- 弁護士会所属
- 東京第二弁護士会 第59432号
- 出身地
- 奈良県
- 出身大学
- 関西大学社会学部 大阪大学法科大学院
- 保有資格
- 弁護士
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- ご依頼者の抱える問題が一歩でも解決に進むように日々職務に努めております。
「 借金の返済が苦しい!時効まで待てば支払義務が無くなる?」
「 借金をゼロにするなら、時効を待つか、自己破産をすればいい?」
借金の滞納が続くと、なんとか借金をゼロにしたいと思うもの。
時効が完成すれば「時効の援用」という手続きをして、借金を無くすことは可能です。
自己破産はほとんどの借金が免除になるものの、一定の価値ある財産は処分されるなどのデメリットがあります。
一方、時効がまだ完成していない場合は、実際のところ時効を成立させるのは難しいでしょう。
今回は自己破産と借金の時効についてその内容の違いや、手続きの際に注意したい点を詳しく解説します。
正しい知識をつけて、借金問題解決への第一歩を踏み出しましょう。
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目次
自己破産と時効は何が違うの?
自己破産は、裁判所を介して一部を除いたすべての借金の支払義務を免除(免責)してもらう制度です。
また、 時効(消滅時効)とは、債権者(貸した側)が債務者(借りた側)に請求などをせずに、一定期間を過ぎると借金(債権)が消滅する制度をいいます。
借金の消滅時効については以下の記事で詳しく解説しています。
しかし、自己破産のようにすべての借金を消滅時効でなくすには、すべての借金の消滅時効が完成している必要があります。
自己破産と消滅時効の違いをまとめると、以下の表のようになります。
自己破産 | 消滅時効 | |
---|---|---|
実施のタイミング | 自分で選べる | 自分で選べない |
手続き | 必要 裁判所に自己破産の申立をする |
必要 「時効の援用」の手続きを債権者にする |
対象 | すべての借金 | 借金ごと |
メリット | ・借金の支払い義務がなくなる ・借金の督促や請求がなくなる |
・借金の支払い義務がなくなる ・裁判所を通さなくてもよい |
デメリット | ・ブラックリスト状態になる ・一定の価値ある財産が処分される ・官報という公的な冊子に債務者の情報が掲載される ・破産手続き中、就けない職業がある |
・債権者が消滅時効完成までの期間をリセットできる ・成立まで督促や請求がストップしない ・消滅時効が完成するまでに損害遅延金も含めて、残債を一括請求される可能性がある ・時効の援用の手続きをした金融機関から借入れできない可能性が高い |
自己破産については以下の記事で詳しく解説しています。
消滅時効の成立が難しい理由
消滅時効には「借金を放置しておけば自然と時効が成立して、借金もゼロになる」というイメージがあるかもしれません。
しかし、 時効が完成するまで5〜10年かかり、その間債権者が何もせずに放置するとは考えられません。
仮に時効が完成しても正確なタイミングで「時効の援用」をしなければ、消滅時効の成立は難しいといえるでしょう。
以下、消滅時効の成立が難しい理由をそれぞれ、もう少し詳しく説明します。
- 消滅時効が完成するまでには5年または10年の期間が必要
- 消滅時効が完成するまでの期間を債権者に更新される可能性が高い
- 正確なタイミングで「時効の援用」の手続きをする必要がある
時効援用のデメリットについては以下の記事で詳しく解説しています。
消滅時効が完成するまでには5年または10年の期間が必要
消滅時効の完成には、5年または10年かかります。
簡単に言えば、5〜10年間借金に対してなにひとつアクションを起こさないことが、消滅時効を完成させる条件になるのです。
まずは、5年または10年という期間について説明しましょう。
消滅時効が完成するまでの期間は
- 借金を2020年3月31日以前にした
- 借金を2020年4月1日以降にした
のどちらなのかによって変わります。
それぞれの場合について、解説します。
2020年4月1日以降の借入は消滅時効の完成に5年または10年が必要
2020年4月1日以降の借入は、借入先(債権者)に関わらず消滅時効が完成するまでに原則5年または10年(改正民法第166条1項)を必要とします。
消滅時効が完成するまでの期間は以下のいずれか早い方になります。
- 債権者が請求する権利を行使できることを知った時から5年間
- 債権者が請求する権利を行使できる時から10年間
債権者が金融機関などの場合は、借金の返済を請求できる権利を知って貸すので消滅時効が完成するまでの期間は、5年間となります。
