借金を帳消しにする方法はある?借金をゼロにする合法的な手段3選と注意点

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毎月の借金返済が厳しい…帳消しにする方法はない?
合法的に借金から楽になる方法を知りたい

借金を合法的に帳消しにできる可能性がある方法は、以下の3つです。

  • 自己破産
  • 過払い金返還請求
  • 借金の時効援用

ただし、これらの方法には、できる条件がある程度厳しかったり、生活への影響があったりという側面があります。

借金の将来利息(これから払う利息)を減額する「任意整理」という方法は比較的できる人の範囲が広く、デメリットが抑えられることもあるでしょう

また、家を手元に残しながら借金の大幅な減額を図る「個人再生」という方法もあります。

この記事では、借金をゼロにするにする合法的な方法と、借金を減額するための方法について、それぞれの条件や注意点、メリット、デメリットなどを解説します。

どの方法をとるべきかの判断は難しいことも多いため、借金の返済に困っているなら、まずは相談無料の弁護士事務所に相談するとよいでしょう

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目次

借金の帳消しを合法的に図る方法とは?

借金は、合法的な手段で帳消しにできる場合もあります

借金を帳消しにできる可能性があるのは、以下のような方法です。

  • 自己破産:裁判所に申し立て、借金を原則全額支払い免除(免責)してもらう方法
  • 過払い金返還請求:利息制限法を超えて払っていた利息を取り戻す方法
  • 借金の時効援用:一定期間以上返済していない借金を消滅させる方法

しかし、これらの方法は、誰でも簡単にできる、というわけではありません。

それぞれの方法ではどのような条件で借金が帳消しになるのか、メリット、デメリットや注意点を次の項目から紹介していきます

借金の帳消しを図る方法1 自己破産

自己破産は、正当に借金を解決する方法である、債務整理の一種です

支払不能であることを裁判所に申し立てて認められれば、借金を基本的に全額免除(免責)してもらうことができます

自己破産のイメージ

自己破産ができる条件や注意点、メリット、デメリットについて解説します。

自己破産できる条件・注意点

自己破産できる条件は以下のとおりです。

  • 支払不能状態であること
  • 免責不許可事由に当てはまる行為がないこと

自己破産をしても免責されない支払い(非免責債権)もあり、注意が必要です。

それぞれ説明します。

自己破産については、以下の記事で詳しく解説しています。

支払不能状態であること

「支払不能状態」とは、客観的に見ても借金を返済するための財力も能力もない状態を指します

一般的には、借入総額(住宅ローンを除く)を3年で返し切れるかどうかが判断基準の一つです。

当人は返済が苦しいと感じていても、収入や手元の財産の状況から「3年程度で借金の完済が可能」と判断されれば、客観的には「支払不能状態」と認められない可能性があります。

なお、自己破産について定めた破産法では、「支払不能」は以下のように定義されています。

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第二条
11 この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(信託財産の破産にあっては、受託者が、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務(信託法(平成十八年法律第百八号)第二条第九項に規定する信託財産責任負担債務をいう。以下同じ。)のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)をいう。

出典:破産法 _ e-Gov法令検索

免責不許可事由に当てはまる行為がないこと

「免責不許可事由」とは、自己破産における借金返済の免責が認められない可能性がある事情のことです。

たとえば、次のような事情が免責不許可事由に当たります。

  • 借金の原因が、浪費または賭博その他の射幸行為による場合
  • 例)ブランド品や高級車の購入、パチンコ、パチスロ、競馬などのギャンブル、また株取引やFXなどを理由とした借金

