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「やっとのことで借金を完済したけれど、返済した額がかなり多くない?」
そんな疑問を持った人には、過払い金が発生しているかもしれません。 過払い金の返還請求は正当な権利なので、遠慮や心配をすることはありません。 そこでこの記事では、過払い金返還請求に関する基本的な知識や計算⽅法を説明します。
目次
「過払い金」や「過払い金返還請求」ってそもそも何?
以下のスライドでは、過払い金や過払い金返還請求(過払い金請求)の基礎的な知識をまとめています。
借り入れ額や期間を忘れてしまったら、弁護士や司法書士に調査依頼をすることも可能
借入額や契約期間を忘れてしまった、よく覚えていないという人は、弁護士や司法書士に調査依頼をしてみましょう。 弁護士や司法書士に依頼すれば、相手先に取引履歴の開示を請求してくれます。 開示された取引履歴には、約定利率によって計算された金額が載っています。
これを、利息制限法の上限利率で計算し直して、過払い金があるかどうか、いくら戻るかまで確認してくれます(※利息制限法に基づく引き直し計算)。
取引履歴の開示請求は、本人が個人で行うこともできます。
しかし、その先の過払い金返還請求までを考えれば、初めから弁護士や司法書士に依頼したほうが、煩わしい手続きをしないで済むかもしれません。
弁護士・司法書士費用は?
そこで、気になる弁護士費用や司法書士費用ですが、過払い金の相談は無料という事務所も存在します。 また、着手金についても必要のない事務所もあります。
そして、無料診断による計算の結果、過払い金が発生していなかった場合も費用がかからないことが多いです。 自分で面倒な手続きをしなくて済むだけでなく、費用だけがかかってしまう心配もありません。
「いつ」「どの業者から」借りたお金が返還対象になる?
借金の金利によっては、過払い金が発生しない貸金業者も
過払い金が発生する対象となるのは、利息制限法の上限利率を超える金利で貸金業者と契約し、取引をしていた場合です。
利息制限法では、元本が10万円以上100万円未満の場合、年利18%を上限としています。 そして、多くの取引がこの金額の範囲内にあると考えられます。
ちなみに、元本が100万円以上の場合は年15%で、元本が10万円未満なら、年20%が上限利率です。 2010年に改正貸金業法と出資法が完全施行されたため、それ以降はこの上限金利を超える利率での貸し出しができなくなっています。
また、貸金業者によっては、それ以前から利息制限法の上限以下の利率で営業していました。 したがって、過払い金返還請求できるかどうかは、いつ取引していたか、どの業者と取引していたかにかかってきます。
※過払い金の返還請求権は、最後の取引(完済している場合はそのとき)から10年で消滅時効にかかります。
過払い金が発生しないと考えられる貸金業者(消費者金融系)
・アットローン
・モビット
・DCキャッシュワン
これらの貸金業者は、銀行が消費者向け金融を本格化させるときに、利息制限法以下の利率で貸し出しを行う低金利の消費者金融としてスタートした経緯があります。
そのため、利息制限法を超える金利での貸し出しはないだろうと考えられます。 また、銀行など金融機関のカードローンも利息制限法内の利率を設定していますので、過払い金は発生しません。
【業者別】過払い金発生可能性リスト
貸金業者などの名称引き下げ前の最高年率引き下げた時期
プロミス | 25.55% | 2007年12月 |
アコム | 27.375% | 2007年6月 |
アイフル | 29.2% | 2007年8月 |
そのほかの消費者金融 | 29.2% | 2007年中盤以降が主 |
信販会社・クレジットカード会社 | 29.2% | 2007年が主 |
先に述べたモビットなどを除いては、消費者金融ではほとんどが2007年ごろまで29.2%かそれに近い利率で貸付を行っていたので、過払い金が発生している可能性があります。
なお、信販会社やクレジットカード会社によっては、利息制限法を超える利率の商品と利息制限法以下の利率の商品が並存していた場合があります。
クレジットカードのリボ払いも過払い金返還請求の対象になるの?