一方、個人の場合などは、借金の返済を請求できる権利や時効の内容を知らないケースも多いので、5~10年間になるでしょう。
そして、時効の始まりになる起算点は、以下のように返済日が決まっている場合と決まっていない場合とで異なります。
- 返済日が決まっている場合
「最後の返済日」または「期日後の最後の返済日の翌日」 - 返済日が決まっていない場合
「借入日(契約日)」または「最後の返済日の翌日」
金融機関などは、借金の返済日を設けて契約するのが一般的なので、「最後の返済日」または「期日後の最後の返済日の翌日」となります。
個人でお金を借りた場合などは、返済日が決まっていないこともあるため、「借入日(契約日)」または「最後の返済日の翌日」が該当するでしょう。
2020年3月31日以前の借入は相手先によって期間が異なる
2020年3月31日以前の借金の場合、借入先によって消滅時効が完成するまでの期間が異なります。
消滅時効が完成するまで、貸金業者や銀行は5年間、信用金庫や個人などは10年間になります。
貸金業者や消費者金融 | 5年(貸金業者が会社の場合) |
信用金庫 | 10年 |
銀行 | 5年 |
住宅金融公庫の住宅ローン | 10年 |
信用保証協会の求償権(※) | 10年 |
個人(親族・友人など) | 10年 |
消滅時効が完成するまでの期間を債権者に猶予・更新される可能性が高い
次に、消滅時効が完成するまでの期間をストップまたはリセットされるリスクについて解説します。
以下のようなケースで、消滅時効は「完成猶予」または「更新」されます。
内容 | 時効の完成猶予 | 時効の更新 |
---|---|---|
裁判上の請求や支払督促 | あり(判決・支払督促の確定まで) | あり(判決・支払い督促の確定によって) |
仮差押え、仮処分 | あり(終了後、6ヶ月経過するまで) | なし |
強制執行(差押えなど) | あり(手続き完了まで) | あり(執行によって回収しきれなかった場合) |
催告 | あり(6ヶ月) | なし |
書面による協議を行う旨の合意 | あり(協議の合意から1年/合意で定めた協議期間/協議続行を拒絶する通知から6ヶ月) | なし |
債務の承認 | なし | あり |
完成猶予とは、 その手続きが終了する、または一定期間が経過するまで、時効の完成が一時的に停止することをいいます。
一方、更新とは時効完成までの期間がゼロからのカウントになることです。
それぞれのケースについて解説します。
債権者が裁判上の請求または支払督促をした場合
債権者が債務者に「裁判上の請求」をすると消滅時効の完成は猶予されます。
「裁判上の請求」とは、訴えを提起することです。
一方、支払督促とは債権者の申立てのみに基づいて、簡易裁判所の書記官が債務者に支払いを命じる制度です。
確定判決が出る、もしくは支払督促が確定するまで、時効完成までの期間は進行しません。
さらに、判決・支払督促が確定すると、時効完成までの期間は「更新」され、10年に延長されます。
もし訴訟の取り下げや却下があった場合も、6ヶ月間は時効の完成が猶予されます。
時効の中断(更新)については以下の記事で詳しく解説しています。
債権者から財産の仮差押え・仮処分があった場合
借金の返済を延滞して放置していると、債権者が支払督促や訴訟を裁判所に申し立てる可能性があります。
それでも放置し続けると、判決が出る前に預貯金や不動産などの財産が「仮差押え・仮処分(※)」になる可能性が高くなります。
裁判所からの強制執行による差押判決が出ていない段階でも、債務者の不動産や預貯金などの財産(金銭債権)を仮に差し押さえられます。
仮処分は、金銭債権以外の権利の保全を目的とする場合に適用されます。
最終的には差押えになりますが、判決の前でも 仮差押え・仮処分があった時点で消滅時効の完成は猶予されるでしょう。
仮差押え・仮処分の終了後、6ヶ月が経過すると時効完成までの期間のカウントが再開します。
債権者が強制執行(財産の差押えなど)を申し立てた場合
債権者が差押えなど強制執行を申し立てた場合は、手続き完了まで消滅時効の完成が猶予されます。
さらに、強制執行によって債権(借金)を回収しきれなかった場合は、時効完成までの期間が更新されます。
差し押さえについては以下の記事で詳しく解説しています。
債権者が催告を行った場合
債権者が内容証明で催告書を送付した場合は、消滅時効の完成が6ヶ月間猶予されます。
催告書には、法的措置を示唆する内容が含まれているため、この間に裁判を起こされる可能性が高いといえるでしょう。
もし裁判を起こされた場合は、判決が出るまで時効の完成は猶予され、判決が確定すると時効完成までの期間は更新となります。