  • 返済できないとわかっていて借入れを行った場合
  • 例)すでに多額の借金があるにもかかわらず、それを隠して新規の借入れを申し込んだ場合

  • 過去7年以内に、自己破産による借金の免除を受けている場合 など

ただし、免責不許可事由に該当した場合でも「裁量免責」と呼ばれる制度によって、免責許可が下りるケースもあります。

借金の事情や本人の反省の態度を鑑み、裁判所が「免責が妥当」と判断すれば、裁判所の裁量で破産者の免責が許可されることがあるのです。

自己破産の免責不許可事由については、以下の記事で詳しく解説しています。

自己破産で免責されない非免責債権に注意

自己破産はほぼすべての借金を帳消しにできる制度ですが、自己破産をしても支払い義務が免責されない支払い(非免責債権)があります。

たとえば、所得税などの税金や、国民健康保険や国民年金などの保険料、DVなどによる離婚時の慰謝料や、子どもの養育費などがこれに当たります。

非免責債権については、以下の記事で詳しく解説しています。

自己破産のメリット

自己破産のメリットは以下のとおりです。

メリット
  • 借金の返済が原則免除(免責)される
  • 生活保護受給者や無職でも手続きができる
  • 手元に残せる自由財産もある

それぞれ説明します。

借金の返済が原則免除(免責)される

自己破産の最大のメリットは、ほぼすべての借金の支払いが免責されることです

これにより、毎月の返済の負担から解放されます。

また、自己破産をすると返済の督促や差押えも止められるので、借金の滞納が続いているケースでも生活を立て直しやすくなります。

生活保護受給者や無職でも手続きができる

生活保護の受給者や、無職で収入がない人であっても、自己破産を申し立てることができます

自己破産の手続きには一定の費用がかかりますが、一定の条件を満たしていれば「法テラス(日本司法支援センター)」を通すことで、費用を立て替えてもらえたり、免除してもらえたりする可能性もあります。

参考:費用を立て替えてもらいたい|法テラス

生活保護受給者や無職の方が自己破産できるのかについては以下の記事で詳しく解説しています。

手元に残せる自由財産もある

自己破産をすると、一定以上の価値がある財産は回収され、債権者に配当されることになります。

しかし、すべての財産を取り上げられてしまうわけではありません

自己破産の目的は、債務者の経済的な再起です。

そのため、一定額以下の現金など、生活の立て直しに必要な財産は、手元に置いておけるのです。

このような財産を「自由財産」といいます。

自由財産とは、具体的には次のようなものです。

  • 99万円以下の現金
  • 自己破産の手続き後に得た財産(新得財産)
  • 法律で差押えが禁止されている財産(差押禁止財産)
  • 裁判所に所持を認められた財産(自由財産拡張)

自由財産については以下の記事で詳しく解説しています。

自己破産のデメリット

自己破産のデメリットは以下のとおりです。

デメリット
  • 信用情報機関に事故情報が登録される
  • 官報に個人情報が載る
  • 一定以上の財産は回収される
  • 保証人・連帯保証人に影響が出る
  • 手続きの間は資格制限がかかる

各項目について解説します。

信用情報機関に事故情報が登録される

自己破産の手続きから5〜10年程度、信用情報機関に事故情報が登録されます(いわゆる「ブラックリストに載った」状態)

これは「信用力が落ちている」状態であり、その影響として、次のようなものが挙げられます

  • ローンやキャッシングなど、新たな借入れができない
  • クレジットカードが利用できない
  • 他人の借金の保証人になれない
  • 携帯電話・スマホの分割払いも、ローンの一種であるため、利用できない
  • 賃貸住宅への入居を断られる可能性がある
用語集 信用情報機関とは?

ローンやクレジットカードなどの契約・利用状況などといった情報(信用情報)を集約、管理する機関のことです。

株式会社シー・アイ・シー(CIC)、株式会社日本信用情報機構(JICC)、全国銀行個人信用情報センター(KSC)の3つがあります。

ブラックリストについては、以下の記事で詳しく解説しています。

官報に個人情報が載る

自己破産をすると「官報」に個人情報が載ります

官報とは、国の機関紙です。

そこに自己破産をした事実と、氏名・住所が掲載されるのです。

ただし、官報に載ったからといって、周囲にバレる可能性は低いと考えられます。

なぜなら、官報を日常的に見るのは、信用情報機関や金融機関勤務など、ごく一部の職種の人に限られており、一般の人が官報を見る機会はほとんどないためです。

ただし、逆に勤め先が官報をチェックしている企業や部署だったり、周囲にこうした場所に勤めている人がいたりする場合、自己破産の事実がバレる可能性はゼロではありません。

