の利益が喪失される条項が定められていることもあります。
順調な返済が望めないと判断されるためです。
債務者が、引っ越しなどによる住所変更を債権者に伝えておらず、連絡不通になった場合などが当てはまるでしょう。
期限の利益喪失通知が届いた場合の対処法
期限の利益喪失通知が届いた場合、対処法は以下のとおりです。
- 一括返済をする
- 債権者と交渉する
- 債務整理をする
- 時効の援用を行う
それぞれ解説します。
一括返済をする
期限の利益喪失通知が届いた場合、その内容に従って一括返済をするのが最初の選択肢になります。
ただし、前述のとおり、期限の利益喪失通知が届いた段階で、ほかの会社からの借り入れで一括返済をするのは難しいことが多いでしょう。
一括返済をする手元にお金がない場合、身内に一時的に肩代わりしてもらう必要があるかもしれません。
債権者と交渉する
一括返済が難しくても、たとえば分割すれば完済できる見込みがある場合、債権者と交渉する余地があります。
交渉は以下のような流れになるでしょう。
- 債権者に収入や資産、返済が難しくなった背景を開示する
- 定期的に行える返済の額を具体的に伝える
- 返済期日の変更や分割などを交渉する
返済の条件が変わっても借金を返してもらえるというのは、債権者にとってもメリットです。
交渉に応じてもらえる可能性はあるでしょう。
債務整理をする
自力で一括返済ができない場合や、上記のような交渉が難しい場合、債務整理を検討しましょう。
債務整理とは、債権者との交渉や裁判所での手続きによって借金問題を解決する方法です。
方法によっては、期限の利益を喪失した後であっても、返済額を減らしたうえで3〜5年程度の分割返済にできる可能性があります。
さらに、債務整理を弁護士など法律の専門家に依頼することで、債権者からの督促が一時ストップされるため、生活の再建に集中しやすくなるでしょう。
弁護士などから債権者へ「受任通知」と呼ばれる書面が送付されるためです。
債務整理の依頼を受けた弁護士・司法書士が、金融機関や貸金業者などの債権者に「代理人として手続きを進める」ということを知らせる通知です。
受任通知を受け取った債権者は、債務者(お金を借りた側)への請求や督促を停止しなければならないと法律で定められています(貸金業法21条、債権管理回収業に関する特別措置法18条)。
債務整理については以下の記事で詳しく解説しています。
時効の援用を行う
5〜10年以上の長期間にわたって返済していない借金について、突然一括返済を求められたようなケースでは、時効の援用によって借金返済の義務をなくせる場合があります。
時効の援用とは「時効が成立した」ということを債権者に主張する手続きです。
時効が成立するには、返済期日や最終返済日から5年もしくは10年以上が経過している必要があります。
さらに、時効が成立するまでの期間に以下のようなことがあると、時効のカウントがリセットされてしまいます(時効の更新)。
- 債務者本人が借金の返済意思を示した(債務の承認)
- 裁判上の和解等の確定判決が出た
- 財産の差押えが行われた
時効の援用を考えたら、一度弁護士などの法律の専門家に確認するのが確実かもしれません。
借金の時効については、以下の記事で詳しく解説しています。
借金の滞納が続いていたら弁護士に相談を
期限の利益とは、借金などの債務を負った人が、期限が到来するまで返済をしなくてもよいという権利(利益)のことです。
債務者が返済の滞納などによって期限の利益を喪失すると、債権者は債務者に対して一括返済を求めることができるようになります。
期限の利益喪失通知が届いた場合、放置してしまうと差押えや訴訟に発展する可能性もあるため、早めの対処が重要です。
一括返済が難しい場合は債権者との交渉や債務整理が必要になりますが、こうした交渉や手続きは、債務者が自力で行うのは難しい場合も少なくありません。
弁護士法人・響では借金問題についての無料相談を受け付けているので、不安を感じたらまずは気軽にご相談ください。
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