なお、債権者が再度催告を行っても、時効の完成がさらに猶予されることはありません。
債権者と債務者が協議を行う旨を書面により合意した場合
債権者と債務者が協議を行うことを書面で合意した場合、一定期間は消滅時効の完成が猶予されます。
- 協議の合意から1年
- 合意で定めた協議期間(1年に満たない場合)
- どちらかが協議続行を拒絶する通知を出した場合は、通知から6ヶ月
のうち、もっとも早く満了する期間まで時効の完成が猶予されるのです。
なお、再度協議を行う旨を合意することも可能ですが、時効完成が猶予されるのは、本来時効が完成すべき時から最長5年です。
債権者に対して「債務の承認」をした場合
次のいずれかを行うと、 借金がある事実を認める「債務の承認」とみなされ、消滅時効までの期間が更新されます。
-
- 借金を一部でも返済した場合
- 債権者から送付された「債務承認書」などの書面に記名、捺印をして債務を認める行為をした場合
- 債権者に「支払いを待ってほしい」など、返済の猶予を求める行為をした場合
債務の承認については以下の記事で詳しく解説しています。
正確なタイミングで「時効の援用」の手続きをする必要がある
5年または10年が経過し、消滅時効の完成するタイミングを迎えたからといって自動的に借金がなくなるわけではありません。
債権者に対して、すでに時効が成立したことを主張する「時効の援用」という手続きをする必要があります。
時効の援用の具体的な方法は、債権者ごとに「時効援用通知書」を配達証明付きの内容証明郵便で送るのが一般的です。
ただし、 消滅時効が完成する前に時効の援用をすると、内容次第では先に述べた「債務の承認」をしたとして期間が更新される可能性もありますので、注意が必要でしょう。
時効の援用の手続きを行う際には、
- 債権者と最後に取引した日はいつなのか
- 消滅時効が完成するのはいつなのか
などを正確に把握しておく必要があります。
自己破産後のブラックリストの影響はいつまで続く?
自己破産は返済の見込みが立たない状態で、借金をした経緯などに問題がなければ、自分のタイミングで破産手続きを開始できます。
自己破産すると「信用情報機関(※)」に事故情報が登録されるので(ブラックリストに載る)、その期間はクレジットカードやローンの利用ができません。
信用情報機関は以下、3つの機関がある。
- 株式会社日本信用情報機構(JICC)
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
ただ、 永久にブラックリストに載っているわけではなく、登録期間は5~10年で消去されます。
ブラックリストが消去されれば、新たにクレジットカードやローンを利用できる可能性は十分にあります。
しかし、クレジットカードで通販や公共料金の支払いなどができないので、生活面で不便になるのではないか不安に思う人もいるでしょう。
しかし、以下のようにクレジットカードが使えない時は、同じ場所でも利用可能なデビットカードを使うなどの対処法はあります。
デビットカード | ・利用と同時に金融機関の口座から代金が引き落とされるカード ・利用できる金額は口座の残高まで ・VISAやJCBに加入しているため、使用できる場所はクレジットカードと同様 |
プリペイドカード | ・あらかじめ現金をチャージして利用するカード ・事前に支払った金額分しか利用できない |
家族カード | クレジットカードを契約している人(本会員)の家族が発行してもらえるクレジットカード |
スマホ決済 | 「PayPay」「LINE Pay」「メルペイ」など、スマートフォンに表示したQRコードで決済を行うサービス |
そのほか、ブラックリストに載っている期間は具体的に以下のような影響もありますが、それぞれ対処法もあります。
影響があること | 対処法 |
---|---|
携帯電話やスマートフォンの分割払いができない | ・10万円以下の機種を分割払いで申し込む (毎月の利用料金を滞納していないことが条件) ・価格の安い携帯機種を一括で購入 ・自分以外の家族名義で契約する |
家賃保証会社が必要な賃貸住宅の契約が出来ない可能性がある | ・保証人を立てれば保証会社と契約の必要がない物件を選ぶ ・保証会社が信販系ではない不動産会社を選ぶ ・UR(都市再生機構)賃貸住宅などを選ぶ |
借金の保証人になれない (子どもの奨学金なども含む) |
・配偶者や自分以外の家族に保証人になってもらう |
ETCカードを利用できない | ・ETCパーソナルカードを利用する |
カーリースを契約できない (年単位で車の利用契約を結ぶ) |
・レンタカーを利用する ・自分以外の家族名義で契約する |
ブラックリストについては以下の記事で詳しく解説しています。
自分が連帯保証人の場合に負う債務にも消滅時効がある