自己破産と官報については、以下の記事で詳しく解説しています。

一定以上の財産は回収される

自己破産をすると、前述した「自由財産」以外の財産が売却・清算され、債権者(借入先)に配当されます

回収される財産は、おもに次のようなものです。

  • 不動産
  • 自動車
  • 預貯金
  • 生命保険の解約返戻金
  • 退職金
  • 有価証券(株券・債券・投資信託など) など

保証人・連帯保証人に影響が出る

自己破産をすると、保証人・連帯保証人に返済義務が移ります

そのため、保証人および連帯保証人に迷惑をかけることは避けられません。

なお、保証人・連帯保証人に返済義務が移ると、債権者は借金の分割払いではなく「一括返済」を求めるのが一般的です。

自己破産による保証人への影響は以下の記事で詳しく解説しています。

これは、自己破産手続きをとることによって「期限の利益」が失われてしまうからです。

用語集 期限の利益とは?

期限の利益とは「借金を約束した期日までに分割で返済すればいい」とする債務者の権利のことです。
この権利があるうちは、債権者は、決められた返済日がくるまで借金の返済を迫ることができません。
自己破産の手続きのほか、契約で定めた事由が起きると、期限の利益は喪失されます。

期限の利益については以下の記事で詳しく解説しています。

手続きの間は資格制限がかかる

裁判所で自己破産の手続きをしている間、以下のような職業や資格に制限がかかります。

制限を受ける職業の例

弁護士、司法書士、弁理士、公証人、公認会計士、税理士、証券会社外務員、旅行業者、宅地建物取引士(宅建士)、建設業者(※)、不動産鑑定士、土地家屋調査士、生命保険募集人、商品取引所会員、有価証券投資顧問業者、警備員、風俗営業者(※)、質屋 など

※雇われて建設業や風俗営業の仕事を行うことは可能

自己破産で制限される職業については、以下の記事で詳しく解説しています。

就いている職業がこれらに該当する場合、一時的な休職、配置換えなどを勤務先に打診する必要があります。

ただし自己破産の手続きが終わると制限は解除されるため、復職、就職することが可能です

これを「復権」といいます。

自己破産の復権については、以下の記事で詳しく解説しています。

借金の帳消しを図る方法2 過払い金返還請求

過払い金返還請求とは、簡単にいうと「払う必要のなかった利息(過払い金)を取り戻す手続き」のことです。

戻ってきた過払い金で借金が相殺できれば、借金の帳消しも可能です

ただし、過払い金が発生している条件はある程度限定的です。

以下で解説します。

過払い金返還請求できる条件・注意点

過払い金返還請求ができる条件は以下のとおりです。

  • 2010年6月17日以前に消費者金融、クレジットカード会社から借り入れていたこと
  • 過払い金の時効を過ぎていないこと
  • 過払い金返還請求先の会社が倒産していないこと

