自己破産をすると選挙権や被選挙権はなくなる?事実と誤解される理由

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この記事の監修者
澁谷 望
この記事の監修者
澁谷 望弁護士
弁護士会所属
第二東京弁護士会 第54634号
出身地
熊本県
出身大学
大学院:関西大学法学部 同志社大学法科大学院
保有資格
弁護士・行政書士
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理想の弁護士像は、「弱い人、困った人の味方」と思ってもらえるような弁護士です。 そのためには、ご依頼者様と同じ目線に立たなければならないと思います。そのために日々謙虚に、精進していきたいと考えています。

自己破産を検討している方の中には、選挙権への影響について疑問や不安を抱く方もいるかもしれません。

しかし結論を言うと、自己破産をしても、投票権や立候補する権利が失われることはありません

これは、自己破産が「返済しきれない借金を抱えた方の生活を再建するための制度」であり、自由や権利を奪うものではないためです。

このように自己破産はその言葉の響きから、さまざまな誤解を生んでいることがあります。

そこでこの記事では、自己破産が選挙権や被選挙権に与える影響、そして自己破産に関するよくある誤解とその事実について解説します。

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目次

自己破産しても選挙権は制限されない

結論からいうと、自己破産をしても選挙権は制限されません

自己破産は借金の返済ができない人への懲罰のようなものではなく、すべての国民に認められた正当な権利であり、生活再建を支援するためのものです。

法律(破産法)では「債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする」と規定されています。

そのため選挙権を含め、人生の再スタートを切るために必要な最低限のものは、保護されるのです。

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破産法

(目的)
第1条 この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。

※引用:e-GOV「破産法」

自己破産について詳しくは以下の記事をご参照ください。

原則として公民権や参政権を失うことがない

前述のとおり、自己破産をしても選挙権は制限されません。

そもそも選挙権は公民権(参政権)のひとつで、国または地方公共団体の政治に参加できる資格・地位のことです。自己破産をしても、公民権(参政権)は喪失しません

また公職選挙法では選挙権を失う条件も定められていますが、自己破産は該当しません

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〈権利を失う条件〉
1 禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者
2 禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く)
3 公職にある間に犯した収賄罪により刑に処せられ、実刑期間経過後5年間(被選挙権は10年間)を経過しない者。または刑の執行猶予中の者
4 選挙に関する犯罪で禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行猶予中の者
5 公職選挙法等に定める選挙に関する犯罪により、選挙権、被選挙権が停止されている者
6 政治資金規正法に定める犯罪により選挙権、 被選挙権が停止されている者

出典:総務省「選挙権と被選挙権

なお2015年6月に公職選挙法等の一部を改正する法律が成立し、公布されました。これにより、選挙権年齢はそれまでの「満20歳以上」から「満18歳以上」に引き下げられています。

参考:総務省「選挙権年齢が引き下げられました

被選挙権も自己破産による制限はない

自己破産をしても、選挙権と同様に被選挙権も制限されることはありません

被選挙権とは、国会議員や都道府県知事・議会議員、市区町村長などの役職に立候補できる権利のこと。じっさい、過去には自己破産をしたあとで当選した政治家もいます。

ただし被選挙権には一定の資格があり、次のような条件を満たす必要があります。

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〈被選挙権の資格〉
・衆議院議員:日本国民で満25歳以上であること
・参議院議員:日本国民で満30歳以上であること
・都道府県知事:日本国民で満30歳以上であること
・都道府県議会議員:日本国民で満25歳以上であること。その都道府県議会議員の選挙権を持っていること
・市区町村長:日本国民で満25歳以上であること
・市区町村議会議員:日本国民で満25歳以上であること。その市区町村議会議員の選挙権を持っていること

出典:総務省「選挙権と被選挙権」

また被選挙権を失う条件もありますが、これは前述した選挙権と失う条件と同じです。

自己破産したら選挙権がなくなると誤解された理由は?

「自己破産をしたら選挙権がなくなる」という誤解が広まった理由として、かつて公職選挙法第11条1項1号(現在は削除)で「禁治産者(成年被後見人)は選挙権及び被選挙権を有しない」と規定されていたからという説があります。

用語集
禁治産者とは?

民法改正以前に、心神喪失の常況によって家庭裁判所から禁治産宣告を受けた人を指します。1999年12月8日の民法改正(2000年4月1日施行)により成年被後見人という用語に改められています。

この禁治産者(成年被後見人)と自己破産者が、混同されて誤解が広まったのではないか、といわれているのです。

明治以来、日本には「禁治産制度」が存在し、さまざまな理由で財産の管理が難しいと判断された人には後見人がつけられました。禁治産者になると、契約などの法律行為や選挙権をはく奪されたのです。

しかし2013年3月14日に東京地方裁判所で、成年被後見人の選挙権をはく奪する法律(公職選挙法11条1項1号)は違憲無効とする判決を出しました。

その後2013年6月30日に、成年被後見人の選挙権の回復等のための公職選挙法等の一部を改正する法律が施行されました。
参考:総務省「法令改正 成年被後見人の方々の選挙権について