さて、クレジットカードのリボ払いを利用した取引も、過払い金返還請求の対象になるのかが気になるところです。
結論としては、キャッシングサービスは利息制限法の適用を受けるため、リボ払いの利率が制限利率を超える場合は過払い金返還請求の対象になります。
しかし、同じリボ払いでもショッピング利用分にかかるのは手数料であり、金利ではないため利息制限法の適用はなく、過払い金返還請求の対象にもなりません。 ここで、リボ払いの種類についてまとめておきます。
定額方式
定額方式は、毎月支払う金額を一定にするタイプです。 定額方式の中でも、
・元金定額方式
・元利定額方式
の二種類に分けられます。 元金定額方式は、毎月支払う元金を一定額にする方式です。
したがって、利息は別に支払います。 これに対し、元利定額方式は、毎月の一定額に利息を含んで支払うタイプです。
つまり、一定額が同じ1万円でも、元金定額方式は別途利息分を加算して支払う必要があるため、月の総支払額は1万円だけ支払う元利定額方式よりも多くなります。
しかし、その分だけ元金が早く減るので、金利負担は少なくなります。
定率方式
定率方式は、一定の返済率に従って毎月の返済額を決めるタイプです。 例えば、残高が10万円で定率が10%なら、返済額は1万円です。
この1万円に利息を含むかどうかは、元金方式か元利方式かで異なります。
残高スライド方式
残高スライド方式は、ほかの4タイプのリボにもう一つの条件をつけたものと言え、残高に応じて返済額か返済率の段階を上げ下げするタイプです。
例えば、元金定率リボの場合、残高が20万円で定率が10%なら返済額は2万円です。残高が40万円なら、4万円になります。 これが残高スライド方式になった場合、適用するパーセンテージが残高によって変わるのです。
仮に、30万円以上は8%とする規定であれば、残高40万円のときの支払額は4万円ではなく3万2000円となります。
リボ払いの種類 | 月々の返済額の決め方 | 利息 |
元金定額方式リボ | 毎月一定額を支払う | 別途 |
元利定額方式リボ | 毎月一定額を支払う | 含む |
残高スライド元金定額方式リボ | 残高に応じて支払う一定額が変動する | 別途 |
残高スライド元利定額方式リボ | 残高に応じて支払う一定額が変動する | 含む |
元金定率方式リボ | 毎月一定率を支払う | 別途 |
元利定率方式リボ | 毎月一定率を支払う | 含む |
残高スライド元金定率方式リボ | 残高に応じて支払う一定率が変動する | 別途 |
残高スライド元利定率方式リボ | 残高に応じて支払う一定率が変動する | 含む |
過払い金返還請求の流れ~過払い金はいつ戻る?~
実際の過払い金返還請求の手続きを理解しよう
過払い金の返還請求をする際に、いくら戻ってくるかとともに気になるのが、過払い金がいつ戻るかです。 実際の過払い金返還請求では、すべてが同じ手順になるわけではありません。 相手も同じではないため、過払い金がいつ戻るかはケースバイケースです。
そうは言っても、一応の目安は存在しています。 まずは、弁護士や司法書士に依頼をしたときの返還請求の流れ(※借金を完済している場合)を確認しましょう。
- 弁護士や司法書士への相談・依頼
過払い金の調査を依頼すると、弁護士や司法書士は依頼者の取引履歴を借入先から取り寄せることになります。取引履歴が弁護士や司法書士の手元に届くまで、およそ1ヶ月から3ヶ月ほど時間がかかります。
- 過払い金の調査・利息制限法での引き直し計算
開示された取引履歴に記載されている内容を、利息制限法の上限利率で再計算します(※利息制限法に基づく引き直し計算)。
その結果、過払い金が確定できれば、いよいよ返還請求です。
- 相手先の貸金業者との交渉
相手先業者へ過払い金の返還請求をする方法としては、主に任意の和解を申し入れる方法と、請求訴訟を起こす方法があります。
一般には、裁判をするだけ時間がかかりますので、任意で和解したほうが早く過払い金が戻ってくると言えるでしょう。 ただし、その場合は全額の回収ができないケースも少なくありません。
弁護士や司法書士は、訴訟を起こした場合と起こさない場合でどちらが依頼人の利益になるかを考えます。
- 過払い金返還請求訴訟(裁判)または和解
交渉が決裂したときには、返還請求訴訟に移ります。
この場合、任意の和解よりも過払い金の回収率を上げられることが多くなります。 なお、裁判を起こしたからといって、最後まで徹底的に戦わなければならないわけではありません。
しかし、相手の条件に納得いかなければ、判決が出るまで進むことになります。
- 過払い金の返還(回収)
和解により合意をした場合、過払い金の返還時期は貸金業者によって異なります。
短いと数ヶ月、長いときには半年ほどかかるケースもあります。 また、裁判となった場合にはさらに時間がかかります。
裁判になると、半年から1年ほどかかるのが一般的です。
簡単に過払い金の返還請求手続きの流れを確認しました。
以上のように、過払い金が戻るまでには、ある程度の時間がかかることは心に留めておきましょう。
過払い金返還請求のメリットとデメリット
過払い金返還請求のメリットは「お金を取り戻せること」
過払い金の返還請求を行うメリットは、なんと言っても払い過ぎたお金を取り戻せることです。
このお金は、ある時点までは存在すら気付かなかったお金でもあり、そのまま消滅時効を迎えたり、相手の貸金業者が倒産してしまったりすれば、手にすることができない可能性があったものです。
また、過払い金返還請求をする人は、それまでに多くのお金を返済してきた人であり、その過程は楽なものではなかったでしょう。 払うべきものは払ったのですから、払ってもらうべきものを払ってもらう。
たったそれだけのことではあっても、過払い金返還請求のメリットはあるといえるでしょう。
過払い金返還請求のデメリットってあるの?〜疑問や不安を解消〜
Q1.過払い金返還請求をすると、ブラックリストに入ってしまうの?