ただし近年、貸金業者やクレジットカード会社との和解条件などが厳しくなってきているので注意が必要です。

詳しく解説します。

2010年6月18日以前に消費者金融、クレジットカード会社から借り入れていたこと

過払い金は「消費者金融、クレジットカード会社からの借入れ」かつ「2010年6月18日以前の借入れ」にしか発生していません

過払い金は、利息制限法の上限利率を超過した利率(グレーゾーン金利)での貸付けに対して発生するものです。

2010年6月18日以降は、法律改正により、行政処分・刑事罰の対象となっています。

また、2010年6月17日以前であっても、銀行や公的機関の貸付利率は利息制限法の範囲内だったため、過払い金は発生していません。

過払い金発生の可能性がある会社などについては、以下の記事で詳しく解説しています。

過払い金の時効を過ぎていないこと

過払い金は、借入先と最後に取引をした日から10年が過ぎると「消滅時効」が成立し、返還請求ができなくなります

ただし、一度完済した人であっても、1年以内に再び同じ借入先から借金をしている場合は「取引が継続している」と見なされ、最後の取引日が更新されるケースがあります。

そのため、過払い金が請求できることもあるのです。

過払い金の時効

時効の条件は複雑です。

取引が継続しているか否か判断するのが難しい場合は、弁護士など法律の専門家に相談するのがよいでしょう

過払い金の時効については、以下の記事で詳しく解説しています。

過払い金返還請求先の会社が倒産していないこと

過払い金返還を請求する相手の会社(借入先)が倒産してしまった場合も、基本的には請求できません

ただし、倒産した借入先が、別の貸金業者などに吸収合併された場合などは、過払い金返還請求ができるケースがあります。

貸したお金を返済してもらえる権利を他の貸金業者に譲り渡している可能性があるからです。

過払い金請求ができる会社については、こちらの記事で詳しく解説しています。

和解条件などが厳しくなってきているので注意

2007年以降、過払い金返還請求件数と返還する過払い金の増加に伴い、消費者金融やクレジットカード会社の対応も厳しくなってきています

過払い金返還請求をすると「いくらまでなら返還するか」等の和解交渉を貸金業者と行いますが、以前より低い金額を提示されることがあるようです。

こうした交渉を債務者自身が担うのは簡単ではありません。

弁護士など、交渉に慣れた法律の専門家と相談しながら進めるのがよいでしょう。

過払い金請求の交渉や裁判については、こちらの記事で詳しく解説しています。

過払い金返還請求のメリット

過払い金返還請求では、以下のようなメリットがあります。

メリット
  • 過払い金で借金が相殺できれば、信用情報機関に事故情報を登録されない
  • 借入額以上の過払い金があればお金が戻ってくることもある

詳しく解説します。

借金が相殺できれば、信用情報機関に事故情報を登録されない

前述のとおり、自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が登録されます。

一方、過払い金返還請求の場合、借金を全額相殺できる額の過払い金が戻ってくるのであれば、信用情報機関に事故情報を登録されずに済みます

ただし、過払い金が戻ってきても借金が残る場合は債務整理(任意整理)扱いとなり、自己破産のときと同様、事故情報が登録されてしまいます。

借入額以上の過払い金があればお金が戻ってくることも

過払い金返還請求をした結果、借り入れた元金以上の過払い金が戻ってくるケースもありえます。

特に、長年にわたり借入れをしていた場合、高額の過払い金が発生することも考えられます。

過払い金返還請求のデメリット

過払い金返還請求のおもなデメリットは以下のとおりです。

デメリット
  • 過払い金返還請求した会社のクレジットカード、ローンは利用できなくなる
  • 希望どおりの過払い金の額が戻ってこないこともある

それぞれ見ていきましょう。

過払い金返還請求した会社のクレジットカード、ローンは利用できなくなる

過払い金返還請求をした場合、一般的には、請求先の会社のクレジットカードやローンは利用できなくなります

なぜなら、過払い金返還の請求をした会社の顧客情報に、過払い金返還請求の事実が事故情報として記録されてしまうからです。

この状況は「社内ブラック」と呼ばれます。

社内ブラックの情報は系列企業にも共有されます。そのため、過払い金返還請求をした会社の関連会社からの借入れなども難しくなるケースがあります。

過払い金請求によるローンへの影響は以下の記事で詳しく解説しています。

希望どおりの過払い金の額が戻ってこないこともある

過払い金返還請求をしても、請求した全額が借入先から戻ってこないことも考えられます

借入先と交渉しても十分に納得できる条件で和解できない場合は、「過払金返金請求訴訟」を提起する選択肢もあります。

ただし、訴訟には費用がかかりますし、債権者が抵抗し、訴訟が長期化するリスクもあるため、総合的に判断することが必要です。

弁護士に相談し、検討するのがよいでしょう。

過払い金請求のデメリットについては以下の記事で詳しく解説しています。

借金の帳消しを図る方法3 借金の時効援用

借金の時効援用は、一定期間以上返済していない借金を消滅させる手続きです

借金には、時効によって消滅するという制度があります。

これは「消滅時効」と呼ばれ、正確には、債権者が「債務者から借金を回収する」という権利を行使せず一定期間が経過した場合に、その権利を消滅させるという仕組みです。(民法166条