以降、成年被後見人も選挙権・被選挙権を有することになっています。

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公職選挙法

(選挙権及び被選挙権を有しない者)
第11条 次に掲げる者は、選挙権及び被選挙権を有しない。
一 削除
二 禁錮こ以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者
三 禁錮こ以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
四 公職にある間に犯した刑法(明治四十年法律第四十五号)第百九十七条から第百九十七条の四までの罪又は公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律(平成十二年法律第百三十号)第一条の罪により刑に処せられ、その執行を終わり若しくはその執行の免除を受けた者でその執行を終わり若しくはその執行の免除を受けた日から五年を経過しないもの又はその刑の執行猶予中の者
五 法律で定めるところにより行われる選挙、投票及び国民審査に関する犯罪により禁錮こ以上の刑に処せられその刑の執行猶予中の者

※引用:e-GOV「公職選挙法」

自己破産すると制限されると誤解されていること

選挙権・被選挙権以外にも、自己破産すると制限されるものとして、誤解されているものがあります

制限されると誤解されているものとして、次のようなことがあります。

  • 自己破産するとパスポートが発給してもらえない
  • 自己破産すると戸籍やマイナンバーに載る
  • 自己破産すると年金がもらえない
  • 自己破産すると会社を解雇される
  • 自己破産すると結婚できない
  • 自己破産すると就職や転職に支障が出る

以下で詳しく解説し、誤解を解いていきます。

自己破産の生活への影響と誤解について詳しくは以下の記事をご参照ください。

誤解1 自己破産するとパスポートが発給してもらえない?

自己破産するとパスポート(旅券)が発給されない、というのは誤解です

自己破産しても問題なくパスポートを発給・更新できますし、没収されることもありません。海外旅行保険に入ることもできます。

パスポートを申請する際には、以下の証明書が必要となりますが、これらの証明書にも自己破産した事実は記載されていません。

パスポート申請に必要な書類(一部)
  • 申請日前6ヶ月以内に作成された戸籍抄本*または戸籍謄本
  • 住民票の写し
  • マイナンバーカードや運転免許証などの本人を確認できる書類
    *改正旅券法が施行される令和5年3月27日以降は戸籍抄本は受理不可

参考:外務省「パスポートの申請から受領まで

ただし自己破産手続き中の海外渡航については一部制限される場合もあるため、注意が必要です。

自己破産の手続きのなかでも、債務者(お金を借りた側)に一定の財産がある場合の手続きである「管財事件」に限り、手続き期間中(自己破産申立て〜免責確定)は、裁判所や破産管財人といつでも連絡がとれる場所にいる必要があるからです。

自己破産が「同時廃止事件」に該当する場合は海外渡航は自由ですが、手続きを代理する弁護士には事前に伝えておいたほうがよいでしょう。

自己破産後の海外旅行について詳しくは以下の記事をご参照ください。

誤解2 自己破産すると戸籍やマイナンバーに載る?

自己破産しても、その事実は戸籍(戸籍簿)に記録・記載されることはありません

また住民票やマイナンバー、運転免許証などにも載りません。

用語集
戸籍とは?

日本人が出生してから死亡するまでの身分関係(出生、婚姻、死亡、親族関係など)を登録し、公に証明するためのものです。
戸籍謄本:戸籍に記録されている全員について証明したもの。
戸籍抄本:戸籍に記録されている一部の人について証明したもの。

戸籍には、次のような項目が記録されています。

  • 本籍(戸籍の所在地)
  • 筆頭者氏名
  • 同じ戸籍に記録されている者氏名・生年月日
  • 父、母の氏名
  • 出生地
  • 婚姻日

このように、戸籍には自己破産など経済状況に関する記録項目はありません

戸籍謄本(抄本)が必要になるのは、おもに厚生年金などの受給申請をするとき、本籍地以外で婚姻届を提出するとき、パスポートの発給申請をするときなどです。

そのさい第三者の目に触れることになりますが、自己破産した事実が掲載されていないため、戸籍謄本(抄本)から自己破産がバレる心配はありません。

またマイナンバーが連携している情報は、社会保障、税金、災害対策の3分野に限られており、次のような情報と連携しています。

  • 住民票関係情報
  • 雇用保険の給付に関する情報
  • 年金の給付に関する情報
  • 住民税の課税情報・算定の基礎となる収入情報 など

自己破産の情報元である官報や、信用情報機関とは連携していない*ため、マイナンバーでは自己破産した事実はわからないといえるでしょう
*2022年12月1日現在

用語集
官報とは?

内閣府が発行している国の機関紙のこと。法令などの政府情報を国民に伝える新聞として、行政機関の休日を除き毎日発行されています。
自己破産した場合は、破産者の氏名、住所、手続きの開始決定年月日などが破産手続開始決定時と免責許可決定時の2回掲載されます。

自己破産による官報掲載については以下の記事で詳しく解説しています。

誤解3 自己破産すると年金がもらえない?