自分が連帯保証人の場合、債務者が借金を返済できなくなった際に肩代わりすることになる債務(連帯保証債務)にも消滅時効があります。
連帯保証債務の時効は、主債務者の消滅時効の影響を受けます。
また、主債務者が自己破産した場合は消滅時効が更新されるケースもあるのです。
この連帯保証債務について、以下の点を中心にさらに解説します。
- 連帯保証人の債務は、主債務者に起こるできごとの影響を受ける
- 自己破産の手続きによって消滅時効の完成までのカウントが異なる
連帯保証人の時効については以下の記事で詳しく解説しています。
連帯保証人の債務は、主債務者に起こるできごとの影響を受ける
連帯保証人の債務の消滅時効は、以下のように主債務(債務者の借金)の消滅時効に起きたできごとの影響を受けます。
- 主債務の消滅時効が成立すると連帯保証債務の消滅時効も成立する
- 主債務の消滅時効が更新されると連帯保証債務の消滅時効も更新される
このことを「付従性」と呼びます。
そして主債務の消滅時効が成立している場合、付従性によって連帯保証人が主債務者に代わって時効の援用をすることも可能です。
逆に連帯保証人に起こるできごとで、主債務者が影響を受けることはありません。
自己破産の手続きによって消滅時効の完成までのカウントが異なる
自己破産する際の手続きの種類によって、連帯保証人の消滅時効が完成するまでの期間も異なります。
自己破産は大きく分けて「同時廃止事件」と「管財事件」という2つの手続き(※)に分類されます。
- 同時廃止事件
同時廃止事件は債務者に差し押さえの対象になる財産や、破産手続きに必要な費用がない場合、破産手続の開始と同時に手続きを廃止(終了)する手続きです。
判断基準は裁判所によって異なり、債務者に財産がなければ同時廃止事件になるケースも多いです。
- 管財事件
管財事件は債務者に一定以上の財産がある場合に、破産管財人(債務者の財産や債権の調査のために裁判所が選任する弁護士)がその財産を換金して債権者に配当(分配)する手続きです。
連帯保証人の消滅時効が完成するまでの期間はそれぞれ次の通りです。
同時廃止事件の場合
同時廃止事件の場合は、主債務者が破産手続きをする前からの期間がそのままカウントされます。
同時廃止事件は、消滅時効が完成するまでの期間の更新がないためです。
管財事件の場合
主債務者が破産手続きを開始した時点で、連帯保証人の消滅時効が完成するまでの期間も更新されます。
なぜなら、主債権者が裁判所に債権の種類や金額などの届出をするので、その時点で裁判上の請求をしたことになるからです。
そして、破産管財人は債権調査の結果を記載した「破産債権者表」を作成します。
破産債権者表に債権者が記載されると、確定判決と同じ効果があるため、消滅時効が完成するまでの期間は10年になります。
同時廃止事件と管財事件の違いは以下の記事で詳しく解説しています。
借金問題をどう解決するべきか、よくわからない時は弁護士に相談を!
時効の援用も自己破産も、借金の支払いをしなくてもよくなる制度ではあるものの、その内容はまったく異なっています。
消滅時効の完成は、途中で期間がリセットされる可能性も高く、自分の意思やタイミングで進めるのは難しいといえるでしょう。
借金問題は、自己破産以外にも任意整理や個人再生などで解決できる可能性があります。
「 借金問題をどんな方法で解決したらいいのかよくわからない」
「 自分にあった方法で借金問題を解決したい」
そんな時は債務整理の実績が豊富な弁護士に相談してはいかがでしょうか。
弁護士法人・響は、豊富な債務整理の解決実績に基づく独自のノウハウや知識で、今の借入期間なども考慮して、お客さまに寄り添った問題解決を目指しています。
相談料は無料で、24時間・365日受け付けております。
まずはお気軽に、弁護士法人・響までご相談ください。
自己破産と時効の成立は、借金の支払義務が無くなるという意味では同じです。
しかし、時効の成立は
- 債権者が時効を更新するため、消滅時効の完成は難しく自分で時効の援用を狙えない。
- 何度も更新(リセット)されると消滅時効が完成するまでの期間も長くなり、利息や延滞損害金により返済総額が増えるという難しさもあります。
また、自己破産をするとブラックリストに掲載され、クレジットカードが利用できないなどのデメリットもありますがこのデメリットを補う方法はいろいろあります。
そのため、借金をゼロにするには、自己破産のほうが現実的な手段といえるでしょう。
自己破産も時効の成立も、専門的な知識や複雑な手続きが必要です。
まずは経験豊富な法律事務所に相談をして、早めの解決を目指しましょう。
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