この消滅時効が成立する条件や、メリット、デメリットについて解説します。

借金の時効援用ができる条件・注意点

借金の消滅時効が成立し、時効援用で借金の返済義務がなくなるのは、返済期日または最後の返済から、5年もしくは10年が経過しているケースです

しかし「時効の更新事由(中断事由)」がある場合、5年または10年経過していても、時効が成立せず、時効の援用もできません

以下で解説します。

借金の消滅時効については以下の記事で詳しく解説しています。

返済期日または最後の返済から、5年もしくは10年が経過していること

返済期日または最後の返済から5年もしくは10年が経過していると、時効が成立する可能性があります

2020年3月31日以前に貸金契約が結ばれた借金については、以下のように時効までの期間(時効期間)が異なります。

  • 消費者金融、クレジットカード会社、銀行などからの借金:5年
  • 信用金庫、住宅金融支援機構、個人などからの借金、奨学金:10年

なお、民法改正に伴い、2020年4月1日以降に借り入れた借金については「債権者が借金の請求権を行使できることを知った時から5年」または「債権者が借金の請求権を行使できる時から10年」が時効期間となります。

時効の更新事由(中断事由)に注意

上でもふれているとおり、返済期日または最後の返済から5年もしくは10年が経過しているケースであっても、「時効の更新(中断)(※)」が起きていると時効は成立しません

時効の更新事由(時効を更新させる事項)には、次のようなものがあります。

  • 時効期間中に、債務者が借金の存在を認めた(借金の一部を返済する、返済を待ってもらえるよう頼む など)
  • 債権者が債務者に対し、支払督促などの法的な返済請求手続きを行った
  • 債権者が債務者の財産に対して、差押えなどの法的措置をとった

また、債権者が書面などで支払いを請求する「催告」の手続きなどによっても、時効のカウントが6ヶ月間止まります。

これを「時効の完成猶予(停止)」といいます。

通常、金融機関などの債権者は、時効が完成しないよう上記のような手段をとります

※2020年4月に施行された改正民法により、「中断」から「更新」に言葉が変わりました。

時効の中断(更新)については、以下の記事で詳しく解説しています。

借金の時効援用のメリット

借金の時効援用のメリットは、以下のとおりです。

メリット
  • 裁判所を通さずに借金の返済義務をなくせる
  • 信用情報機関の事故情報が消える場合もある

それぞれについて解説します。

裁判所を通さずに借金の返済義務をなくせる

時効成立の条件がそろえば、裁判所を通さなくても借金の返済義務を消滅させることができるのが、借金の時効援用のメリットです。

時効の援用の手続きを行うときは、「時効援用通知書」という書面を作成し、内容証明郵便で債権者に送るのが一般的です。

信用情報機関の事故情報が消える場合もある

借金の時効援用を行うと、信用情報機関によっては、借金の滞納の際に登録された事故情報が訂正される場合があります。

これにより、再びクレジットカードが使えるようになったり、ローンやキャッシングなどの新たな借入れもできるようになったりする可能性があります

借金の時効援用のデメリット

借金の時効援用のデメリットはおもに以下の2つです。

デメリット
  • 援用に失敗すると一括返済を求められる可能性がある
  • 借金の時効援用をした会社のクレジットカード、ローンは利用できなくなる

それぞれについて解説します。

援用に失敗すると一括返済を求められる可能性がある

時効が完成する前に時効の援用手続きをとると、債権者から逆に一括返済を求められるケースも起こりえます

一括返済の額には、遅延損害金が上乗せされるのが一般的です。

5年ないし10年以上返済していない間の遅延損害金がプラスされていることを考慮すれば、一括返済を求められる金額は、借入金の元本を大きく上回る可能性が高いといえるでしょう。

用語集 遅延損害金とは?