自己破産をしても、公的年金であれば原則として年金は受給できます

年金には、大きく分けて次の2種類があります。

  • 公的年金:国民年金や厚生年金などの国が運営する年金
  • 私的年金:勤務先で加入する企業年金や、個人が保険会社と契約する個人年金など

公的年金は、法律で差し押さえることを禁止されている差押禁止財産にあたるため、自己破産しても受給することができます。

私的年金でも、次のものは公的年金と同様に扱われるので差押えの対象になりません

  • 確定給付企業年金
  • 確定拠出年金
  • 厚生年金基金
  • 国民年金基金

しかし、個人で保険会社と契約している個人年金は差押禁止財産ではなく、個人の所有財産と見なされるので差押えの対象になる可能性が高いと考えられます。

自己破産後の年金の受け取りについて詳しくは以下の記事をご参照ください。

誤解4 自己破産すると会社を解雇される?

自己破産したことを理由に会社を解雇されることも、原則的にはありません

労働者と使用者の契約について規定した法律である「労働契約法」では、客観的に合理的な理由がなければ解雇できないと定めています

合理的な理由とは、

  • 勤務態度に問題がある
  • 業務命令や職務規律・職業規則に違反した など

労働者側に明らかな落ち度がある場合です。

続きを読む
労働契約法

(解雇)
第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

※引用:e-GOV「労働契約法」

ただし、公正取引委員会や教育委員会の委員、人事院の人事官といった一部の国家公務員は、失職・罷免されることがあります。

自己破産と解雇について詳しくは以下の記事をご参照ください。

また株式会社の会社代表や役員の場合は、解任される場合があります

代表や役員は会社と会社と委任契約を結んでいる関係であり、自己破産は「委任の終了事由」にあたるため解任される可能性があるのです。

代表者や役員として業務を継続するためには、破産手続開始決定後に株主総会で再選される必要があります。

会社代表や役員が自己破産した場合の影響について詳しくは以下の記事をご参照ください。

誤解5 自己破産したら結婚できない?

自己破産をしても、法律上は問題なく結婚できます

民法では結婚(婚姻)の要件として婚姻適齢や重婚の禁止、近親者・直系姻族間の結婚の禁止などを規定していますが、自己破産したことや経済状況の悪化による結婚の禁止はしていません。

続きを読む
民法

(重婚の禁止)
第732条 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。

(近親者間の婚姻の禁止)
第734条 直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。
2 第八百十七条の九の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。

(直系姻族間の婚姻の禁止)
第735条 直系姻族の間では、婚姻をすることができない。第七百二十八条又は第八百十七条の九の規定により姻族関係が終了した後も、同様とする。

(養親子等の間の婚姻の禁止)
第736条 養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第七百二十九条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。

※引用:e-GOV「民法」

婚姻時には戸籍謄本が必要ですが、前述のとおり戸籍には自己破産の事実は載りません。
そのため結婚相手にも、自己破産の事実がバレる可能性は低いといえそうです

自己破産後の結婚について詳しくは以下の記事をご参照ください。

誤解6 自己破産すると就職や転職に支障が出る?

自己破産をしたことは戸籍や証明書などに載ることはなく、勤務先に自己申告する必要もないため、周囲にバレる可能性は低いでしょう。

そのため自己破産したことで就職や転職に支障がでることは、ほぼないといえます

ここまで紹介したとおり、自己破産は法的に認められた制度であり、罰則ではありません。

ただし、一部の職業や資格は自己破産により制限を受けます。自己破産の手続きが終われば、こうした制限は解除されます。

制限を受ける職種・資格の例
  • 不動産・建築関連
    建設業、宅地建物取引士(宅建)、土地家屋調査士、不動産鑑定士
  • 保険・金融関連
    生命保険の外交員(生命保険募集人)、貸金業者、質屋
  • 士業
    弁護士、司法書士、行政書士、税理士、公証人、公認会計士、司法修習生
  • 卸業関連
    卸売業者
  • 公共関連
    教育委員会委員、社会保険労務士、廃棄物処理業者(一般廃棄物処理業者、産業廃棄物処理業者)
  • その他
    警備員、旅行業務取扱主任者

また自己破産をすると、破産者の氏名や住所が官報に掲載されます

官報は誰でも自由に閲覧できますが、閲覧するのは破産者情報を必要とする限られた業種の関係者といえます。

そのため日常的に閲覧している人は少ないといえますが、勤務先が下記の業種に関わることがある場合は、自己破産したことがバレて業務に支障が出る可能性があるかもしれません。

官報を閲覧する可能性のある業種の例
  • 士業(弁護士や司法書士など)
  • 金融業者
  • 保険会社
  • 信用情報機関の関係者
  • 市や区の税務担当者
  • 警備会社
    など

自己破産で制限される職業・資格について詳しくは以下の記事をご参照ください。

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まとめ
  • 自己破産をしても、選挙権・被選挙権はなくならない
  • 以下は自己破産に関する誤解
    ・パスポートが発給されない
    ・戸籍やマイナンバーに載る
    ・年金がもらえない
    ・会社を解雇される
    ・結婚できない
    ・就職や転職に支障が出る
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