A:過払い金返還請求は当然の権利を行使するだけのことですので、いわゆるブラックリストに入ることは原則ありません。
※信用情報機関に債務整理あるいは支払い滞納の登録が残ることを一般的に「ブラックリスト入り」と呼ぶことが多いです。
ただし、今現在も借入先に対して返済中の人は、債務整理という手続きとみなされるので、ブラックリストに入ってしまうことがあります。
具体的には、過払い金返還請求をできる取引口と借入を返済中の取引口とが別にあり、返済中の取引口を過払い金と相殺しても残高が残ってしまうようなケースです。
Q2.過払い金返還請求をすると住宅ローンを組めなくなるの?
A:借入の残っていない借入先について過払い金返還請求をしたからといって、住宅ローンを組めなくなることはありません。
ただし、返済中の借入先の過払い金請求については、引き直し計算をした結果過払い金が発生していなかったり、別の取引口の残高と相殺した結果残高が残ってしまい、ローンが組めなくなるリスクも考えられますので、手続きをするかどうか慎重に判断したほうがいいでしょう。
Q3.過払い金返還請求をするとクレジットカードを作れなくなるの?
A:過払い金返還請求をしても、クレジットカードが作れなくなることはありません。
ただし、過払い金返還請求の相手方となった当事者のカード会社からは断られる可能性があります。
Q4.過払い金返還請求後、またお金を借りることはできるの?
A:過払い金返還請求をした後でも、お金を借りることはできるでしょう。
ただし、過払い金返還請求をした同じ貸金業者からは、借りられない可能性が高いです。
Q5.家族や会社にばれずに過払い金返還請求はできるの?
A:過払い金返還請求を弁護士や司法書士に委任すると、相手方とのやりとりは弁護士や司法書士が行います。
また、訴訟の際には、代理人弁護士や司法書士が申立てを行うことにより送達文書なども弁護士事務所や司法書士事務所に届きますので、家族や会社にばれる可能性は少ないでしょう。
過払い金返還請求をしないほうがいい場合もある?
借金を返済中なら、過払い金返還請求をしないほうがいい場合もある
借金の返済中にも過払い金返還請求はできます。
しかし、実質的には過払いになっていても、形式的に債務がある状態で過払い金返還請求をした場合、貸金業者によっては信用情報に延滞を登録するケースがあります。
過払い金返還請求のすべての手続きが終了すれば、登録情報の削除を要求できますが、その間に、延滞情報がほかのローンなどで利用される可能性があります。 そうした理由から、借金返済中の人は過払い金返還請求をしないほうがいい場合もあります。
自分で過払い金返還請求をすることはできる?
弁護士や司法書士に依頼しないで、自分で過払い金返還請求をすることはできます。 ただし、自分が望んだ結果を得られるかどうかは別の話になります。 自分で過払い金返還請求をする場合は、様々な可能性についても考慮する必要があります。
- 自分で過払い金返還請求をすると損をすることや不利になることもある理由
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- 自分で引き直し計算をするのは難しく、実際より少ないまたは多い金額を出してしまうことがある
- 多くの時間を費やしたにもかかわらず、期待したほどの金額を得られない可能性がある
まず、取引履歴の開示請求と利息制限法に基づく引き直し計算という、最初の入り口でつまずく可能性が考えられます。
取引履歴の開示を拒むことはできないものの、いつ送るかは貸金業者次第の部分があります。 相手が素人である本人の場合、大手の貸金業者ではまずないことですが、小規模の貸金業者だとすぐには送ってこないケースも稀にあるようです。
引き直し計算では、うっかりミスや勘違いで誤った金額を出してしまうことがあります。
実際より少なく計算してしまう恐れや、貸金業者と見解の相違があるかもしれません。
過払い金の額が違うとか、何割を返還するかという重要な部分は交渉力も無視できません。
その結果、多くの時間を費やしたにもかかわらず、期待したほどの金額を得られないかもしれないのです。
自分で過払い金返還請求をする場合は、このような点にも注意しておきましょう。