借金の返済が滞ったときに課される、損害賠償金の一種です。

返済期日の翌日から完済日まで発生するため、長期間にわたって返済していない場合の返済負担はさらに大きくなります。

また、遅延損害金の年利は、通常の貸付利息より高いことがほとんどです。

時効の援用手続きをとる際は、こういった問題が起きないよう、弁護士などの法律の専門家に相談するのがよいでしょう。

借金の時効援用をした会社のクレジットカード、ローンは利用できなくなる

借金の時効援用手続きがうまくいったとしても、時効の援用をした会社のクレジットカード、ローンは、半永久的に利用できなくなることが多いでしょう

時効援用をした会社の顧客情報に、返済の滞納および時効援用の事実が事故情報として記録されるからです。(いわゆる「社内ブラック」)

借金の減額を合法的に図る方法とは?デメリットが抑えられることも

ここまで紹介してきた借金を帳消しにする方法は、できる条件が限られていました。

「自分にはできなさそう」という場合も、借金の減額を図る「任意整理」であれば、厳しい条件を満たさなくても借金の返済の負担を減らせる可能性があります

さらに、この方法は自己破産よりデメリットを抑えられる可能性もあるといえます。

また、原則借金理由が問われず、家を残しながら借金の大幅減額を図る「個人再生」という方法もあります

それぞれについて解説します。

任意整理は債権者との交渉で返済プランの立て直しを図る方法

任意整理とは、裁判所を介さず、債権者と直接交渉をして、無理のない返済計画をたてる債務整理の手続きです。

借金の元本は減りませんが、将来利息(これから払う利息)などをカットし、月々の返済負担を軽くし、3〜5年での完済を目指すのが一般的です。

任意整理のイメージ

任意整理については以下の記事で詳しく解説しています。

任意整理できる条件・注意点

任意整理を行うには、次のような条件を満たす必要があります。

  • 借入金から利息などをカットした金額を、3〜5年で完済できる収入があること
  • 返済を継続する意思があること

任意整理後は返済が続くため、ある程度の収入が必要になりますが、雇用条件は問われません。

会社員、契約社員、アルバイト、パート、年金生活者などであっても、毎月安定した収入があれば、任意整理できます。

専業主婦(主夫)であっても、家計をやりくりして返済額を出し続けられる場合は、任意整理ができる可能性があります。

任意整理のメリット

任意整理のメリットは、以下のとおりです。

メリット
  • 裁判所を通さない手続きのため、家族や勤め先にもバレにくい
  • 家や車などの財産を処分しなくて済む
  • 保証人や連帯保証人に影響を及ぼさずに手続きができる

任意整理の特徴に「対象とする借金を選べる」ことがあります。

そのため、保証人や連帯保証人がついている借金や、家や車などのローンを対象から外し、影響を出さずに済ませることができるのです。

任意整理のデメリット

任意整理のデメリットは、以下のとおりです。

デメリット
  • 借金の減額幅がほかの債務整理の方法(自己破産、個人再生)よりも小さい
  • 減額後の借金完済から5年程度は、信用情報機関に事故情報が登録される
  • 交渉相手となる債権者によっては、減額が希望どおりにいかないこともある

任意整理は財産への影響を抑えられる方法ではありますが、事故情報の登録は避けられません。

任意整理のデメリットついては以下の記事で詳しく解説しています。

個人再生は裁判所に借金の大幅減額を認めてもらう方法

個人再生は、裁判所から再生計画の認可決定を受けて、借金を減額する方法です。

借金を5分の1~10分の1程度に減額できる可能性があり、原則3年(最長5年)で分割返済していくことになります。

個人再生のイメージ

個人再生については以下の記事で詳しく解説しています。

個人再生ができる条件・注意点

個人再生ができる条件は以下のとおりです。

  • 借金総額(住宅ローンを除く)が5,000万円以下であること
  • 個人再生で減額された後の金額を3年で返せる収入があること

また、個人再生では申立人が返済しなければならない最低限の金額として「最低弁済額」の基準が定められています。

100万円未満の借金では全額が最低弁済額とされているため、借金が100万円未満の場合、個人再生は意味のない手続きとなってしまうでしょう。

個人再生の最低弁済額については以下の記事で詳しく解説しています。

なお、個人再生にはおもに会社員を対象とした「給与所得者等再生手続」と、おもに個人商店や小規模の事業を営んでいる人などを対象とした「小規模個人再生手続」の2つの手続きがあります。

給与所得者等再生手続を行う場合、以下のような条件を満たすことも必要となります。

  • 継続的な収入を得ていて、その収入が給与で安定していて変動が小さいこと
  • 過去7年以内に、自己破産や給与所得者等再生を行っていないこと

個人再生の給与所得者等再生と小規模個人再生手続については以下の記事で詳しく解説しています。

個人再生のメリット

個人再生のメリットは以下のとおりです。

メリット
  • 任意整理より減額幅が大きい
  • 原則、借金の理由や経緯は問われない
  • 「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」を利用することで、住宅ローンが残っている自宅も手放さずに済む

借金額が大きく家を手放したくない場合、これらのメリットの意義は大きいといえるでしょう。

個人再生のデメリット

個人再生のデメリットには、以下のようなものがあります。

デメリット
  • 信用情報機関に事故情報が登録される(いわゆる「ブラックリスト」に載る状態)
  • 国の機関紙である「官報」に載る
  • 連帯保証人や保証人に影響が出る
  • 手続きが複雑で期間も長い(1〜2年程度かかる場合がある)

このように、借金の元金も大幅に減らせる可能性がある個人再生は、デメリットも小さくはありません。

手続きも複雑になるため、弁護士と相談しながら手続きをするか決め、慎重に進めるのがよいといえそうです。

借金を帳消しにしたいほど返済に困ったら弁護士事務所に相談を

「借金を帳消しにしたい」と思うほど借金に困っているなら、まずは弁護士に相談してみるのをおすすめします

ここまで紹介してきた方法のどれが自分に合っているか、判断がつかない場合も多いでしょう。

法的知識、実務知識の豊富な弁護士に相談することで、自分の状況に合った借金問題の解決法を提案してもらえます

また、弁護士には債務整理の手続きなどを任せられるため、負担の軽減を図ることも可能です

なお、司法書士にも債務整理を依頼できるケースはあるものの、以下のように、権限が制限されてしまいます(司法書士法3条 など)。

  • 司法書士は申立人の法定代理人になれないため、裁判所を介した手続きや出廷などは債務者本人が行う必要がある
  • 司法書士は借金額が140万円を超える案件を受けられない

無料相談を実施している弁護士事務所は少なくないので、気軽に相談してみるとよいでしょう

借金帳消しに関するQ&A

借金の帳消しについて、よくある質問に答えます。

コロナ禍で借金が帳消しになる救済措置はない?

結論からいうと、コロナ禍だからといって借金を帳消しにしてもらえるような救済措置はありません

ただし、「新型コロナの影響で休業したことなどで収入が減少し、消費者金融からの少額の借金が返せない」といった事情がある場合は、「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」という制度を利用できるかもしれません。

この制度を利用すると、原則、休業前の平均賃金の60%程度のお金を休業日数分受け取ることができます。

ただし、申請期間は休業期間に応じて異なるので、休業期間があった場合は早めに確認・申請するようにしてください。

参考:新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金_厚生労働省

「ヤミ金」からの借金は帳消しにできない?

いわゆる「ヤミ金(闇金事業者)」とは、貸金業者として登録せず、出資法の上限金利を超える金利で貸し付ける違法な事業者のことです。

ヤミ金からの借入れは法的に無効であり、ヤミ金からの借入れを返済する義務はありません

ヤミ金を利用すると、利息分が膨れ上がって返済が困難になったり、厳しい取り立てや詐欺といった犯罪被害に苦しんだりする恐れがあります。

もし現在、ヤミ金からの違法な取り立てなどに苦しんでいる場合は、以下のような窓口に相談することをおすすめします。

生活保護を受給すれば借金は帳消しになる?

生活保護を受給しているからといって、借金は帳消しにはなりません

また、生活保護費を使っての借金返済は制度上認められていません。

そのため現実的には、生活保護を受給した段階で、自己破産手続きが必要になるケースが多いようです。

ただし上でもふれたとおり「法テラス」を通して相談することで、自己破産にかかる費用を免除されるケースもあります。

生活保護受給時の債務整理については、以下の記事で詳しく解説しています。

放置していれば借金は帳消しになる?

借金を返さず、そのまま放置(滞納)を続けたからといって、帳消しにはなりません

たしかに借金は最終返済日から5年、もしくは10年が経過すると時効を迎えますが、前述のとおり、時効が何事もなく成立する可能性は低いといえるでしょう。

また、借金を滞納し続けて債権者が訴訟手続きをとれば、給与や預貯金、不動産などを差し押さえられる恐れもあります

差押えへ発展すると、生活に大きな影響が出るのは避けられません。

借金を滞納しはじめてしまったら、早めに対処することをおすすめします。

借金を放置しているとどうなるかについては、以下の記事で詳しく解説しています。

まとめ
  • 借金を合法的に帳消しにできる可能性がある方法には、自己破産、過払い金返還請求、借金の時効援用の3つがあります

  • 自己破産は、支払不能であることを裁判所に認めてもらい、借金を基本的に全額免除(免責)してもらう方法です。
    ただし自己破産が認められない場合や、非免責債権など、自己破産をしても免責されない借金もあります。また家や財産など、多くの財産が没収されます。

  • 過払い金返還請求とは、「払う必要のなかった利息(過払い金)を取り戻す手続き」のことです。
    しかし過払い金返還請求が成立するには、過払い金が発生している必要があります。
    2010年6月17日以前に消費者金融、クレジットカード会社から借り入れていたこと、過払い金の時効を過ぎていないことなどの条件を満たす必要があります。

  • 借金の時効援用は、一定期間以上返済していない借金を消滅させる手続きです。
    返済期日または最後の返済から5年もしくは10年が経過しているケースで可能ですが、時効期間中に借金の一部を返済するなど「時効の更新事由(中断事由)」がある場合は時効が成立しません。
    時効援用は難しいことも多いでしょう。

  • このように、自己破産、過払い金返還請求、借金の時効援用は、条件が厳しい場合やデメリットが大きい場合が少なくありません
    しかし、より利用しやすい方法もあります。 たとえば「任意整理」は基本的に借金の理由は不問で、デメリットを抑えながら借金の返済の負担を減らせる可能性があります
    借金を大きく減らしながら家を残せる「個人再生」という方法が向いているケースもあるでしょう。

  • 借金を帳消しにしたいほど返済が難しくなったら、まずは相談無料の弁護士事務所で相談して自分に合った方法を見つけ、借金問題の早期解決を目指すのがよいでしょう。

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監修者情報
監修者:弁護士法人・響弁護士
西島 弘起
弁護士会所属
東京第二弁護士会 第59420号
出身地
東京都
出身大学
中央大学法学部 上智大学法科大学院
保有資格
弁護士・行政書士
コメント
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[実績]
43万件の問合せ・相談実績あり
[弁護士数]
43人(2023年2月時点)
[設立]
2014年(平成26年)4月1日
[拠点]
計7拠点(東京、大阪、香川、福岡、沖縄)
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